安価で高性能なカメラやスマートフォンの普及によって、多くの企業がメディア(オウンドメディアや採用サイト、社内報など)で、自社によるインタビュー撮影を実施するケースが増加しています。
そうした流れのなかで、プロのカメラマンでなくても、上手にインタビューの写真撮影を行う方法を知りたいと考えているWeb担当者や広報・Webマーケティング担当者も多くいるのではないでしょうか。そこで本記事では、インタビュー時の写真の撮り方について、導入事例制作においてこれまで2,500件以上の取材を行ってきたSEデザインが詳しく解説します。
インタビュー写真は記事の印象を左右する
予算的にプロのフォトグラファーにオファーできる余裕がなく、内製で写真撮影する場合であっても、一定のクオリティーを確保することは非常に重要です。写真の撮影方法を説明する前に、なぜハイクオリティーな写真を追求する必要があるのかについて、解説します。
クリエイティブのビジュアル要素としての重要性
インタビュー写真は、クリエイティブの第一印象を左右するビジュアル要素として、重要性が高いものです。たとえば、雑誌に掲載される場合のインタビュー写真が魅力的なものであれば、読者の興味を引きやすくなるといえるでしょう。
コンテンツの読者に与える印象にも大きな影響があるため、その点をしっかりと意識して撮影に臨みましょう。
記事へのエンゲージメントを高める効果
インタビュー写真のクオリティーは、記事内のメッセージを効果的に伝えるメリットも期待できます。高品質であるほど視覚的な魅力が高まるため、クオリティーの高い写真は商品・サービス、企業のブランディングにも大きく貢献するでしょう。
写真撮影を自社内で行う場合であっても、なるべくプロの写真家のクオリティーを目指し、適切な機材の選定や環境整備といった撮影のポイントを押さえて一定の水準を保つことが大切です。
インタビュー写真撮影までの事前準備
インタビューの写真撮影は、撮影当日までに取材先に対して、「撮影意図や目的をできる限り理解してもらう」ことがとても重要なポイントです。撮影場所のセッティングや撮影時間などは、取材先でしか決定できないケースが多いため、撮影当日までに決定できるようにしておきます。
コンテンツのターゲットを明確化する
事前準備として、記事のテーマや伝えたいメッセージとの整合性など、インタビュー写真撮影の「目的を明確にし、取材さきにも伝えておく」ことが重要です。同じメディアでも、BtoB向けとBtoC向けとでは、コンテンツのターゲットが異なることから、トーンやマナーも異なります。
また、性別や年齢層でも、写真の方向性が変える必要があるため、メディアで設定しているペルソナイメージを改めて明確化しておきましょう。
取材形式を確認する
取材対象は一人ではなく、話し合い(対談)・鼎談・座談といった複数人に取材するスタイルのインタビューもあります。従って、取材対象者の人数と誰が主体で話すのかを事前に確認して準備を進めておきましょう。
仮に、取材する人数が多い場合は、全員を画角に収める必要があります。そのため、撮影場所に関しては、広さやレイアウトを事前に確認しておくことも大切です。
クリエイティブの方向性や雰囲気を取材先と共有する
インタビュー撮影では、事前にクリエイティブの方向性や雰囲気を取材先と共有しておくことが非常に大切です。企画書などを通じて、インタビューの目的とどのような媒体で使用するのかを明確に取材先とすり合わせておきましょう。
たとえば、目的だけでもブランディングと製品紹介、個人のストーリーでは方向性が大きくことなります。そのため、写真で伝えたいイメージなどもすり合わせておくことが大切です。
必要最低限の機材を用意する
インタビュー撮影に必要な機材についても確認しておきましょう。以下が最低限用意しておきたい機材です。
カメラ本体
デジタル一眼レフやミラーレス一眼カメラなどを用意する場合は、目安として1,000万の画素数でRAW撮影が可能であるものが理想的です。画素数が高いほど、精細な表現ができることに加え、1,000万程度の画素数があれば印刷しても十分に質を担保できます。
スマートフォンを利用する場合は、1,200万画素(12MP)以上の解像度で撮影可能なカメラ機能を目安にするとよいでしょう。
レンズ
標準ズームレンズに加えて、単焦点レンズや広角レンズがあると撮影の幅が広がります。50mmや80mmのポートレンズを用意できれば、明るさを調整しやすく、被写体をより引き立てることが可能です。
その他の機材
三脚があると安定した構図を確保できます。また、リングライトやレフ板などのライティング機材があると、よりプロのクオリティーに近づきます。ライティング機材が難しい場合は、外付けストロボを導入してもよいかもしれません。
撮影場所や時間帯を調整する
企業インタビューであれば、相手先企業を訪問する形になるため、光加減や環境も含めて、どの部屋を抑えてもらうかも事前に確認しておきたいポイントです。また、自社内で取材・撮影する場合は、会議室の背景や光加減などを事前に確認しておきましょう。
リアルな仕事現場でインタビューする場合以外は、明るくて雑然としていない部屋を推奨します。そのため会議室や応接室などを押さえてもらうようにしましょう。
また、外で撮影を行う場合は、撮影当日の季節や天候なども考慮に入れ、事前に確認しておく必要があります。加えて、関係者全員が当日の撮影の流れを把握できるように、スケジュールの香盤表を作成・共有しておくと万全です。
インタビュー写真の撮影時に確認すること
自社によるインタビュー写真撮影では、ヘアメイクやスタイリストなどを用意できる予算は確保しづらいでしょう。そういった場合は、インタビュアーやカメラ担当者が被写体の衣装なども含めて撮影のセッティングを行う必要があります。
ここでは、撮影前に確認するポイントをみていきましょう。
撮影対象者の身だしなみ
撮影前に撮影対象者の身だしなみをチェックしておきましょう。シワのない服装や清潔感のある髪型が写真全体の質を高めることになります。事前に、取材対象者にどういった服装をしてほしいのかを明確に伝えましょう。
また、被写体が同性である場合は、相手に了解を得たうえで「失礼します」と声がけをして、衣装の乱れや髪型を直すといったヘアメイク・スタイリストのような対応の実施も選択肢の1つです。そういった対応は被写体の方も気持ちよく撮影に臨むことができるでしょう。
加えて、ビジュアルにこだわりたい場合は、事前に服装や小道具の指定などを伝えておくことも大切です。
撮影背景とライティング
事前準備では、背景を確認しておくことも大切です。基本的には、無地やシンプルな壁面の部屋を選択しましょう。ただし、取材対象者に関連する職場風景を背景にするほうが最適な場合もあります。たとえば、大学教授の取材であれば、本棚の前などがイメージに合っているといったケースです。
いずれのケースでも、背景が目立ちすぎないように配慮することは共通する大切なポイントになります。
取材時の座り位置
対談、鼎談、座談といったように複数名を対象とした取材では、撮影前に適切な座り位置を決めることが重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 明るい自然光が入る室内や、被写体の雰囲気に合った背景を選ぶ
- 背景が窓側かドア側どちらが適切かを考慮し、ノイズの少ない構図を確認する
- カメラの画角や照明を取材担当者とカメラ担当者が確認しながら座り位置を決定する
- 天候やライティングを考慮し、自然光と人工光のどちらを採用するかを事前に検討
- 対談・鼎談・座談などの場合は、被写体同士のバランスを考慮して席を決める
- 自社内取材では、事前に席順を決め、当日に指示できるようにしておく。客先では「どこに座ればよいか」と尋ねられることが多いため、カメラ担当者と相談してスムーズに対応する
また、上座下座にこだわらず、背景がノイズにならないようにカメラ担当者と確認しましょう。先に「撮影優先として座り位置を決定する」という点を取材相手に伝えておくことも大切です。座り位置を意識することで、バランスの取れたクオリティーの高い写真を撮影できます。
小物の配置
オフィスで取材する場合は、デスク周りや背景の整理整頓を行ったうえで撮影に臨むのも重要なポイントです。被写体に実際に座ってもらった状態で、机の上のパソコンやノート、飲み物といった小物が映り込んでいないか確認し、不要なものは整理することを心掛けます。
また、社員証に関しては、首から下げている人がいたら外してもらいましょう。その一方で、取材対象者のイメージに合った小物を効果的に配置・撮影し、イメージ写真として活用するといった手法もあることも覚えておきましょう。
カメラ機能の設定
カメラ機能の設定として最低限知っておきたいポイントも押さえておきましょう。
明るさ(露出)
カメラの自動露出機能を使うことで、被写体が明るく映るように調整できます。写真が暗すぎる場合は「ISO感度」を上げます。明るすぎる場合は「シャッタースピード」を速くします。設定が難しく感じる場合は、自動モードを選択しておきましょう。
フォーカス
自動フォーカス機能をONにして、被写体にしっかり焦点が合うように設定しておきましょう。フォーカスの種類には、中央・マルチフォーカス・ゾーンといった違いもあるため、事前に機能の切り替え方法を確認することも大切です。
ホワイトバランス
自然な色合いで撮影するために、自動ホワイトバランス設定もONにしておきましょう。
スマートフォンの場合は、ポートレートモード、プロモードといったモードに切り替えることで、人物撮影に適した写真が撮影可能になります。
インタビュー写真を撮影する際のポイント
ここからは、インタビュー写真を実際に撮影する時のポイントを項目別に分けて紹介します。写真撮影に慣れていない場合であっても、クオリティーの高い写真撮影が可能になるため、ポイントを意識してみましょう。
さまざまな構図と画角(アングル)を押さえる
インタビュー写真を撮影するうえで、重要なポイントの一つに画角(アングル)の設定があります。以下のようなポイントがあります。
- 部屋の広さや人数に応じて、できるだけ多様な画角で撮影する
- テキスト配置を意識し、目線の先に余白を作る。特に、紙媒体やPDFの場合はノド(紙が折って綴じられている部分)に向かって顔が向くように注意し、右振り・左振り・正面と複数のパターンを用意しておく。パターンが多いほど編集時にも応用が効く
- 画角が未定の場合は広めに撮影し、テンプレートがある場合は、指定の比率や向き(6:4の縦だけでなく、横位置の場合もある)に合わせる
上記のようなポイントを押さえておくと、後から画角の調整などで困ることが少なくなります。
リラックスした雰囲気を作る
インタビュー撮影では、リラックスした雰囲気づくりが大切です。当日が初対面というケースも少なくないので、名刺などを交換したら、すぐに取材をはじめるのではなく、雑談を交えながら緊張をほぐすといったアイスブレイクの段階を設けることも重要になります。
リラックスした雰囲気づくりができれば、和やかな雰囲気で撮影が進められ、魅力的な写真を多く撮影できるようになるでしょう。
魅力的な表情を引き出す
ビジネスシーンにおけるデスク越しのインタビューでは、取材対象者のポーズに大きな変化は起こりません。そのため、表情の変化がより重要です。表情のバリエーションをいかに引き出すかは、インタビュアーの力量にも左右されます。しかし、カメラ担当者も良い表情を見逃さないように意識することが重要なポイントです。
写真を撮られるのが苦手という方も多い点もふまえて、取材対象者に喜んでもらえるためにはできる限り魅力的な表情を捉える心がけが大切です。取材対象者がリラックスでる環境を整え、笑顔や感情を引き出すように意識しましょう。
手の動きによって印象づける
顔の表情と同様に重要なのは、取材対象者の手の動きです。撮影のなかで印象的な手の動作を自然に撮影できることがベストです。しかし、時には取材対象者にお願いして、手の動きに変化をつけたバリエーションを何パターンか撮影しておくことも大切です。定番のポーズとして、手を前に差し出すポーズや陶芸の「ろくろ」を回すようなポーズなどがあります。
オフショットも撮影しておく
ビジネス現場での取材では、取材されることに慣れていない方も多いといえます。そのため、写真をセレクトする段階で硬い表情ばかりになっているケースもありえるでしょう。そうしたリスクを回避するためにも、余裕があれば取材後のオフショットも撮影しておくことが大切です。オフショットを活用することで、リラックスした表情の魅力的な写真を撮影できます。
集合写真を撮影する場合は役職や身長を考慮する
オフィスを訪問する取材では、最後に集合写真を撮影するケースもあります。こうした集合写真を撮影する場合は、役職やメンバーの身長差なども考慮に入れて配列を決めることが重要です。
基本は役職の高い方を中心に撮影するパターンが多いといえます。しかし、役職の高い方が背の高い場合などは全体のシルエットがデコボコになってしまうため、しっかりと理由を説明したうえで、端に移動してもらえるか相談してみましょう。女性を中心にして撮影を望まれるケースもあるので、その場合は柔軟に対応することも重要です。
インタビュー写真をセレクトする際のポイント
インタビュー写真は、対面での写真撮影と同じくらいに写真のセレクトに膨大な作業コストやセンスを要します。セレクト時にいくつか押さえておきたいポイントについてみていきましょう。
引き締まった良い表情を選ぶ
企業インタビューなどの場合は、メディアのトーンやマナーに合ったテイストの写真をセレクトすることが重要です。最初に選ぶ際のポイントとして、険しい表情ではなく引き締まった表情のものを選ぶと引き締まったビジュアルになります。
被写体へ配慮する
写真撮影を嫌がっている様子が見受けられる場合は、被写体の方への配慮も必要です。たとえば、あざやシミがあるといったことを気にされている様子が窺えるのであれば、目立たない角度の写真を撮影・セレクトするといった気配りも大切です。
また、笑いすぎるとシワやほうれい線が目立ちますので、特に女性の場合は丁度よい笑顔でシワが目立たない写真を撮影・セレクトすることも重要な配慮の一つです。ただし、こうした点はその人のコンプレックスの部分であることも多いため、露骨な気配りは逆に失礼になる場合もあることを留意しておきましょう。
写真映りを気にされる方には、事前に数枚に絞ったうえで、本人に選んでもらうといった対応も検討しましょう。
よくある失敗例とその対策
実際のインタビュー記事を作成していく過程で、撮影し忘れた内容や撮影当日は良い写真だと判断したものが実際は使えないと判明するケースもあります。そうしたリスクを避けるために、よくある失敗例とその対策をみていきましょう。
同じような写真しか撮れていない
よくある失敗として、撮影後に同じような写真ばかりを撮っていた、ピントがあっていないという事態となるケースも予想されます。こうしたリスクを避けるため、良い写真が撮れていると思った時は、同じ構図やポーズで複数枚撮影をしておくと安心です。ただし、撮影枚数を増やしすぎると、セレクト作業も増えるため、必要な範囲で効率的に撮影することを心がけるのが重要です。
また、鼎談、座談など複数人に取材する場合は、口数が少ない登壇者の写真が不足しがちです。撮影後に全員の良い写真が揃っているかをカメラ担当者に確認し、不足している場合は取材を受けているイメージの写真を別で撮影して補っておくようにしましょう。
表情が硬い・目をつぶってしまっている
表情が硬い、目をつぶってしまうといった失敗は多く発生します。この場合も、同じ構図やポーズで複数枚撮影しておくと、撮り直しを防止可能です。また、集合写真の場合は、全員の良い表情を撮影するのはより困難になるため、時にはバースト撮影も活用してみましょう。
重要なのは、撮影中にカメラ担当者に、良い表情が撮れているかを確認することです。取材の妨げにならない範囲でカメラ担当者とコミュニケーションを取ることで、理想の写真イメージが撮りやすくなります。
画角が狭すぎる
撮影した写真の画角が狭すぎると、メディアに掲載する際に最適なサイズに収まらないこともあるため、画角は意識しましょう。たとえば、写真の上に文字をレイアウトする場合などは、人物を画角いっぱいに収めるのではなく、背景も含めた余白が必要になります。
そのため、被写体にズームインした内容だけでなく、ある程度の背景も含めてズームアウトした画像も撮影しておくことも重要なポイントです。
背景や小物が雑然としている
被写体の表情・ポーズ・画角などがすべて問題なかった場合でも、背景や小物が雑然としているといった失敗例もあります。最近は、Photoshopなどの画像編集ソフトで余計なものを消すこともできるようになってきているものの、後の作業コストも考えると撮影時に余計なものは除いておくことが大切です。
プロフィール画像・アイキャッチ画像の撮り忘れ
写真の撮り忘れで多い項目として、プロフィール用の写真やサムネイルなどで使うアイキャッチ画像が挙げられます。一般的にはインタビュー後に撮影することが多いため、事前にチェックリストなどを作成し、撮り忘れがないように心掛けましょう。
プロフィールの写真は、会社の企業ロゴが入った受付・入口などで撮影し、視点はバストアップ・カメラ目線の写真を撮影しておくとベストです。
インタビュー写真撮影に向けて万全の準備で臨もう
事前の準備や対策がしっかりしていれば、撮影に対する不安を払拭できます。本記事で紹介したインタビュー写真撮影のポイントを、ぜひ実践してみてください。
また、約40年にわたりコンテンツマーケティングを支援するSEデザインでは、これまで2,500件以上の取材を行ってきました。特にIT業界における導入事例の制作実績が豊富で、インタビューや取材に関するノウハウと知見を数多く蓄積しています。取材記事制作をお考えの場合はぜひお問い合わせください。