メンタル不調が多い職場の典型例を10種紹介|職場改善の方法も解説

更新日:2025-04-14 公開日:2025-04-04 by SEデザイン編集部

目次

近年、職場におけるメンタルヘルス対策の重要性が高まっています。厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は年々増加傾向にありますが、依然としてメンタル不調による休職者や退職者は後を絶ちません。本記事では、メンタル不調が多い職場の特徴と、その改善方法について詳しく解説します。特に中小企業の方々にも実践しやすい対策を中心に紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

 

メンタル不調が多い職場の現状と影響

日本企業におけるメンタルヘルスの現状

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厚生労働省の「令和5年労働安全衛生調査」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の全体の割合は63.8%ですが、50~99人の事業所では87.4%、30~49人の事業所では71.8%、10~29人の事業所では56.6%と事業所の人数が少なければ少ないほどメンタルヘルス対策に取り組む割合が低いということが明らかになっています。このデータから、中小企業はメンタルヘルス対策の必要性を認識しているものの、具体的に何をすればいいかわからないといった理由で効果的な対策が十分に行われていない現状が浮き彫りになっています。

メンタル不調が企業に与える影響

メンタル不調は、企業に様々な悪影響を及ぼします。主な影響として以下が挙げられます。

  1. 生産性の低下
  2. 従業員の士気の低下
  3. 企業イメージの悪化
  4. 人材流出
  5. 医療費や休業補償の増加

特に中小企業では、1人の従業員の休職や退職が事業運営に大きな影響を与える可能性があります。そのため、メンタルヘルス対策は企業の規模にかかわらず重要な経営課題といえます。

メンタル不調が多い職場の10の特徴

メンタル不調が多い職場には、共通する特徴があります。以下に10の特徴を詳しく解説します。

長時間労働が常態化している

残業が多く、慢性的な長時間労働が続いている職場環境は、メンタル不調のリスクが高くなります。

長時間労働は、睡眠時間の減少やストレスの蓄積につながり、心身の健康に悪影響を及ぼします。また、仕事以外の時間が減少することで、リフレッシュや趣味の時間が確保できず、ワークライフバランスが崩れやすくなります。

人間関係が希薄または悪化している

職場の人間関係が希薄化・悪化する原因と影響

職場内のコミュニケーション不足や人間関係の悪化は、メンタル不調の大きな要因となります。

特に近年は、テレワークの増加により、直接的なコミュニケーションの機会が減少し、孤立感や疎外感を感じる従業員が増えています。また、価値観の違いによる衝突や、いじめ・嫌がらせなども職場の人間関係を悪化させる要因となります。

業務の責任が重く、プレッシャーが大きい

過度な責任やノルマは、従業員に大きなストレスを与えます。特に中小企業では、従業員に多くの責任を負わされやすい傾向にあります。

責任の重さやプレッシャーが増すと、常に緊張状態が続き、心身の疲労が蓄積されやすくなります。また、失敗への恐れや完璧主義的な考え方が強くなり、メンタル不調のリスクが高まります。

休暇が取りにくい職場環境・社風がある

休暇を取りにくい社風・文化のサイクル

有給休暇の取得率が低い、または休暇を取ることに罪悪感を抱いてしまうような職場環境・社風は、メンタル不調のリスクが高くなります。

休暇の取得は、心身のリフレッシュや仕事のモチベーション維持に重要な役割を果たします。しかし、「忙しいから休めない」「休むと周りに迷惑がかかる」といった考えが蔓延している職場では、従業員が十分な休養を取れず、ストレスが蓄積されやすくなります。

上司と部下のコミュニケーションが不足している

上司と部下のコミュニケーション不足の原因と影響

上司と部下の関係性が悪く、適切なコミュニケーションが取れていない状況は、メンタル不調の要因となります。特に中小企業では、上司の役割が従業員のメンタルヘルスに大きな影響を与えかねません。

上司とのコミュニケーション不足は、業務上の問題や悩みを相談できない状況を生み出し、ストレスの蓄積につながります。また、適切なフィードバックや評価が行われないことで、従業員のモチベーションが低下する可能性もあります。

仕事の裁量権が少ない

従業員が自身の仕事に対して裁量権を持てず、主体性を発揮できない職場環境は、メンタル不調のリスクが高くなります。仕事の進め方や時間配分などを自己決定できないことで、ストレスやフラストレーションが蓄積されやすくなるのは否めないでしょう。

また、裁量権の欠如は、仕事への興味や意欲を低下させ、モチベーションの低下につながる可能性があります。

評価基準が不明確または不公平

評価基準の問題点とメンタルヘルスへの影響

評価基準が曖昧であったり、公平性に欠ける評価システムは、従業員のメンタルヘルスに悪影響を与えます。特に中小企業では、明確な評価システムが整備されていないケースは少なくありません。

不明確または不公平な評価は、従業員の不安や不満を増大させ、モチベーションの低下やストレスの原因となります。また、努力が正当に評価されないと感じることで、仕事への意欲が失われる可能性もあります。

業務の効率化や改善が進んでいない

非効率な業務プロセスや古い慣習が残っている職場環境は、メンタル不調のリスクを高めます。業務効率化の遅れは、不必要な残業や過重労働につながり、従業員のストレスを増大させます。

例えば、以下のような状況が該当します。

  • 紙ベースの作業が多く、デジタル化が進んでいない
  • 不要な会議や報告書作成が多い
  • 業務の優先順位づけが適切に行われていない
  • 新しい技術やツールの導入に消極的である

これらの問題は、従業員の時間とエネルギーを無駄に消費し、本来注力すべき業務に集中できない状況を生み出します。

ハラスメントが存在する

パワハラやセクハラなどのハラスメントが存在する職場環境は、メンタルヘルスに深刻な影響を与えます。ハラスメントは、被害者に強い精神的ストレスを与えるだけでなく、職場全体の雰囲気を悪化させ、生産性の低下にもつながります。

ハラスメント防止のための取り組みは、法律で義務付けられており、企業はこの問題に真剣に取り組まなければならないのは言うまでもありません。

メンタルヘルスケアの体制が整っていない

メンタルヘルスケア体制例

メンタルヘルスケアの体制が不十分な職場環境は、従業員のメンタル不調を見逃したり、適切な対応ができなくなったりする可能性が高くなります。特に中小企業では、リソースの制約からメンタルヘルスケア体制の整備が遅れがちです。

メンタルヘルスケア体制の不備には、以下のような例が挙げられます。

  • 相談窓口が設置されていない
  • 産業医との連携が不十分
  • ストレスチェックが実施されていない、または形骸化している
  • メンタルヘルスに関する研修が行われていない

適切なメンタルヘルスケア体制の整備は、従業員の心の健康を守るだけでなく、早期発見・早期対応によって長期的な休職や退職を防ぐことができます。

メンタル不調を予防するための対策方法

メンタル不調を予防するためには、以下のような対策が効果的です。特に中小企業でも実践しやすい方法を中心に紹介します。

労働時間管理の徹底

適切な労働時間管理は、メンタル不調予防の基本となります。具体的な方法として以下が挙げられます。

  1. 残業時間の上限設定と管理
  2. 有給休暇取得の促進
  3. ノー残業デーの導入
  4. 勤怠管理システムの活用
橋本朋美
職場のメンタルヘルス対策は、企業の持続的な成長に不可欠です。特に中小企業では、人事担当者が一人で多くの業務を担うことも多いため、対策の優先順位をつけることが重要です。まずは、長時間労働の抑制や、定期的な1on1面談の実施など、負担が少なく効果的な施策から始めましょう。また、ストレスチェックや外部相談窓口の活用も、手軽に導入できる方法です。メンタル不調を未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境づくりを進めていきましょう。
橋本 朋美
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント

社会保険労務士法人HALZへ相談

コミュニケーションの活性化

職場内のコミュニケーションを活性化させることで、メンタル不調の早期発見や予防につながります。以下のような取り組みが効果的です。

  1. 定期的な1on1ミーティングの実施
  2. チームビルディング活動の導入
  3. オープンな意見交換の場の設定
  4. 社内SNSやチャットツールの活用

特に中小企業では、経営者や管理職が従業員と直接コミュニケーションを取りやすい環境を活かし、風通しの良い職場づくりを心がけましょう。

ストレスチェックの実施と活用

ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタル不調を予防するための重要なツールです。以下のポイントに注意して実施しましょう。

  1. 法令に基づいた適切な実施
  2. 結果の分析と職場環境改善への活用
  3. 高ストレス者への個別フォロー
  4. 定期的な実施と経年変化の観察

中小企業向けのストレスチェックサービスも多数存在するため、自社に適したものを選択し、積極的に活用することをおすすめします。

 

メンタルヘルス研修の実施

メンタルヘルスに関する知識や対処法を学ぶ研修は、従業員の自己管理能力を高め、メンタル不調の予防に役立ちます。具体的には以下のような方法があります。

  1. 外部講師を招いての集合研修
  2. オンライン研修プログラムの活用
  3. e-ラーニングコンテンツの提供
  4. 社内勉強会の開催

外部の専門家や研修サービスを活用し、効果的なメンタルヘルス研修を従業員に提供するようにしましょう。

職場環境改善のための具体的な施策

従業員のメンタル不調を予防し、健全な職場環境をつくるための具体的な施策を紹介します。

フレックスタイム制度の導入

フレックスタイム制度は、従業員のワークライフバランスを改善し、ストレス軽減に効果があります。導入のポイントは以下の通りです。

  1. コアタイムの設定(例:10時〜15時)
  2. 総労働時間の管理
  3. 業務の引き継ぎや連絡方法の明確化
  4. 試験的導入期間の設定

中小企業での導入事例を参考に、自社に適した形でフレックスタイム制度を検討しましょう。

業務の棚卸しと効率化

業務の棚卸しと効率化は、従業員の負担軽減とストレス軽減に直結します。以下のステップで進めましょう。

  1. 現在の業務内容と所要時間の洗い出し
  2. 不要な業務の特定と廃止
  3. 業務プロセスの見直し
  4. デジタルツールの導入による自動化
  5. 業務の優先順位づけと再分配
  6. デジタルツールの導入による自動化

中小企業での成功事例として、ある製造業では業務の棚卸しにより、月間残業時間を30%削減することに成功しました。効率化によって生まれた時間を新規事業の開発に充てることで、企業の成長にもつながっています。

相談窓口の設置

メンタルヘルスに関する相談窓口の設置は、従業員の悩みや不安を早期に把握し、適切な対応を取るために重要です。以下のような方法で実施できます。

  1. 社内に専門の相談窓口を設置
  2. 外部の専門家(カウンセラーや産業医)との連携
  3. オンラインカウンセリングサービスの活用

中小企業向けには、外部の専門家や相談窓口サービスを利用することで、コストを抑えながら効果的な支援体制を整えることができます。また、労働者数50人未満の小規模事業者や従業員を対象に、産業保健サービスを無料で提供する独立行政法人労働者健康安全機構が運営する地域産業保健センター(略称「地さんぽ」)に相談することもおすすめします。

定期的な従業員満足度調査の実施

従業員満足度調査は、職場環境の課題を把握し、改善につなげるための重要なツールです。以下のステップで実施しましょう。

  1. 調査項目の設定(職場環境、仕事内容、人間関係など)
  2. アンケートの実施(匿名性の確保)
  3. 結果の分析と課題の抽出
  4. 改善策の立案と実行
  5. 定期的な実施と効果測定

中小企業の視点から見ると、オンラインツールを活用することで、低コストで効率的に調査を実施することができます。また、結果を従業員にフィードバックし、改善策を一緒に考えることで、従業員の参画意識を高めることができるでしょう。

まとめ

本記事では、メンタル不調が多い職場の特徴と、その改善方法について詳しく解説しました。メンタルヘルス対策は、従業員の健康と生産性を向上させるだけでなく、企業の持続的な成長にも不可欠です。特に中小企業の方々にとっては、限られたリソースの中でいかに効果的な対策を講じるかが重要となります。

紹介した特徴や対策方法を参考に、自社の状況を見直し、できるところから改善に取り組んでいくことをおすすめします。以下に、重要なポイントをまとめます。

  1. 労働時間管理の徹底
  2. コミュニケーションの活性化
  3. ストレスチェックの実施と活用
  4. メンタルヘルス研修の実施
  5. フレックスタイム制度の導入
  6. 業務の棚卸しと効率化
  7. 相談窓口の設置
  8. 定期的な従業員満足度調査の実施

最後に、メンタルヘルス対策は企業の規模にかかわらず重要ですが、特に中小企業では経営者自身の意識改革が鍵となります。従業員の心の健康を守ることが、企業の持続的な成長につながるという認識を持ち、積極的に取り組んでいくことが大切です。

橋本朋美
監修者プロフィール
橋本 朋美(はしもと ともみ)
社会保険労務士法人HALZ(HALZグループ)
株式会社HALZ 取締役社長
人事コンサルタント
監修者からのメッセージ
職場におけるメンタルヘルス対策は、従業員の健康を守るだけでなく、企業の生産性向上や定着率向上にも直結します。特に中小企業では、経営者や管理職の意識改革が重要です。まずは、従業員の声に耳を傾け、働きやすい環境を整えることから始めましょう。労働時間の適正化、コミュニケーションの促進、ストレスチェックの活用など、小さな取り組みでも大きな効果を生みます。従業員一人ひとりが安心して働ける職場を目指し、継続的な改善を行っていきましょう。

 

 

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監修者
2009年お茶の水女子大学大学院卒業後、株式会社HALZ入社。2020年より代表取締役社長就任。大手アパレル業界、IT業界、医療法人など、100名から3000名規模の様々な業界・規模の人事制度設計、業務改善コンサルティング等を担当。人事基幹システム会社への常駐を経て、人事システム導入支援、システムリプレイスコンサルティングも得意とする。HR基幹システムに精通したITに強い人事実務家集団を強みにお客様の業務効率化に貢献するサービスをご提供。