パーソナライズとは?メリットや注意点、BtoBでも使える7つの施策例を紹介
更新日:2025-07-14 公開日:2022-04-24 by SEデザイン編集部

パーソナライズとは、顧客一人ひとりに最適な形で情報を提供することです。
パーソナライズを意識したいと考えてはいるものの、パーソナライズ化に取り組むイメージをつかめないといったケースは少なくありません。そこで今回は、約40年にわたりBtoB企業のコンテンツマーケティング支援を行ってきたSEデザインが、パーソナライズの基礎知識やメリット、活用事例などを解説します。
「パーソナライズ」とは?
マーケティング手法の一つであるパーソナライズについて、まずは基本的な情報をおさえていきましょう。
顧客に最適なサービスを提供すること
パーソナライズとは、「顧客一人ひとりに最適な形で情報を提供すること」です。マーケティングにおいては、企業が集めたデータをもとに好みを判断し、顧客のニーズに適した商品や情報を提供することを意味しています。
たとえば、「受験 おすすめの塾」といったキーワードで一度検索をしたあとにSNSやニュースサイトなどでさまざまな塾の宣伝広告が表示されるのが、パーソナライズの一例です。
パーソナライズが今必要とされる背景
以前までは、「マスマーケティング」と呼ばれる、大衆に向けた広告が主流でした。主に新聞やテレビ、ラジオなどを介した宣伝方法で、大衆に同じ情報を一度に流すことで広告効果を得ることが可能でした。
近年、新聞やテレビ、ラジオ以外の情報媒体が増えたことにより、従来のマスマーケティングでは以前のような効果を発揮しづらくなっています。実際に新聞(朝夕刊セット)の発行部数を見てみると、2000年では約1818万部でしたが、2024年には約391万部にまで減少しています。(参照元:新聞の発行部数と世帯数の推移(一般社団法人 日本新聞協会))
また、スマートフォンの普及が進み、手軽にインターネットにアクセスできるようになり、消費者側が能動的に情報を選べるようになったことも、近年パーソナライズが必要とされている理由といえるでしょう。
2010年ではわずか9.7%ほどだったスマートフォン保有率は、2023年には約90.6%に上昇、パソコンの保有率も65.3%に上昇しており、今後もさらに増加していくことが予想されています。(参照元:令和5年通信利用動向調査の結果(総務省))
このように、一方的な情報発信では顧客の心を動かすことが難しい時代になったため、個々へアピールするパーソナライズが重要視されているのです。
また、IT技術の発展によって、顧客の情報分析の精度も上がってきました。こうした背景から、パーソナライズを強化する企業が増えつつあります。
パーソナライズと「カスタマイズ」「レコメンド」との違い
パーソナライズ、カスタマイズ、レコメンドは、それぞれ目的と役割が異なります。パーソナライズは企業がユーザーの属性・行動・購入履歴を分析し、一人ひとりに最適な情報を提供する仕組みです。
カスタマイズは利用者自身が必要な機能や設定を選んで操作感を整える方法で、使い勝手を高められます。レコメンドは、ほかのユーザーと似た嗜好を持つ人々の利用傾向をもとにおすすめを提示する手法です。
3つをうまく組み合わせると、利用者にとって心地よい体験が生まれ、満足度や信頼性の向上につながります。さらに、属性・行動・購入履歴をしっかり分析すれば、ニーズを的確に捉えた情報提供が可能となります。
パーソナライズ化がもたらす5つのメリット
パーソナライズ化によって企業側が得られる5つのメリットをまとめました。それぞれ見ていきましょう。
メリット1:顧客との信頼関係を構築できる
顧客が「自分に合った情報やサービスを提供してもらえている」と感じることは、顧客満足度の向上につながります。また、適切なタイミングで関連性の高いコンテンツや商品を提案することで、顧客との信頼関係構築にも効果的です。
具体例として、音楽配信サービスには、ユーザーが過去に聴いた楽曲やアーティストをもとに、オリジナルのプレイリストを作成するパーソナライズの仕組みがあります。ユーザーは毎回曲を選ぶ必要がないため手間が省けるだけでなく、新しく曲と出合えます。また、自分だけのプレイリストは特別感があり、満足度も高まるでしょう。
メリット2:既存顧客を定着させやすくなる
パーソナライズ化すれば、既存顧客に対してもより適切なサービスを提供し、ロイヤリティを高めることが可能です。たとえば、リピーター限定のクーポン配布や限定商品の紹介などが挙げられます。「リピーターである」とカテゴライズしたうえで既存顧客が求める情報を提供すると、顧客満足度を高めるのです。
顧客に「自分はお得意様である」と意識してもらうと、顧客側のモチベーションが上がり、客単価のアップやサービスの利用継続にもつながります。
メリット3:売上やLTV(顧客生涯価値)の向上に寄与する
顧客ごとに最適な情報やオファーを提供することで、購入頻度の向上や客単価の増加が期待できます。また、特定の行動パターンをもとに適切なタイミングでクーポンや限定オファーを提示することで、リピート購入を促し、LTV(顧客生涯価値)の最大化につなげることが可能です。
メリット4:マーケティング施策の効率化が図れる
パーソナライズは業務効率化にも役立ちます。これまでマスマーケティングで行ってきたアピールを、必要としている顧客だけにピンポイントで届けられることが特長です。
すでに興味を持っている人を事前にリサーチできるため、不特定多数にマーケティングを行うよりも効果を得やすくなります。ターゲットや届けたいサービス内容、タイミングなどを細かく設定できるので、宣伝費のコスト削減にもつながるでしょう。
さらに、パーソナライズ化したアピールを繰り返すことで情報が蓄積され、より精度の高いマーケティングも可能になります。
メリット5:潜在的な顧客の掘り起こしができる
パーソナライズの機能によって、顧客が気付いていなかった「潜在的なニーズ」を洗い出せます。
商品Aを購入した際に、それに合う別の商品Bを自動的におすすめする仕組みがその一例です。この場合、目的の商品Aについて最初から検索していても、相性の良い商品Bについては存在すら知らないケースも少なくありません。「こんな商品(サービス)があるなら購入してみたい」など、顧客自身が気付いていないニーズにアプローチすることは、顧客の掘り起こしにつながります。
パーソナライズ化に取り組む際の3つの注意点
多くのメリットをもたらすパーソナライズ化ですが、取り組む際にはいくつか注意すべき点があります。パーソナライズ化を実現する前に、確認しておくべきポイントをチェックしておきましょう。
注意点1:費用対効果を考える
パーソナライズの精度を高めるためには、細かい条件付けやデータの取得など、粒度を小さくするほど費用がかさんでしまいます。とはいえ、ローコストでできるパーソナライズでは、顧客の本当のニーズを見つけられず、結果につながらない可能性があるため、費用面も検討しながら価値のあるパーソナライズ施策を図っていくことが必要です。
また、アナログ施策ではダイレクトメールを郵送したり、チラシを配布したりするケースもあり、チラシの制作費や印刷費なども加算されるため、コスト管理がより重要になります。
注意点2:顧客に届く情報に隔たりが生じる場合がある
パーソナライズの問題点として、提供する情報が偏ってしまうことが考えられます。顧客に合った情報を適切に提供できることがパーソナライズの強みですが、求めている内容と隔たりが生じるケースも少なくありません。
さらに、顧客ニーズにそぐわない情報を繰り返し提示した場合、企業に対するマイナスイメージや不信感につながることもあるため注意が必要です。
情報の隔たりを回避するためには、表示回数の適切化や顧客の反応の検証が欠かせません。さまざまな検証を繰り返し、顧客満足度を上げられるよう調整を行いましょう。
注意点3:顧客が今望むサービスや情報とは限らない場合もある
パーソナライズ化を実現させるためには情報収集が欠かせませんが、集めたデータの反映には一定の時間を要します。そのため、情報が反映される頃には「情報がすでに不要になっている」ことも十分あり得るでしょう。
顧客のニーズは日々変わっていくものなので、対応できるように準備しておく必要があります。データの更新や検証など、常にフレッシュな情報を得られる状態を維持することが大切です。
顧客に合わせたパーソナライズの活用方法(BtoB・BtoC)
パーソナライズには、「BtoB」と「BtoC」の2つのパターンがあり、それぞれ活用方法が異なります。
BtoBにおけるパーソナライズの活用方法
BtoBにおいてパーソナライズの活用が有効なものは、主に以下の3点です。
- オウンドメディアやブログ
- メール配信
- eBookの提案
メディアやブログの反響、メールの開封率などを確認して、顧客の関心度を検証します。関心の段階やニーズの強さに合わせてアプローチしていきましょう。
BtoBの場合、担当者レベルでの導入の判断が困難なケースも少なくありません。稟議を通したり、決裁者の許可を得たりするプロセスがあるため、実際の購入までに時間がかかることも念頭に置いておきましょう。
BtoCにおけるパーソナライズの活用方法
BtoCの場合、顧客自身が判断できる分、購入までのプロセスは比較的短いといえるでしょう。たとえばECサイトを利用している場合であれば、顧客の閲覧履歴やページの滞在時間などを活用して顧客が興味を持ちそうな商品を導き出し、レコメンド機能を活用して提示することも可能です。
また、顧客の関心を惹くサイトデザインも重要です。そのうえで、ポップアップでおすすめを通知したり、チャットボットでのサポート体制を整えたりするなどの工夫を重ねると、購入率の向上が期待できます。
顧客に合ったサービスパーソナライズの7つの施策例
ここでは、具体的なパーソナライズの施策例を7例紹介します。媒体や対象によってアピール方法が異なるため、それぞれの特徴を理解したうえで適した施策を行いましょう。
施策例1:動画
視覚的に情報を得られる動画は、文字のみの宣伝よりも、大きな効果が期待できます。また、動画をパーソナライズする「パーソナライズド動画」では、顧客が自分のために作成された動画だという印象を抱きやすいため、さらなる広告効果が期待できるでしょう。
導入例としては、不動産や保険のサービス案内動画などがあります。ベースとなる動画の上に、ユーザー情報に合わせて生成された動画を表示させる仕組みです。さらに、動画の分岐点に仕掛けを施し、視聴者によって見せる動画を切り替えるシステムも存在します。
施策例2:広告
「パーソナライズド広告」は、顧客の検索履歴や閲覧情報をもとにユーザーに最適な広告を表示する仕組みです。普段、何気なく見ているWebサイトに表示されている広告にも、あらかじめパーソナライズ化されたものが多くあります。興味のあるサービスや好みの商品などを自動的におすすめすることで、自然に閲覧や購入へ導きます。
施策例3:ニュース記事
ニュースをまとめて配信しているキュレーションサイトでは、広告だけではなく、ニュースやコラムなどにおいてもパーソナライズされています。興味のあるニュースが表示されると、サイトへの親近感を持ち、滞在時間が長くなる可能性が考えられます。欲しい情報が手間なく入手できる状態は、顧客の満足度を高めることにもつながるでしょう。
施策例4:レコメンド機能
近年多くのECサイトで使われているレコメンド機能は、サイト内での購入や閲覧の履歴をもとに、おすすめの商品を提案するものです。ユーザーのニーズに合った提案を通じて、離脱防止や顧客満足度向上の効果も見込めます。
施策例5:SNSのパーソナライズ表示
交流しているフォロワーや、自身が行った「いいね」などのリアクションによって、情報が収集されていきます。パーソナライズ化によって、興味関心が合うユーザーを結び付けたり、ユーザーの趣味嗜好に合った投稿が表示されたりする仕組みです。
SNSのパーソナライズ表示は、今後さらに注目される施策の一つであり、他者との交流や情報収集の際に利用されるケースが増加しています。
施策例6:DM
「パーソナライズドDM」は、登録された住所から最寄りの店舗を導き出し、過去のデータをもとに個々の顧客に対して最適なタイミングで最適な内容を送るダイレクトメッセージのことです。
紙のDMならではの開封率の高さとデジタルデータの個別性などをかけ合わせることで、ユーザーにとってより有益な内容をより適切なタイミングで送ることができるため、顧客のロイヤリティ向上も期待できるでしょう。
販売分野におけるダイレクトメールの送付は、実店舗の有無にかかわらず一定の効果が期待できる施策として注目されています。
施策例7:オウンドメディア
オウンドメディアのパーソナライズ化では、以下の2点をおさえておきましょう。
- レコメンド記事
- メルマガ
メディア内の興味のある記事を導き出し、レコメンド記事として提案します。関連する記事を読み進めてもらうことにより、滞在時間をより長くすることが可能です。
またメルマガでは、顧客の興味や関心、ニーズに合った有益な情報を流すことで、成約率アップが期待できます。
パーソナライズを活用した活用事例
パーソナライズを活用した成功事例は多くの企業にであります。ここでは、Amazon、スタッフサービス、日本旅行の3つの事例をみていきましょう。
活用事例1.Amazon
Amazonは、ユーザーごとの属性や行動を分析し、顧客に最適な商品やサービスを提案しています。パーソナライズによって、自分専用のショッピングサイトのような特別感が生まれ、買い物の満足度が向上するのです。
購入履歴や閲覧履歴をもとに、ユーザーの興味やニーズに合った商品を提示し、クロスセルやアップセルを効果的に促すことも可能です。
Amazonを利用すると、「あなたにおすすめの商品」が出てきたことはあるでしょう。
さらに、ユーザーの行動の変化に応じて適切なフォローを行い、リピーターの獲得につなげています。
また、AmazonはAIを活用し、ユーザーの購買履歴や視聴履歴を分析して、最適な商品やコンテンツをレコメンドします。プライムビデオでは視聴履歴をもとに好みに合った作品を提案し、ショッピングだけでなくエンタメ体験も充実させています。
活用事例2.スタッフサービス
スタッフサービスは、求職者が必要な情報を素早く見つけられるよう、行動データを活用したパーソナライズを導入しています。求職者の属性や行動を把握し、希望に沿った求人情報を提示することで、応募率(コンバージョン)を高め、売上の向上につなげています。
従来の求人サイトでは、求職者が膨大な情報の中から自分に合う求人を見つけにくいという課題がありました。そこでスタッフサービスは、アクセス履歴を活用し、求職者の希望する地域や職種に応じた求人を優先表示する仕組みを導入しました。
その結果、従来の求人サイトと比べて求職者の満足度が向上し、サイトの回遊率も大幅に向上。さらに、求職者のニーズに合った情報を提供することで、サイトの使いやすさが向上し、信頼性の高いサービスへと発展しています。
ただし、パーソナライズのデメリットとして、求職者の興味がある職種に限定されると、新たな選択肢を狭めてしまう可能性があるのです。スタッフサービスは、求職者の選択肢を広げる工夫も取り入れ、ユーザー満足度の向上と市場での競争力強化を両立させています。
活用事例3.日本旅行
日本旅行は、顧客の行動データを活用し、パーソナライズ施策を実施して予約率を向上させています。オンラインで宿泊施設や旅行プランを比較する見込み顧客に、適切なタイミングで限定クーポンを提示し、予約への後押しをしています。
従来の旅行予約サイトでは、訪問者が何度も比較を繰り返し、最適なプランを決めるまでに時間がかかることが課題でした。日本旅行は、行動データを分析し、その結果をもとに、一定回数以上サイトを訪問したユーザーに特典を自動表示するツールを導入しました。
見込み顧客がクーポンを活用しやすくなり、予約を決断する確率が大幅に向上。さらに、特典の提示を最適化することで、顧客満足度が向上し、リピート率の向上にもつながっています。このように、日本旅行のパーソナライズ施策は、旅行業界におけるデジタルマーケティングの成功事例となっています。
まとめ
今回は、パーソナライズの基礎知識から活用例まで紹介しました。「大勢」ではなく「あなただけ」に向けた提案は、マーケティングにおいてさまざまな成果をもたらします。パーソナライズ化することで、顧客にとって最適な内容を最適なタイミングで提示できるようになるため、顧客の満足度も高まるでしょう。
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