Webサービスや商品の売り上げを伸ばすには、新規顧客や既存顧客について分析し、適切なマーケティング施策を打ち出す必要があります。そこで役立つのが「コホート分析」と呼ばれる統計手法です。
本記事では、コホート分析の概要から活用方法、Googleアナリティクス(GA4)を使った分析方法までを分かりやすく解説します。
コホート分析とは
「コホート分析」とは、一定の条件で集団を作成し、期間ごとに継続数やコンバージョン数といった数値の推移を分析する手法です。そもそも統計分野における「コホート」とは、同じ性質を持つ集団を意味します。
コホート分析では「特定のページを遷移したユーザー」「商品Aを購入したユーザー」など、細かな条件を指定して分析します。また、1日ごと、1週間ごと、1ヶ月ごとなど、任意の期間を設定して指標の推移を把握するのが特徴です。
グループや期間別の継続数、コンバージョン数などの変化を見ることで、サービスや施策の改善に役立てられます。
コホート分析を行う目的
近年は、SaaSをはじめとしたサブスクリプションモデルや、ECサイトでの定期販売などが活発になったことにより、コホート分析を行う企業が増えてきました。具体的には、以下の目的で実施するケースが多くあります。
- 維持率(リテンションレート)の向上
- ユニークユーザー数の向上
それぞれ詳しく解説していきます。
維持率(リテンションレート)の向上
「維持率」とは、一定期間中に新規顧客をどれだけ維持できたかを示す指標です。具体的には、以下の計算式で求めます。
- 維持率 = 一定期間中の継続数 ÷ 一定期間中の新規契約数 ×100
特に、リピーターの訪問・購入が重要な会員制WebサイトやECサイト、SaaS、スマホアプリなどでは、顧客がどれだけサービスを連続利用したのかを重視する傾向にあります。
コホート分析ができるツールを用いれば、任意の期間を設定し、セグメントや施策ごとに新規契約者数や継続数の推移を把握することが可能です。
ユニークユーザー数の向上
SNSやニュースメディアなど、ユニークユーザー数を重視する傾向のあるサービスでは、コホート分析によって利用状況の経過を分析することがあります。そもそも「ユニークユーザー」とは、一定期間中にWebサイトに訪問した人数の合計です。
コホート分析を行うことで、定期・不定期でWebサイトやサービスを利用するユーザーの数や割合を知ることができます。適切にグループ分けを行えば、どのようなコンテンツやキャンペーンがユーザーの興味を惹きつけるのかを分析することが可能です。
コホート分析の活用方法
コホート分析で得たデータは、実際のマーケティング現場においてどのように活用すべきでしょうか?以下では、代表的な活用方法を紹介します。
リテンション施策の投下タイミングを検討する
コホート分析では、1日や1週間ごとなど、期間別にユーザーのエンゲージメント推移を確認します。どのタイミングでユーザーが解約や離脱をしやすいのかを把握することで、リテンション施策の適切な投下タイミングを見極められるのです。
たとえば、ECサイトで商品を定期販売する企業がコホート分析を行ったとします。分析の結果、初回購入から3ヶ月後にリピート購入の数が激減する傾向を掴めたとしましょう。その場合、2ヶ月目の終わりに魅力的なキャンペーンを行いメルマガを打つ、などの施策を検討できます。
施策の成功パターンを分析する
コホート分析では、キャンペーンごとや購入商品別などのセグメント別に分析が行えます。どの施策に費用を投じるべきかの判断に活かせるでしょう。
たとえば、BtoB向け業務システムを提供する企業が、初月無料のキャンペーン施策を実施したとします。コホート分析を行った結果、初月から有料だった顧客よりも、1ヶ月間無料ですべての機能を試した顧客のほうが、継続率が高かったとしましょう。
この結果から、初月無料キャンペーンの施策効果が高いと判断できます。 逆に、特定の施策を打ってもそれほど継続数が伸びない場合は、打ち切って別の施策の検討につなげられます。
新規顧客の獲得目標を計画する
商品・サービスやキャンペーン施策がどれだけ魅力的だったとしても、解約するユーザーは一定数いるものです。コホート分析を行えば、顧客の契約数・継続数を把握し、新規顧客の獲得に最低限必要な目標数を定められます。
たとえば、コホート分析の結果、1年間で新規契約が100社、解約が10社だと分かったとします。翌年に同じ売り上げを維持するには、最低でも10社以上の顧客獲得が必要だと判断できるでしょう。
また、解約したユーザーの属性や行動パターンを分析することで、サービス内容やリテンション施策の改善にもつなげられます。
Googleアナリティクス(GA4)を使ったコホート分析の方法
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コホート分析が行える代表的なツールに「Google アナリティクス(GA4)」があります。Webサイトやアプリを所有していて、Googleアカウントを持っていれば、誰でも無料で利用可能です。
ここでは、GA4を使ったコホート分析の手順・やり方を初心者向けに紹介します。
1.コホートデータ探索のテンプレートへアクセスする
最初に、GA4へログインしてホーム画面へ遷移します。
左サイドバーの「探索」を選択し、右上の「テンプレートギャラリー」をクリックしましょう。「コホートデータ探索」を選択すれば、コホート分析のデータセットが完了します。
2.期間などの構成を設定する
続いて、条件や粒度、計算方法などを設定し、データ構成を定義します。設定は、左の「タブの設定」バーから行えます。
以下、設定項目の概要と詳細です。
設定項目 |
詳細 |
例 |
コホートへの登録条件 |
コホートとして登録するユーザーの条件 |
・はじめてWebサイトへ訪問したユーザー ・Webサイト内でコンバージョンを発生させたユーザー |
リピートの条件 |
リピートとしてカウントするユーザーの条件 |
・再訪したユーザー(すべてのイベント) ・資料をダウンロードしたユーザー |
コホートの粒度 |
グラフ(列)での表示間隔 |
・毎日 ・毎週 ・毎月 |
計算方法 |
リピートユーザーの集計方法 |
・標準:リピート条件を満たしたユーザーを各期間内で個別にカウント ・連続:期間別に連続してリピート条件を満たしている場合にのみカウント ・累計:集計期間の間、1回でもリピート条件を満たしていればほかの週でもカウント |
3.変数を設定する
続いて、セグメント、ディメンション、値の3つの変数を設定します。設定は、「タブの設定」バー、「変数」バーから行えます。具体的に設定すべき項目の詳細は、以下のとおりです。
変数名 |
設定項目名 |
概要 |
例 |
セグメント |
セグメントの比較 |
・計測するデータのフィルタ条件 |
・商品をはじめて購入したユーザー ・Aページを経由したセッションなど |
ディメンション |
内訳 |
・各列内の数値を構成する内訳 |
・男女ごとの数 ・デバイスごとの数 |
値 |
値 |
・レポートに表示する指標の種類 |
・アクティブユーザー数 ・イベント数 |
たとえば、セグメントの比較で「モバイルトラフィック」を選択し、かつコホートの登録条件に「page_view」を設定したとします。すると、モバイルからのアクセスに限定したページビューをコホートとして計測できます。
さらに、ディメンションとして「男女別」、値に「アクティブユーザー」を設定したとします。すると、モバイルトラフィックのうち、ページビューを発生させたアクティブユーザー数をカウントし、期間内におけるアクティブユーザー数の男女別の内訳を表示します。
コホート分析が行えるその他のツール
コホート分析が行えるのは、Googleアナリティクス(GA4)だけではありません。以下では、コホート分析に役立つその他のツールを紹介します。
エクセルやスプレッドシート
エクセルやスプレッドシートに搭載するピボットテーブルの機能を活用すれば、コホート分析が行えます。ピボットテーブルとは、大量のデータを集計したり分析したりできる機能を持つ表のことです。
エクセルにおいては、まずコホート分析の元データを用意・整理し、「挿入」タブ→「ピボットテーブル」から作成できます。
ただし、GA4にあるようなテンプレートの活用はできないため、表の設計を自ら行わなければなりません。また、アクセス解析ツールのデータを都度取り込まなければならず、手間がかかる点に注意しましょう。
有料のアクセス解析ツール
グロースハックのツールやカスタマーサクセスツールなどに、コホート分析機能が備わっていることがあります。たとえばグロースハックのツールのなかには、Webやアプリだけでなく、店舗のオフラインデータもコホート情報として取り込めるものがあるのです。
また、カスタマーサクセスツールに付属するコホート分析機能を使えば、電話サポートや新機能リリースなど、Webやアプリ以外のコホート情報を容易に取り込んで分析できます。
より高度な分析をしたい場合や、特定の目的に応じて分析したいときは、有料のアクセス解析ツールの利用を検討しましょう。
まとめ:コホート分析を行ってユーザーの傾向をつかもう
コホート分析は、ユーザーの維持率や利用率を高める施策を検討するうえで欠かせない手法です。施策別の効果の度合いや、顧客グループ別の反応といった細かなデータを収集し、マーケティングを高度化・個別最適化できます。
コホート分析を行い、自社が本当に注力すべき顧客や施策を見つけ出しましょう。データの収集方法や分析方法、活用方法がわからない方は、専門家へ相談することをおすすめします。
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