勤怠締めのミスを防ぐ!中小企業のための効率的な作業のコツとトラブル対処法
更新日:2025-04-14 公開日:2025-02-17 by SEデザイン編集部
給与計算の基礎となる勤怠締めは、特に中小企業では人手不足の中、担当者の大きな負担となっています。本記事では、限られた人員で確実に処理するためのポイントや、よくあるミスへの対処法まで、実務に即して解説。人事担当者の業務効率化と、正確な勤怠管理の実現に向けたヒントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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勤怠締めとは?その重要性と基本的な流れ
勤怠締めの定義と目的
勤怠締めとは、従業員の労働時間を正確に集計し、給与計算や労務管理に必要なデータを作成する業務です。主に月次で行われ、給与計算の基礎となる重要な作業です。
この業務が重要視されるのは、以下の3つの理由によります。
①法令順守…労働基準法に基づく労働時間管理の義務
②給与計算…正確な給与支払いの基礎データを作成
③労務管理…従業員の勤務状況把握と適正な労働環境の確保
特に近年は、働き方改革関連法の施行により、より厳密な労働時間管理が求められています。
勤怠締めの基本的な流れ
勤怠締めは通常、以下のような流れで進められます。
工程 |
内容 |
確認ポイント |
データ収集 |
タイムカード・勤怠データの回収 |
記入漏れ、打刻漏れ |
一次チェック |
基礎データの確認と集計 |
異常値、入力ミス |
申請内容確認 |
残業・休暇申請との照合 |
承認状況、申請内容 |
最終確認 |
管理者による承認 |
法令順守、計算正確性 |
データ確定 |
給与計算システムへの連携 |
データ移行エラー |
この基本的な流れは、企業規模や使用しているシステムによって異なる場合がありますが、どの企業でも確実に実施する必要があります。
では、具体的な注意点とポイントはどのようなものでしょうか。
勤怠締めで押さえるべきポイントと注意点
正確な労働時間の把握
労働時間の正確な把握は、労働基準法で定められた使用者の義務です。特に注意が必要なのは、実労働時間の考え方です。始業時刻前の準備作業や、終業時刻後の後片付けなども、業務の一環として行われる場合は労働時間として扱う必要があります。
時間区分 |
内容 |
注意点 |
実労働時間 |
実際に労働した時間 |
始業前残業も含む |
法定労働時間 |
1日8時間、週40時間 |
変形労働時間制の場合は別途 |
所定労働時間 |
会社で定めた勤務時間 |
就業規則との整合性を確認 |
また、労働時間の端数処理(丸め)については、就業規則等で明確に定める必要があります。一般的な処理方法として15分単位や30分単位がありますが、どちらを採用する場合も、労働者に不利益とならない方法で処理することが重要です。
正確な給与の算出
従業員の勤怠状況はそれぞれで異なりますので、給与に反映される残業手当や休日出勤手当、深夜勤務手当、あるいは欠勤日数などは常に変動します。また、そのため、これらの情報を一つひとつ確認した上で、給与計算をする必要があります。
有給休暇や欠勤日数の処理
勤怠締めにおいては、有給休暇や欠勤日数の管理も同時に行います。特に、2019年4月から有給休暇については従業員に年5日消化させる義務を企業側が負っていることから、より重要性が増しているといえるでしょう。
有給休暇管理のポイント
①付与日数管理
労働基準法では、6カ月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上を出勤した労働者に対して、最低10日の年次有給休暇を付与することが義務付けられています。その後、勤続年数に応じて付与日数は段階的に増加し、6年6カ月以上で最大20日となります。この法定の付与日数を確実に管理する必要があります。なお、有給休暇は、付与日から2年間有効であるため、前年からの繰越分と当年度の付与分を区別して管理しなければなりません。
年次付与日数を表で表すと以下のとおりです。
勤続年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヶ月 | 10日 |
1年6ヶ月 | 11日 |
2年6ヶ月 | 12日 |
3年6ヶ月 | 14日 |
4年6ヶ月 | 16日 |
5年6ヶ月 | 18日 |
6年6ヶ月以上 | 20日 |
②取得状況管理
前述の義務を確実に履行するためには、従業員ごとの取得状況を月次で把握し、取得が進んでいない従業員に対しては、計画的な取得を促す必要があります。また、半日単位での取得や、時間単位年休制度を導入している場合は、より細かな管理が求められます。特に時間単位年休については、1年間で5日分(40時間)を上限として与えることができますが、時間単位での取得状況を正確に記録し、日単位の年休取得日数との整合性を確認する必要があります。
③賃金計算への反映
有給休暇取得時の賃金は、通常の勤務をした場合と同様に支払う必要があります。月給制の場合は通常通りの給与を支払い、日給制・時給制の場合は平均賃金や所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払います。半日休暇を取得した場合は、1日の所定労働時間の半分を基準として計算します。また、時間単位年休については、1時間当たりの賃金単価を適切に設定し、取得時間数に応じた賃金を支払う必要があります。これらの計算を正確に行い、不利益が生じないよう注意が必要です。

株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
勤怠締めの効率化とミス防止のポイント
チェックリストの活用
電卓ではなくエクセルを使用することは、タイムカードの計算作業を大幅に効率化できるでしょう。基本的な集計表の作成から、高度な自動計算まで段階的に解説します。
勤怠締めの作業は多岐にわたり、たった1つのミスが大きな問題につながる可能性があります。そのため、体系的なチェックリストを作成し、活用することが重要です。
確認項目 |
チェックポイント |
確認のタイミング |
出退勤時間 |
打刻漏れ、異常値の有無 |
日次・週次 |
残業時間 |
36協定の上限確認、申請状況 |
週次・月次 |
休暇取得 |
申請書との整合性、残数確認 |
都度・月次 |
各種手当 |
計算根拠、支給要件の確認 |
月次 |
控除項目 |
金額の妥当性、変更有無 |
月次 |
チェック担当者を明確にし、確認した項目には必ずチェック印を付けるなど、運用ルールを定めることで、より効果的な活用が可能となります。
勤怠管理システムの導入
近年、クラウド型の勤怠管理システムが普及し、中小企業でも導入しやすい環境が整ってきています。システム導入のメリットと選定時の注意点について解説します。
システム導入のメリット
①作業時間の大幅削減
手作業での集計作業が自動化され、人的ミスも減少します。特に残業時間の計算や、深夜勤務の割増賃金計算など、複雑な計算を正確に処理できます。また、データの収集・入力作業も効率化され、担当者の業務負担を大きく軽減できます。
②リアルタイムでの労働時間把握
従業員の勤務状況をリアルタイムで確認できるため、残業時間の管理や労働時間の適正化を実現しやすくなります。特に、36協定の順守状況や、長時間労働の兆候を早期に発見できる点は、労務管理上大きなメリットといえるでしょう。
③データの一元管理とセキュリティーの強化
紙の帳票やエクセルファイルでの管理と比べ、データの保管が確実で、アクセス権限の設定も可能です。また、バックアップ機能により、データの損失リスクも軽減されます。
なお、システム導入にあたっては以下のポイントを確認しておくといいでしょう。
・初期費用と月額費用のバランス
・既存の給与システムとの連携可否
・スマートフォン対応の有無
・カスタマイズの柔軟性
・サポート体制の充実度
従業員教育の重要性
システムやチェックリストを導入しても、それを使用する従業員の理解と協力がなければ、効果的な運用は困難です。以下のような体系的な教育プログラムの実施が推奨されます。
教育プログラムの例
①基本的な勤怠ルールの理解促進
・就業規則の重要ポイント解説
・残業申請の手順と注意点
・各種届出書類の記入方法
②システム操作の実践的トレーニング
・基本的な操作方法の習得
・よくあるエラーへの対処方法
・システム活用の好事例共有
定期的な研修やマニュアルの整備に加え、日々の業務の中でもフォローアップを行うことで、教育効果を高めることができます。
まとめ
勤怠締めは、企業における労務管理の要となる重要な業務です。本記事で解説してきた内容を実践することで、正確かつ効率的な勤怠管理を実現することができます。
特に重要なポイントは以下の通りです。
①基本の徹底
労働時間の正確な把握と適切な端数処理は、勤怠管理の基礎となります。法令を順守した運用を心がけ、従業員にとって不利益とならない処理方法を採用することは必須です。また、各種手当の確認を漏れなく行うことで、給与計算の正確性を確保できます。
②システムとツールの活用
チェックリストや勤怠管理システムは、作業効率の向上とミス防止に大きく貢献します。ただし、導入時には自社の規模や業務フローに合わせた選定が重要です。また、定期的な運用ルールの見直しも必要です。
③人材育成の視点
システムやツールの導入だけでなく、それらを使用する従業員の教育も重要です。基本的なルールの理解促進から実践的なシステム操作まで、計画的な教育プログラムを実施することで、より確実な勤怠管理が可能となるでしょう。
これらの取り組みにより、労務管理の質を向上させ、従業員が安心して働ける職場環境の整備につなげていけるはずです。同時に、定期的に運用状況を確認し、必要に応じて改善を図ることで、より効率的で正確な勤怠管理体制を構築することを心がけましょう。

株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント