熱量あるコンテンツが差を生む。「事業理解×顧客理解」で導くBtoB戦略―富家翔平氏インタビュー#2

更新日:2025-05-15 公開日:2025-05-15 by SEデザイン編集部

目次

interview-sf_02企業の成長を支えるマーケティングでは、「正しい戦略」と「適切な打ち手」を見極めることが不可欠です。しかし、膨大なデータや手法に翻弄され、どこから着手すべきか頭を悩ませている企業も多いのではないでしょうか。

こうした課題を解決するために、マーケティングの本質を実践的に解説しているのが、当社のグループ会社である翔泳社から出版された、富家翔平氏の著書『最高の打ち手が見つかるマーケティング実践ガイド』です。

MarkeDriveでは、3回にわたり本書の主要テーマである「マーケティングの全体像」「コンテンツ戦略」「マネジメント」について、具体的な事例を交えながら解説します。

第1回では、BtoBマーケティングの全体像を整理し、効果的な打ち手を考えるための視点を紹介しました。

第2回となる今回は、施策の核となる「コンテンツ戦略の立案と制作」について深掘りします。BtoBマーケティングでは、顧客の課題を的確に捉えた「価値のあるコンテンツ」を設計し、ターゲットに最適な形で届けることが不可欠です。

成果を最大化するための実践的なアプローチを、具体例を交えて解説します。

 

“熱を帯びたコンテンツ”を生む、事業理解と顧客理解の視点

――マーケティング戦略を行ううえで、富家様が重要視されている点は何でしょうか?

富家翔平氏(以下、富家氏)
良いコンテンツを作ろうと思うと、「事業理解と顧客理解」の2つがなければ、絶対に良いものは作れません。

まず「事業理解」では、自社の事業が何を大切にし、どのような価値を提供しているかを深く理解する必要があります。もし一般的なマーケティング施策を実行するだけでよいなら、社内にマーケターを置く意味はありませんからね。

逆に言えば、インハウスでマーケターを抱える理由は、事業への深い理解に基づき、マーケティング戦略を自社に合わせて個別化するためだと考えています。

――たしかに、どの企業でも同じ戦略を取れば成功するわけではないですもんね。では、顧客理解が大切だという点についてもお聞かせください。

富家氏:
顧客理解が重要なのは、コンテンツに熱が帯びるからだと思います。

顧客の課題や状況を自分ごととして捉えることで、発信する言葉の具体性と解像度が高まります。これこそが最大の差別化ポイントであり、「どんな景色を見て言葉を紡いでいるか」によってコンテンツの説得力も変わってくるんです。

たとえば、自分の「推し」について語るときは「どの配信のどの場面が最高だったか」まで熱量高く語れますよね。自分の見ている景色やリアルな感情があるからこそ、言葉に説得力や熱量が生まれます。

BtoBマーケティングでも同様に、顧客の業界や業務課題を深く理解していれば、熱量の高いコンテンツが作れるはずです。それが結果的に強力な差別化要素となり、施策の成果につながっていくのです。

――たしかに同じ情報発信でも、熱を帯びたコンテンツかどうか、という点で成果は大きく変わりそうですね。改めてお伺いしますが、BtoBマーケティングにおけるコンテンツの役割について、どのように考えていらっしゃいますか? 

富家氏:
BtoBマーケティングにおいて、コンテンツは非常に重要です。

その役割は、

  • ブランドやサービス認知の向上
  • 顧客との接点や信頼などの関係性構築
  • 商談機会の創出のきっかけづくり

など多岐にわたります。

しかし、実際にはその重要性が十分に理解されていても、「とりあえず作る」レベルで平面的に扱われてしまうケースも少なくありません。

たとえば、商談獲得を目的としていながら、大型カンファレンスを開催し、期待していた成果が出なかったという話はよく聞きます。これは、カンファレンスが「商談創出」ではなく「ポジティブな接点創出」に適した施策であるためです。自分たちの事業に直接的に関係するセッションばかりでもないなかで、いきなり商談機会につなげようとしても狙った成果は得にくいです。かといって、商談機会を狙いすぎたカンファレンスに人は集まりません。

――なるほど。では、コンテンツで成果を出すためにはどのような点を意識すればよいのでしょうか?

マーケティング施策におけるコンテンツは「目的」「役割」「フェーズ」の3つを意識して選択する必要があります。

  • 目的:何を達成したいのか
  • 役割:そのコンテンツが担う機能は何か
  • フェーズ:顧客の検討段階に対してどの位置にあるのか

これらが戦略的に連動していなければ、いくら良い施策でも成果にはつながりません。たとえば、商談を増やしたいなら、スモールミートアップやパーソナライズされたデモ商談など、目的に合った企画が必要です。

特にBtoBマーケティングでは、「やるかやらないか」の意思決定は簡単です。しかし、「やること」のなかに「やった方がいいこと」が山ほどあるため、何を優先すべきかの見極めが難しいんです。
その課題を解決するために、コンテンツ生成フレームを設計しました。

戦略と施策の一貫性を生む「コンテンツ生成フレーム」

――では、そのコンテンツ生成フレームについて教えてください。

富家氏:
コンテンツ生成フレームは、企画の難易度を下げ、目的から外れたコンテンツを無駄に作らないためのフレームワークです。他社の事例を真似するだけでは、企画の中身が伴わなかったり、目的からずれてしまったりします。

コンテンツ生成フレームの特徴は、「伝えるためのハードルを下げて、目的に合ったコンテンツを企画できる」という点です。

企画を考えるときには、

  • どの軸・目的で実施するのか
  • イベントや施策の形式は何か

について、確認しながら進めていくイメージです。

あらかじめ目的と企画の大枠を示すことで、中身がブレにくくなります。また、コミュニケーションツールとしても活用でき、周囲との合意形成が取りやすくなるという効果もあります。

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――コンテンツオペレーションやネタの集め方などは富家様の実体験に基づくものでしょうか?

富家氏:
そうですね。私は「マーケターの中でも企画ができる人は意外と少ない」と感じています。マーケターと呼ばれる人のなかにはそれぞれ得意なこと苦手なことが分かれますが、なかでも「企画」は顕著に分かれます。そうした専門性や素養が差を分ける仕事だからこそ、企画という仕事を構造化して把握できれば、企画のハードルが下がり、企業も目的を果たせるし顧客も良い体験を享受できるだろうと考えています。

コンテンツ生成フレームやコンテンツオペレーションの考え方は、「観点」を提示し言語化を促進するものだと思っています。

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――コンテンツを軸にして、選ぶだけで企画してみるワークをされていると伺いました。概要を教えていただけますか?

富家氏:
「選ぶだけ」という感覚を大切にしたワークです。

たとえば、「ポジティブな接点創出」を目的とするコンテンツを検討する場合、適した軸として「エデュケーション(自社の事業や関連テーマに必ずしも直結しないが、惜しみない学びを提供する)」形式として「ミートアップ(小規模かつカジュアルな雰囲気で特定のテーマのディスカッションやネットワーキングが適しているイベント形式)」を選ぶ、というように目的に沿った組み合わせをリストから選択していきます。

これが意外と難しくて、なかなか選べない人も珍しくありません。マーケティング担当者以外と一緒に取り組むと、企画の難しさや、目的と中身を合わせることの重要性に気づいてもらえると思います。

少なくとも「サービス紹介のウェビナーで、新規リードを集めるのは難しい」という現実を、理解してもらうきっかけになるはずです。

まとめ

BtoBマーケティングにおいては、

  • 自社の提供価値を深く理解する「事業理解」
  • 顧客の課題やニーズを正しくとらえる「顧客理解」

の2つが、コンテンツ戦略の核となる要素です。

単にペルソナやカスタマージャーニーを作成するだけでなく、事業目的に合致した戦略設計を行うことで、競争優位性を高めることができます。

一方で、どれだけ優れたコンテンツを作成しても、組織的に運用・改善できなければ、成果は持続しません。

マーケティング施策の効果を最大化するためには、

  • コンテンツの目的や役割を明確にすること
  • 継続的なPDCAの仕組みを構築すること

が重要です。

次回は、「コンテンツをいかに運用し、マーケティング組織として成果を出し続けるか」をテーマに、マネジメントの視点から運用の重要性を深掘りします。

書籍『最高の打ち手が見つかるマーケティング実践ガイド』とは?

最高の打ち手が見つかるマーケティング実践ガイド

『最高の打ち手が見つかるマーケティング実践ガイド』は、組織の仕組みと実行力によって成果を生むことの重要性を説いた一冊です。

本書の特徴は、マーケティングの個別施策ではなく組織全体の設計に焦点を当て、継続的に成果を生む仕組みを作る視点があることです。

BtoBマーケティングで長期的な成果を追求し、組織を着実に成長させたい方に向けて、実践的な知識と具体的なフレームワークが詰まっています。本書を活用すれば、正しい戦略と実行可能な打ち手を見極め、BtoBマーケティングの成果を最大化するアプローチを学ぶことができるはずです。


弊社グループ会社の翔泳社から出版されていますので、ぜひご一読ください。
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