デジタルツールの発展やユーザーニーズの多様化を受け、データを起点としたマーケティング手法の実施を検討している企業は、ますます増えているでしょう。しかし、 自社にデータマーケティングの知見が不足している場合、「そもそも、データをどう活用すればいいのかがわからない」というケースも珍しくありません。
そのような課題をお持ちの方に向けて、本稿ではデータマーケティングの基本事項を解説します。データマーケティングの実行方法や成功のポイントについても紹介しますので、ぜひお役立てください。
データマーケティングとは?
「データマーケティング」とは、あらゆる接点で自社のサービスを利用するユーザーなどの情報データを分析して、マーケティング活動に活かしていく手法です。
データマーケティングで活用するべきデータには、「属性データ」「行動データ」など、さまざまな種類があります。
昨今は市場の変化が激しく、将来予測が難しい「VUCA」と呼ばれる時代です。自社の存続性を維持するためには、「データ」を起点とした正確かつ効率的なマーケティング手法へのアップデートが求められているのです。
「データドリブン」とは?
データマーケティングは「データドリブンマーケティング」と表現されることもあります。
データドリブンは直訳すると「データ駆動」「データに基づいた」という意味です。マーケティングの文脈では「主観的な情報に頼るのではなく、客観的な事実ベースで意思決定を行っていく考え方」といえるでしょう。
つまり、この考え方が反映された活動がデータマーケティングであり、「データを原動力とし、データが主導して展開されるマーケティング手法」と定義できます。
コトラーが提唱する「マーケティング5.0」を実行する5つの手法のひとつとされており、「あらゆる決定がデータに基づいて行わなければならない」ということです。
デジタルマーケティングとの違い
データマーケティングは「デジタルマーケティング」と混同されるケースもあります。違いは「アナログ(オフライン)経由のデータを活用するかどうか」です。
データマーケティングの場合、データの収集チャネルとして紙媒体のアンケートなども含まれます。さらに、データマーケティングではチラシ配布などのオフライン施策も実施される点で、デジタルマーケティングとは大きく異なっています。
なお、デジタルマーケティングについては、以下記事でも解説しています。
デジタルマーケティングとは?目的や手法の種類をわかりやすく解説
データマーケティングを実施するメリット
データマーケティングを実施するメリットは、以下のとおりです。
- 効率的なマーケティング施策を実施できる
- CX(顧客体験)の向上につながる
- 顧客データの社内共有が可能になる
次項より、それぞれ解説します。
効率的なマーケティング施策を実施できる
データマーケティングを実施すれば「顧客ごとにパーソナライズされた提案」「最適なプロモーションスケジュールの立案」につながり、効率的に自社の商品・サービスを展開できます。
顧客のデータを精微に分析することで、その背景にあるニーズや行動パターンを想定できるようになります。マーケティング活動における業務や費用を最適化できれば、自社リソースをより高い価値の創出に充てられるでしょう。
CX(顧客体験)の向上につながる
データマーケティングはCX(カスタマーエクスペリエンス)、つまり顧客体験価値を高めることにつながります。データを起点にしたマーケティングでは、顧客ごとのニーズを可視化し、パーソナライズされたアプローチが行えるようになることが理由です。
「顧客が求めていること」を起点にすれば、商品やサービスに対する満足度だけでなく、実店舗における接客品質のアップも図れるでしょう。
顧客データの社内共有が可能になる
データマーケティングでは、営業担当者が抱える顧客情報など、社内で一部の担当者のみが保有している情報を、全社的に共有することも可能です。
社内に散らばったあらゆるデータを一元化し、可視化すれば、社内で顧客のニーズや行動履歴を共有しやすくなります。その結果として「あの顧客情報はこの担当者しか知らない」という属人化した状況を払拭できるでしょう。
データマーケティングの実行ステップ
データマーケティングは、次の3ステップで進めることになります。
- データ収集
- データ分析と仮説設計
- 仮説を基にしたマーケティング施策の実行
以下より、個別にみていきましょう。
Step1. データ収集
はじめに顧客データの収集を行う必要があります。集めるデータの一例を挙げると、以下の項目が該当します。
- 属性データ(ユーザーの性別・年齢・職業など)
- 行動データ(購買履歴や来店履歴など)
- アクセスログデータ
- 広告データ
上記データの収集チャネルとしては「オウンドメディア」「メルマガ」「デジタル広告」などのオンライン経由のものに加え、「イベントでの名刺交換」「QRコードつきのアナログ広告」など、オフライン由来のものも考えられます。
ただし、データ収集を行うためには、データマーケティングの「目的の明確化」も必要です。「認知拡大」「新規リードの獲得」「既存リードのLTV向上」など、目的によって実施する施策は異なるため、事前に明確化しましょう。
顧客に関するデータは膨大であるため、すべてのデータを収集・蓄積しようとすると、多くの工数が発生してしまうため注意が必要です。まずは設定した目的に応じたデータのみを収集するのが望ましいでしょう。
Step2. データ分析と仮説設計
次は、分析結果から自社の課題を洗い出すデータ分析を行いましょう。この際、なるべく主観的な情報が混ざらないように、前述したデータドリブンで進めることが推奨されます。
さらに、高度なデータ分析には、以下のような分析方法を活用するため、データサイエンティストやデータアナリストなどの専門人材が必要です。
ABC分析 |
在庫商品の金額や売上などの重要指標を定め、商品を累積構成比順にA・B・Cの3グループに分類し管理する方法 |
テキストマイニング |
大量のテキストデータから、有益な情報を取り出す手法 |
クラスター分析 |
クラスター分析とは、異なるものが混ざり合っている集団の中から互いに似たものを集めて集落(クラスター)を作り、対象を分類するという方法 |
データ分析では「データをグラフや表形式で可視化する」「統計モデルの作成」などで、より活用しやすいようにデータを整えることも有効です。
この段階では「現状のどこに課題があるのか」を把握することが目的ですので、得られたデータを基にして「顧客は何を求めているのか」についての仮説設計までセットで行いましょう。
Step3. 仮説を基にしたマーケティング施策の実行
データ分析と仮説設計が完了した後、仮説を基に具体的なマーケティング施策を実施します。
具体的には、「広告出稿」「Ebook・ホワイトペーパー制作」などの仮説検証に最適なマーケティング施策を選択することで、ユーザーニーズの解像度が上がり、より精度の高い仮説検証につながります。
ただし、データマーケティングは施策の成果測定もデータで行うため、マーケティング施策全体の「大きな目標(KGI)」だけでなく、小さな目標(KPI)も設定しておく必要があります。
そのため、施策を「実行しただけ」ではなく、実施後も効果検証を行い、施策の評価・改善のPDCAサイクルを回していきましょう。
データマーケティングの成功ポイント
データマーケティングで重要になるポイントとしては、以下のとおりです。
- データ収集のルール作り
- データ活用のための体制構築
次項より、それぞれについて解説します。
データ収集のルール作り
データマーケティングでは、「どんなデータが重要になるのか」を定義することが重要です。定義化のポイントとして、営業・マーケティング間で必要な情報の共通認識を持ち、それをデータセットレベルに落としていくように意識しましょう。
「MAはマーケティング」「SFAは営業」といったように、システムごとで担当部門が異なるケースも多々あります。データが収集される担当部門も考慮しつつ「どんなデータを収集するのか」を定義し、「誰が、何を、どのように」入力するかを定めたマニュアル・運用ルールを策定する必要があります。
データ活用のための体制構築
データを加工・統合してもうまく活用できず悩む企業は少なくないでしょう。そこで有効なのが、部門を跨いだデータ活用体制の構築です。
例えば、ツール間で連携してもデータセットが異なっていると、同じ顧客データでもデータ連携が上手くいかないため、データを統合・整理するための仕組みを整えなければなりません。
ツールの種類が増えるほど、ツール間の連携作業が必要になり、活用できる人が限られるため、業務の属人化につながる可能性があります。したがって、データ抽出・活用の際は、部門内外に協力を仰ぎ、全社的に取り組むことが重要です。
部門間で連携をとってデータ活用を行い、購買パターンや顧客セグメントなどを効率的に実施することで、自社のリードスコアリングやマーケティング施策の策定につなげられるでしょう。
データマーケティングで施策の効率化を図ろう
顧客情報の取得経路がデジタルシフトを果たした現代においては、データマーケティングに取り組むことで、自社のマーケティング活動の効率化を実現しつつ、さらなる成果アップに繋げられます。
ただし、データを正確に活用していく上では、専門的な知識やノウハウに加え、部門間の連携も必要です。自社でナレッジが不足している場合は外部専門家にも相談しつつ、データを用いた自社のマーケティング戦略を確立させていきましょう。
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