マーケティングで注目されるナーチャリングとは?実践までのプロセスを解説
更新日:2025-02-06 公開日:2022-05-05 by SEデザイン編集部
マーケティング手法の一つとして、ナーチャリングに注目が集まっています。本記事では、ナーチャリングをより深く理解したい方に向けて、ナーチャリングの意味やメリット・デメリット、具体的な取り組み方を解説します。より効果の高い顧客アプローチを実現するために、ナーチャリングへの理解を深めましょう。
マーケティングにおけるナーチャリングとは?
マーケティングや営業の手法の一つに、ナーチャリングというものがあります。ここでは、マーケティングにおけるナーチャリングにはどのような意味があり、なぜ必要とされているのかについて見てきましょう。
ナーチャリングとは「見込み客の育成」
マーケティングにおけるナーチャリングとは見込み客育成の取り組みのことで、「リードナーチャリング」とも呼ばれています。ビジネスで用いられるリードとは「見込み客」、ナーチャリングは「育成」や「養育」という意味です。
リードの段階において、商品やサービスを購入してもらえる確率は高くありません。そのため、中長期的なアプローチを行い、リードを獲得したのちに購買へとつながるよう顧客を育成し、購入確率を上げる必要があるのです。
マーケティングにおけるナーチャリングの位置づけ
一般的にマーケティングは、リードジェネレーション → リードナーチャリング → リードクオリフィケーションの流れで進めます。
リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)
リードジェネレーションとは、リードを獲得するための取り組みのことです。例としては、セミナーや展示会の開催、アンケートや資料の無料ダウンロードなどを通じて、メールアドレスや電話番号などの顧客情報を獲得する手法が挙げられます。
リードナーチャリング(見込み顧客の育成)
獲得したリードと中長期的に接点を持ち続け、モチベーションを高める取り組みです。適切にナーチャリングを実践すれば、購買意欲の低かったリードのモチベーションアップにつながり、優良顧客へと育成できます。
リードクオリフィケーション(見込み顧客の抽出)
リードを選別するプロセスです。ナーチャリングに取り組んでも、すべてのリードが同じようにモチベーションを高めてくれるとは限りません。そのため、より確度の高いリードに対して優先的にアプローチを行えるよう、リードの行動履歴を分析して絞り込みを行います。
ナーチャリングが必要とされる背景
ナーチャリングが必要とされる背景として、以下の3点が挙げられます。
リードの購買行動の変化
インターネットやモバイル端末が普及し、誰もが簡単にさまざまな情報を入手できる時代になりました。消費者が能動的に情報を収集して比較検討することが一般的になったため、本格的な購入を決意するまでの期間にリードとの接点がなくなると、他社に流れてしまうことも珍しくなくなってきています。リードとの関係性を維持しながらこのような事態を回避するために、ナーチャリングが必要とされているのです。
アプローチ方法の多様化
近年、電話やメール、対面だけでなく、SNSやウェビナーなど、リードへのアプローチ方法が多様化しています。これにより、従来よりも多くのリードを集めやすい環境が整いましたが、同時に購買意欲の低いリードも多く集まるようになっているのが実情です。このような背景から、確度の低いリードに対する効果的なアプローチの必要性が高まってきています。
休眠顧客の増加
休眠顧客とは、過去に接点があったものの成約や購買に至らず、コミュニケーションが途絶えている状態の顧客のことです。休眠顧客にナーチャリングを通じて再アプローチすることで、少ない労力で成約・購買へとつなげられる可能性があります。
ナーチャリングによって得られるメリット
ここでは、ナーチャリングに取り組むことで得られる主なメリットを解説します。
長期的なフォローをシステム化できる
リードナーチャリングに取り組むと、リードに対して適切なタイミングで効率的なフォローが可能になります。リードのモチベーションを高めて購買につなげるには、長期的なフォローが有効です。しかし、営業担当が個々のリードに長期的なフォローを行うとなると、膨大な時間と労力を要するため効率的とはいえません。
一方、ナーチャリングの取り組みを進めてリードへのフォローをシステム化すれば、工数を抑えながら的確なタイミングでリードにアプローチできるため、効率的に育成できるようになります。
休眠顧客の情報を有効活用できる
過去に接点があったものの、購買や成約に結びつかなかった休眠顧客の情報を有効活用できるのもメリットです。過去に接点がある場合、自社の商品やサービスについての一定の理解があるケースが多いため、新規リードをはじめから育成するよりも少ない労力で成果につなげられます。
再アプローチを適切なタイミングで行える
リードへの再アプローチは、適切なタイミングで行うことが肝要です。あまりにも再アプローチが早すぎるとリードの心証を損なう可能性があり、遅すぎると他社で商品やサービスを購入してしまう可能性があります。
ナーチャリングではリードの購買行動の位置づけが予想できるようになるため、適切なタイミングでのアプローチが可能です。たとえば、リードにとって有益な情報をメールで数回に分けて送り、モチベーションの高まりに合わせてアプローチを行うなど、リードにとって不要なコミュニケーションを省きながら効率的に営業活動を行えます。
ナーチャリングに取り組む際のデメリット
システマチックにリード育成を行えるナーチャリングですが、いくつかデメリットがあることを理解しておきましょう。以下、ナーチャリングに取り組むうえでのデメリットを解説します。
長期的にリードにアプローチするための体制づくりが必要
ナーチャリングは長期的に取り組むことではじめて成果につながるものです。そのため、リードに対して中長期的にアプローチを行える体制を整える必要があります。たとえば、段階的にメールを送るのであればステップに応じた中身を作成する必要があり、効率的なフォローを行うためのシステム環境も求められます。
また、ナーチャリングを成功させるには部門の枠を超えた協力体制も必要です。関連する部門にナーチャリングの必要性を周知し、スムーズに連携できるよう情報共有の方法も考えなくてはなりません。
情報を一元管理するためのシステム作りに労力がかかる
ナーチャリングを実施する際は、リード情報を一元管理する必要があります。リード情報がさまざまな場所に散らばっている状況では、情報を有効活用できません。
情報を一元的に管理し、なおかつ効果的にナーチャリングを行うシステムを自社で構築するとなれば、相応の時間とコストを要するでしょう。既存のツールやシステムを導入する場合も、スムーズに運用できる体制を整えるまでに時間を要します。
多様なナーチャリングの手法
ここでは、ナーチャリングの代表的な7つの手法を紹介します。リードの行動をトラッキングしながらどの手法が適しているかを検討してみましょう。
メルマガ・ステップメール
リードに関心の高い有益なコンテンツをメールで送る手法です。ステップメールは、シナリオを元に段階的にメールを送信することでリードを育成します。
ダイレクトメール
ハガキや封書で情報を送る手法です。アナログな手法ですが、インターネットをあまり利用しない高齢者層などに効果が期待できます。
ホワイトペーパー
有益な情報をまとめた資料をインターネットからダウンロードしてもらう方法です。リード獲得の手法としても用いられ、内容次第で自社商品やサービスの購入へと誘導できます。
SNS
TwitterやFacebookなどで情報を発信する手法です。プラットフォーム上でリードと直接やり取りを行え、親近感を抱いてもらいやすい点が特徴です。
セミナー・ウェビナー
セミナーやウェビナーで商品やサービスについてより詳しい情報を発信することで、リードのモチベーションを高められます。オンラインで開催できるウェビナーであれば場所も必要なく、手軽に実施できます。
オウンドメディア
リードが抱える問題を解決できるコンテンツや、有益な情報を発信するオウンドメディア運営もナーチャリングに有効です。直接的な売りこみは行わず、リードの問題を解決するのに自社商品やサービスが有効であることをさりげなく伝えられます。
リターゲティング広告
自社サイトにアクセスしたリードを追跡し、移動先のサイトで広告を表示します。自社商品やサービスを思い出してもらえ、競合への流出を回避する効果も期待できます。
ナーチャリング実践までのプロセスを解説
ナーチャリングを実践する際は、以下のプロセスに沿って取り組むとよいでしょう。
1.リードの情報を一元管理する
まずは、社内に散在しているリード情報を1ヶ所に集約します。各チャネルから集めた情報をデータベース化し、そのうえでリードの属性や行動履歴などからセグメントしましょう。
2.リードが購買行動に至る流れを理解する
リードがどのような流れで購買に至るのかを理解しないと、適切なアプローチができません。リードが購買にいたる流れを可視化することで、効果的なアプローチが可能です。
リードが購買行動に至る流れを可視化するためには、カスタマージャーニーマップを作成するとよいでしょう。カスタマージャーニーマップのテンプレートを公開しているWEBサイトもあるので、活用してみるのも一つの手段です。
3.リードを区分する
スコアリング(リードスコアリング)でリードを区分します。スコアリングとは、リードの行動履歴や性質からポイントを計算することでリードの状態を数値化することです。
たとえば、資料請求をした人は30点、直接問い合わせをしてきた人は50点といったように、リードに点数をつけて区分します。区分したリードがカスタマージャーニーマップのどこに該当するのか確認し、リードが今どのような心理状態なのかを把握しましょう。
4.ナーチャリングを実行する
リードの区分が終わり、カスタマージャーニーマップのどこに位置しているのかを把握したら、ナーチャリングを実行します。すでにモチベーションが高まっていると考えられるリードには、直接電話で商品やサービスを案内する、まだ迷っている段階のリードにはステップメールを送るなど、区分に応じたアプローチを行います。
ナーチャリングを実践するための顧客分析
ナーチャリングを実践するには、リードを分類する必要があります。ここでは、リードの分類に役立つ分析手法について見ていきましょう。
RFM分析を用いて購入日・頻度・金額で分類する
RFM分析は、リードの「直近の購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「金額(Monetary)」の要素で分析する手法です。3つの要素を使って分析しリードを区分することで、優良顧客の抽出を行えます。
ナーチャリングでRFM分析を用いる際は、「優良顧客」「見込み客」「新規客」「離反客」の4つに分類するのが一般的です。基本的には、直近の購入日から期間が空いておらず、購入頻度と購入金額が高い顧客を高く評価します。
CRM分析を用いて初回購入からの期間で分類する
CRM分析(Customer Relationship Management)は、リードの購入頻度や購入総額、最初に購入した日から直近購入日までの経過期間などから10のグループに分類する手法です。「初回現役客」「よちよち現役客」「優良現役客」「優良離脱客」などにグループ分けし、リードの状態を可視化します。
CRM分析では、購入総額は少なくても、RFM分析よりも長期的な視点で商品やサービスを購入しているリードを分類・可視化できる点が特徴といえるでしょう。
MAツールでナーチャリングの実践を効率化
MAツールは、マーケティングオートメーション(Marketing Automation)のことであり、マーケティング活動の一部を自動化できるなど、営業活動の効率化に役立つツールです。代表的な機能は以下の通りです。
- リード情報の管理
社内に散在しているリード情報を一元的に管理できます。 - リードのスコアリング
リードの属性や行動履歴などから自動的にスコアリングして区分します。 - セグメントごとのメール配信
セグメントごとに、異なるコンテンツのメール配信が可能です。また、メール配信後の行動も確認できます。 - パーソナライズ機能
リードの状態に適したメール内容の送信やコンテンツ表示などが可能です。
MAツール選びのポイント
MAツール選びにおいては、達成したい目的や解決すべき課題を明確にしておくことが大事です。それにより選ぶべきツールが変わるためです。以下のポイントをおさえたうえで選定を行いましょう。
BtoBとBtoCどちらなのか
MAツールには、BtoB向けとBtoC向けの製品があります。自社のメインターゲットに合わせて選びましょう。
既存システムとの連携が可能か
既存システムと連携できない製品の場合、一から顧客の情報を入力することになるかもしれません。自社CRMと連携可能な製品であれば、すでにCRMで管理している情報をMAツールに同期することが可能です。
導入により自社の問題を解決できるか
確度の高いリードを営業部門に渡したい、セミナー後にリードをフォローしたいなど、目的や解決したい課題は企業によってさまざまです。目的達成や課題解決に役立つ機能が実装されているかどうかを確認しましょう。
予算や規模が適切か
導入や運用に要する費用はMAツールごとに異なります。高価で高機能な製品を導入しても、不要な機能が多かったり、使いこなせなかったりするようでは無駄なコストがかかってしまいます。予算や規模が適切かどうかを確認しましょう。
まとめ
ナーチャリングでは、リードに対する長期的かつシステマチックなフォローだけでなく、休眠顧客情報の有効活用も実現できます。体制づくりやシステム構築に時間や労力、費用がかかることも理解したうえで、適切な内容を実施していきましょう。
代表的なMAツールである「HubSpot Marketing Hub」は、ナーチャリングやタスクの自動化、パーソナライズといった機能のほか、ブログやランディングページ作成、リード管理、広告管理などの機能もあります。部門間でのシームレスな連携も実現できるため、ナーチャリングの体制づくりも容易です。無料プランから気軽に始められるので、気になる方はぜひ一度SEデザインにご相談ください。丁寧にサポートいたします。