中小企業のための新卒・中途採用フロー図の作り方!コスト削減と質の両立する方法も解説
更新日:2025-04-14 公開日:2025-03-26 by SEデザイン編集部
人材採用は企業の成長に不可欠ですが、中小企業にとっては大きな課題でもあります。効率的で効果的な採用を実現するためには、適切な採用フローの構築が重要です。本記事では、中小企業の人事担当者や経営者向けに、採用フローの基礎から実務的なポイントまでを詳しく解説します。
育児・介護休業法改正の背景と目的
育児・介護休業法(正式名称「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)は、育児や介護を行う労働者の職業生活と家庭生活の両立を支援するための法律です。2024年5月に改正され、2025年4月から段階的に施行されます。
採用フローとは?その重要性を理解しよう
採用フローとは、企業が行う採用活動の一連の流れのことです。募集から内定、入社までの各段階を体系化することで、効率的な採用活動が実現できます。
採用フローを明確化することで、以下のような効果が期待できます。
【表1:採用フロー整備のメリット】
メリット |
具体的な効果 |
採用プロセスの効率化 |
・選考ステップの重複解消 |
採用コストの削減 |
・広告費の最適化 |
採用の質の向上 |
・一貫した評価基準の適用 |
進捗管理の容易さ |
・各段階の状況把握が容易 |
特に中小企業にとって、採用フローの整備は人材採用の質を高めながら、限られたリソースを最大限に活用するために重要な取り組みとなります。
標準的な採用フローの流れを把握する
新卒採用の基本的なフロー
新卒採用は、日本経済団体連合会の「採用選考に関する指針」に基づいて実施されます。広報活動は卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、選考活動は卒業・修了年度の6月1日以降に開始することが定められています。
中小企業が新卒採用を効果的に進めるためには、この標準的なスケジュールを踏まえつつ、自社の特性を活かした採用活動を展開することが重要です。
【表2:新卒採用の標準的なフロー】
採用段階 |
実施時期 |
主な内容 |
ポイント |
広報活動 |
3月1日以降 |
企業情報公開、採用サイト準備 |
自社の強みを明確に発信する |
エントリー受付 |
随時 |
プレエントリー、本エントリー |
応募者との丁寧なコミュニケーションを続ける |
選考活動 |
6月1日以降 |
適性検査、面接試験 |
効率的な選考日程を設定する |
内定・フォロー |
10月1日以降 |
内定通知、入社前研修 |
定期的な情報提供と関係を構築する |
特に中小企業では、大手企業と比べて知名度で劣る分、自社の魅力を丁寧に伝えることが重要です。企業説明会では、将来のキャリアパスや具体的な成長機会について、実例を交えながら説明することで、応募者の理解を深めることができます。
中途採用の基本的なフロー
中途採用は新卒採用と異なり、通年での採用活動が可能です。採用時期は、企業の繁忙期や人員補充の必要性、予算などを考慮して柔軟に設定できます。
中途採用における選考プロセスは、応募者の経験やスキルを重視した評価が中心となります。具体的には、職務経験の確認から始まり、実務能力の評価、そして企業文化との適合性判断へと進みます。
【表3:中途採用の主要プロセスと評価ポイント】
プロセス |
評価の主眼 |
具体的な確認事項 |
書類選考 |
経験・スキル |
職務経歴、資格、実績 |
一次面接 |
基本適性 |
コミュニケーション能力、意欲 |
二次面接 |
実務能力 |
専門知識、問題解決能力 |
最終面接 |
組織適合性 |
価値観、キャリアプラン |
中小企業の中途採用では、即戦力としての期待と同時に、組織への適応力も重要な判断要素となります。面接では、技術力や経験の確認だけでなく、企業理念への共感や職場の雰囲気との相性なども丁寧に確認すれば、採用後のミスマッチを防げるでしょう。
採用フロー図の作成方法とそのメリット
採用フロー図とは
採用フロー図とは、採用活動の各段階を視覚的に表現したものです。企業の採用プロセスを「見える化」することで、関係者全員が同じ認識で採用活動に取り組むことができます。中小企業において、限られたリソースを最大限に活用するためには、この採用フロー図の活用が効果的です。
採用フロー図を作成・活用することで得られる具体的なメリットは以下の通りです。
【表4:採用フロー図活用のメリットと効果】
メリット |
期待される効果 |
具体的な活用例 |
プロセスの透明化 |
採用活動の全体像把握 |
各部門との連携強化 |
進捗管理の効率化 |
状況の即時確認が可能 |
遅延対策の早期実施 |
評価基準の統一 |
公平な選考の実現 |
評価者間のばらつき防止 |
改善点の特定 |
ボトルネックの発見 |
プロセスの最適化 |
採用フロー図作成のステップ
採用フロー図の作成は、計画的なアプローチが重要です。まず、自社の採用における現状と課題を整理することから始めます。次に、理想的な採用プロセスを設計し、それを実現可能な形に落とし込んでいきます。
具体的な作成手順は以下の流れで進めます。
- 採用計画の立案
採用目的や必要な人材要件を明確にし、採用時期や人数を決定します。この際、経営計画との整合性を確認することが重要です。 - 工程の設計
募集開始から入社までの主要な工程を時系列で整理します。この段階では、各工程にかかる期間や必要なリソースも併せて検討します。 - 具体的なアクションの設定
各工程で実施する施策を具体化します。例えば、広報活動では使用する媒体の選定や説明会の開催時期などを決定します。
【実践】中小企業ですぐに使える採用フロー図テンプレート
以下に、新卒採用と中途採用それぞれの基本的なフロー図を表形式でご用意しました。
「コピー」を押下し、Excelに張り付けていただくとフロー図がすぐに完成します。
各社の状況に応じてカスタマイズしてご活用ください。
ステップ | 予定日 | 場所 |
---|---|---|
採用計画策定 | 前年12月末 | 社内 |
↓ | ||
採用情報公開 | 3月1日 | Web |
↓ | ||
説明会開催 | 3月15日〜4月15日 | オンライン/対面 |
↓ | ||
エントリー受付 | 3月1日〜4月30日 | Web |
↓ | ||
書類選考 | 5月1日〜5月15日 | 社内 |
↓ | ||
適性検査 | 5月20日〜5月25日 | オンライン |
↓ | ||
一次面接 | 6月1日〜6月15日 | オンライン |
↓ | ||
二次面接 | 6月20日〜6月30日 | 対面 |
↓ | ||
最終面接 | 7月1日〜7月10日 | 対面 |
↓ | ||
内定通知 | 7月15日 | 郵送/対面 |
↓ | ||
入社前フォロー | 8月〜翌年3月 | オンライン/対面 |
↓ | ||
入社 | 翌年4月1日 | 対面 |
ステップ | 予定日 | 場所 |
---|---|---|
採用計画策定 | 随時 | 社内 |
↓ | ||
求人票作成 | 随時 | 社内 |
↓ | ||
求人公開/社員紹介 | 随時 | Web/社内 |
↓ | ||
応募受付 | 随時 | Web/メール |
↓ | ||
書類選考 | 応募受付後1週間 | 社内 |
↓ | ||
適性検査・スキルテスト | 書類選考後1週間以内 | オンライン |
↓ | ||
一次面接(人事) | テスト後1週間以内 | オンライン |
↓ | ||
二次面接(現場責任者) | 一次面接後1週間以内 | 対面 |
↓ | ||
最終面接(役員) | 二次面接後1週間以内 | 対面 |
↓ | ||
条件交渉/内定通知 | 最終面接後1週間以内 | 対面/オンライン |
↓ | ||
入社前手続き | 内定〜入社日 | メール/郵送 |
↓ | ||
入社 | 合意した日 | 対面 |
また各段階での確認事項を抑えておくことも重要です。以下のチェックリストは、採用プロセスの各段階で確認すべき重要項目を整理したものです。書類選考から最終面接まで、各ステップで評価すべきポイントと担当部署を明確にしています。
人事部は初期段階で基本的な適性を見極め、現場部門は実務能力や専門性を評価し、最後に経営層が組織との文化適合性を判断します。このフレームワークを基に、企業規模や業種特性に合わせたカスタマイズが可能です。採用担当者間で評価基準を共有し、一貫性のある選考を実現するためにご活用ください。
【表:各段階での確認事項チェックリスト】
段階 |
確認項目 |
担当部署 |
書類選考 |
・職務経歴 |
人事部 |
適性検査 |
・基礎能力 |
人事部 |
一次面接 |
・コミュニケーション能力 |
人事部 |
二次面接 |
・専門性 |
現場部門 |
最終面接 |
・人柄 |
経営層 |
※このテンプレートは基本形です。自社の規模や採用ニーズに応じて、面接回数の調整や選考項目の追加・削除を行ってください。
採用フロー図活用のポイント
作成した採用フロー図を効果的に活用するためには、実務での運用を意識した取り組みが必要です。
重要なのは、採用フロー図を単なる図表として扱うのではなく、実務的なツールとして活用することです。定期的な進捗確認の場を設け、関係者間で情報を共有しながら、必要に応じて改善を加えていきます。
特に中小企業では、以下の点に注意して活用することをお勧めします。
【表5:中小企業における採用フロー図活用のポイント】
場面 |
活用方法 |
期待される効果 |
採用会議 |
進捗状況の共有 |
関係者の認識統一 |
選考実施 |
評価基準の確認 |
公平な評価の実現 |
改善検討 |
データに基づく分析 |
プロセスの最適化 |
中小企業向け効率的な採用フローを構築するには
中小企業特有の課題である「限られた予算」「人手不足」「知名度の低さ」を踏まえながら、効率的な採用フローを構築する方法について解説します。
採用目的の明確化と人材要件の設定
採用活動を始める前に、経営戦略に基づいた採用目的と求める人材像を明確にすることが重要です。漠然とした採用活動は、時間とコストの無駄遣いにつながりかねません。
【表6:採用目的と人材要件の設定例】
採用目的 |
具体的な人材要件 |
評価のポイント |
技術力の強化 |
特定分野の実務経験者 |
・保有資格 |
営業体制の拡充 |
コミュニケーション能力の高い人材 |
・折衝経験 |
組織の活性化 |
若手人材の戦力化 |
・学習意欲 |
選考プロセスの最適化
リソースが限られた中小企業の場合、効率的な選考プロセスを構築することで、質の高い採用を実現できます。
- 効果的な選考プロセスの例
- オンライン面接の活用による時間効率の向上
- 複数選考の同日実施による応募者の負担軽減
- 現場社員との交流機会の設定による相互理解の促進
採用コストの削減と質の向上の両立
限られた予算で最大の効果を得るために、以下のような取り組みが有効です。
【表7:コスト削減と質向上の両立策】
施策 |
具体的な取り組み |
期待される効果 |
採用媒体の最適化 |
ターゲット層に合わせた媒体選定 |
費用対効果の向上 |
社員紹介制度の活用 |
既存社員のネットワーク活用 |
採用コストの削減 |
インターンシップの実施 |
就業体験を通じた相互理解 |
ミスマッチの防止 |

株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
採用フローの改善と最適化
データに基づく採用フローの分析
採用活動の効果を測定し、継続的な改善につなげるために、以下のような指標を活用するといいでしょう。
【表8:重要な採用指標と分析内容】
指標 |
分析内容 |
目的 |
応募倍率 |
募集人数に対する応募者数 |
採用広報の効果測定 |
内定承諾率 |
内定出した人数に対する入社者数 |
選考プロセスの適切性確認 |
初年度定着率 |
入社後1年以内の退職率 |
採用基準の妥当性評価 |
採用フローの各段階における改善点
各段階での見えてくる具体的な改善点と、それらへの対応策を以下の表にまとめました。
【表9:段階別の改善点と対応策】
採用段階 |
改善点 |
対応策 |
募集 |
応募者層の質向上 |
・求人票の表現改善 |
選考 |
評価精度の向上 |
・面接官研修の実施 |
内定後 |
入社までのフォロー強化 |
・定期的な情報提供 |
テクノロジーを活用した採用フローの効率化
採用管理システムやツールを活用することで、採用業務の効率化を図ることができます。コストには幅がありますが、数ある選択肢の中でパフォーマンスが良いと思うものを選びましょう。
【表10:採用テクノロジーの活用方法】
ツールの種類 |
採用管理システム |
Web面接ツール |
適性検査ツール |
主な機能 |
応募者データ管理 |
業務効率化 |
無料~3万円/月 |
導入メリット |
オンライン面接 |
時間・場所の制約解消 |
無料~1万円/月 |
予算目安 |
基礎能力診断 |
客観的な評価基準の確保 |
500円~/1人 |
これらのツールは、無料プランや低価格プランから始められるものも少なくなく、かつ段階的な導入も可能です。
まとめ
本記事では、中小企業における効果的な採用フローの構築と改善について、実務的な視点から解説してきました。
採用フローの基本設計においては、自社の状況に合わせた採用計画の立案が重要です。新卒・中途それぞれの特性を考慮したプロセスを設計し、それを視覚化することで、関係者間の認識を統一することができます。
効率化とコスト削減の観点からは、適切な採用ツールの選択と活用が大きなポイントとなります。社員紹介制度などの内部リソースを活用しながら、選考プロセスの最適化を図ることで、時間とコストの効率化を実現できます。
また、採用の質を向上させるためには、データに基づく効果測定と継続的な改善が欠かせません。環境の変化に応じて柔軟に対応しながら、採用フローを進化させていくことが重要です。これらの取り組みを通じて、ご事業発展に寄与する優秀な人材の確保につながることを願っています。

株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント