営業活動の成果を高めるAIとは? 活用事例から学ぶ、AIができること、できないこと

公開日:2021-07-08 更新日:2024-02-26 by SEデザイン編集部

目次

56357270_l「人工知能」(AI)の活用があらゆる分野に拡大する中、今後に大きな期待がかけられているのが営業領域での応用です。商品やサービスの販売を最前線で支える営業活動は、これまでその多くが人の力によって行われてきましたが、この状況はAIの登場によって大きく変わりつつあります。営業に関連する仕事の多くがAIに取って代わられるとさえ言われる現在、AIと営業担当者はどのように役割を分担していけばいいのでしょうか。この記事ではAIを営業に活用してみたいと考えている方のために、その方法や活用事例をご紹介します。

AIをどのように活用できるか

まず、AIを活用できる営業関連の業務をいくつか挙げてみましょう。AIは営業活動のすべてのプロセスを代行してくれるわけではありませんが、これまでの手作業の業務を効率化してくれるアシスタントとして大きな可能性を秘めています。

見込み客の洗い出しやメール作成などの事務作業

営業対象となる見込み客の洗い出しや営業メールの作成などの作業は、AIが得意とする分野です。過去の資料請求データなどを元に見込み客となりそうな企業を探し出して、営業リストを自動的に作成することができます。また、見込み客に対する効果的な営業メールの文面作成も、AIが代行してくれます。

見積書の作成なども、AIが活躍している分野です。過去に作成された見積書を読み込んで学習することで、短時間で見積書を作成するツールも提供されています。

一般的に営業活動の約7割の時間は、事務作業に費やされていると言われています。こうした作業をAIが代行してくれることにより、営業のコア業務である顧客ニーズの掘り起こしや顧客とのコミュニケーションに、より多くの時間を使えるようになります。

チャットボットを使った業務支援や顧客対応

AIが搭載されたチャットボットも営業活動に役立つアイテムです。チャットボットは、テキストや音声でユーザーからの問い合わせに自動的に対応したり、会話したりするコミュニケーションツールとして、その応用範囲が拡がっています。

例えば、顧客からのメールや電話での問い合わせには、できるだけ早く回答する必要があります。この回答が遅延すると、新たな商談の機会を逃してしまうリスクになります。24時間365日の対応が可能なチャットボットを使えば、顧客を待たせることはありません。

また、チャットボットは社内の業務支援ツールとしても有効です。訪問予定の確認、業務報告や日報の入力などを効率的に行うことが可能です。秘書にサポートしてもらうような感覚で、営業担当者の日常業務を楽にしてくれます。

営業活動の評価やアドバイス

現状の営業活動の分析による、より成果の上がる方法の提案もAIの強みが活かせる領域です。AIを搭載した最新の営業支援システム(SFA)は、顧客への訪問頻度やメール内容などを分析して営業担当者の活動を評価し、より高い実績に繋げるためのアドバイスを提供してくれます。

例えば、成約見込みの低い顧客対応に多くの時間を使っている営業担当者に対して、別の顧客開拓への注力を促す、あるいは過去の事例から成約に至る成功モデルを導き出して、その行動をレコメンドするといったサポートがAIによって可能となります。

具体的な活用事例

以下では、営業領域におけるAIの具体的な活用事例をいくつか挙げながら、その内容や特徴について見ていくことにします。

大塚商会:AIのサポートで受注率が5%向上

image1-Jun-28-2021-12-57-31-16-PM(画像出典:大塚商会 Webサイト

ソフトウェア大手の株式会社大塚商会は、株式会社日立製作所が提供する「Hitachi AI Technology/H(AT/H)」を採用し、171万社の顧客データを活用した「行先ナビゲート」機能や「商材の推奨」機能を組み込んで営業活動に活かしています。

このシステムでは、営業現場のデータや分析結果から「どの顧客を訪問すればよいか」「商談でどのような商材の提案を行うと効果的か」を、一人ひとりの営業担当者の役割に応じて提案してくれます。このシステムは、スマートフォンの専用アプリからもアクセスでき、社外にいても自由に利用することができます。

これにより、ある営業部門では受注率が平均で5%向上するなど、AIを利用したセールステックを導入することで、生産性の向上と営業力の底上げを実現しています。

ヒノキヤグループ:チャットボットで営業担当者の疑問を解消

image2-Jun-28-2021-12-57-31-80-PM(画像出典:ヒノキヤグループ Webサイト)

動画リンク:https://youtu.be/UH_PIqooGvM

注文住宅を中心とした不動産事業を展開する株式会社ヒノキヤグループでは、以前からLINE WORKSによって顧客とのコミュニケーション強化を図ってきましたが、LINE WORKSと連携できるAIチャットボット「ひのくまコンシェルジュ」を導入することで、営業担当者の知識の拡充や疑問に答えられる体制を作っています。

不動産営業には、商品知識の他にも法律や契約などにわたる幅広い知識が必要です。何かわからないことがあるたびに社内の専門家に質問するのは非効率で、またマニュアルを整備しても知りたい情報にすぐにたどり着けないことが多くあります。

そこで、ソフトバンク株式会社が提供するIBMのWatsonを活用したAIチャットボット「EXA AI SmartQA」をベースに開発したのが、営業活動に関する質問に会話形式で回答する「ひのくまコンシェルジュ」です。

「ひのくまコンシェルジュ」には、接客中の応酬話法、建築関連の用語、自社商品の知識、契約時に必要な法律・制度などに関する約1,400件のQ&Aが登録されており、営業担当者が接客中の不明点を確認したり、商品の説明方法を確認したりといった目的で日々活用されています。

日本生命:AIを活用して保険営業力の底上げを実現

image3-Jun-28-2021-12-57-31-66-PM(画像出典:日本生命Webサイト

これまでの生命保険の営業では、主に営業担当者の個人的スキルや人海戦術で実績を作ってきましたが、現在ではAIを使って営業力を底上げする取り組みが行われるようになっています。

日本生命保険相互会社では、2018年から米IBMのAI「ワトソン」を導入し、年齢や性別、家族構成、契約状況や営業担当者とのやりとりなどのデータを分析し、保険の加入や見直しが必要な顧客を割り出したり、顧客情報や契約内容をもとに、最適な保険プランを提案したりできるようになりました。

またAI活用の一環として、2020年からは「ロープレAI」と呼ぶ新機能を導入しました。これは画像や音声認識の技術を活用したもので、営業担当者がスマートフォンで営業トークを録音すると、AIが自動的に採点して改善点を提案してくれます。営業担当者がコンサルティング力をさらに高め、スキルアップするためにAIが役立っている好例です。

AIができないこと

このようにAIはさまざまな営業活動で役立てられていますが、その一方でAIでは実現できないこともあります。以下では、人間である営業担当者がこうした点をどのようにして補完するかについて解説します。

ヒアリング力、コミュニケーション力

まず、相手の立場を推し量りながら丁寧に話を聞き、的確に回答する能力です。AIは、まだ本当の意味での人とのコミュニケーション能力を有するまでには至っていません。

営業といえば「よく話す人」「弁が立つ人」と思われがちですが、実際は必ずしもそうではありません。営業担当者の一方的な話を聞かされても疲れるだけです。単純な商品説明であれば、Webなどで十分な情報が提供されている現在にあってはなおさらでしょう。

むしろ、相手の言葉にしっかりと耳を傾け、口数が少なくても親身になって対応することこそが本当のコミュニケーションであり、そこはAIよりも人間の役割と言えます。

課題分析・解決能力

顧客に納得して商品を買ってもらうためには、強引な「売り込み」は禁物です。顧客の課題をしっかりと聞き取り、的確な解決方法を提案しなければいけません。AIはそのために必要なデータなどは提供してくれますが、社内環境や人間関係などの背景を含めた解決はできません。そこにはやはり、人の力が必要です。

ただし、説得力のある提案をするためには、分析データの読み方も含めて数字に強くなっておく必要があります。本格的なエンジニアの知識を身につける必要はありませんが、AIのサポートを受けながらデータを使いこなし、そこから解決策を導き出す深い洞察力を高めることは可能です。

時間管理・工夫能力

AIは論理的に仕事量を計算したり、スケジュールを割り当てたりすることは得意です。しかし、それを実行するのは人間です。せっかく効率的なスケジュールが組まれても、実際に遂行することができなければ意味がありません。

例えば、すきま時間に細かい作業をしたり、学びのために時間を使ったりすることで、人は仕事を短時間で効率よく終わらせたり、スキルアップすることができます。ただし、いかにAIが最善の時間管理を提案しても実行するのは人間であって、AIがそれを代替することはできません。

まとめ

以上のようなことから、現時点においてAIは、営業活動の以下のような仕事をサポートすることができます。

  • メールや書類作成などの事務作業自動化
  • チャットボットなどによる膨大なデータへの簡単なアクセス
  • データ分析からの改善提案

一方で、以下のようなことについては、人間が果たしていくべき役割です。

  • 人間的なコミュニケーション
  • より複雑な課題分析・解決
  • 時間の使い方を工夫し、実行につなげる

今後、営業担当者はこうしたAIの特性をよく理解した上で、AIができない部分の能力を磨くことに注力する必要があるでしょう。そのためには、AIを十分に活用しながらも、AIに振り回されるのではなく、人間ならではの感性を働かせて営業活動することが大切だといえます。

関連記事

コンテンツマーケティングで、
ビジネスの効果を最大化しませんか?

もっと詳しく知りたい方

ご質問・ご相談したい方