「マーケティングオートメーション(MA)」とは、マーケティング業務の一部を自動化して、サポートしてくれる仕組みです。MAを利用することで、顧客との関係構築の効率化や、マーケティング施策の効果検証、他部門との連携の強化、営業組織の構築などが得られます。
ただし使いこなすためには、正しい知識をもつことが大切です。MAの意味や、必要になった背景、利用する利点、主な機能、導入・運用までの流れなどを分かりやすく解説します。
マーケティングオートメーション(MA)とは
マーケティングオートメーション(MA)とは、見込み顧客を開拓するためのマーケティング業務を自動化する仕組みです。MAを導入することでWebサイトの閲覧履歴やメールの開封履歴といった情報を自動的に取得・蓄積できます。また、取得した情報をもとに、メール配信や自社サイトのコンテンツの出し分け、購買意欲の高い見込み顧客の判断などの自動化も可能です。
たとえば、見込み顧客向けにメールマガジンを送る場合、事前にメールアドレスを収集して送信先リストを用意しておく必要があります。MAツールを利用すれば、すでに蓄積された情報を基にリードに対して最適化された内容のメールマガジンを自動で配信できます。
また、MAに類似したツールとしてCRMとSFAがあり、これらを混同している人も少なくないでしょう。一般的にCRMは顧客管理用ツールで、SFAが営業活動の管理・支援ツールという位置づけです。MAとCRM・SFAとの違いは、後ほど詳しく解説します。
MAの市場規模
株式会社矢野経済研究所が実施した国内デジタルマーケティング市場の調査によれば、2020年のDMP/MAの市場規模は544億円と推計していました。デジタルマーケティングツールを導入する企業は増加傾向にあり、2026年には市場規模が865億円を超えると予測しています。
また、株式会社Nexalが2021年4月に国内58万社のMAツール導入率を調査したところ、上場企業では11.3%に上りました。上場企業のMA導入率は2018年7月の6.4%から5年足らずで約5%も伸びており、この傾向は今後も続きそうです。
MAの効果
MAは、リード獲得からリードナーチャリング(顧客育成)、リードクオリフィケーション(営業対象の選別)までのマーケティング業務を支援するツールです。MAを導入すれば、マーケティング活動の一連の流れを自動化・仕組み化することができます。煩雑な業務を自動化することにより、リソースの有効活用にもつながります。
しかし、MAの効果はマーケティング業務の効率化だけではありません。むしろ、MAの効果として注目すべきなのは「リードの状態に最適なマーケティング施策を打てる」という点です。また、MAによって商品購入やサービス利用を検討している顧客を効率的に抽出できるため、購買フェーズを引き上げるのにも大いに役立ちます。
CRMやSFAとの違い
重複する領域を持つツールとして、顧客管理に特化したCRMツールと、顧客情報や営業活動を管理するSFAツールがあります。MAとCRM、SFAは混同しやすいため、それぞれの違いをご紹介します。
CRMとMAの違い
CRMとは、Customer Relationship Managementの略称で、顧客関係管理を指すツールです。顧客との信頼関係を継続的に構築する目的で活用されます。 CRMツールに記録するおもな情報は、以下のとおりです。
- 顧客情報:名前
- 住所
- 電話番号
- メールアドレスなど
- 顧客との接点:会員登録情報
- 購入した商品・サービスの情報
- 自社の対応履歴や入手した情報:営業の訪問履歴
- コールセンターの対応履歴など
同じ顧客の情報をそれぞれの担当者ごとにバラバラに管理する方法では、活用できる幅が限定されます。CRMツールで顧客情報をまとめて管理することで、効率的なアプローチや顧客満足度の向上などに役立ちます。
顧客の情報を管理するという部分は同じMAとCRMですが、違いは特性が異なることです。MAは人による作業の効率化に特化している一方で、CRMは蓄積した顧客情報の管理に特化しています。
SFAとMAの違い
SFAとは、Sales Force Automation(セールスフォースオートメーション)の略称で、営業活動を管理して支援するツールです。
営業活動をデータベース化して、顧客の属性や施策に対しての反応など営業活動をまとめて管理できます。 SFAツールのおもな機能は、以下のとおりです。
- 顧客情報管理:氏名
- 企業名
- 部門名
- 役職など
- 営業活動管理:活動記録
- スケジュール
- ファイルの共有
- ToDoなど
- データ管理:レポート機能
- ダッシュボード機能を活用した商談、活動、売り上げの可視化
SFAツールでは、営業担当者がそれぞれの営業情報を記録することで、営業活動の効率化やフィードバックに活用可能です。また属人化しやすい営業力や経験による格差を平均化させるのに役立ち、営業効率を向上できます。
MAは見込み顧客の獲得に特化している一方で、SFAツールは営業活動をサポートすることに特化している点が違います。見込み顧客の獲得と育成はMA、営業活動の最適化を行うのはSFAと目的によって適切に使い分けることで、自社の利益の向上につながるのです。
マーケティングオートメーション(MA)の歴史
MAの歴史は、1990年代にさかのぼります。MAという言葉は、元々アメリカのソフトウェア事業者が使い始めたもので、ツールの普及とともに広く知られていくこととなりました。
アメリカを中心に海外では2000年代から多くの企業が導入を進めてきましたが、日本では2015年前後を境に利用企業が増えたことから、この年を「MA元年」とする声もあります。近年はツールのクラウド化とともに、ますます利便性が高まり導入のハードルが下がったことから、導入企業は右肩上がりで増え続けています。
マーケティングオートメーション(MA)が必要になった背景
日本では、2014年頃からマーケティングオートメーション(MA)が認知され始め、上場企業を中心に市場規模が急速に拡大してきました。これには、テクノロジーの進化や社会状況の変化によって、顧客の購買行動やアプローチ手法の個別化・複雑化といった背景があります。
特にBtoBにおける購買活動や興味・関心の変化に着目すると、以下の3つに集約できます。
- 顧客との接点が増えた
- 顧客が情報収集する方法が変化した
- 顧客の決裁が厳しくなった
以下で、それぞれ解説します。
顧客との接点が増えた
以前は、企業が自社の商品やサービスを売り込む方法は限られていました。BtoBの場合、訪問営業やテレアポで営業するのが一般的でした。
しかし近年、スマートフォンやSNSが普及し、検索サイトや自社メディア、動画、メール、オンラインセミナーなど情報を発信できる場所が数多く誕生したことで、顧客との接点が広がりました。
そのため見込み顧客に対して、商品やサービスの情報を正確に届けるためには、より適切なターゲット・チャンネル・タイミングの選択が求められるようになりました。
顧客が情報収集する方法が変化した
商品・サービスの提供側のアプローチ方法が変化したように、顧客側の情報収集方法も変わってきています。 インターネット上のWebサイトやレビューサイト、SNSの口コミ、動画配信などを通じて商品やサービスを認知したり、自ら検索して得た情報で特徴・価格などを比較したりできるようになりました。
また、「自分の希望に合った質の高い情報を適切なタイミングで受け取り、よく検討したうえで商品やサービスを利用したい」と考える顧客も増えてきています。欲しい情報が手に入らない商品やサービスには疑念や不安を感じ、購入対象としないケースもあります。ニーズの多様化に合わせたマーケティングがますます重要になってきたといえるでしょう。
顧客の情報収集や購買行動の変化に対応するためにマーケティング業務の複雑化は必然であり、工数の増加も避けられない状況になりました。そのなかで、顧客とのコミュニケーションをパーソナライズした「One to Oneコミュニケーション」を実現するためにも、MAツールの導入企業が増えているのです。
顧客の決裁が厳しくなった
生産性の向上や経営の安定化を目指すため、国内企業の多くでコスト削減の要求が強まっています。設備投資や社外サービス利用に関して、より決裁時のチェックが厳しくなりました。そのため、顧客である企業担当者が導入に前向きであるのに、その企業内での決裁プロセスが長期化し、なかなか商談につながらないケースも少なくありません。
一定の営業効率を維持するためには、見込み顧客をセグメント分けする必要があります。購買フェーズに合わせて適切なコミュニケーションを取りながら、商談につながる確率が高い顧客からアプローチするというロジックです。その煩雑な業務を仕組み化する目的で、MAツールの導入が進んでいます。
MAを導入するメリット
マーケティングオートメーション(MA)を活用することで、作業の効率化や効果検証、他部門との連携の強化などが得られます。MAを導入するメリットとして、4つのポイントを見ていきましょう。
見込み顧客との関係構築を効率化できる
MAを活用することで、パーソナライズされた情報の発信ができます。見込み顧客の検討段階が分からない場合は、見当違いなタイミングや内容でアプローチしてしまうこともあるでしょう。
しかし、それぞれの見込み顧客に対して、役立つ情報を適切なタイミングで提供することで、エンゲージメント率を高められます。個別対応の場合は膨大な工数がかかりますが、MAでは自動化できるため、手間がかかりません。顧客の興味・関心に合わせたメール送信や提案をMAに任せられるため、それほど業務負荷を増やさずに信頼構築が可能です。
また、MAで収集した見込み顧客情報は貴重なマーケティング資産です。新商品や新規サービスを展開する際にも、既存の顧客情報を活用してすぐに営業活動を開始できます。顧客情報の収集・管理・共有する機能だけを見ても、MAは非常に有用なツールです。
マーケティング施策の効果検証がしやすくなる
MAでは、見込み顧客が起こしたアクションの履歴を視覚化できます。見込み顧客の購買意欲を強化するための施策の効果検証をして効率的に商談獲得につなげることが可能です。
MAで作成したWebページやメールマガジンなどさまざまな施策を通じて働きかけ、その反応を確認することで、購入意欲の高まった見込み顧客が分かります。購入意欲が上昇したタイミングでアプローチすれば成約につながる確率が高いです。それぞれの顧客に合った施策を最適なタイミングで実行できるため、取りこぼしや顧客離れを防ぐのに役立ちます。
一方で、自社のマーケティング活動を可視化して、課題点や改善点などの洗い出しも可能です。MAにはヒューマンエラーが介在しないため、人力に頼らない高度な分析と高精度な効果検証をしやすくなります。より正確かつ効率的に、マーケティング活動のPDCAを回すことができるでしょう。
他部門との連携を強化できる
MAツールでは、見込み顧客の受注につながる確率がスコアとステージで可視化されるため、購買意欲の高い見込み顧客の情報共有が可能です。営業部門などの他チームとの連携を強化できます。
見込み顧客の情報がうまく共有できていない、あるいは共有作業に大きなリソースを割いている、ということであれば、MAツールの導入は最善策となるでしょう。リードナーチャリングとリードクオリフィケーションを経て、有望な見込み顧客を営業部門につなげることで、成約率が大幅にアップする可能性があります。
さらに、マーケティング部門と営業部門のシステム上の連携も重要です。 マーケティング部門が使用するMAと、営業部門が使用するCRM・SFAツールを連携することで、部門間の情報共有がよりスムーズになります。
また、MAの活用によって顧客情報の属人化を解消することも可能です。従来のように特定の顧客情報を一人の営業担当者しか把握していないという状況は、情報のブラックボックス化や管理不備が起こるリスクがあります。どの営業担当者も成約可能性が高い顧客との商談に臨めるため、営業部門全体の成果も上がりやすくなるでしょう。
マーケティング業務を効率化できる
MAの導入により、顧客データの一元管理や属性分け、リスト抽出、カスタマイズされたメールの送信などを自動で実施できます。これまで人力で行ってきたマーケティング業務を効率的に進められるようになり、社内リソースの有効利用にもつながるでしょう。リードステップの各段階で分けると、以下のような業務効率化が図れます。
リードジェネレーション(リード獲得)
コンテンツマーケティングなどでサイト内フォームに入力された顧客情報の自動収集・管理
リードナーチャリング(リード育成)
顧客ごとにパーソナライズされたコンテンツの自動配信
リードクオリフィケーション(リード選別)
行動データやエンゲージメントを分析・評価し、高品質なリードを自動で選別
また、リードステップの各段階におけるアクションやプロセスを、MAによって自動的に実施する「シナリオの自動化」も可能です。
システム連携が強化できる
MAはほかのシステムやツールと連携することで、マーケティング業務をより強力に支援します。CRMやSFA、企業データベースなどのデータベース系ツールとの連携では、顧客データの分析、カスタマイゼーション、マーケティングプロセスの作成などを効率化できるのがメリットです。
チャットボットやウェビナーツール、各種コミュニケーションアプリといった顧客との接点を作るチャネル系ツールと連携し、チャネル上での行動追跡やチャネルをまたいだシナリオ設計も可能です。
マーケティングオートメーション(MA)のおもな機能
MAには、さまざまな機能が搭載されています。利用するツールによって多少違いがありますが、基本的にはベースは同じです。
MAツールのおもな機能は、以下のとおりです。
- 見込み顧客の情報の一元管理
- 見込み顧客の興味や関心の数値化
- メールマーケティングの実施
- 営業担当への通知
- ランディングページ/問い合わせフォームの作成支援
- API連携/CRM・SFA連携 ・レポ―ト作成/分析
それぞれの機能について、役割をご紹介します。
見込み顧客の情報を一元管理
見込み顧客を獲得する場は、自社サイトやランディングページ(LP)、メールマガジン、セミナーなどさまざまです。
MAツールのリード管理機能を利用すれば、企業名や氏名、役職、メールアドレスのみでなく、性別や年齢、職業、好み、趣味など登録されている顧客情報をまとめて管理できます。 見込み顧客を新規顧客へと育成するためには、社内にあるリード情報を一元化させておくことが重要です。
リード情報を別々で管理すると、同じ見込み顧客に対して複数の営業担当者が別々にアプローチをしてしまう懸念があります。 MAツールのリード管理機能を活用することで、一人ひとりに対して適切なアプローチや営業が行うことができるようになるのです。
見込み顧客の興味関心を数値化
MAでは、見込み顧客の行動から購入意欲の高さを数値化できます。このことから、見込み顧客の興味や関心ごとを数値化することで、さまざまなマーケティング施策に活用可能です。
たとえば、資料のダウンロードは3点、問い合わせは7点、セミナーへの参加は12点だった場合、以下のようなマーケティング施策ができます。
- 5点以下:商品やサービスに興味を持ってもらうように、導入事例や業界レポートなどのコンテンツをメールで送る
- 10点以上:成約してもらえるようなキャンペーン情報をメールで送る
- 15点以上:営業部門に送客して商談を持ちかける
上記は一例ですが、見込み顧客の行動を数値化することで、購入意欲のステージに合わせた適切なアプローチが行えます。
メールマーケティングを実施
MAでは、メール配信の自動化ができます。
メルマガのようなすべての顧客に対して同じ内容のメールや、リストの中で特定の条件にマッチするセグメントのみに限定的なメールを配信可能です。 たとえば、メールマガジンを登録した2日後、資料請求をした3日後にメールを送るなど、細かい設定もできます。
またMAを活用してメールを配信することで、メールの到達率や開封率、URLのクリック率、解約率などが視覚化できます。 それぞれの数値が確認できるため、A/Bテストなどメールマーケティング施策でも高い効果が期待できるでしょう。
営業担当への通知
MAには、見込み顧客がある特定の行動をしたときに、自動で営業担当者に通知する機能があります。メールを開封したときや、自社サイトを閲覧したときなどに設定可能です。通知は社内メールだけでなく、ChatworkやSlackなどのビジネスチャットツールでも連携できます。
たとえば成約につながらなかった見込み顧客が、再度Webサイトに訪問した際、MAツールを活用していた場合は通知が来ます。情報はリアルタイムで通知されるため、迅速なフォローをすることで、精度の高い見込み顧客を獲得できるでしょう。
ランディングページ・問い合わせフォームの作成支援
MAには、ランディングページ(LP)やお問い合わせフォーム、資料請求フォームなどが作成できる機能が搭載されています。
MAで作ったフォームの場合、送信されたデータがデータベースに記録されます。また外部ツールとの連携機能を活用すれば、外部のフォームであっても自動で連携可能です。
API連携/CRM・SFA連携
MAには、APIという仕組みを利用して、別ツールのサービス機能を連携可能です。API連携を行うことで、機能の追加やサービス間の情報共有など必要な情報を一元管理できます。 また既存顧客の情報を管理するCRMと、営業活動を効率化するSFAとの連携も可能です。
各部門で違うツールを使っている場合でも、MAと連携することで、企業全体で同じデータを共有できます。オンラインでの行動情報に対して、適切な対応ができるため、マーケティング施策の効果検証に役立つでしょう。
ただし利用するツールによって、連携できるツールは異なるので注意が必要です。連携させたいツールがある場合は、MAツールを選ぶ際に連携できるかを確認しましょう。
レポ―ト作成/分析
MAには、自社が行ったマーケティング施策の結果をまとめるレポート作成/分析機能があります。 テンプレートが用意されているだけでなく、レポートのカスタマイズも可能です。
たとえば営業担当が求めている情報ニーズに合わせて、メールの開封率やクリック率、コンバージョン率、獲得リード数などの数値をまとめられます。
また項目をカスタマイズすることで、各部門にとって必要な情報のみを分析したレポートが作成できます。さらに定期的にメールでレポートを受け取れるので、効果測定のフローを効率化・仕組み化もできます。
広告との連携
MAはWeb広告との連携が可能で、幅広い層の顧客データを自動的に収集・管理できます。
リスティング広告やSNS広告など、複数の媒体で広告出稿をしている場合、手動でデータを収集して分析するのは大変です。収集・分析に時間がかかると施策変更のタイミングを逃してしまい、的確な軌道修正であっても効果が落ちる可能性があります。
MAを活用すれば多岐にわたる広告データも自動で一元管理でき、クリック率や成約に至るまでのルートも確認できます。
マーケティングオートメーション(MA)が効果を発揮する4つのマーケティングプロセス
MAは見込み顧客の段階に応じたプロセスで、提供する情報を変えることが大切です。見込み顧客は、以下4つのプロセスに分けられます。
- リードジェネレーション
- リードナーチャリング
- リードクオリフィケーション
- リードマネジメント
それぞれの段階において、効果的なアプローチ方法をご紹介します。
1.リードジェネレーション:見込み顧客を創出する
顧客へのアプローチは、リード情報を取得することから始まります。リード情報とは、見込み顧客のメールアドレスに紐づく氏名や会社名などの情報のことです。
このプロセスでは、ターゲットとなる顧客が興味を喚起するようなコンテンツを配信し、個人情報と引き換えにホワイトペーパーやeBookなどの資料をダウンロードできる仕組みを用意します。
自社製品に対する認知があまり深くない人を対象とするため、見込み顧客と自社の関係を築く「きっかけ」となるようなコンテンツを提供することが大切です。
「コンテンツ」の重要性に関する記事
2.リードナーチャリング:見込み顧客の購買行動を促進する
獲得した見込み顧客に対して、さらに購買意欲を促すためにアプローチを継続する必要があります。それが育成を意味する「リードナーチャリング」というプロセスです。
自社サイトの閲覧履歴やメールの開封状況などを計測し(リードスコアリング)、顧客の興味関心に沿ったメール配信やWEBコンテンツの出し分けを行います。
また、この段階の見込み顧客に対しては、セミナー運営やインサイドセールスを通じたオフラインのプロモーションも有効です。
「リードナーチャリング」に関する記事
3.リードクオリフィケーション:見込み顧客を選別する
見込み顧客の中から、自社サービスの購入の可能性が高い見込み顧客を選別します。選別した見込み顧客を営業部門に引き継いでアプローチしてもらうことで、営業効率の向上を図ります。
リードの選別にあたっては、セグメンテーション(グループ分け)やカスタマージャーニーマップ(接触から受注までの流れ)の設定、シナリオとスコアリングの設計が必要です。スコアリングでリードの属性や行動に点数付けを行います。たとえば、属性なら企業規模や業種、役職などで、行動なら資料のダウンロードやWebセミナーへの参加などで加点するといった方法です。
業種や組織によっては、スコアリングによる数値指標よりも営業部門が求める基準を優先するケースもあります。
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4.リードマネジメント:見込み顧客の情報を管理する
見込み顧客を獲得しても、すぐに購買行動に結びつくわけではありません。リード獲得からリードナーチャリング、リードクオリフィケーションを経て商談に至るまで、長期的なフォローが必要になります。 見込み顧客の情報管理や行動分析は、見込み顧客の引き上げや既存顧客へのクロスセル促進に有効です。
リードマネジメントでおもに扱われるのは以下の項目です。
- 情報取得先:どこでリード獲得したかの情報。自社サイトのLPやWeb広告など
- 連絡先:リードの企業名、所在地、担当者名、メールアドレス、電話番号など
- 興味・関心:サイト訪問回数やメルマガの開封率、eBookのダウンロード数など
- 購入意欲:コミュニケーションから判断される、購入意欲の強さを示す情報
適切なリードマネジメントを行うことで、売上の向上や営業の効率化につながります。
マーケティングオートメーション(MA)導入の注意点
MAの導入は魅力的なメリットが多い一方、あらかじめ注意しておかなければならない点も存在します。おもな懸念事項としては、以下の5つです。
- 導入に向けた組織編成が必要
- システム導入コストがかかる
- 短期間で成果を得ることが難しい
- コンテンツを十分に用意しておく
- 目標や計画といった設計を入念に行う
導入に向けた組織編成が必要
MAの導入効果を最大限に高めるには、MAを前提とした組織作りが必要になります。営業部門とマーケティング部門の間であまり連携がとれていない場合には、組織の再編成から取り組むことになるでしょう。部門間のコミュニケーションが十分に行われるようなマネジメントも重要です。
MAの導入と運用をスムーズに進めるには、知識とスキルを持った人材を用意しなければなりません。MA管理者やデータアナリスト、エンジニアを新規に雇用するか、社内で担当者を育成する必要があります。また、運用フェーズでどの部署が何の業務を担当するのか、あらかじめ割り当てておきます。
組織編成以外にも、データの移行やクレンジング(削除・修正)、整合性の確認といった事前準備もあり、MA導入から稼働まで期間が空いてしまうケースがあることも想定しておきましょう。
システム導入コストがかかる
MAツールは、基本的に有料なので、導入コストの発生は想定しておきましょう。オンプレミス型の製品は初期費用が高額ですが、クラウド型は定額料金が安価なため、負担を軽減できます。ただ、クラウド型はサービス利用中はライセンス料金が発生することは覚えておく必要があるでしょう。
また、近年はIT導入補助金のような、導入コストを軽減できる支援策も整いつつあります。自社の状況に応じて、最大限制度を有効活用しましょう。
短期間で成果を得ることが難しい
MAツールを導入したからといって、すぐに成果が得られるとは限りません。MAはあくまでマーケティング業務を支援するためのツールであり、使いこなせるようになるには時間がかかるものです。
MAツールを使って生産性向上や営業効果の改善を得るためには、担当者がMAツールを上手に使えるだけでなく、MAツールを取り入れた業務プロセスへ全社的に慣れてもらうことも必要になるでしょう。
コンテンツを十分に用意しておく
MAを活用したマーケティング施策で成果を上げるには、十分なコンテンツを用意しなければなりません。コンテンツが不足しているとリード獲得が困難になってしまうためです。
マーケティング施策に合わせて、オウンドメディアの記事作成やeBook・ホワイトペーパーの作成も進めていきましょう。特にオウンドメディアの記事の場合、流入数を増やすためにはSEOにも注力することが大切です。SNSの投稿やWeb広告から記事へ誘導する方法もあります。
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目標や計画といった設計を入念に行う
MAの運用では、ゴールとターゲットの設定、スコアリングの設計が必須です。
ゴール
「リード獲得数を前年比の1.5倍に増やす」「成約率を10%アップさせる」といった具体的な数値目標を掲げましょう。
ターゲット
ターゲットを絞り込み、マーケティング施策の最大化を目指します。
スコアリング
定量的な評価のために、見込み顧客の属性や行動を点数化することです。どの項目を高得点にするかは、運用しながら調整する必要があります。
マーケティングオートメーション(MA)導入の流れ
MAを導入して効果を得るためには、導入前の事前準備が大切です。ここでは、事前準備からMAの導入、運用するまでの流れをご紹介します。
課題認識
MAを導入して問題なく運用できているにもかかわらず、売り上げ目標に到達していないのなら、何らかの改善すべき課題があるはずです。シナリオ設計に不備があって成約につながるようなアプローチができていないのか、見込み顧客の獲得導線に問題があって絶対数がそもそも不十分なのか、といった分析を行い、現状の課題を洗い出す必要があります。
MAを導入するためには、部署ごとではなく企業全体で話し合いをする必要があります。情報の食い違いを防ぐために事前のデータ整理も不可欠です。ヒアリングを実施してそれぞれの改善点を出し合い、企業全体で各部門の課題を共有しましょう。
目標設計
自社の課題を把握したら、MAを導入する目的を明確にしましょう。課題が複数ある場合は、優先順位をつけて優先度の高い方から着手します。
目標設計をする際に、必要な情報の洗い出しができる作業は以下のとおりです。
見込み顧客が自社商品やサービスを認知して、購入するまでの道筋を整理したものを作成する
セグメンテーション:
見込み顧客を属性や行動履歴などでグループ分けする
ターゲティング:
ターゲットを明確にする ・スコアリング:見込み顧客を客観的に見て評価する
ホットリード定義:
獲得数を可視化するための施策やページの判断基準えを決める
営業アクション:
どの方法で営業するのかを決める
ゴール:
どうなれば目標達成なのかゴールを決める
目標設計を疎かにすると効果が得られず、効果検証の意味がなくなりかねません。そのため、MAを導入する前に、しっかりと目標を設計しましょう。何を改善するために、どのような機能が必要なのかまで検討することが大切です。
以下の「SMART分析」のフレームワークに当てはめ、適切な目標になっているか確認することを推奨します。
- S(Specific):具体的な/明確で理解しやすいか
- M(Measurable):測定可能な/数値や指標で表せるか
- A(Achievable):達成可能な/現実的な目標になっているか
- R(Relevant):関連性のある/企業のMVVやチームのゴールと関連があるか
- T(Time-bound):時間的な制約のある/期限が決まっているか
※MVV:ミッション(使命)・ビジョン(理念)・バリュー(行動指針)
登録対象範囲の確定
(MAを利用する際に、誰に対して、いつ、どのような内容で、どうやって情報を発信するのかを決めましょう。 “誰に対して”は自社がもつ顧客リスト全体か、または一部なのかを決めます。
MAの多くは、取り込む顧客データ数によって料金プランが異なるため、事前に顧客数を把握しておくことが大切です。 “情報を届けるタイミング”は、顧客が特定の行動を起こす場合や、指定した数を一定数超えたら情報を届ける場合などさまざまです。
配信方法には、メールや電話、SNS、ディスプレイ広告、アプリのプッシュ通知などがあります。どの方法で情報を届けるかも非常に重要なので、自社に合った方法を選びましょう。
業者・ツール選定
MAは、必要な機能や予算、実績などを加味して、業者とツールを選ぶ必要があります。 業者・ツール選定で最も重要なポイントは、必要な機能が利用できるかどうかです。
自社の課題を明確にすることで、ツールに導入すべき必要な機能を判断する材料となります。そのため、適切に必要と考える機能の洗い出しがおすすめです。
また導入サポートサービスなどサポート体制が整っている業者を選ぶのがおすすめです。MA導入には、ある一定のマーケティング知識が必要になります。
マーケティングに関する知識が少ないと感じる方や導入が初めての場合は、アドバイスを受けられる環境を整えておくと安心です。 数多くある複数のMAツールを比較して、自社に合ったツールを選びましょう。
運用リソースを確保
初期設定が終わった後でも、運用のルールや成果が出るまで繰り返し試行錯誤を行うことが重要なため、マーケティングやMAツールの操作に関する知識を持つ人材が必要です。
特に自社にとって最適なマーケティングは、何度も仮説を立てて実行・効果の測定後、分析して改善した施策を実行するサイクルを回すことで確立していきます。
このように改善のサイクルを回すためにも、運用を担当する人材を確保しなければいけません。 MAの効果を最大限発揮させるためにも、人材確保に関しては経営層の理解も得ておきましょう。
マーケティングオートメーション(MA)の導入
MAを導入したら、ツールの実装では、フェーズとスコアリングを設定し、目標設定で決めた施策を設定します。 データの連携では、整理したデータ設計をベースにして、古いデータの更新や重複しているデータを統合してから登録しましょう。
ツールにあるデータをまとめて管理し、使いやすくすることを「データクレンジング」と呼びます。たとえば検索しやすいように、誤字脱字や表記ゆれを修正したり、同じ顧客のデータを削除したりします。
ツールの実装やデータ連携ができたら、実稼働を想定したデモンストレーションを行ってみましょう。デモ環境を利用して実際にキャンペーンを打ち出し、アクションされているかを確認します。既存システム・ツールと連携できるMAを導入した場合は、相互に不具合なく運用できているか検証しましょう。
運用
MAを導入後、実際にツールを動かしながらキャンペーンを実施し、数値目標を達成できるように運用していくことが大切です。MAの個別設定やデータ登録など、機能を最大限に活用しましょう。
思ったように効果を得られない場合は、問題点を見つけ出し仮説を立てて、ひとつずつ課題を解決していくことが重要です。
運用が軌道に乗ったらPDCAを回して効果測定と解析を行い、新しい施策にフィードバックします。この作業を地道に繰り返すことが、マーケティングで大きな成果を得るための秘訣です。
マーケティングオートメーション(MA)の導入に向いている企業とは
MAは、多くの企業で活用できるシステムですが、前述のようなマーケティングプロセスを必要とする企業において、特に効果を発揮します。また、BtoBかBtoCかにかかわらず、「未接触の顧客が市場に多い」「名刺をたくさん保有している」「人材に余裕がある」といった特徴を持つ企業においても、導入する価値が高いといえます。
以下、MA導入に向いている企業例を紹介します。
検討期間の長い商材を扱うBtoC企業
保険、金融、不動産といった、購買までの検討期間が長く、高額になるような商品を扱うBtoC企業は、MAとの相性が良いといえます。顧客数が数万人から数百万になるほど非常に多い場合、MAなしでは長期にわたって多数の顧客との関係性を維持するのが難しく、商談まで到達できないケースが増えてしまうでしょう。
現在のBtoCの見込み顧客のほとんどは、それぞれの購入条件や検討結果に合う商品やサービスを求めて情報の検索を行います。インターネットだけでは完結できない商品の場合で」も、見込み顧客のWeb上における行動分析を踏まえ、必要に応じて営業部門と連携して効果的なアプローチを行うことで、購買行動につなげることが可能です。
法人営業が必要なBtoB企業
企業間取引における営業活動を行うBtoB企業においても、MAとの相性は良好です。近年BtoBマーケティングの重要性が浸透し、マーケティングプロセスを含めた顧客獲得に至るスキームが確立されつつあります。
購買者がインターネットを中心とした情報収集を通じて購買決定を行う点はBtoCと共通しており、MAの活用で効果的な顧客獲得を目指すことができます。
企業の決裁プロセスが長期化している影響もあり、高額なBtoB取引の場合は検討期間が数ヶ月にわたるケースも少なくありません。新規顧客では信頼関係の構築やニーズの深掘りをする必要があるため、成約まで1年以上かかる可能性もあります。見込み顧客となる企業の数が多くなるほど、MAの必要性が増すでしょう。
まとめ
MAは、最適な方法で見込み顧客を引き寄せ、顧客化するためのとても価値のある仕組みです。ご利用を検討している方は、自社が解決するべき課題から機能を選定して、使いこなせるツールを選びましょう。
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