オウンドメディアでKPIを設定するにはKGIが重要
オウンドメディアのKPIを適切に設定する前に、KGIを明確化する必要があります。KGIは最終目標の達成度を評価する指標であり、その過程に設定される達成指標がKPIです。KGIが定まっていない状態では、KPIを適切に設定することができません。
この章では、KGIとKPIの違いを踏まえ、KPIはKGIが決まっていないと意味をなさないことを詳しく解説します。
KGIとKPIの違い
KGIとKPIの違いは以下の通りです。
用語 | 詳細 |
KGI(経営目標達成指標) |
・最終的な達成度合いを評価する指標 ・売上高、成約件数、利益率、業界シェアなどで数値目標を設定する |
KPI(重要業績評価指標) |
・KGIを達成していく途中経過を評価する指標 ・中間目標として設定する |
日常生活でたとえると、KGIとKPIを以下のように設定することができます。
KGI:10年間で1,000万円を貯金する
KPI: ・1年間に100万円を貯金する ・ボーなるから年間30万円を貯金する ・副業で年間20万円の収入を得る ・年間の生活費を5%削減する |
また、一つのKGIに対し、複数のKPIが連なるように設定したものを「KPIツリー」と呼びます。KPIツリーについては、後ほど詳しく解説します。
KPIはKGIが決まっていないと意味をなさない
KPIは途中経過の指標であるため、明確なゴールとなるKGIが定まっていないと意味がありません。前項のマンション購入の例からも分かるように、KGIから逆算してKPIを設定するのが基本となるからです。
オウンドメディアで成し遂げたいゴール(=KGI)を具体的に決定し、そのゴールに到達するまでの過程で、クリアすべき数値目標としてKPIを設定します。KPIを一つひとつクリアしていけば、自動的にKGIも達成されるように設定するのがポイントです。
オウンドメディアでKPIを設定した具体的な事例
オウンドメディアのKPIの設定について、新商品の販売用ECサイトを例に説明します。
新商品の販売用ECサイトの例の設定 |
プロジェクト:新商品の販売に関して特設Webページを立ち上げ、Webページ上で成約させる KGI:オンラインでの成約数150件 |
KPIを設定する際、最終目標のKGIから逆算すると分かりやすくなります。上記の事例のKGIを達成するためには、特設Webページへの訪問者数と成約率それぞれの数値目標が必要です。まずは訪問者数と成約率にKPIを設定します。
さらに、以下のようにトップダウンでKPIを設定していきます。
- 成約数150件(KGI)=訪問者数(KPI)×成約率(KPI)
- 訪問者数(KPI)=新規訪問者(KPI)+リピート訪問者(KPI)
- 新規訪問者(KPI)= 自然検索からの訪問者(KPI)+外部リンクからの訪問者(KPI)+・・・
成約者数150人を達成するためには、訪問者数と成約率の現実的な数値目標を決めなければなりません。仮に自社Webページでの成約率が2%であるというデータがあれば、このプロジェクトでも成約率のKPIを2%と設定してよいでしょう。そうすると、訪問者数のKPIは7,500人に決まります。
では、訪問者数7,500人を達成するためには、どの程度の新規訪問者を獲得する必要があるでしょうか。過去のリピート訪問者率が25%というデータがあり、その数値をKPIに採用するなら、新規訪問者のKPIを6,000人に設定すれば訪問者数7,500人を達成可能です。
新規訪問者のKPI6,000人は、自然検索や外部リンクなどからの新規アクセス数の合算となります。自社サイトの新規訪問者のデータから、自然検索からの訪問者の割合が75%と分かっているなら、外部リンクからの訪問者数のKPIを1,500人程度に設定できます。
このように、トップにある成約数150人というKGIから逆算し、分解しながらKPIを設定していきます。
オウンドメディアでKPIを設定する3STEP
オウンドメディアのKPI設定は、次の3STEPで行います。
- KGIを設定する
- KPIツリーを作成する
- 効果測定を行う
まず、KGIを設定し、その達成要素を分解していく形でKPIツリーを作成します。その後、効果設定を行いながら、KPIおよびKGIの達成度を高めていくという流れです。この章では、各STEPについて詳しく解説します。
STEP1: KGIを設定する
まず、オウンドメディアの作成目的に合ったKGIを設定します。具体的な設定例は以下の通りです。
- 社名・ブランドの認知度向上
- 商品・サービスの売上数増加
- 新規リードの獲得
- 顧客エンゲージメント上昇
KGIを設定する際は、適切かつ具体的な数値目標を決める必要があります。KGIを明確化することによって、この後のKPI設定がスムーズになります。
STEP2: KPIツリーを作成する
次は、KGIを達成するまでの過程を分解し、KPIを設定していきます。下図のようにツリー図(KPIツリー)で表すと理解しやすいです。
図が示すように、最終目標であるKGIは、KPIの掛け算と足し算で構成されます。
ツリー図を作成する際のポイントは、このように加減算、掛け算、割り算といった簡単な四則演算程度で表現すること(チームの誰が見ても勘違いが起きにくい)と、できるだけ単位(上図では「人」)を合わせることです。
KGIを達成できる水準を見極めて、各KPIを設定していきます。KPIの達成状況から先々の見通しが立つため、軌道修正もしやすくなります。
たとえば、KPIツリーの2段目にある「新規訪問者数+リピート訪問者」のところで、新規訪問者のKPIを6,000人とし、過去のデータに基づいてリピート訪問者のKPIを1,500人に設定したとします。リピート率が過去の実績25%を上回り、30%で推移しているとすると「新規訪問者数が5,250人の時点で訪問者数7,500人を達成できる」というように、今後の動向を予見できます。
STEP3: 効果測定を行う
最終目標となるKGI、中間目標のKPIを確実に達成するためには、データ収集・分析を行い、都度の効果測定が不可欠です。ただし、KGIやKPIの設定に問題があると、効果測定の意味もなくなってしまいます。
オウンドメディアのKGIとKPIを設定する際は、目標設定のフレームワークである「SMART」が有効です。
SMART |
S(Specific):明確で具体的か M(Measurable):測定可能か A(Achievable):達成できるか R(Related):経営目標と関連しているか T(Time-bound):時間に制限があるか |
SMARTを活用してKGI・KPIを正しく決定することで、効果測定が有意義なものになります。
オウンドメディアのフェーズ別KPI設定方法
オウンドメディアの場合、そのフェーズ(成長度合い)により、重視されるKPIが変わってきます。
たとえば、運用の初期段階はコンテンツが少なく、訪問者数もそれほど集められないため、KPIとしては記事の投稿数や検索順位の重要度が高いです。一方、ある程度のアクセスを集められる段階になれば、CV数やCV率(CVR)の向上に注力してもよいでしょう。
ここでは、フェーズ別のKPI設定方法について解説します。
立ち上げ期
オウンドメディアの立ち上げ期では、運用体制の基盤作りに関連するKGI・KPIを設定します。具体的には、運用目的の明確化やペルソナ設定、運用体制の整備、記事投稿のスケジュール作成、編集者・ライターの募集、予算の確保などです。
この時期は記事がほとんどない状態であるため、PV数やSS数といった数値目標はさほど重要ではありません。まずは継続的なコンテンツ制作ができる体制を整えましょう。
オウンドメディア運用初期(〜1年)
運用初期は、コンテンツを充実させることが大切です。記事の作成本数や公開本数にKPIを設定しましょう。
一般的なSEO記事を作成する場合、以下のような複数の工程を経て、公開に至ります。
- キーワード選定や競合調査
- 編集者・ライターのアサイン
- 記事の企画・構成・執筆
- 画像の選定または作成
- 校正・校閲
- 装飾・投稿 など
一つの記事を公開するまでに一定のコストとリソースがかかることに留意しながら、現実的なKPIを設定することが重要です。
オウンドメディア運用中期(1年〜1年半)
コンテンツが質・量ともに充実してきたら、サイトトラフィック関連の指標を設定する頃合いです。PV数・SS数のKPIを重視するのが基本となりますが、さらに細かい数値にKPIを設定してもよいでしょう。
たとえば、ページ滞在時間や読了率、関連記事への移動といったユーザー行動が挙げられます。ユーザー行動の計測・分析には、Googleアナリティクスやヒートマップツールなどを使用します。
オウンドメディア運用後期(1年半〜)
オウンドメディアへの集客が安定してきたら、企業業績への影響度が大きい数値をKPIとして重視します。具体的には、以下のとおりです。
- リードの獲得数
- メルマガの登録数
- 資料のダウンロード数
- 商品・サービスの購入数 など
これらは、一般的にCV数やCV率として計測される指標です。CV数やCV率はKPIツリーの中でも最も上位にあるKPIで、売上高などのKGIに直結します。企業によっては、CV数(成約数)をオウンドメディアのKGIに設定しているケースもあります。
KPIを設定する際の3つのポイント
KPIを設定する際のポイントとして、以下の3つが挙げられます。
- 具体的で明確なものにする
- 高すぎず低すぎない目標数値を設定する
- ツールを活用する
以下、それぞれ解説します。
具体的で明確なものにする
KGIを達成するまでのプロセスを細かく分解し、その過程にある数値指標ごとにKPIを設定します。
指標が適切に細分化されていれば、具体的に何をすればいいのか、何を目指せば良いかが明確です。そのため、プロジェクトメンバーそれぞれが自分の役割を認識できるようになります。
高すぎず低すぎない目標数値を設定する
現実的でない数値を設定しても絵に描いた餅になりますし、メンバーのモチベーション低下にもつながります。逆に低すぎると、KPI達成のための努力を怠るかもしれません。
過去の実績と現状、将来の展望を加味し、プロジェクトメンバーの意見を聞きながら達成が可能な指標に設定します。
ツールを活用する
オウンドメディアが成長するにつれ、チェックすべきKPIの数も増えてきます。フェーズによってどのKPIを重視するかが変わってくるとはいえ、多岐にわたるKPIを表計算ソフトなどで管理するのは大変です。
KPI管理ツールを導入すれば、KPIのデータ集計からグラフ作成、レポート出力までを効率的に行えます。オウンドメディアの運用に手一杯で、KPIの集計や分析までリソースが回らないという場合には、KPI管理ツールを検討してみましょう。
KPI設定によるPDCAの回し方
PDCAと表現される「Plan(計画)」→「Do(実行)」→「Check(確認)」→「Action(改善)」のサイクルは継続的な仕事の改善のために使われますが、オウンドメディアはこのPDCAサイクルと親和性が高いメディアといえます。自社主導で行えることと、具体的に正確な数値で効果が見えるからです。
ただし、オウンドメディアでPDCAサイクルを回すには、メディアの特性に応じて適切にKPIを設定する必要があります。
オウンドメディアがECサイトの場合
ECサイトは商品の販売を目的としていますので「売り上げ=訪問者数 × コンバージョン率 × 単価」という数式が成り立ちますが、PDCAサイクルを回すには、KPIの設定はこの数式にある項目をさらに深堀して、より具体的なものにするとよいでしょう。
たとえば「検索エンジンからの訪問者数を10%増やす」「一回当たりの購入数を1.2個から1.3個に増やす」「リピート購入者割合を18%から20%に増やす」「カートへの遷移率を10%から15%にする」などが適切です。
オウンドメディアがリード(見込み客)獲得サイトの場合
リード獲得を目的としているサイトの場合は、サイトでアンケートを取り、営業マンが電話や訪問で完結するなどサイトのみで完結出来ない場合もあり、サイトに関するKPIのみでは不十分なケースもあります。
ただし、たとえば「一日当たりのユニークユーザー数150人を200人にする」「アプローチ後の成約率15%を20%にする」「セミナーへの動員数200人を250人にする」などであれば、PDCAサイクルで回す際には適切です。
オウンドメディアが商品やサービスのサポートサイトの場合
サポートサイトの場合は、ほかのサイトとは違い、いかに早く問題解決してくれるか、あるいは電話サポートではなくサイトでの対応だけで完結できるか、などが重要です。
こういったサイトの場合「サポートページへのユーザー満足度を55%から70%にする」「電話サポート割合を15%から10%にする」「サイトの滞在時間5分20秒を3分00秒にする」などが適切です。
まとめ:オウンドメディアの成功にはKPI設定が不可欠
オウンドメディア運用ではKPIの設定が重要です。ただし、適切なKPI設定をするためには、KGIを明確にしておく必要があります。また、オウンドメディアのフェーズによって、重視するべきKPIも異なりますし、定期的な効果測定もしなければなりません。リソースが限られている場合に、オウンドメディアを運用しながらKPI管理までこなすのは、想定より難しいものです。
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構築時における「適切なKGI/KPIの設定方法が分からない」「どの指標を重視するか決められない」という場合も、まずはしっかりとヒアリングしたうえで、貴社の目的やゴールに合わせた設計をご提案します。