本記事では、AWSパートナーを検討されている方に向けて、「AWSパートナーの選び方とおすすめ企業一覧」でご紹介した企業の実際の取り組みを、個別にご紹介していきます。今回は、ソフトバンク株式会社についてお伝えします。
ソフトバンク株式会社は、通信事業で培ったネットワーク技術を軸に、法人向けのクラウド活用支援を加速させています。AWSにおいては、ネットワーク接続、セキュリティ、運用支援を含めたワンストップの体制を構築し、エンタープライズ企業や自治体など、複雑な要件を持つお客さまから高い評価を得ています。
日本で2社しか取得していない「AWSネットワークコンピテンシー」や、自社で提供する閉域接続サービスなど、ネットワークに強みを持つクラウドパートナーとして、他社とは一線を画す存在です。
本記事では、そんなソフトバンクのAWSに関する取り組みや支援体制、実際の導入事例を通じて、「ネットワークに強いAWSパートナー」としての魅力を深掘りしていきます。
※こちらの記事は、2025年5月に実施した、ソフトバンク株式会社のご担当者様へのヒアリングをもとに作成しております。
ソフトバンクの法人ビジネスとAWS支援
ソフトバンク株式会社の法人事業では通信キャリアとしての基盤に加え、クラウド、AI、セキュリティ、デジタルマーケティングなど、企業のDXを多方面から支える体制が整備されています。
出典:ソフトバンク資料
法人領域では主に「コミュニケーション」「オートメーション」「マーケティング」「セキュリティ」という4つの分野に注力しており、クラウドサービスはこれらを支えるプラットフォームと位置付けられています。モバイルや固定回線といったネットワークにとどまらず、クラウド上での業務基盤の整備までを含めて、企業の情報インフラ全体を支える存在となっています。
AWSのほか、Microsoft Azure、Google Cloudなども含めたマルチクラウド支援を行っており、お客さまに最適な選択肢を提案しています。
“ネットワークに強い”ことがソフトバンクの差別化ポイント
AWSサービスパートナーとしてのソフトバンクの最大の特長は「ネットワークに圧倒的な強みを持っている」点であり、それを裏付けられるのが「AWSネットワークコンピテンシー」の取得です。これは、AWSパートナーの中でも特にネットワーク領域に精通し、高い実績と技術力を有する企業に与えられる認定で、日本国内ではソフトバンクを含め2社のみが保有しているという希少な資格です。
この認定の背景には、通信キャリアとして長年培ってきたネットワークインフラの構築・運用ノウハウがあります。クラウド移行においては、セキュリティ性の高い閉域接続や、オンプレミス環境とのスムーズな連携が不可欠となる中で、ソフトバンクはAWS環境と自社ネットワークを組み合わせたソリューションを提供しています。
具体的なサービス例としては、AWSと閉域ネットワークでセキュアに接続できる「ダイレクトアクセス for AWS」や、複数クラウドを一つのポートで接続できる「OnePort」などがあります。これらはAWSの標準サービスにネットワークレイヤーでの付加価値を加えることで、企業のセキュアで安定したクラウド活用を支えています。
また、企業によっては「AWSを使いたいが、ネットワーク接続がボトルネックになっている」というケースもあります。そうした場面で、ネットワークを前提とした設計から支援できるソフトバンクは非常に頼りにされており、「物理ネットワークの構築まで含めて任せられるAWSパートナー」として、多くの大手企業や自治体に選ばれています。
ソフトバンクの代表的なAWS関連サービス
ソフトバンクが提供するAWS関連サービスは、ネットワーク、コスト最適化、運用管理といったクラウド活用に不可欠な領域を幅広くカバーしています。特に自社開発のネットワーク接続サービスや、AIを活用したコスト管理ツールは、他社にはない特長を備えており、さまざまな業種・規模の企業に導入されています。以下では、その代表的な4つのサービスを紹介します。
ダイレクトアクセス for AWS:セキュアな閉域接続
「ダイレクトアクセス for AWS」は、仮想プライベートクラウド Amazon VPC との高品質な冗長閉域ネットワーク接続を手軽に利用できるサービスです。AWS Direct Connectをベースに、ソフトバンクが提供する閉域ネットワークサービス「SmartVPN」を活用することで、インターネットを経由せず、よりセキュアで安定した通信環境を実現しています。
物理回線の敷設から接続設定、運用管理までを一貫して提供しています。万一どちらかの経路に障害が発生してももう一方で通信を継続できる異ルート・収容分散の冗長構成が標準で備わっており、高い可用性とセキュリティを実現しています。さらに東京・大阪ロケーションでのDR構成も可能です。
出典:ソフトバンク
一般的なインターネット経由の接続と比較して、通信の安定性とセキュリティのレベルが格段に高く、金融や公共など高機密データを扱う業種でも安心して利用できる設計となっています。
OnePort:マルチクラウド接続をシンプルに
「OnePort」は、AWSをはじめとする複数のパブリッククラウドやオンプレミス環境を、1つの閉域ネットワークで簡単・安全につなぐことができる接続サービスです。通常であればクラウドごとに個別の回線やネットワーク機器を用意する必要がありますが、OnePortならひとつの物理ポートから各クラウドに接続できるため、ネットワーク構成が格段にシンプルになります。
出典:ソフトバンク
また、ネットワーク設定や通信の状態を一元的に管理できるため、クラウドやオンプレミス環境などの異なる環境をまたいだ複雑な運用が楽になり、管理工数や運用コストの削減にも貢献します。インフラ管理の負担を軽減しながら、スピーディーなクラウド活用を実現できる点が多くの企業に支持されています。
さらに、全ての通信は閉域接続で行われるため、インターネットを介さずに高セキュリティな通信が可能。外部からの不正アクセスや情報漏えいのリスクを抑えたい企業にとっても安心です。
Spot by NetApp:AIによるコスト最適化
「Spot by NetApp」は、AIを活用してクラウド料金を最適化するサービスです。コスト削減の余地も含めてクラウド利用状況を可視化し、割引プランをAIが自動で管理します。分析から最適化の実行まで対応可能です。
大きな特長は、成果報酬型である点です。基本料金不要で、削減できた金額に応じて発生するため、導入企業にとってはリスクが極めて低く、気軽にはじめられるソリューションとなっています。
出典:ソフトバンク資料
MSPサービス:運用もまるごと支援
ソフトバンクのMSP(Managed Service Provider)サービスは、AWS環境の導入から運用・保守・監視までワンストップでサポートする包括的なサービスです。コンサルティングから設計・構築、そして監視・障害対応まで一気通貫で対応可能な体制を整えており、「知見がない」「リソースが足りない」などのお悩みを持つ企業にとって心強い支援となります。
出典:ソフトバンク
また、近年ではガバメントクラウドの環境構築・運用管理補助にも対応しており、自治体向けにもMSPサービスを提供しています。LGWAN(総合行政ネットワーク)やOnePortなどのガバメントクラウド接続サービスとの接続を支援します。
出典:ソフトバンク
エンタープライズ・公共案件でソフトバンクが選ばれる理由
ソフトバンクのAWS関連サービスは、特に大規模で高度なセキュリティ要件を持つエンタープライズ企業や公共団体から選ばれています。その理由は、ネットワーク・セキュリティ・クラウド・運用支援を一社完結で提供できる総合力にあります。ここでは、実際にAWS移行を成功させた2つの企業事例を通じて、その強みを紹介します。
SBIホールディングスの事例:ネットワークとセキュリティを一式で構築
SBIホールディングスでは、各種システムのAWS移行に際し、セキュリティと柔軟性の両立という難題に直面していました。特に課題となったのは、複数グループ会社のネットワーク接続やセキュリティポリシーを、AWS上でどう共通化・統制するかという点です。
ソフトバンクは、オンプレミス時代から続く信頼関係を背景に、AWSネットワーク構成の最適化や共通インターネットゲートウェイ(IGW)の構築を支援。さらに、仮想アプライアンスを用いたセキュリティ対策、監査証跡の整備、サイバー攻撃対策までを一括で支えました。
出典:ソフトバンク資料
この結果、SBIグループ各種システムのAWS移行が円滑に進行し、セキュリティレベルを落とさずに、各社ビジネスの柔軟性も担保するIT基盤の構築に成功しました。高度なセキュリティと運用管理の両立という、金融機関ならではの要件にも対応したことで、「難易度の高い要求にも真摯かつ迅速に応えてくれた」と評価されています。
所沢市の事例:ガバメントクラウド移行を支援
埼玉県所沢市では、総務省が推進するガバメントクラウドへの移行にいち早く取り組みました。しかし、クラウド環境への理解不足や複数ベンダーとの調整といった課題に直面していました。
ソフトバンクが選ばれた背景には、自治体DXに関する全国規模の支援実績と、通信キャリアとしてのネットワーク構築力、さらにLGWAN接続環境に精通した運用ノウハウがありました。
実際のプロジェクトでは、LGWANを経由したクラウド接続に対応するネットワーク構成の設計・構築から、ガバメントクラウド環境の運用管理までを一貫して支援。特に、運用管理補助を提供することで、所沢市の負担を大幅に軽減しました。
出典:ソフトバンク
この取り組みにより、所沢市はガバメントクラウドへのスムーズな移行を実現し、内部業務の効率化と市民サービスの向上を目指す基盤を整えることができました。
これらの事例に共通するのは、ソフトバンクがネットワーク+クラウド+セキュリティを統合的に設計・提供できること、そして導入から運用までを一貫して支援する体制があることです。
特にエンタープライズや自治体のようにステークホルダーが多い環境では、 “全部任せられる”パートナーであるソフトバンクの存在は大きく、多くの企業・団体にとって選定理由となっています。
ソフトバンクの技術支援体制と人材育成
ソフトバンクでは、クラウド活用を支える人材育成にも注力しており、AWS資格保有者は500名以上にのぼります。社内では「ソフトバンクユニバーシティ」という全社員向けの研修制度を設けており、マネジメントや思考力、テクノロジー、統計など、約80のプログラムが用意されています。AWS資格取得やAI資格取得に向けたプログラムなどもあり、IT領域の知識を全社的に底上げする仕組みが、現場の支援力につながっています。
こうした人材基盤の強化と合わせて、ソフトバンクでは今後、生成AIやソブリンクラウド、次世代のデータ連携といった先進領域への取り組みも加速させていく方針です。クラウドインフラにとどまらず、社会課題やビジネス変革を支える領域にも踏み込むことで、顧客の価値創出に貢献できるパートナーを目指しています。
まとめ
AWSの活用が進む中で、単なるクラウド導入だけでなく、ネットワークやセキュリティ、運用までを含めた包括的な支援を求める企業や自治体は確実に増えています。そうしたニーズに対して、ソフトバンクは通信キャリアとしてのネットワーク技術と、クラウドパートナーとしての実績を融合させた独自の価値を提供しています。
「ダイレクトアクセス for AWS」や「OnePort」に代表されるネットワークサービス、SpotやMSPサービスなどの運用支援、そして大規模・公共領域における数多くの実績。これら全てが、“ネットワークに強いAWSパートナー”としてのソフトバンクの信頼を支えています。
今後も、生成AIやソブリンクラウド、データ連携といった先端領域にも取り組みながら、企業や社会のDXを技術面から支える存在として進化を続けていきます。ネットワークからクラウドまでを一気通貫で任せられるパートナーを探している企業にとって、ソフトバンクはその有力な選択肢となるでしょう。
会社概要
会社名 | ソフトバンク株式会社 |
設立年月日 | 1986年(昭和61年)12月9日 |
代表者 | 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 榛葉 淳 |
資本金 | 228,162百万円(2025年3月31日現在) |
従業員数 | 単体:18,895人(2025年3月31日現在) 連結:55,070人(2025年3月31日現在) |
事業内容 | 移動通信サービスの提供、携帯端末の販売、固定通信サービスの提供、インターネット接続サービスの提供 |