中小企業向け|【テンプレートあり】Excel(エクセル)で勤怠管理を業務効率化する方法

更新日:2025-07-08 公開日:2025-07-08 by SEデザイン編集部

目次

中小企業の人事・労務担当者や経営者の皆さん、勤怠管理に頭を悩ませていませんか?本記事では、身近なツールであるExcel(エクセル)を使って、効率的に勤怠管理を行う方法をご紹介します。エクセルの基本的な使い方から、実践的なテンプレートの活用方法まで、段階的に解説していきます。

 

エクセルで勤怠管理を行うメリット

エクセルを使って勤怠管理を行うことには、多くのメリットがあります。特に中小企業にとって、以下の点が大きな利点となります。

導入コストが低い

エクセルは多くの企業ですでに導入されているため、追加の費用なしで勤怠管理を始められます。専用のシステムを導入する場合と比較すると、初期投資がほとんど不要であり、コスト面で大きなメリットがあります。特に、予算の制約がある中小企業にとっては、この点が非常に魅力的です。

カスタマイズが自由

エクセルは自社の勤務形態や規程に合わせて自由にカスタマイズできます。関数やマクロを使用することで、複雑な計算も可能になります。例えば、変則的なシフト勤務や残業時間の計算、有給休暇の管理なども、エクセルの機能を活用することで柔軟に対応できます。

操作に慣れている人が多い

多くの人がエクセルの基本操作に慣れているため、新しいシステムを導入するよりも導入がスムーズです。社員教育のコストを抑えられる点も大きなメリットです。既存のスキルを活用できるため、新たな学習コストをかけずに勤怠管理を始められます。

エクセルで勤怠管理を行う基本的な方法

エクセルを使った勤怠管理の基本的な方法を段階的に解説します。勤怠管理表の作成から、必要な項目の設定、データの入力方法、集計の仕方まで、具体的な手順を示します。

勤怠管理表の基本構造

勤怠管理表の基本的な構造は以下の項目で構成されます。

  1. 日付
  2. 曜日
  3. 出勤時間
  4. 退勤時間
  5. 休憩時間
  6. 実働時間
  7. 残業時間
  8. 備考

これらの項目をエクセル上で以下のように配置します。

日付

曜日

出勤時間

退勤時間

休憩時間

実働時間

残業時間

備考

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 日付・曜日:勤務日を特定し、休日や祝日を区別する。
  • 出勤時間・退勤時間:実際の勤務時間を把握・管理する。
  • 休憩時間:労働基準法に基づいた適切な休憩時間を把握・管理する。
  • 実働時間:出勤時間から退勤時間を引き、休憩時間を除く。
  • 残業時間:所定労働時間を超えた部分を計算する。
  • 備考:特記事項や有給休暇の使用などを記録する。

エクセルの勤怠管理テンプレート例(ダウンロード可)

実際にExcelで勤怠管理すると以下のイメージになります。

上記のExcelで管理できる勤怠管理シートを無料でダウンロードできます。ぜひ、ご活用ください。

 

労働時間の適切な管理

労働時間の適切な管理は、勤怠管理の基本中の基本です。中小企業の人事担当者が押さえておくべき主なポイントは以下の通りです。

  1. 法定労働時間と所定労働時間の違い
  2. 始業・終業時刻の正確な記録
  3. 休憩時間の適切な管理
  4. 時間外労働の把握

法定労働時間と所定労働時間の違い

法定労働時間は労働基準法で定められた1日8時間、週40時間のことを指します。一方、所定労働時間は各企業が就業規則で定める労働時間です。この二つを混同しないよう注意が必要です。

始業・終業時刻の記録

労働時間の管理において最も重要なのが、始業・終業時刻の正確な記録です。タイムカードやアプリを利用したスマートフォンでの打刻など記録方法は様々ですが、どの方法を選択するにせよ、1分単位での記録が求められます。また、テレワークなど多様な働き方に対応できる柔軟な記録方法を検討することも重要です。

休憩時間の適切な管理

労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩時間を与えることが義務付けられています。この休憩時間を適切に管理し、実際に休憩が取得されているかを確認することも勤怠管理の重要な要素です。

時間外労働の把握

法定労働時間を超える時間外労働については、特に注意が必要です。36協定の締結と順守、割増賃金の計算など、法令順守の観点から正確な把握が求められます。

時間外労働と休日労働の管理

時間外労働と休日労働の管理を怠ると、人件費の増加につながるため、中小企業には重要な課題でしょう。以下の点に注意して管理を行いましょう。

  1. 36協定の締結と順守
  2. 割増賃金の正確な計算
  3. 時間外労働の上限規制への対応

36協定の締結と順守

時間外・休日労働を行わせる場合、労使間で36協定を締結し、労働基準監督署に届け出る必要があります。

割増賃金の正確な計算

時間外労働、休日労働、深夜労働には割増賃金が発生します。それぞれの割増率は以下の通りです。

労働の種類

割増率

時間外労働

25%以上

休日労働

35%以上

深夜労働

25%以上

※時間外労働が深夜に及ぶ場合は、50%以上の割増率となります。以下は実際の割増賃金の計算例です。

割増賃金の計算例
労働の種類
割増率
計算
時間外労働
25%以上
時給 × 1.25 × 時間
時間外労働の例
基本時給: 1,200円
残業時間: 2時間
1,200円 × 1.25 × 2時間 = 3,000円
割増賃金: 3,000円
深夜時間外労働の例
基本時給: 1,200円
深夜残業: 1時間 (22時〜23時)
1,200円 × 1.50 × 1時間 = 1,800円
割増賃金: 1,800円

時間外労働の上限規制への対応

2019年4月から段階的に施行された働き方改革関連法により、時間外労働の上限が設けられました。中小企業も2020年4月から適用されています。

期間

上限時間

単月

100時間未満

2~6か月平均

80時間以内

年間

720時間以内

これらの上限を超えないよう、適切な労働時間管理が求められます。

有給休暇の取得状況管理

年次有給休暇の取得状況管理も、勤怠管理の重要な要素です。2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される従業員に対して、年5日の取得を企業が義務付けられています。

有給休暇管理のためには、以下の項目をチェックすることが必要です。

  1. 付与日数の正確な把握
  2. 取得状況の記録
  3. 計画的付与制度の活用
  4. 取得促進のための施策実施

付与日数の正確な把握

年次有給休暇の管理において基本となるのは、各従業員への正確な付与日数の把握です。労働基準法では、勤続年数に応じて付与される有給休暇の日数が定められています。

入社日を基準とした管理が重要です。従業員ごとに入社日から6ヶ月後に最初の年次有給休暇が付与され、以降は1年ごとに付与日数が増加します。この基準日を従業員台帳に記録し、付与漏れがないよう管理します。

また、未消化の有給休暇は翌年度に繰り越され、最大2年間有効です。繰越分と新規付与分を区別して記録し、消滅する日付も管理しておくことで、従業員の権利を守ることができます。

管理方法としては、従業員数に応じて適切なツールを選びましょう。小規模企業であれば紙の台帳やExcelシートでも十分ですが、従業員が増えるにつれて勤怠管理システムの導入も検討すべきです。

取得状況の記録

有給休暇の取得状況を正確に記録することは、法令遵守の面でも非常に重要です。2019年4月から施行された「年5日取得義務化」に対応するためには、日々の取得記録が不可欠です。

取得記録には、日付、時間(全日または半日、時間単位)、理由(必要に応じて)、承認者などの情報を含めます。また、残日数も常に更新し、従業員が自身の有給休暇の残数を把握できるようにすることが大切です。

法定5日の取得義務に関しては、対象者をリストアップし、四半期または半期ごとに進捗を確認する仕組みを作りましょう。取得が進んでいない従業員には早めに通知し、年度末に慌てることなく計画的に取得できるよう促します。

記録方法は紙の申請書やExcelでも可能ですが、より正確かつ効率的に管理するためには、勤怠管理システムの導入も一考です。特に従業員の自己申告と上長の承認プロセスがシステム化されていると、二重管理による手間やミスを防げます。

計画的付与制度の活用

計画的付与制度は、労使協定を締結することで、有給休暇の取得日を計画的に指定できる仕組みです。この制度を活用することで、年5日の取得義務を効率的に達成できるだけでなく、企業全体の業務計画と調和した休暇取得が可能になります。

企業全体での計画的付与を実施する場合は、年間の業務カレンダーを作成し、繁忙期と閑散期を考慮した上で、休暇取得推奨日や一斉休業日を設定します。この計画は事前に従業員に通知し、準備期間を設けることが重要です。

部署別の計画も効果的です。例えば、製造部門では生産計画に合わせた休暇取得計画を、営業部門では顧客対応の少ない時期での休暇取得を推奨するなど、業務特性に応じた調整が可能です。

計画的付与制度を運用する際は、共有カレンダーなどのツールを活用して、全従業員が休暇予定を確認できるようにしましょう。また、計画的付与と個人の希望による取得のバランスも考慮し、柔軟な運用を心がけることが大切です。

取得促進のための施策実施

有給休暇の取得を促進するためには、単に制度を整えるだけでなく、実際に休暇を取得しやすい職場風土を作ることが重要です。

取得率の分析から始めましょう。部署別・個人別の取得状況を可視化し、取得率の低い部署や個人の原因を特定します。業務の属人化や人員不足が原因であれば、業務分担や体制の見直しが必要かもしれません。

管理職の意識改革も不可欠です。上長自らが率先して有給休暇を取得する姿勢を見せ、部下の休暇取得にも前向きな姿勢で臨むよう、管理職研修などを通じて啓発します。「休むことは当たり前」という意識を組織全体に浸透させることが、取得促進の鍵となります。

具体的な取得促進施策としては、記念日休暇制度(誕生日や結婚記念日に休暇を奨励)、アニバーサリー休暇(入社○周年に特別休暇を付与)、連休取得の奨励(有給休暇と土日や祝日を組み合わせた連休の計画)などが効果的です。こうした施策の効果を定期的に測定し、取得率の向上につなげましょう。

中小企業では、有給休暇の管理を紙ベースで行っているケースも多いですが、管理の負担軽減と正確性向上のため、専用のシステムやツールの導入を検討するのも一案です。

その他の勤怠管理項目(遅刻、早退、欠勤など)

遅刻、早退、欠勤などの管理も、適切な勤怠管理には欠かせません。これらの項目を正確に記録することで、以下のようなメリットがあります。

  1. 賃金計算の正確性向上
  2. 労務管理の適正化
  3. 従業員の勤務態度の把握
  4. 業務効率の改善

中小企業特有の課題として、少人数体制での急な欠勤への対応があります。これに対しては、以下のような対策が効果的です。

  1. バックアップ体制の構築
  2. 多能工化の推進
  3. 緊急連絡網の整備
  4. テレワークなど柔軟な勤務形態の導入

バックアップ体制の構築

バックアップ体制とは、従業員が急に休んだ際に業務が滞らないよう、代替要員を事前に決めておく仕組みです。中小企業では人員が限られているからこそ、計画的なバックアップ体制が重要です。

具体的な実施方法
  • 業務マッピング: 各従業員の担当業務を洗い出し、誰がどの業務を担当しているかを可視化します。これにより、欠員が生じた際にカバーすべき業務が明確になります。

  • バディシステムの導入: 2人1組のバディを作り、互いの業務を理解し合います。一方が欠勤した場合、もう一方がカバーできる体制を整えます。特に重要な業務や締切の厳しい業務には、必ず複数の担当者を配置します。

  • 業務マニュアルの整備: 各業務の手順を詳細に記したマニュアルを作成し、共有フォルダやクラウド上に保存します。急な代行でも手順書があれば最低限の業務継続が可能になります。

  • 定期的な業務交代: 日常的に業務のローテーションを行い、複数の従業員が様々な業務を経験できるようにします。例えば四半期ごとに一部の業務を交代させるなど、計画的に実施します。

多能工化の推進

多能工化とは、一人の従業員が複数の業務スキルを持つよう育成することです。専門性を持ちつつも、他の業務もこなせる「T型人材」を増やすことで、組織の柔軟性が高まります。

具体的な実施方法
  • スキルマトリクスの作成: 各従業員のスキルレベルを業務ごとに評価し、マトリクス表にまとめます。例えば「◎(一人でできる)」「○(サポートがあればできる)」「△(見学経験あり)」「×(未経験)」などで評価します。これにより、組織全体のスキルの偏りや不足を把握できます。

  • クロストレーニングの実施: 計画的にOJTを実施し、主担当業務以外のスキルも習得させます。例えば、経理担当者に営業事務の基本を教えるなど、関連業務からトレーニングを始めるとスムーズです。

  • ジョブローテーションの制度化: 年に1〜2回、計画的に部署間や業務間の異動を行い、様々な経験を積ませます。特に若手社員には重要な育成手段となります。

緊急連絡網の整備

緊急連絡網とは、急な欠勤や災害時に迅速に情報を共有するための連絡体制です。単なる電話番号リストではなく、状況に応じた対応フローも含めた体系的な仕組みが重要です。

具体的な実施方法
  • 多層的な連絡手段の確保: 電話、メール、ビジネスチャット(Slack、Teams等)、SNS、緊急連絡用アプリなど、複数の連絡手段を用意します。通信障害や災害時も考慮し、代替手段を確保しておきます。

  • 連絡フローの明確化: 誰が・誰に・どのタイミングで・どの手段で連絡するかを明確にします。例えば「欠勤者→直属上司→部門責任者→代行担当者」というフローを決めておくと混乱を防げます。

  • 早朝欠勤時の対応プロトコル: 特に多い早朝の体調不良による欠勤に対して、何時までに・誰に・どの方法で連絡するかを明確にします。例えば「始業2時間前までに上司に電話連絡」などのルールを設けます。

  • 情報共有プラットフォームの活用: クラウド上のカレンダーや勤怠管理システムを活用し、欠勤情報をリアルタイムで共有できる仕組みを構築します。これにより、誰が休んでいるかを全員が把握でき、適切な業務調整が可能になります。

以下は緊急連絡網を整備する際に即時活用できるチェックリストです。コピーしてご活用ください。

緊急連絡網整備チェックリスト
1. 基本設計
2. 多層的な連絡手段
3. 連絡フローの明確化
4. 早朝欠勤時の対応プロトコル
5. 情報共有プラットフォームの活用

テレワークなど柔軟な勤務形態の導入

テレワークや時差出勤などの柔軟な勤務形態を導入することで、体調不良や家庭の事情があっても、完全欠勤せずに業務を継続できる可能性が高まります。

具体的な実施方法
  • テレワーク環境の整備: クラウドサービスやVPNなどを活用し、社外からでも安全に社内システムにアクセスできる環境を整えます。ノートPCやタブレットの貸与、通信費補助なども検討します。

  • ハイブリッドワークの導入: 出社とテレワークを組み合わせるハイブリッドワークを導入します。例えば「週3日出社、2日テレワーク」など、業務特性に応じた柔軟な勤務形態を設計します。軽度の体調不良や家庭の事情がある場合も、テレワークに切り替えることで業務を継続できます。

  • 時差出勤制度の活用: 始業・終業時間を柔軟に設定できる時差出勤制度を導入します。通勤ラッシュを避けられるだけでなく、体調や家庭の事情に合わせた勤務が可能になり、完全欠勤を防止できます。

  • 短時間勤務オプションの設定: フルタイム勤務が難しい日には、短時間勤務を選択できるようにします。例えば「午前のみ勤務」「午後のみ勤務」などのオプションを用意することで、私用や体調に合わせた働き方が可能になります。

これらの対策を効果的に導入するためのステップは以下の通りです。

  1. 現状分析: 現在の欠勤状況や業務の属人化度合いを分析します
  2. 優先順位決定: 自社にとって最も効果的な対策から着手します
  3. パイロット実施: 一部の部署や業務で試験的に導入し、課題を洗い出します
  4. 全社展開: 課題を解決した上で、全社的に展開します
  5. 定期的な見直し: 3ヶ月に一度など定期的に効果を検証し、改善します

いずれの対策も、経営者や管理職が率先して取り組む姿勢を示すことが重要です。トップダウンの方針と現場の実情を踏まえたボトムアップの提案を組み合わせることで、より効果的な対策となります。

 勤怠管理方法の種類と各メリット・デメリット

勤怠管理には様々な方法がありますが、それらのメリット・デメリットにはどのようなものがあるでしょうか。

タイムカードによる管理

タイムカードは、多くの中小企業で採用されている伝統的な勤怠管理方法です。

メリット1. 導入コストが比較的低い

タイムレコーダー本体は5万円程度から購入でき、タイムカードも1枚数十円と安価です。初期投資を抑えたい創業間もない企業や予算に限りがある中小企業にとって導入しやすい選択肢です。リース契約なら月額数千円から始められ、故障時の保証も受けられます。維持費もインクリボンとカードの補充程度で済むため、ランニングコストの面でも優れています。専用システムと比較すると、初期費用は10分の1以下に抑えることができます。

メリット2. 操作が簡単で従業員の教育が容易

カードを差し込むだけという直感的な操作は、年齢や技術レベルを問わず誰でもすぐに習得できます。新入社員への説明も「出勤時と退勤時にカードを通してください」の一言で済み、複雑なマニュアルは不要です。パートタイマーや高齢の従業員が多い職場では、この簡便性が大きなメリットになります。機械の操作ミスによるトラブルも少なく、システムエラーで打刻できないという事態もほぼ発生しません。

メリット3. 物理的な記録が残るため、データの信頼性が高い

印字されたタイムカードは改ざんが困難で、労働基準監督署の調査時にも証拠として提出できる信頼性の高い記録です。システムトラブルでデータが消失する心配もなく、必要な時にすぐに過去の記録を確認できます。従業員も自分の勤務記録を手元で確認でき、給与明細との照合も容易です。紙の記録という原始的な方法だからこそ、誰もが納得できる透明性の高い管理が実現できます。

デメリット1. データの集計に手間がかかる

月末になると、人事担当者は全従業員のタイムカードを回収し、一枚一枚電卓で計算する必要があります。100人規模の企業では、通常勤務時間、残業時間、深夜勤務時間などを項目別に集計するだけで丸2日かかります。さらに有給休暇や欠勤の処理、遅刻・早退の計算なども手作業で行うため、給与計算までの全工程では1週間近くかかることもあります。この間、担当者は他の業務に手が回らなくなる問題も発生します。

デメリット2. 改ざんのリスクがある

同僚に頼んで代理打刻をしてもらう「なりすまし打刻」は、タイムカード管理の宿命的な問題です。打刻後の時刻を手書きで修正することも可能で、不正の温床になりやすい側面があります。管理者の目が届かない早朝や深夜の時間帯では、このような不正が横行しやすく、実際の労働時間と記録にズレが生じる可能性があります。定期的な抜き打ちチェックや防犯カメラの設置など、追加の対策が必要になります。

デメリット3. リアルタイムでの労働時間把握が難しい

タイムカードは月末にならないと集計できないため、月の途中で残業時間を正確に把握することが困難です。このため36協定の上限時間に近づいている従業員への警告が遅れ、知らないうちに法令違反となるリスクがあります。長時間労働による健康被害を未然に防ぐための対策も後手に回りがちです。管理者が日々の労働時間を把握するには、別途エクセルなどで簡易的な記録を付ける必要があり、二重管理の手間が発生します。

 

タイムカード管理 効率化チェックリスト

1. 効率化のポイント

ICカードタイプの導入で、データの電子化を図る

ICカード式タイムレコーダーへの切り替えで打刻データを自動デジタル化。社員証のICカード化で新規配布も不要に。CSV出力により給与計算ソフトとの連携も簡単。初期投資10〜20万円で月末集計が数時間で完了し、大幅な人件費削減を実現。

集計作業の自動化ツールを活用する

OCRソフトや専用集計ソフトで計算ミスを防止。スマホ撮影でデータ化するアプリも登場し、月額数千円から利用可能。印字が薄い場合のエラーはあるものの、作業時間の大幅短縮効果は十分。導入も簡単で即効性のある効率化を実現。

エクセルによる管理

エクセルによる勤怠管理は、中小企業でよく見られる方法です。

メリット1. 初期コストが低い

多くの企業では既にMicrosoft Officeを導入しているため、追加投資なしで勤怠管理を始められます。無料のテンプレートもインターネット上に多数公開されており、自社に合わせてカスタマイズすることも可能です。Googleスプレッドシートなどの無料ツールを使えば、ライセンス費用すらかかりません。小規模企業や個人事業主にとって、この手軽さは大きな魅力です。専用システムの導入に踏み切る前のお試し期間として活用する企業も多いです。

メリット2. カスタマイズが容易

自社独自の就業規則や複雑な勤務体系にも、関数やマクロを使って柔軟に対応できます。変形労働時間制、みなし残業制度、深夜割増率の違いなど、細かな条件設定も自在です。部署ごとに異なる承認フローを組み込んだり、アラート機能を追加したりすることも可能です。エクセルの知識がある従業員がいれば、外部に委託することなく社内で改修でき、変更要望にも素早く対応できます。

メリット3. 基本的なデータ分析が可能

エクセルの集計機能を使えば、月別・部署別・個人別の労働時間分析が簡単に行えます。グラフ機能を活用すれば、残業時間の推移や部署間の業務負荷の偏りなども視覚的に把握できます。ピボットテーブルを使えば多角的な分析も可能で、経営判断の材料として活用できます。過去のデータとの比較も容易で、季節変動や繁忙期の傾向を掴むこともできます。

デメリット1. 入力ミスのリスクが高い

手入力に依存するため、打ち間違いや入力漏れが頻繁に発生します。時刻を「9:00」と入力すべきところを「900」と入力してしまうようなミスは、計算式が正しく機能しない原因となります。コピー&ペーストの際に範囲を間違えて他の従業員のデータを上書きしてしまうトラブルも起きやすいです。このようなミスは給与計算に直接影響するため、二重三重のチェック体制が必要になり、結果として作業効率が悪化することもあります。

デメリット2. データの一元管理が難しい

部署ごとに別々のファイルで管理していると、全社的な集計に膨大な手間がかかります。ファイルのバージョン管理も煩雑で、どれが最新版か分からなくなることもあります。複数人で同時編集すると保存時の競合でデータが失われるリスクもあります。ネットワークドライブで共有していても、誰かがファイルを開いたまま席を離れると他の人が編集できなくなるという問題も発生し、月末の締め作業の大きな障害となることがあります。

デメリット3. セキュリティ面で脆弱

エクセルファイルは簡単にコピーできるため、個人情報の流出リスクが高いです。パスワード保護をかけても解除ツールで簡単に破られる可能性があります。USBメモリなどで持ち出されるリスクもあり、在宅勤務時のセキュリティ管理は特に困難です。誤って全従業員の給与データを含むファイルをメール送信してしまうような事故も起きやすく、一度流出した情報を回収することは不可能です。

エクセル管理 効率化チェックリスト

効率化テクニック

マクロ機能を活用して自動計算を設定

VBAマクロで複雑な勤怠計算を自動化。出勤・退勤時刻から労働時間、残業時間、深夜労働時間、割増賃金まで自動算出。月末締め処理もボタン一つで完了し、作業時間を大幅短縮。ただし作成には専門知識が必要で、作成者退職後のメンテナンスが課題。

データの入力規則を設定し、ミスを防止

セルごとに入力値を制限し、入力ミスを大幅削減。時刻欄は時刻形式のみ、休暇区分はプルダウン選択に。条件付き書式で24時間超勤務などの異常値を赤色表示。初期設定に手間はかかるが、一度設定すれば恒久的に効果を発揮。

ピボットテーブルを使用してデータ分析を行う

蓄積データを多角的に分析。部署別平均残業時間、曜日別出勤率、個人別有給取得率をドラッグ&ドロップで瞬時に集計。グラフ化で経営会議資料にも活用でき、前年同期比較や季節変動分析も容易。具体的数値に基づく議論が可能に。


勤怠管理システムの活用

近年、クラウド型を中心に勤怠管理システムの導入が進んでいます。

メリット①データの自動集計による作業効率の向上

打刻データは瞬時にクラウド上で集計され、複雑な労働時間計算も全て自動で行われます。月末の締め作業は画面上で承認ボタンを押すだけで完了し、これまで数日かかっていた作業が数時間で終わるようになります。給与計算システムとの連携により、勤怠データをそのまま給与計算に活用でき、転記ミスもなくなります。管理者は空いた時間をより戦略的な人事業務に充てることができ、生産性の向上に大きく貢献します。

リアルタイムでの労働時間把握が可能

管理者はパソコンやスマートフォンから、いつでもどこでも全従業員の勤務状況を確認できます。残業時間が月の上限に近づいている従業員には、システムが自動でアラートを送信し、本人と上司に注意を促します。これにより36協定違反や過重労働を未然に防ぐことができます。遅刻や欠勤もリアルタイムで把握できるため、シフト調整や応援要請などの対応も迅速に行えます。

多様な働き方に対応可能

スマートフォンやパソコンから打刻できるため、テレワークや直行直帰、出張先からの勤務報告も簡単に行えます。GPS機能を使った位置情報の記録により、不正な打刻も防げます。フレックスタイム制やシフト制、変形労働時間制など、複雑な勤務体系にも標準機能で対応しており、従業員ごとに異なる就業規則を設定することも可能です。有給休暇の申請や残業申請もシステム上で完結し、ペーパーレス化も実現できます。

データ分析が容易で、経営判断に活用できる

蓄積されたビッグデータを活用し、高度な分析が可能になります。部署間の業務負荷の偏り、繁忙期の予測、離職率と労働時間の相関など、AIを活用した分析機能も提供されています。これらのデータはダッシュボード形式で視覚的に表示され、経営層も直感的に理解できます。労働生産性の指標として売上高と総労働時間の推移を比較することも可能で、業務改善の効果測定にも活用できます。

デメリット①導入コストがかかる

初期費用として、システムの設定費用が10〜50万円程度必要になることが多く、さらに月額利用料も従業員一人あたり200〜500円程度かかります。100人規模の企業では年間で60〜100万円のランニングコストとなり、中小企業にとっては大きな負担です。既存の給与システムとの連携には追加費用が発生することもあります。ただし人事担当者の残業代削減効果を考慮すると、多くの場合2〜3年で投資回収が可能です。

デメリット②従業員の教育が必要

新しいシステムの導入には必ず従業員の抵抗があります。特にITに不慣れな高齢の従業員にとっては、スマートフォンでの打刻操作も難しく感じることがあります。導入時には部署ごとに説明会を開催し、操作マニュアルを配布する必要があります。問い合わせ窓口を設置し、初期の混乱に対応する体制も必要です。システムに慣れるまでの1〜2ヶ月間は、旧システムとの並行運用も検討する必要があります。

デメリット③システムトラブル時の対応が必要

クラウドサービスである以上、インターネット回線の障害やサーバーダウンなど、自社では制御できないトラブルが発生する可能性があります。このような場合の代替手段を事前に準備しておく必要があります。紙の出勤簿を用意しておき、後からシステムに入力する手順を決めておくなどの対策が必要です。サービス提供会社のサポート体制や過去の障害履歴も確認し、信頼できる業者を選定することが大切です。

なお、中小企業向けの手頃なクラウド型勤怠管理システムには、KING OF TIME」(ヒューマンテクノロジーズ)ジンジャー勤怠」(jinjer)CLOUZA」(アマノビジネスソリューションズ)があります。

中小企業に適した勤怠管理方法の選び方

中小企業が自社に適した勤怠管理方法を選ぶ際は、現状の課題と将来のビジョンを明確にすることが重要です。ここでは、選定時に考慮すべき5つの要素と、それぞれの検討ポイントを詳しく解説します。

勤怠管理方法選定の5つの重要要素

検討要素 確認すべきポイント 影響する選択
企業規模 ・現在の従業員数と3年後の想定人数
・拠点数と今後の展開計画
・管理部門の人員体制
・10人未満ならエクセルでも対応可能
・30人を超えるとシステム化が必須
・複数拠点なら一元管理できるクラウド型
業種特性 ・シフト制か固定時間制か
・現場作業の有無
・外出・出張の頻度
・製造業は工数管理連携が重要
・サービス業は柔軟なシフト管理
・営業職は直行直帰対応が必須
従業員の働き方 ・正社員とパート・アルバイトの比率
・テレワーク実施状況
・フレックスタイム制の有無
・雇用形態が多様なら複雑な設定が可能なシステム
・在宅勤務ありならPC・スマホ打刻対応
・柔軟な勤務制度には高機能システムが必要
予算 ・初期投資可能額
・月額ランニングコストの上限
・投資回収期間の目安
・タイムカード:初期5-20万円、月額数千円
・エクセル:ほぼ無料だが人件費増
・クラウド:初期10-50万円、月額200-500円/人
将来計画 ・3-5年後の事業規模
・新規事業や業態変更の予定
・グループ会社との統合可能性
・拡張性のあるシステムを選択
・API連携が豊富なサービス
・マルチテナント対応の有無を確認

企業規模別の最適な勤怠管理方法

10人未満の企業:シンプルさと低コストを重視

創業間もない企業や小規模事業者では、初期投資を抑えながら基本的な勤怠管理ができることが重要です。エクセルでの管理から始め、関数やマクロを活用して徐々に効率化を図るのが現実的です。ただし、5人を超えたあたりから集計作業の負担が増えるため、無料プランのあるクラウドサービス(例:ハーモス勤怠の無料プラン)の活用も検討しましょう。

10-50人の企業:効率化と法令順守のバランス

この規模になると、労働基準法の遵守や36協定の管理が複雑になります。中小企業向けのクラウド型勤怠管理システムが最適で、初期費用を抑えながら必要十分な機能を利用できます。特に「KING OF TIME」は月額300円/人で多彩な打刻方法に対応し、「CLOUZA」は月額200円/人というコストパフォーマンスの高さが魅力です。導入時は全社一斉ではなく、まず管理部門や1つの部署でトライアルを行い、運用ノウハウを蓄積してから展開するのがおすすめです。

 

50人以上の企業:統合的な人事労務管理へ

従業員が50人を超えると、勤怠管理だけでなく人事労務全般の効率化が必要になります。「ジンジャー勤怠」のような統合型システムなら、勤怠管理から給与計算、人事情報管理まで一元化でき、データの二重入力や転記ミスを防げます。また、この規模では労務監査への対応も重要になるため、詳細なログ管理や承認フローの設定が可能な高機能システムを選択すべきです。

業種特性に応じた機能選定のポイント

製造業における勤怠管理の特徴

製造業では、日勤・夜勤の交代制シフトや、製造ラインごとの工数管理との連携が重要になります。単なる出退勤記録だけでなく、どの工程にどれだけの時間を費やしたかを把握することで、原価計算の精度向上にもつながります。また、安全管理の観点から、長時間労働や連続勤務の防止機能も必須です。システム選定時は、生産管理システムとのデータ連携が可能かどうかを必ず確認しましょう。

サービス業が重視すべき機能

小売業や飲食業などのサービス業では、パート・アルバイトの比率が高く、複雑なシフト管理が必要です。繁忙期と閑散期の差が大きいため、柔軟なシフト作成機能と、リアルタイムでの人員配置調整機能が重要になります。また、複数店舗を運営している場合は、店舗間のヘルプ勤務にも対応できるシステムを選びましょう。スマートフォンでのシフト確認・変更申請機能があれば、従業員の満足度向上にもつながります。

IT業界に必要な先進的機能

IT企業では、裁量労働制やフレックスタイム制、完全リモートワークなど、多様な働き方への対応が求められます。物理的な出社を前提としない勤怠管理が必要で、PCのログイン・ログアウト時刻との連携や、プロジェクト単位での工数管理機能が重要です。また、グローバル展開している企業では、タイムゾーンの異なる拠点での勤務にも対応できる必要があります。

段階的導入による成功への道筋

段階的導入による成功への道筋

現状の課題整理と要件定義

1-2ヶ月

現在の勤怠管理における課題を洗い出し、優先順位をつけます。「月末の集計に3日かかる」「36協定違反のリスクがある」など、具体的な問題を数値化。将来的に実現したい理想の姿も描き、必要な機能要件を整理。現場の声を十分に聞くことで、導入後の抵抗感を軽減します。

1

システム選定とトライアル導入

2-3ヶ月

要件に基づいて3-5社程度のシステムを比較検討し、デモや無料トライアルを活用して使用感を確認。実際に使う従業員にも触ってもらい、操作性を評価。最も評価の高かったシステムを、まず1つの部署や店舗で試験導入し、運用上の課題を洗い出します。

2

全社展開と定着化

3-6ヶ月

トライアルでの課題を解決した後、段階的に全社展開。部署ごとに説明会を開催し、操作マニュアルを配布。各部署にキーパーソンを設定してサポート体制を構築。導入後3ヶ月間は旧システムと並行運用し、データの整合性を確認しながら移行を完了させます。

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これらの要素に基づいて、最適な選択肢を検討しましょう。


多様な働き方に対応した勤怠管理

テレワークやフレックスタイム制など、働き方改革の推進によって進んだ働き方の多様化に対応した勤怠管理に迫られている中小企業も多いのではないでしょうか。テレワーク時の労働時間把握には、タイムカードなど従来型の勤怠管理は難しいため、クラウド型勤怠管理システムを活用するとともに業務開始・終了時のメール報告などで労働時間の状況を把握し、従業員の健康管理に努めましょう。

 勤怠データの活用と分析

勤怠管理で得られたデータは単に従業員の健康管理と法令順守のためだけに用いられるものではありません。経営判断や業務改善にも活用することができるのです。ではどのように活用できるのでしょうか。

データ活用の具体例

勤怠管理で得られたデータは、以下の事柄を把握・改善する上で活用することができるでしょう。

  • 部署ごとの残業傾向分析
  • 有給休暇取得率の向上策立案
  • 業務の繁閑期の把握と人員配置の最適化

勤怠データ活用による経営改善例

📊 部署ごとの残業傾向分析

営業部
開発部
総務部
経理部
製造部

開発部の残業時間が月平均45時間と突出。 プロジェクト管理の見直しや人員増強により、3ヶ月で30時間以下に改善可能。

🏖️ 有給休暇取得率の向上策立案

70%
取得済
未取得

現在の取得率70%を85%まで向上させるため、 計画年休制度の導入や、連続休暇取得推奨キャンペーンを実施。

📈 繁閑期の把握と人員配置最適化

1月 3月 5月 7月 9月 11月

6-7月が繁忙期と判明。 事前に臨時スタッフを確保し、閑散期には研修や有給取得を推奨して業務を平準化。

 

中小企業でも実践できるデータ分析手法には以下の3点があります。

  1. エクセルのピボットテーブル機能を利用
  2. 無料のビジネスインテリジェンスツール(例:Looker Studio)の利用
  3. クラウド型勤怠管理システムに付属の分析機能の利用

また、Tableau Public、Power BI 、RStudio などビジネスインテリジェンスツールのプラットフォームにあるツールを利用することで、中小企業でも高度なデータ分析が可能になります。

さらに、データ分析の結果、以下のメリットが得られるでしょう。

  1. 労働時間の最適化
  2. 業務プロセスの改善
  3. 従業員の健康管理
  4. コスト削減

例えば、特定の部署で恒常的に残業が多いことが分かれば、業務の再分配や人員増強を検討できます。また、有給休暇取得率が低い従業員がいれば、個別にフォローアップすることで、従業員の健康維持やモチベーション向上につながります。

勤怠管理業務の効率化テクニック

中小企業の人事担当者が実践できる、勤怠管理業務の効率化テクニックをいくつか紹介します。参考にしてみてください。

日々の勤怠確認

○    勤怠管理システムのアラート機能を活用
○    従業員への自己申告促進(特に変更がある場合のみ報告)
○    管理職による一次チェックの実施

月次集計作業

○    自動集計機能の活用
○    締め日を統一し、作業の一括化
○    エクセルのマクロ機能を活用した自動計算

勤怠関連の問い合わせ対応

○    FAQ作成と社内共有
○    チャットボットの導入
○    セルフサービス型の情報閲覧システムの導入

勤怠管理の効率化がもたらす効果としては、人事担当者の業務負担軽減やヒューマンエラーの減少、リアルタイムでの労働時間把握、従業員満足度の向上などが挙げられるでしょう。例えば、勤怠管理業務の効率化により、人事担当者が戦略的な人材育成や組織開発に時間を割くことができるようになります。また、正確な勤怠データに基づく公平な評価や報酬制度の構築も可能になります。

橋本朋美
勤怠管理は単なる出退勤の記録ではなく、法令順守や従業員の健康管理、労働生産性の向上に直結する重要な業務です。特に中小企業では、限られた人員で業務をこなすため、効率的な管理が求められます。最近の法改正により、建設業や自動車運転業務の時間外労働の上限規制が適用され、より精緻な管理が必要になっています。クラウド型勤怠管理システムの活用や、データ分析による業務改善を進めることで、労使トラブルを防ぎ、従業員の働きやすい環境を整えることが可能です。自社に合った管理方法を見極め、適切な施策を講じることが、企業の持続的成長にもつながります。
橋本 朋美
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント

勤怠管理における注意すべき法令

最後に、勤怠管理の注意点について法観点から説明します。

勤怠管理はすべての企業に課された法律上の義務です。特に注意すべき主な法令は以下の通りです。

勤怠管理における主要法令と注意点 1. 労働基準法 労働時間の上限規制(1日8時間、週40時間) 36協定の締結と順守 割増賃金の適正な計算と支払い 従業員の基本的な労働条件を定めた法律で、違反すると罰則の対象となる場合があります。 2. 労働安全衛生法 労働時間の状況の把握義務 長時間労働者への医師による面接指導 従業員の健康管理と過重労働防止を目的とし、月80時間超の残業者には医師の面接指導が必須です。 3. 働き方改革関連法 年次有給休暇の取得義務化(年5日) 同一労働同一賃金への対応 2019年施行の新法令で、従業員のワークライフバランス向上と 雇用形態による不合理な待遇差の解消を目指します。

なお、労働基準法違反の場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。また、企業の社会的信用の失墜や従業員のモチベーション低下など、間接的な損失も大きいため、中小企業は自社の状況に応じた最適な勤怠管理方法を選択し、導入・運用していきましょう。適切な勤怠管理は、法令順守だけでなく、従業員の健康管理や生産性向上、ひいては企業の持続的な成長につながる重要な要素なのです。

まとめ

本記事では、中小企業における勤怠管理の基礎から効率化まで解説しました。勤怠管理は単なる記録業務ではなく、法令順守、従業員の健康管理、生産性向上の要となります。

適切な勤怠管理には、労働時間の正確な記録や時間外労働の把握といった基本要素が不可欠です。企業規模や業種に合った管理方法を選び、働き方改革関連法に確実に対応することが重要です。

クラウド型システムの活用や既存ツールの工夫により、限られたリソースでも効率的な管理が可能になります。また、蓄積したデータを分析して業務改善に活かし、多様な働き方にも柔軟に対応することで、従業員の満足度向上と企業の持続的成長を実現できるでしょう。

橋本朋美
監修者プロフィール
橋本 朋美(はしもと ともみ)
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
監修者からのメッセージ
勤怠管理は、企業の生産性向上やコンプライアンス遵守に欠かせない重要な業務です。特に中小企業においては、限られたリソースの中で効率的な管理を実現することが求められます。本記事では、勤怠管理の基本から最新の法改正対応、効率化のポイントまで詳しく解説しています。法令遵守を徹底しながら、従業員の働きやすい環境を整えることが、企業の持続的な成長につながります。本記事が、貴社の勤怠管理の見直しや改善の一助となれば幸いです。

 

 

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hashimoto
監修者
2009年お茶の水女子大学大学院卒業後、株式会社HALZ入社。2020年より代表取締役社長就任。大手アパレル業界、IT業界、医療法人など、100名から3000名規模の様々な業界・規模の人事制度設計、業務改善コンサルティング等を担当。人事基幹システム会社への常駐を経て、人事システム導入支援、システムリプレイスコンサルティングも得意とする。HR基幹システムに精通したITに強い人事実務家集団を強みにお客様の業務効率化に貢献するサービスをご提供。