【解説】インバウンドマーケティングとは?基本や顧客のプロセスを紹介

公開日:2017-08-21 更新日:2023-05-22 by 鈴木 令子

目次

【解説】インバウンドマーケティングとは?そのプロセスと手法、成功の鍵を紹介

インターネットとそれにかかわる技術の普及拡大により、ひとびとの情報取得方法、接触メディア、使用デバイスは大きく変化しました。それにともない消費者や企業の購買行動も変化しています。このような人々の行動の変化にあわせ、企業のマーケティング活動、営業活動も変化していく必要があります。

インバウンドマーケティングは、現在の消費者、企業の購買行動に適したマーケティング手法です。本記事では、インバウンドマーケティングとはどういったものか、その概念や実践方法をご紹介します。

インバウンドマーケティングとは?

インバウンドマーケティングとは、潜在顧客(製品やサービスの提供対象となる層)や見込み顧客の興味・関心を深めたり、課題解決に役立つ情報を提供し、それにつながる製品やサービスを購買および推奨してもらう仕組みです。

一言でいうと「購買者の興味や課題によりそって関係を築いていく、顧客主導型のマーケティング手法」とも言えるでしょう。

インバウンドマーケティングが生まれた背景

インバウンドマーケティングは、米国HubSpot社の創立者であるブライアン・ハリガンとダーメッシュ・シャアの両氏が提唱した概念です。従来型の広告出稿などマスマーケティング主体の「アウトバウンドマーケティング」との対比から、購買者の興味・関心を軸にした「インバウンドマーケティング」という概念が生まれました。

インバウンドマーケティングの基本は「ペルソナ」

先ほどご紹介したように、インバウンドマーケティングは、購買者の興味を深めたり、課題解決に役立つ情報提供を行い、共感や関心を持ってもらうことを軸にしています。では、その情報は「誰」の興味・関心をひき、課題解決に役立つのかを考えてみましょう。

マーケティング全般にいえることですが、この「誰」を明確化することが重要です。インバウンドマーケティングにおいても、その基本は変わりません。

まずは「誰」=「ペルソナ」を策定し、自社のマーケティング対象を定めることから始めましょう。(インバウンドマーケティングでは、「ペルソナ」を「バイヤーペルソナ」とよんでいます)。

ペルソナとは、以下をベースとした理想的な顧客の人物像です。

  • 既存顧客のデータ、デモグラフィックデータ
  • 推測も含めた顧客の個人的特性、経歴、課題、目標、行動パターン

次からインバウンドマーケティングの4つのステップをご紹介しますが、どのステップにおいてもペルソナを思考の中心に置き、施策を検討していきます。そういう意味で「ペルソナ」の策定はステップ0といえるでしょう。

▼ ペルソナについて詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
≫マーケティングにおけるペルソナとは?ーその役割、重要性を解説
≫ペルソナの作り方【サンプル付き】〜インバウンドマーケティングの視点から解説
≫カスタマージャーニーとは?その基本と作り方【サンプル付き】

コンテンツマーケティングとの違い

インバウンドマーケティングと混同しやすい概念に「コンテンツマーケティング」があります。しかし、この2つは、厳密には役割が異なります。

コンテンツマーケティングは、マーケティングの課題に対する認知拡大、興味喚起、見込み顧客の育成、リピートの獲得など「コンテンツの提供」を軸において解決しようとするマーケティング手法のことです。

一方、インバウンドマーケティングは、顧客・企業との交流を通じて商品やサービスに興味・関心を持ってもらうプロセスに注目したマーケティング手法です。そのため、顧客に何かしらの関心を引き出すための手段は「コンテンツ」だけでなく、ほかにも存在する考え方になります。

つまり、インバウンドマーケティングは、コンテンツマーケティングを包括する概念といえます。

アウトバウンドマーケティングとの違い

インバウンドマーケティングの対になる「アウトバウンドマーケティング」という概念も理解しておきましょう。

インバウンドは「外から内に入ってくる」という意味であり、おもに観光業界で訪日外国人観光客の意味で使われることが多い言葉です。反対に、アウトバウンドは「内から外に出ていく」という意味があります。

インバウンドマーケティングは、顧客側から企業(外から内)に関心を持ってもらう「プル型」のマーケティング手法です。それに対し、アウトバウンドマーケティングは、企業から顧客(内から外)に向けて、積極的に商品やサービスを売り込む「プッシュ型」のマーケティング手法のことをいいます。

アウトバウンドマーケティングの代表的な例としては、訪問営業やテレアポ・DM(ダイレクトメッセージ)・ポスティング・展示会・テレビCMなどが挙げられます。

なぜ、アウトバウンドマーケティングの効果が薄くなっているのか?

近年、インバウンドマーケティングが注目されている背景には、従来型のアウトバウンドマーケティングでは効果が薄れてきているという企業の課題があります。もちろん、目的に応じて適切に実施すれば、アウトバウンドマーケティングは今でも有効なマーケティング手法です。

それではなぜ、アウトバウンドマーケティングの効果が薄れてきていると言われるのでしょうか。その理由として、以下3つの理由が挙げられます。

情報過剰による顧客の行動変化

1999年に10億回であった世界のGoogle検索の回数は、2016年には2兆回にのぼったといわれ 、17年で2,000倍に伸びています。こうしたインターネットの普及によって世の中に発信される情報の量が増えたことで、顧客の行動は大きく変化しました。

総務省情報通信政策研究所が発表した「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」2)によると、日本では、仕事や調べもので最も利用するメディアとして84%以上が「インターネット」と回答しています。また、スマートフォンの利用率は、全年代で95.3%となっており、平成 24 年の調査開始以降、一貫して増加しています。

しかし、誰でも知りたいことを自力で調べられる環境になった一方、自ら情報収集できるからこそ、必要のない情報は非表示やミュートにすることもできるようにもなりました。その結果、プッシュ型のアウトバウンドマーケティングでは、顧客に情報が届きにくくなったといえます。

デジタル広告よりも口コミの信頼度が上昇

近年、口コミサイトやSNSなどで気軽に口コミを見て比較検討できるようになったことで、口コミの影響力が強くなっています。口コミは企業からの一方的な情報提供ではなく、顧客が実際に利用した際のリアルな声であることから、信頼できると感じる方は多いでしょう。

マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが2018年に実施した調査によると、インターネットユーザーの8割弱が商品・サービスの購入前に口コミを見ているという結果が出ています。

BtoBマーケティングにおいても、最近はDMやデジタル広告などの一方的な情報から購買に結び付くケースは少ないでしょう。まずは、欲しい製品やサービスを検索し自分で情報を集め、比較・検討してから、実際に問い合わせを行い、製品の購入・導入することがほとんどではないかと思います。アウトバウンドマーケティングだけでは、そうした顧客に製品やサービスを見つけてもらうことはできません。

企業の一方的なマーケティングの限界

テレマーケティングやDM、マス広告、デジタル広告などによる顧客への一方的なアプローチは、顧客側からすれば求めていない情報も受け取ることになります。こうしたマスマーケティングは「Interruption Marketing(妨害するマーケティング)」といわれています。

Interruption Marketingは顧客の行動を妨害して製品やサービスを紹介するため、顧客は「無理やり売り込まれた」感覚になり、信頼関係を構築することは難しいでしょう。

また近年では、ライフスタイルや価値観の変化に伴い、消費者のニーズも多様化してきました。そのため、不特定多数に同じ情報を提供する従来型のマーケティングの効果には限界があります。

インバウンドマーケティングのメリット

インバウンドマーケティングのメリットとして、次の3つが挙げられます。

  • 良い印象で自社のサービスに興味を持ってもらえる
  • マーケティングの知見資産がたまり、費用対効果が高い
  • 顧客データを蓄え、分析・活用できる

それぞれ見ていきましょう。

良い印象で自社のサービスに興味を持ってもらえる

先に述べた通り、テレマーケティングやDMなどで顧客が必要ないと感じる情報を一方的に提供しても、興味を持ってもらえる可能性は低く、大きな効果は望めません。それどころか、押し付けられたという悪い印象を抱かせてしまう可能性もあるので、注意が必要です。

その点、インバウンドマーケティングは顧客側から興味・関心を持ってもらう手法なため、顧客に嫌われることなく、役に立つ情報を通じて自社を知ってもらえることが大きなメリットです。良い印象を持ってもらうことで、自社のファンを増やし信頼関係を築くことができます。

また、本当に役に立つ情報、面白いと感じた情報はSNSなどでシェアされることで、より多くの顧客に認知を広げることも期待できるでしょう。

マーケティングの知見資産がたまり、費用対効果が高い

アウトバウンドマーケティングでは、マス広告やデジタル広告への出稿などに膨大な予算が必要になることが多いでしょう。一方、インバウンドマーケティングでは顧客側から自社サイトなどに情報を探しに来てくれるため、低予算での運用が可能です。

また、広告やイベントは期限が決められており一過性である一方、コンテンツは一度制作すればWeb上に残るため、マーケティング資産として積み上げることができます。オウンドメディア運用のノウハウも社内に蓄積することができるため、貴重な財産となるでしょう。

そのため、インバウンドマーケティングは制作期間や効果が現れるまでに時間がかかるものの、費用対効果は高いといえます。

顧客データを蓄え、分析・活用できる

インバウンドマーケティングでは、自社製品やサービスに興味を持った顧客がWebサイトやSNSに来訪します。データ解析ツールを用いれば、来訪してきた顧客のWeb上での行動分析が可能です。

新聞などのマス広告や、DMなどの従来型の手法では、顧客が広告を見た後にどのような行動を取ったのか把握することができませんでした。一方、インバウンドマーケティングに使用するWebサイトやSNSなどのチャネルでは、訪れた顧客がどのページを閲覧し、どんな行動を取ったのかがデータとして蓄積されます。

こうした6つのデータを分析すれば、ニーズがある顧客の特徴をつかむことができ、より効果的なマーケティングを行うことにも役立ちます。

インバウンドマーケティングの手法

インバウンドマーケティングの手法は、大きく分けて4つのステージに分かれています。

下記の図はインバウンドマーケティングのステージと実施する施策を示したものです。「ATTRACT(興味を喚起する)」「CONVERT(リード化する)」「CLOSE(顧客化する)」「DELIGHT(ファンを増やす)」という4つのステージごとに施策を実施していきます。

【インバウンドマーケティングの4つのステージ】
インバウンドマーケティングの4つのステージ

順にご紹介しましょう。

1. ATTRACT(興味を喚起する)

インバウンドマーケティングのステージ_ATTRACT

ATTRACTステージの目的は、多くの潜在顧客(策定したペルソナの層)にサイトを訪問してもらうことです。この時点での顧客は、ニーズが顕在化しておらず、商品やサービスの概要を知らない状態です。

そのために、ペルソナの興味・関心、課題を掘り下げ、有益となる適切な情報を、適切な場所(チャネル)に、適切なタイミングで提供する必要があります。

一般的には検索エンジンからキーワード検索などで、ペルソナの興味・関心のあるテーマの解説や課題解決のヒントとなる情報を提示し、ブログなどの自社サイトを見つけてもらいます。同様にペルソナが利用しているソーシャルメディアにも投稿し、ソーシャルメディアからのサイト訪問も見込みます。

このステージで実施する施策は下記をご覧ください。

[ATTRACTステージで実施する施策]

  • SEO
  • SNS(Twitter、Facebook、Instagramなど)
  • ブログ
  • Webサイト(製品やサービスを紹介するサイトなど)
▼ 各施策について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
【BtoB向け】これから始めるSEO対策・5つの基本ステップ
BtoBマーケティングでビジネスブログが重要な理由と3つの効果
見込み顧客獲得につながる、BtoBビジネスブログの作り方


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2. CONVERT(リード化する)


インバウンドマーケティングのステージ_CONVERT
CONVERTステージのユーザーは、ニーズが少し顕在化し、サービスに関して顧客自ら情報を集めている状態です。このステージの目的は、訪問者から氏名、会社名、メールアドレスなどの情報を提供してもらい、見込み顧客に転換することです。

訪問した潜在顧客を見込み顧客へ移行させるため、Ebookやホワイトペーパーのような、ATTRACTステージで提供したものより深く、価値の高い情報をオファーコンテンツとします。
これらのコンテンツをダウンロードいただく前提として、メールアドレスをはじめとする個人情報の送信や会員登録を求め、見込み顧客への転換をはかります。

このステージで実施する施策は下記をご覧ください。

[CONVERTステージで実施する施策]

  • Ebook
  •  ホワイトペーパー
  •  ランディングページ(資料ダウンロード用のWebサイト)
  • Webフォーム

3. CLOSE(顧客化する)

インバウンドマーケティングのステージ_CLOSE

CLOSEステージの目的は、見込み顧客の情報・行動を分析して、実際の顧客へと移行させることです。

Webサイトの閲覧・行動履歴などを参考に、Eメールやほかのコミュニケーション手段で見込み顧客の購買意欲を高めます(こうした活動は、リードナーチャリングと呼ばれます)。
一連のコミュニケーションから有望と判断した見込み顧客は、営業部門に引継ぎ、顧客化を目指します。製品・サービスのカスタマイズツールや見積りシミュレーションのようなツールを用意するなど、購買に向けたアプローチをここで行うのも有効です。

このステージで実施する施策は下記をご覧ください。

[CLOSEステージで実施する施策]

  • Eメール
  • セールスツール
  • マーケティングオートメーション

▼ 各施策について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

BtoBのリードナーチャリングとは?手法、実践のための4つのポイント
【展示会・イベント】お礼メールを効果的に活用する4つのポイント
メールマーケティングの評価指標と開封率を上げる4つのコツ【BtoB向け】
【最新版】2020年のマーケティングオートメーションのシェアと製品比較

 

4. DELIGHT(ファンを増やす)

インバウンドマーケティングのステージ_DELIGHT

DELIGHTステージのユーザーは、すでに自社の顧客となっている状態です。このステージの目的は、継続的なサポートを行って顧客満足度の向上を図り、顧客がSNSなどを通じてほかの潜在顧客に広め、あらたな訪問者の獲得をはかることにあります。

まず顧客の購入・行動履歴を分析し、それらの情報をもとにWebサイトやEメールなどのコンテンツを最適化して提示できるようにします。こうした個人にパーソナライズしたコンテンツを「スマートコンテンツ」と呼んでおり、スマートコンテンツの活用が、顧客との関係性を深めることにつながると考えています。

このステージで実施する施策は下記をご覧ください。

[DELIGHTステージで実施する施策]

  • スマートコンテンツ
  • SNS(Twitter、Facebook、Instagramなど)

インバウンドマーケティング成功の鍵は?

これまで、インバウンドマーケティングの手法をご紹介してきました。

潜在顧客の興味喚起、見込み顧客へのコンテンツ提供、顧客への適切なサポートと、それぞれのステップに応じて必要になるコンテンツは多岐に渡ります。 提供するコンテンツが個々の状況にマッチしていなければ、高い効果は望めません。

見込み顧客のEメールアドレスは1年で25%ほどが無効になるともいわれています。持続的に見込み顧客を創出していくためには、継続的に有益なコンテンツを提供し、顧客への転換を図っていかないとビジネスの後退は免れません。

したがって、有益なコンテンツを作り続ける力が、インバウンドマーケティングの成功の鍵といえるでしょう。SEデザインでは、インバウンドマーケティングを実践されたい企業様への導入支援をはじめ、ペルソナに最適化したコンテンツ戦略の策定・制作をご支援いたします。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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また、本記事でご紹介した内容は、無料Ebook「インバウンドマーケティング入門ガイドでもご覧いただけます。下記のバナーからお気軽にダウンロードください。

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