マーケティングオートメーション(MA)とは?機能・メリット・選び方

更新日:2026-09-08 公開日:2019-06-17 by SEデザイン編集部

目次

マーケティングオートメーション(MA)の機能・メリット・選び方を解説マーケティングオートメーション(MA)とは、見込み顧客の獲得・育成・選別を、顧客データに基づいて自動化・効率化する仕組みです。


顧客の属性やWebサイト上の行動、メールへの反応などをもとに、対象者の抽出、情報の出し分け、スコアによる優先順位付け、営業部門への引き渡しまでを支援します。

本記事は、BtoB企業でMAの導入や乗り換えを検討している担当者を対象に、2026年9月時点で確認できる公式情報をもとに、MAの定義、CRM・SFAとの違い、部門別のメリット、機能の全体像、ツールの選び方、導入の流れ、生成AI時代の変化までを解説します。

この記事の要点

・MAは、見込み顧客の獲得・育成・選別を顧客データに基づいて仕組み化するツール。導入するだけで成果が出るものではない

・MA・CRM・SFAは中心となる役割が違うが、境界は製品によって重なる。名称ではなく対象業務とデータ連携で判断する

・BtoBでは複数の関係者が意思決定に関わるため、個人のスコアだけでなく企業・購買グループ単位で検討状況を捉える

・スコアは受注確率ではなく、自社が設定した基準による優先順位付けの指標。商談化・受注の実績で基準を見直す

・ツールは機能数ではなく、対象者数・送信量・利用人数・連携・AI利用料まで含めた総コストで比較する

・生成AI・AIエージェントが施策の作成や運用支援に入りつつある。人による承認と確認を運用に組み込むことが前提

マーケティングオートメーション(MA)とは

マーケティングオートメーション(MA)とは、顧客や見込み顧客の属性、Webサイト上の行動、メールへの反応、フォーム送信、イベント参加などのデータを管理し、設定した条件に応じてコミュニケーションやマーケティング業務を自動化する仕組みです。リードの獲得、育成、評価、営業への引き渡しに加え、既存顧客との継続的なコミュニケーションにも利用されます。

代表的な機能には、顧客情報の管理、セグメント作成、メールやWebコンテンツの出し分け、シナリオ配信、リード・アカウントスコアリング、営業担当者への通知、施策効果の分析などがあります。

たとえば、資料をダウンロードした見込み顧客へ関連情報を段階的に配信し、製品ページの閲覧やセミナー参加など、あらかじめ設定した条件を満たした場合に営業担当者へ通知できます。BtoBでは複数の担当者が意思決定に関わるため、個人単位だけでなく、企業や購買グループ単位で行動を評価する機能も利用されています。

近年は、生成AIによるメール件名・本文の作成支援、顧客データの分析、配信内容やタイミングの候補提示に加え、AIエージェントが一部の業務を実行する機能も登場しています。ただし、MAがマーケティング戦略やコンテンツの品質を自動的に保証するわけではありません。対象顧客、シナリオ、営業へ引き渡す条件、AIの利用範囲などは、自社の方針に沿って設計・検証する必要があります。

MAと周辺システムの主な役割は次のとおりです。

システム 主な役割
MA 見込み顧客への施策実行、育成、スコアリング、営業連携
CRM 顧客情報や対応履歴を一元管理し、顧客との関係を維持・向上する
SFA 商談、案件、営業活動、売上見込みなどを管理・支援する
CDP 複数チャネルに分散した顧客データを収集・統合・分析する

実際の製品ではこれらの機能が重なっているため、製品名やカテゴリだけでなく、データの連携範囲と自社の業務プロセスに合うかを確認することが重要です。

MAの市場規模

MAの市場規模は、調査会社が対象とする製品やサービスの範囲によって大きく異なります。MA単独で集計した数字と、CRM/SFAやCDPを含めて合算した数字は、そのまま比較できません。

ITRがMA単独で集計した調査では、国内MA市場の2022年度の売上金額は269億円でした。2027年度はBtoB向け220億円、BtoC向け335億円と予測されています(出典:ITR「国内MA市場規模推移および予測」)。

導入状況については、Nexalが国内626,003社の企業サイトを調査したところ、2023年5月時点でMAの実装を確認できた企業は9,444社(1.5%)上場企業では3,850社中562社(14.6%)でした(出典:Nexal「国内MAツール導入企業数調査」)。

ただしこの調査は、主要17ツールのタグ実装をWebサイトから検出する方式です。タグを公開部分に置かない利用形態や、対象外の製品は数えられないため、「MAを使っている企業の割合」そのものではない点に注意してください。

MAの効果

MAを活用すると、対象者の抽出、配信、スコア更新、担当者への通知といった反復業務を自動化し、施策を一定のルールで継続しやすくなります。顧客の属性や行動に応じた情報提供、営業が対応する企業・担当者の優先順位付け、マーケティングと営業の情報共有にも役立ちます。

一方で、スコアは閲覧やクリックなどのデータから関心度を推定した値であり、購買意欲や受注確率を確定するものではありません。スコアと実際の商談化率・受注率を照合し、条件を継続的に見直す必要があります。

効果測定では、メール開封率だけでなく、クリック率、フォーム送信数、MQLから商談への転換率、創出パイプライン、受注・売上などを確認します。Web行動やメールへの反応を取得する際は、個人情報保護法や特定電子メール法を踏まえ、利用目的、同意、配信停止、データ保持期間もあわせて設計します。

マーケティングオートメーションとCRMの違いは何ですか?

MA・CRM・SFAの違いと役割分担MA、CRM、SFAはいずれも顧客データを扱いますが、中心となる目的と業務が異なります。ただし現在は、CRMを共通のデータ基盤としてMAやSFAの機能をまとめた製品もあり、境界は製品によって変わります。名称だけで判断せず、対象業務、管理するデータ、部門間の連携方法を確認することが大切です。

比較軸 MA CRM SFA
主な目的 見込み顧客や企業の関心を把握し、施策の実行・育成・評価を支援する 顧客との接点を一元化し、継続的な関係構築を支援する 営業活動や商談を可視化・標準化し、受注までを支援する
主な利用部門 マーケティング、インサイドセールス 営業、マーケティング、カスタマーサービス、カスタマーサクセス 営業、営業企画、マネジメント
主なデータ 属性、Web行動、メール反応、キャンペーン参加、スコア、配信同意 企業・担当者情報、購買・契約、問い合わせ、各部門の接点履歴 リード、商談、営業活動、受注確度、見積もり、売上予測
中心となる範囲 獲得から育成、商談創出、既存顧客への継続施策 見込み顧客から既存顧客までのライフサイクル全体 営業への引き渡しから商談・受注、受注後のフォロー

CRMとMAの違い

CRMは、Customer Relationship Managementの略で、顧客関係を管理・改善する考え方と、それを支えるシステムの両方を指します。CRMシステムには、企業名や担当者名などの基本情報に加え、商談、購買、問い合わせ、メール、サポートなどの接点履歴を集約します。

一方MAは、顧客や見込み顧客の属性・行動データをもとに対象者を抽出し、メール配信やナーチャリング、スコアリング、キャンペーンの効果測定などを行う仕組みです。

したがって両者の違いは、「自動化するのがMA、情報を管理するのがCRM」という二分ではありません。MAはマーケティング施策の実行と改善に、CRMは顧客接点全体を支える共通データ基盤に重点があります。現在のCRMにはマーケティングの自動化機能やAI機能を備えた製品もあり、MAの機能をCRM基盤上で利用できる場合もあります。

SFAとMAの違い

SFAは、Sales Force Automationの略で、営業活動を支援する仕組みです。商談の進捗、活動履歴、タスク、受注確度、売上予測などを管理し、営業プロセスの可視化・標準化を支援します。

MAがマーケティング施策や見込み顧客の育成を中心に扱うのに対し、SFAは営業担当者が進める商談や受注までのプロセスを中心に扱います。ただしSFAはCRM製品の一機能として提供されることも多く、リード管理やスコアリングなどMAと重なる機能もあります。導入時は、製品区分よりも必要な機能とデータ連携を確認しましょう。

なお、SFAによって商談や活動を可視化し、営業プロセスの標準化を支援することはできますが、営業担当者の能力差の解消や利益の改善が、システムの導入だけで実現するとは限りません。運用ルールと入力の定着があってはじめて機能します。

使い分けよりも、双方向のデータ連携が重要

MAとCRM/SFAは、どちらを使うかを選ぶものではなく、つないで使うものです。MAから行動履歴、スコア、引き渡し理由、同意状態を共有し、CRM/SFAから商談段階、受注・失注、売上などを戻すことで、施策が商談や売上にどう結び付いたかを評価できます。どのシステムを各項目の正本とするか、重複排除や更新頻度も設計の対象です。

また2026年時点では、MA・CRM・SFAのいずれの領域でも生成AIやAIエージェントの搭載が進み、「自動化=MA」という区分では説明しきれなくなっています。製品を比較するときは、文章生成の有無だけでなく、AIが参照するデータ、実行できる操作、人による承認、権限管理、監査ログ、日本語対応、追加料金を確認します。

マーケティングオートメーション(MA)の歴史

マーケティング業務の自動化は、顧客データベースやCRMが普及し始めた1990年代に注目されるようになりました。一方、現在につながる概念としての「Marketing Automation」は、学術文献では、MITのJohn D.C. Little氏が2001年に発表した「Marketing Automation on the Internet」で整理されたとされています。

時期 主な出来事 MAの変化
2000年代 ExactTargetなどのクラウド型マーケティング基盤が登場。Marketoは2006年に設立 メール配信中心の仕組みから、行動データ、リード育成、スコアリング、複数チャネルを扱うSaaSへ発展
2010〜2018年 IBMによるUnica買収(2010年)、SalesforceによるExactTarget買収(2013年)、AdobeによるMarketo買収(2018年) MAがCRM、分析、コンテンツ管理などと統合され、マーケティングと営業をつなぐ基盤として位置づけられる
2013〜2015年(日本) Oracle Eloquaの国内提供(2013年11月)、Marketoの日本法人設立と日本語版提供(2014年3月)、国産SATORIの提供開始(2015年9月) この時期が国内市場の立ち上がりに当たる。「MA元年」は2014年説と2015年説が併存する業界表現
2018〜2022年 GDPRの適用開始(2018年5月25日)、日本の改正個人情報保護法の全面施行(2022年4月1日) データの収集・連携に加え、同意、利用目的、第三者提供などのガバナンスが重視されるようになる
2024年末以降 生成AIやAIエージェントが、コンテンツ作成、顧客分析、キャンペーン設計・運用支援に組み込まれる 設定したルールを実行する仕組みから、人が目標や制約を定め、AIが施策を支援する仕組みへ活用範囲が広がる

なお「MA元年」は公式な区分ではありません。単年で断定せず、2013〜2015年を国内市場の立ち上がり期として捉えるのが実態に近い表現です。

マーケティングオートメーション(MA)が必要になった背景

BtoBの購買行動の変化とMAが必要になった背景BtoBの購買行動は、営業担当者から説明を受けて検討を始める形から、買い手がWebサイト、動画、SNS、オンラインセミナー、比較・レビュー情報、生成AIなどを使って自ら調査し、候補を絞り込む形へと変化しています。

その結果、企業には複数の接点から得られる顧客データを整理し、検討段階や関係者の役割に応じて、一貫した情報を継続的に届ける仕組みが求められるようになりました。こうした業務を支援するのがMAです。

顧客との接点が増え、データが分散するようになった

かつてのBtoB営業では、訪問営業や電話が主要な接点でした。現在は、検索、自社サイト、メール、SNS、動画、ウェビナー、展示会、比較サイト、生成AIなど、顧客が企業や製品を知る経路が増えています。

一つの企業でも複数の担当者が異なるチャネルを利用するため、閲覧履歴、資料請求、イベント参加、問い合わせ、商談履歴などの情報が別々のシステムに分散しやすくなります。MAをCRMやCDPと連携させることで、利用目的と本人への説明に配慮しながら顧客情報を整理し、接点をまたいだコミュニケーションを設計しやすくなります。

ただし、取得できるデータが増えたからといって、無制限に利用できるわけではありません。Cookieなどの識別子や閲覧履歴の取り扱い、第三者へのデータ送信、メール配信について、適用される法令と各サービスの仕様を確認する必要があります。

顧客が売り手に会う前に情報収集と比較を進めるようになった

現在の買い手は、営業担当者へ問い合わせる前から、製品の特徴、価格、導入条件、事例、サポート内容などを調べています。日本のBtoB購買調査では、売り手と接触する買い手の63.5%が、接触した時点ですでに複数候補のリストアップ以降まで検討を進めていました(出典:HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」。従業員50人以上の企業に勤務するBtoB購買関与者1,573人が対象)。

このため企業には、検討初期から比較・稟議の段階まで、買い手が必要とする情報を適切なタイミングで提供することが求められます。MAを利用すると、資料の閲覧、フォーム入力、セミナー参加などの行動に応じて情報提供を設計し、関心が高まった見込み顧客を営業へ連携できます。

あわせて、生成AI・AI検索も新しい情報収集の経路になりました。同じ調査では、41.6%が「生成AI・AI検索が購買判断に与える影響が増えた」と回答しており、候補の洗い出し、各社の比較、比較表や社内説明用の要約づくりにもAIが使われています。Google検索の「AIモード」も2025年9月から日本語で提供が始まりました。企業側には、人だけでなくAIにも正しく理解されやすい、具体的で更新された製品情報を公開することが求められます。

複数の関係者による合意形成が必要になった

BtoBの購買は、担当者一人だけで決まるとは限りません。利用部門、情報システム部門、セキュリティ部門、購買部門、経営層などが、それぞれ異なる観点から製品を評価します。

前掲の2026年の調査では、購買の情報収集・比較・稟議・承認・決裁に5人以上が関与したケースが46.9%ありました。意思決定上の課題としては「費用対効果を社内で説明しにくい」が上位に挙がっています。

そのため、個人の関心だけを基準にするのではなく、企業や購買グループ全体の動きを把握することが重要です。MAでは、担当者ごとの情報提供に加えて、費用対効果、セキュリティ、運用体制、導入手順など、関係者の合意形成に必要な情報を継続的に届ける設計が求められます。

なお、個人ごとに異なる主張を出し分けることが、かえって社内の合意形成を妨げる場合もあります。MAの役割は「個人への最適化」だけでなく、同じ企業の関係者に一貫した情報を届けることでもあります。

【部門別】マーケティングオートメーション(MA)を導入するメリット

MAを導入すると、見込み顧客に関するデータの管理、施策の実行、営業部門への情報共有を一つの流れとして運用しやすくなります。恩恵を受けるのはマーケティング部門だけではありません。まず部門別に整理します。

部門 主なメリット 確認したい指標の例
マーケティング部門 リード情報の一元管理、育成施策の自動化、関心の高い見込み顧客の絞り込み、施策効果の数値化 有効リード数、クリック率、資料請求率、MQL数
営業部門 検討が進んだタイミングでのアプローチ、事前情報を踏まえた提案準備、過去に見送りとなった企業の再フォロー 商談化率、初回接触までの時間、失注理由の内訳
経営層 マーケティング投資と成果の関係を確認できる、顧客情報の属人化を防げる、営業リソースの配分を検討しやすい 創出パイプライン、受注額、施策別の費用対効果

ここからは、主なメリットを5つの観点から解説します。ただし、導入しただけで成果が生まれるわけではありません。データの品質、シナリオやコンテンツの設計、営業部門の対応、同意・配信停止の管理を継続的に見直すことが前提になります。

見込み顧客との関係構築を効率化できる

MAでは、見込み顧客の属性、閲覧・クリック・フォーム送信などの行動、ライフサイクルの段階に応じて対象者を分類し、メール配信や担当者への通知を自動化できます。定型的なリスト作成や配信作業を減らしながら、検討状況に応じた情報提供を行いやすくなる点がメリットです。

一方で、配信を自動化すれば手間がかからなくなるわけではありません。スコアの条件、シナリオ、コンテンツ、除外条件の設計・テスト・更新は人が行います。配信頻度や除外条件を設定し、クリック、資料請求、商談化などの反応を確認しながら改善していく作業が必要です。

BtoBでは、個人単位のスコアだけでなく、同じ企業に属する関係者の役割や行動をまとめた「購買グループ」単位で状況を捉える方法もあります。

マーケティング施策の効果検証がしやすくなる

MAにメール、Webフォーム、セミナー、営業活動、商談・受注などのデータを集約すると、見込み顧客がどの接点を経て商談へ進んだかを確認しやすくなります。

ここで区別したいのが、「見える化」と「効果があったことの証明」は別物だという点です。コンバージョンを特定の接点へ割り当てるアトリビューションは接点への配分であり、施策によって成果が増えたことを確認する因果検証とは異なります。重要な施策ではA/Bテストや対照群(ホールドアウト)を取り入れ、受注額や商談化率まで追跡すると、改善判断の精度を高められます。

また、MAにヒューマンエラーが介在しないわけではありません。自動処理であっても、入力データ、設定、ルール、AIへの指示に起因する誤りは起こり得ます。影響の大きい処理ほど、人による確認とモニタリングを組み込む必要があります(参考:経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン第1.2版」)。

メールの開封率にも限界があります。Appleのメールプライバシー保護は、利用者がメールを読んだかどうかにかかわらずリモートコンテンツを取得するため、開封の記録が実際の閲覧を表さない場合があります。開封率だけで購買意欲を判断せず、クリック、フォーム送信、商談化などを併用してください。

他部門との連携を強化できる

MAとCRM・SFAを連携すると、ライフサイクルの段階、適合度やエンゲージメントのスコア、過去の接点などを営業部門と共有しやすくなります。顧客情報が特定の担当者だけに留まる状態も防ぎやすくなります。

ただし、スコアとステージは受注確率ではありません。スコアは自社が設定した適合度・行動条件に基づく評価値、ステージは営業・マーケティングプロセス上の区分です。MQL・SQLの定義、引き渡しの条件、対応期限をマーケティング部門と営業部門で合意し、商談化の実績をもとに基準を見直すことで、連携は改善していきます。

成果はデータの品質、スコア基準、営業側の対応、連携設定に左右されます。ツールの導入そのものが解決策になるわけではない、という前提で運用設計を行いましょう。

マーケティング業務を効率化できる

MAで効率化しやすい業務と、あわせて確認したい指標の例は次のとおりです。

リードの段階 自動化・支援できる業務の例 確認したい指標の例
リード獲得 フォーム回答の登録、担当者への通知、リスト更新 有効リード数、獲得単価
リード育成 セグメント作成、条件に応じたメール・コンテンツ配信 クリック率、再訪率、資料請求率
リード選別・引き渡し 適合度・行動スコアによる分類、営業への通知・割り当て MQL承認率、商談化率、対応時間
改善 レポート作成、テスト結果の集計、シナリオの見直し 受注率、受注額、施策別の費用対効果

近年は、一部の製品で生成AIやAIエージェントを利用し、キャンペーン案、メールやランディングページの初稿、ジャーニーの作成、分析を支援できるようになっています。AIの出力はそのまま配信せず、事実、ブランド表現、対象者、権限、個人情報の扱いを担当者が確認する運用が適しています。

システム連携が強化できる

MAをCRM・SFA、CDP、ウェビナーツール、チャットツールなどと連携すると、マーケティング接点から商談・受注までのデータをつなぎ、顧客対応や分析に利用しやすくなります。

ただし、実際に連携できるデータ、更新の方向、同期の頻度、APIの上限は製品と契約プランによって異なります。導入時には顧客ID、データ項目、重複処理、アクセス権限、同期エラー時の対応を定めておきましょう。閲覧履歴などの取得・外部連携については個人情報保護法上の取り扱いを確認し、広告宣伝メールでは同意、例外要件、配信停止を適切に管理する必要があります。

マーケティングオートメーション(MA)のおもな機能

MAのおもな機能をリード管理・育成・選別・分析/連携の4分類で整理MAツールは、見込み顧客に関するデータを集約し、対象者の抽出、施策の実行、営業への引き継ぎ、効果測定を支援します。

ここで注意したいのが、搭載機能や利用条件は「製品」だけでなく「契約プラン」によっても変わることです。スコアリング、ワークフロー、AI、アトリビューションなどは、同じ製品でもプランによって利用の可否が異なります。「どのMAもベースは同じ」と考えず、自社に必要な機能、連携先、データ量、権限、追加料金を導入時に確認してください。

おもな機能は、次の4つに整理できます。この分類は、後述する「MAが効果を発揮する4つのマーケティングプロセス」と対応しています。

分類 おもな機能 利用時の注意点
リード管理 見込み顧客・企業情報の一元管理/ランディングページ・フォームの作成 一元化しても自動的に正しい名寄せが行われるとは限らない。照合に使う識別子と重複処理のルールを決める
リード育成 セグメント作成とワークフロー/ジャーニー設計/メールマーケティング 分岐条件の重複、処理の循環、データ反映の遅延、同じ相手への過剰な接触を防ぐ設計が必要
リード選別 スコアリングと優先順位付け/営業担当者への通知・引き継ぎ スコアは購入意欲を確定する値ではない。受注・失注データで配点やしきい値を定期的に検証する
分析・連携 レポート・分析・アトリビューション/CRM・SFA・外部サービス連携/広告との連携/AIによる作成・分析支援 採用するモデルや連携範囲で結果が変わる。指標の定義、集計期間、同期方向、権限、API上限を確認する

リード管理:見込み顧客・企業情報の一元管理とフォーム作成

Webフォーム、展示会、セミナー、メール、営業活動などから得た情報を、担当者や会社の情報として集約します。BtoBでは、氏名・メールアドレスだけでなく、会社名、部署、役職、業種、企業規模、商談状況といった項目をひも付けて管理します。

ただし、保存できる項目だからといって何でも収集してよいわけではありません。個人情報の利用目的は本人が予測できる程度に具体化する必要があり、「マーケティング活動に用いるため」だけでは具体性を欠くとされています(参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)。

また、情報を一元化するだけでは重複や誤った名寄せは防げません。メールアドレス、会社のドメイン名、CRMのレコードIDなど、照合に使う識別子と重複処理のルールを決めておく必要があります。

ランディングページや問い合わせフォーム、資料請求フォームを作成し、送信データから顧客情報を作成・更新したり、後続の処理を開始したりする機能もこの分類に含まれます。なお「外部のフォームでも自動で連携できる」とは限りません。トラッキングコードの設置が前提になるほか、iframeやSPA(シングルページアプリケーション)のように自動収集できない構成もあり、その場合はAPIや個別のコネクターが必要になります。

リード育成:セグメント作成・ワークフローとメールマーケティング

MAの中核は、データを保存することではなく、属性・行動・スコア・商談状況などを条件に対象者を抽出し、メール送信、待機、条件分岐、担当者の割り当て、タスク作成といった処理を自動で実行することです。対応する製品では、メール以外のチャネルを含むジャーニーも設計できます。

メール機能では、一斉配信、セグメント配信、フォーム送信後のフォロー、ステップメール、配信停止の管理、A/Bテストなどを行えます。配信前には送信の同意と配信停止の状態を確認しましょう。日本の広告宣伝メールは例外を除いて事前同意(オプトイン)が原則で、送信者名や配信停止方法などの表示義務もあります。

あわせて、受信側の要件も満たす必要があります。Gmailは全送信者にSPFまたはDKIMを求め、個人向けGmail宛てに1日5,000通以上を送る送信者にはSPF・DKIM・DMARC、低い迷惑メール率、マーケティングメールのワンクリック登録解除などを求めています。2025年11月からは、要件を満たさないメールへの対応が段階的に強化されています(出典:Google「メール送信者のガイドライン」)。

リード選別:スコアリングと営業への通知

Web閲覧、フォーム送信、イベント参加などのエンゲージメントと、役職、業種、会社規模などの適合度を数値化し、対応の優先順位付けに利用します。BtoB向けの製品には、複数の担当者の行動を会社単位に集約するアカウントスコアもあります。減点や、時間の経過にともなうスコアの減衰を組み合わせる設計も一般的です。

営業への通知は、問い合わせ、料金ページの閲覧、スコアの到達など、あらかじめ定めた条件を満たした場合に行います。ただし、すべての行動を常に個人単位・リアルタイムで検知できるわけではありません。外部サイトではトラッキングコードなどの実装が必要で、Cookieの同意状況、ブラウザーの設定、人物の識別状況、集計の遅延に影響されます。

また、通知が届いただけで商談化するわけではないため、対応期限、担当者、引き継ぐ情報をルール化しておきましょう。チャットツールへの通知に対応しているかは、製品とコネクターによって異なります。

分析・連携:レポート、CRM・SFA連携、広告連携、AIによる支援

レポート・分析では、獲得リード数、MQL・SQL数、商談化率、受注率、パイプライン、売上などを可視化します。対応する製品では、複数の接点に成果を配分するアトリビューション分析も行えます。同じデータでもファーストタッチ、ラストタッチ、マルチタッチなどのモデルによって評価が変わるため、指標の定義、集計期間、除外条件、使用したモデルをレポートに明記してください。レポートのカスタマイズやスケジュール配信の可否は、製品・契約によって異なります。

CRM・SFA・外部サービスとの連携では、専用のコネクター、データ同期、API、Webhookなどを使い、担当者、会社、商談、キャンペーン、活動履歴などを共有します。APIは連携の手段であって、一元管理を保証する機能ではありません。同期の方向、更新の優先順位、固有ID、削除・配信停止の反映、APIの認証・権限・上限・廃止予定を確認しておく必要があります。

広告との連携では、対応する広告媒体からリードを取り込み、セグメントを広告オーディエンスに同期したり、商談・受注などのオフラインコンバージョンを広告側へ返したりできます。ただし対応媒体や同期項目は製品ごとに異なり、オーディエンスが広告ネットワーク側ですべて一致するとは限りません。個人データ・個人関連情報の提供条件や、広告媒体の規約も確認します。

AIによる作成・分析・運用支援では、メールやランディングページの下書き、データの要約、スコアの作成、施策の提案、自然言語によるジャーニーの作成・監視などを支援できます。AIの出力には誤りが含まれる可能性があるため、公開・配信・顧客データの更新といった操作には、承認、権限、監査ログ、入力データの制限を設け、人が確認する運用にします。

マーケティングオートメーション(MA)が効果を発揮する4つのマーケティングプロセス

MAは、見込み顧客を4つの段階へ一方向に進める仕組みではありません。「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」の3つは活動、「リードマネジメント」はそれらを横断して管理するプロセスです。

実際の検討は一方向には進みません。営業が「時期尚早」と判断したリードを再びナーチャリングへ戻す経路も必要になります。

プロセス 目的 MAで行う主な施策 主な確認指標
リードジェネレーション 対象企業・担当者との接点をつくる フォーム、資料、セミナー・ウェビナー、イベント、問い合わせ、広告から接点と流入元を記録する 有効リード数、対象企業数、獲得率、商談につながった流入元
リードナーチャリング 課題理解と検討を支援する 属性・関心・行動に応じたメール、Webコンテンツ、ウェビナー、広告、インサイドセールスを組み合わせる クリック、返信、再訪、資料閲覧、商談予約、次段階への移行率
リードクオリフィケーション 営業が対応すべき対象を判断する 企業・担当者の適合度、行動、明示されたニーズや導入時期を評価し、営業へ通知・割り当てる 営業受入率、商談化率、失注・差し戻しの理由
リードマネジメント 上記の全体を継続的に管理する データ統合、重複排除、同意・配信設定、企業とのひも付け、ステータス・担当者管理、CRM連携 段階別の転換率、パイプライン、売上、滞留期間

1.リードジェネレーション:見込み顧客との接点をつくる

リードジェネレーションは、自社が対象とする企業や担当者との接点をつくり、継続的にコミュニケーションできる状態にする活動です。ホワイトペーパーやeBookのダウンロードは手法の一つであり、問い合わせ、デモ申込、ウェビナー、展示会、広告、SNSなど複数の接点を組み合わせます。

フォームで氏名やメールアドレスなどを取得するときは、必要な項目を選び、利用目的や配信内容を送信前に確認できるようにします。流入元と取得日時、同意・配信停止の状態も記録しておくと、その後の施策やデータ管理に利用しやすくなります。

2.リードナーチャリング:検討に必要な情報を届ける

獲得したリードに対し、担当者の課題、役割、関心、検討状況に合わせて情報を届けます。メールやWebコンテンツだけでなく、ウェビナー、オンライン商談、広告、インサイドセールスなどを組み合わせ、反応に応じて次の情報や有人対応へつなげます。

なおインサイドセールスは、電話、メール、Web会議などを用いる非対面の営業活動であり、「オフラインの施策」ではありません。

評価では、メールの開封を補助的なシグナルにとどめ、クリック、返信、フォーム送信、重要ページの閲覧、商談予約など、より意図の明確な行動と組み合わせます。前述のとおり、開封の記録は実際の閲覧と一致しない場合があるためです。

3.リードクオリフィケーション:営業対応の優先順位を判断する

クオリフィケーションでは、「自社の対象顧客に合っているか」という適合度と、「現在どの程度関心・検討意向があるか」というエンゲージメントを分けて評価します。企業規模、業種、役職などの属性だけでなく、問い合わせ、デモ申込、料金・製品ページの閲覧、ウェビナー参加、会話で確認した課題や導入時期なども判断材料になります。

カスタマージャーニーマップやシナリオの設計は有効ですが、すべてが必須というわけではありません。営業と合意した行動・属性の基準を、成約・失注の実績で繰り返し検証していくほうが実務的です。BtoBでは、個人に加えて、同じ企業に所属する複数担当者の役割や行動を企業・購買グループ単位で確認する方法もあります。

4.リードマネジメント:データと部門連携を横断的に管理する

リードマネジメントは4番目の段階ではなく、獲得から育成、評価、営業への割り当て、差し戻し・再育成までを横断して管理するプロセスです。獲得経路、連絡先、企業との関係、関心分野、行動履歴、同意・配信設定、スコア、ライフサイクル段階、担当者などを継続的に管理します。

MAとCRM/SFAのデータを連携し、営業への割り当て条件、対応期限、受入・差し戻しの条件を明確にしましょう。営業が「時期尚早」と判断したリードは除外するのではなく、理由を記録して適切なナーチャリングへ戻します。成果はリード数だけで判断せず、営業受入率、商談化率、パイプライン、売上への寄与まで確認します。

MAツールの選び方

MAツールは、搭載機能の数ではなく、自社の業務プロセスに合うかと、運用に必要な総コストで比較します。候補は次の項目を同じ条件で並べて確認しましょう。

評価軸 確認する項目
業務適合性 対象チャネル、シナリオ、スコアリング、営業への通知・割り当て
データ連携 CRM/SFA、Web、広告、ウェビナーとの連携、同期の方向、API上限、データの出力
法令・セキュリティ 同意・配信停止の管理、権限、監査ログ、SSO、データの保存地域、国外処理
運用性 日本語のUI・サポート、管理者向け機能、テスト環境、障害時の支援
費用 初期費用、対象者数、利用人数(シート)、送信量、連携オプション、AIの従量費
AI機能 利用目的、参照するデータ、人による承認、ログ、誤生成時の停止手段、日本語での品質

機能比較ではなく総保有コストで選ぶ

MAの費用は、ライセンス料だけでは決まりません。マーケティングの対象となる顧客数、利用人数、メール送信量、API、連携開発、導入支援、運用にあたる人員、コンテンツ制作、AIの利用量まで含めた複数年の総保有コスト(TCO)で比較します。

「無料プランがあるかどうか」も製品によって異なるため、「MAツールは基本的に有料」と一括りにはできません。あわせて、最低契約期間、途中でのプラン変更、データの出力形式、解約後の削除条件も確認しておくと、後から選び直す余地を残せます。

BtoBとBtoCで見るべき観点が変わる

BtoBでは、複数の関係者が意思決定に関わるため、企業・購買グループ単位での評価、CRM/SFAとの連携、営業への引き渡し条件の共有が重要になります。

BtoCでは、顧客数が多く、購買や利用の履歴に応じた継続的なコミュニケーションが中心になります。顧客IDと行動・購買データを連携できるか、Web・アプリ・店舗・コールセンターなど複数の接点を統合できるかが判断軸になります。

国内で選ばれている主要なMA製品

国内のBtoB領域でよく候補に挙がるMA製品には、次のようなものがあります。

  • BowNow
  • Marketing Cloud Account Engagement(Salesforce)
  • HubSpot
  • Adobe Marketo Engage
  • SATORI

なお本記事では、シェア率や順位は掲載していません。調査ごとに対象とする製品や集計方法が異なり、年単位で変動するためです。製品名から候補を絞ったあとは、上表の評価軸に沿って自社の条件で比較してください。

選定の実務では、機能の網羅性よりも使いやすさが重視される傾向があります。SEデザインが415人を対象に実施した調査でも、MAツール選定で「使いやすさ」が重視される理由と、年間費用の相場が確認されています。設定や運用を担う人が無理なく扱えるかどうかは、導入後の定着に直結します。

マーケティングオートメーション(MA)導入の注意点

MAの導入では、ツールの機能だけでなく、運用体制、顧客データ、法令対応、費用、効果測定を一体で設計することが大切です。導入前と運用開始後に、次の項目を確認しましょう。

確認項目 導入前に決めること 運用開始後に確認すること
運用体制 責任者、設定変更の承認者、営業への引き渡し条件、問い合わせ窓口 属人化、引き渡しまでの時間、営業からのフィードバック
目標・計測 基準値、目標値、対象期間、対象顧客、KPIの定義 リード数だけでなく、商談化率、パイプライン、売上への寄与
データ・連携 CRMとの同期範囲、項目定義、重複処理、正とするシステム 同期エラー、欠損・重複、配信停止情報の反映
法令・セキュリティ 利用目的、同意・配信停止の管理、権限、委託先、データの保存場所 権限の棚卸し、ログ、同意記録、インシデント対応
費用・契約 対象者数、送信量、利用人数、API、導入支援、AI利用料 利用量の超過、不要なライセンス、更新・解約の条件
メール到達性 SPF・DKIM・DMARC、登録解除の導線、送信ドメイン 迷惑メール率、バウンス率、配信停止処理
コンテンツ・AI 検討段階ごとのコンテンツ、AIの利用範囲と承認者 情報の正確性、ブランド表現との整合、更新頻度、AIの利用量

導入に向けた運用体制を整える

組織の再編成や専門職の新規採用が、常に必要になるわけではありません。必要なのは、マーケティング、営業、IT、法務・セキュリティなどの関係者の間で、目的、責任者、権限、リードの引き渡し条件を合意することです。既存の組織のまま横断チームや運用会議を置く方法もあり、再編成は選択肢の一つにすぎません。

同様に、MA管理者・データアナリスト・エンジニアの3職種をそろえることも一律の要件ではありません。運用責任者は明確に置いたうえで、設定や連携の難易度に応じて、社内の各部門と外部の支援会社で役割を組み合わせます。特に、リードを営業へ渡す条件、対応期限、差し戻しの方法、設定変更の承認手順は事前に決めておきましょう。

ライセンス料以外も含めて費用を試算する

クラウド型MAの料金は、単純な定額とは限りません。基本料金に加えて、マーケティングの対象となる顧客数、利用人数、メール送信量、API、導入支援、AIの利用量などが費用に影響します。初年度だけでなく、顧客データや利用部門が増えた場合を含む複数年で比較しましょう。

中小企業・小規模事業者は、補助金を利用できる可能性があります。「IT導入補助金」は、2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」へ名称が変わりました。ただし、あらかじめ登録されたITツールだけが申請の対象で、MA製品なら無条件に使える制度ではありません。対象者、登録ツール、公募期間は年度・公募回で変わるため、申請時点の公式情報を確認してください。

顧客データと法令・セキュリティを先に設計する

MAでは、氏名やメールアドレスだけでなく、Cookieなどによる閲覧履歴も扱います。閲覧履歴は「個人関連情報」に該当し得るため、他の顧客情報と結び付ける場合は、利用目的、本人への通知・同意、第三者提供の有無を確認します。

データ移行では、削除や修正だけでなく、重複の統合、表記や形式の標準化、欠損値の処理、配信停止状態の維持、連携エラーの監視までを設計に含めます。「複数のデータをまとめて管理すること」はデータ統合であり、誤り・不整合・重複を検出して修正するデータクレンジングとは別の作業です。

クラウドサービスの選定時には、権限管理、多要素認証、ログ、障害対応、再委託先、データの保存国、解約時のデータ返却・消去の条件も確認しましょう。

なお、改正個人情報保護法が2026年7月17日に公布されました。主要部分の施行日は公布から2年以内とされており、政令・規則・ガイドラインは整備中です。現時点の義務として先取りする必要はありませんが、施行に向けた確認の予定は立てておくと安全です。

メール認証と配信停止の処理を確認する

MAを導入しても、メールが迷惑メールとして扱われれば施策は機能しません。SPF、DKIM、DMARCを設定し、ワンクリックでの登録解除に対応したうえで、バウンス率、迷惑メール率、送信ドメインの評価を継続的に確認します。

あわせて、広告宣伝メールの同意記録と配信停止の状態を、MAとCRMの間で整合させておく必要があります。

生成AI・AIエージェントの権限と品質管理を決める

ここ1年ほどで大きく変わった論点です。主要な製品では、コンテンツの生成に加え、対象者の抽出やキャンペーンの実行を支援するAIエージェントが提供されています。

導入時には、自動実行を認める範囲、人による承認が必要な操作、AIが参照できる顧客データ、出力の確認方法、操作ログ、誤送信時の停止手段を定めておきましょう。AIの機能名や提供状況は変動が速いため、機能の名前ではなく、これらの条件で比較するほうが確実です。

コンテンツは量だけでなく役割と更新方法を決める

記事、ホワイトペーパー、導入事例、メールなどを、認知、比較検討、社内稟議といった顧客の検討段階に対応させます。すべてを導入前に大量制作するのではなく、不足している段階から優先して用意し、利用状況や商談への寄与を見ながら更新していきましょう。

生成AIを利用する場合は、参照させるデータ、外部公開前の確認者、自動送信や自動変更を許可する範囲を定めます。顧客向けのコンテンツや重要な判断は、人が確認できる運用にしてください。

短期の検証指標と中長期の事業成果を分ける

MAの導入直後から売上や成約率だけで評価すると、施策の改善点を把握しにくくなります。まずは一つの商材や顧客層で試行し、データの登録率、メールの到達率、反応率、営業への引き渡し時間などを確認します。そのうえで、商談化率、パイプライン、受注、売上への寄与を評価します。

なお、成果が出るまでの期間は、商材、営業サイクル、保有データ、コンテンツ、導入範囲によって大きく異なります。「何か月で成果が出る」という共通の目安はありません。短期の検証指標と中長期の事業成果を分けて設定しておくことが、評価のぶれを防ぎます。

MA導入の費用対効果(ROI)と効果測定のKPI

MAの投資判断や社内稟議では、費用対効果を説明できるかどうかが焦点になります。前述の調査でも、意思決定上の課題として「費用対効果を社内で説明しにくい」が上位に挙がっていました。

試算は、「削減できるコスト」と「創出できる売上」の2軸で組み立てると整理しやすくなります。

  • 削減コスト:リスト作成、メール配信、データ処理、レポート作成などにかかっていた工数を、自動化によってどれだけ減らせるか
  • 創出売上:商談化率や対応スピードの改善によって、どれだけ商談・受注が増えるか

この2つを、年間の総保有コスト(ライセンス料+導入支援+運用人員+コンテンツ制作+AI利用料)と比べます。単年で判断せず、データ量や利用部門が増えた場合の費用も含めて複数年で試算しておくと、更新時の判断がぶれません。

効果測定では、次の指標を段階ごとに確認します。

段階 主なKPI 見るときの注意点
配信・接触 到達率、バウンス率、迷惑メール率、配信停止率 「配信成功」と受信トレイへの到達は別。受信側の要件にも左右される
反応 クリック率、フォーム送信数、再訪率、資料請求率 開封率は単独で判断しない。プライバシー保護機能や自動アクセスの影響を受ける
引き渡し MQL数、営業受入率、初回対応までの時間 MQL・SQLの定義を営業と合意していないと比較できない
事業成果 商談化率、創出パイプライン、受注率、受注額 アトリビューションのモデルによって評価が変わる。使用モデルと集計期間を明記する

マーケティングオートメーション(MA)導入の流れ

MAの導入では、ツールの設定だけでなく、目的、顧客データ、営業との連携、法令対応、運用体制を事前に設計します。小規模な施策から開始し、テストと効果測定を行いながら対象を広げると、設定ミスや業務上の課題を早い段階で発見できます。

課題認識

まず、現在の顧客獲得から商談・受注までの流れを可視化します。リード数、商談化率、受注率、各段階の所要日数、営業への引き渡し後の対応状況など、導入前の基準値を確認しておきましょう。この基準値がないと、後から効果を検証できません。

課題はマーケティング部門だけで決めず、営業、カスタマーサクセス、IT、情報セキュリティ、法務などの関係部門と共有します。MAで改善できる課題と、業務プロセス側で解決すべき課題を分けることも大切です。

目標設計

「商談数を増やす」だけでなく、対象、指標、期限、基準値、目標値を設定します。たとえば「資料請求者の商談化率を6か月で現在のA%からB%へ改善する」のように、測定できる形にします。

あわせて、MQLやSQLなどのライフサイクル、営業への引き渡し条件、担当者、対応期限、差し戻しのルール(マーケティング部門と営業部門のSLA)を定めます。スコアリングを利用する場合は、企業規模や業種などの適合度と、資料請求や製品ページの閲覧などの行動を分けて設計し、実績に基づいて定期的に見直します。

なお、スコアリングは自動的に客観性が担保されるものではありません。企業が設定した属性・行動・重みに基づく評価であり、営業と基準を合意したうえで、成約・失注データを使って点数としきい値を更新していきます。

登録対象範囲の確定

MAを利用する際は、「誰を登録するか」だけでなく、データの取得元、利用目的、配信同意、配信停止の状況、保存期間、CRMとの同期範囲を整理します。個人情報の利用目的は、本人が利用方法を予測できる程度に具体化する必要があります。Cookieや行動履歴を顧客情報と結び付ける場合は、法務・プライバシー担当者と確認しましょう。

費用を見積もる際は、単純な総登録件数ではなく、マーケティングの対象者数、月間の送信数、利用人数、APIの利用量、AIの利用量など、候補製品ごとの課金単位を確認します。

業者・ツール選定

候補ツールは、前掲の「MAツールの選び方」の評価軸に沿って、同じ条件で比較します。必要な機能が使えるかだけでなく、導入サポートの有無、日本語での問い合わせ体制、テスト環境の提供もあわせて確認しましょう。マーケティングやMAの知識が少ない段階での導入では、助言を受けられる体制があると設計の手戻りを減らせます。

運用リソースを確保

運用責任者のほか、キャンペーン担当者、CRM管理者、IT・セキュリティ担当者、営業側の責任者を決めます。設定変更の承認、リストの取り込み、配信前の確認、障害・誤配信時の対応、定期的な権限の棚卸しについても、担当と手順を明確にしておきます。

初期設定が終わったあとも、運用のルールや成果が出るまでには試行錯誤が必要です。人材の確保については、経営層の理解も得ておくと運用が安定します。

マーケティングオートメーション(MA)の導入

本稼働の前に、権限、送信ドメイン、SPF・DKIM・DMARC、配信停止、CRM連携、項目のマッピングを設定します。データクレンジングでは、誤記、表記の揺れ、欠損、古い情報、重複を確認し、統合後にどの値を正とするかを決めておきます。

テスト環境または限定した対象者で、登録、スコア更新、シナリオ分岐、メールの表示、配信停止、営業への通知、CRMへの反映を一連で確認しましょう。大量のメールを送信する場合は、受信事業者の送信者要件も稼働前に確認します。

運用

効果測定は、運用が軌道に乗ってから始めるものではありません。基準値の取得は導入前、テストは設定時、数値の監視は本稼働の直後から行います。

本稼働後は、配信エラー、苦情率、配信停止、リードの滞留、商談化率、受注への貢献を継続的に確認します。スコアやシナリオは固定せず、営業からのフィードバックと成約・失注データをもとに更新していきましょう。

AIやエージェント機能を利用する場合は、最初から広範囲に自動実行させず、対象業務とデータを限定して評価します。顧客への送信やリードの判定など影響の大きい処理には、人による確認や停止の手段を設けます。

生成AI・AIエージェント時代のMA

2024年末以降、MAはあらかじめ設定したルールを実行する仕組みから、人が目標や制約を定め、AIが施策の作成・実行を支援する仕組みへと広がっています。

日本でも提供が始まっています。Salesforceは2025年3月に「Agentforce for Marketing」の国内提供を開始し、Adobeは2026年8月25日に「Marketo AI」の一般提供を発表しました。支援できる範囲は、キャンペーンの作成、セグメントの設計、データ整備、設定の検証、分析などに広がっています。

AIが購買の入口にも入ってきている

変化はツール側だけではありません。買い手側でも、生成AI・AI検索が候補の洗い出しや比較に使われるようになりました。前掲の日本のBtoB購買調査では41.6%が「生成AI・AI検索が購買判断に与える影響が増えた」と回答しており、Google検索の「AIモード」も2025年9月から日本語で提供されています。

従来の検索順位やWebサイトの訪問数だけでは把握しにくい購買行動が生まれているため、人にもAIにも読み取れる形で、具体的で更新された製品情報を公開しておくことが、リード獲得の前提条件になりつつあります。

AIを使うときに人が決めておくこと

AIの機能は製品ごとに差が大きく、提供状況も短期間で変わります。機能の名前で比較するのではなく、次の項目を確認するほうが実務的です

  • 参照できるデータ:AIがどの顧客データにアクセスするのか、国外で処理されるのか
  • 実行できる操作:下書きの作成までか、配信や顧客データの更新まで行えるのか
  • 人による承認:どの操作に承認を必須とするか、誰が承認するのか
  • 記録と停止:操作ログが残るか、誤生成・誤送信時に止める手段があるか
  • 課金単位:クレジット消費など、利用量に応じた費用が発生するか
  • 日本語での品質:画面が日本語でも、AIの生成品質や機能の国内提供状況は別に確認する

AIの出力には誤りが含まれる可能性があります。影響や不確実性に応じて人の判断を介在させ、モニタリングとログ管理を行うという考え方は、「AI事業者ガイドライン第1.2版」でも示されています。自動化の範囲を広げるほど、統制の設計が重要になります。

マーケティングオートメーション(MA)の導入に向いている企業とは

MAは、顧客や見込み顧客との接点が多く、一人ひとりの関心や検討段階に合わせた継続的な対応を、人手だけで行うことが難しい企業に向いています。

導入の適性は、BtoB・BtoCという区分や顧客数だけでは決まりません。「未接触の顧客が多い」「名刺をたくさん持っている」「人材に余裕がある」といった条件も、それだけでは判断材料になりません。継続的なリード獲得の経路、利用できる顧客データ、配信するコンテンツ、運用担当者、効果を検証する指標がそろっているかが要点です。必要な施策が限定的であれば、メール配信ツールやCRMで足りる場合もあります。

企業・事業の特徴 MAで対応しやすい課題 導入前に確認したい条件
検討期間が長い、または継続利用・反復購入があるBtoC事業 検討段階や購買履歴に応じた情報提供、休眠の防止、継続利用の促進 顧客IDと行動・購買データを連携できるか、利用目的や配信許諾を管理できるか
複数の関係者が意思決定に参加するBtoB事業 長期的なリード育成、企業・購買グループ単位の状況把握、営業への引き渡し CRM・SFAと連携できるか、営業へ引き渡す条件や対応期限を共有できるか
接点や施策が増え、人手での個別対応が難しい企業 セグメント分け、配信、スコアリング、レポート作成などの効率化 運用担当者、コンテンツ、KPI、改善の仕組みを確保できるか

検討期間の長い商材や継続利用型サービスを扱うBtoC企業

保険、金融、不動産など、購入までに複数回の情報収集や比較が行われる商材は、MAを活用しやすい分野です。行動履歴や属性に応じて情報を出し分け、検討中の顧客との接点を継続できるためです。

ただし、MAが向くのは高額・長期検討の商材に限りません。定期購入、会員サービス、リピート購入がある事業でも、購買履歴や利用状況に応じた案内、休眠顧客への働きかけ、ロイヤルティの向上に活用できます。また、「顧客数が数万人以上ならMAが必要」といった共通の基準はありません。繰り返し発生する施策の量、セグメント数、接点数を、人手で処理できる範囲と比べて判断します。

顧客の行動はWebだけで完結するとは限りません。Webサイト、アプリ、店舗、電話、対面相談などの情報を可能な範囲で連携し、顧客が希望するチャネルへ円滑に引き継げる企業ほど、MAを活用しやすいといえます。

なお、メールアドレスや閲覧履歴を利用する際は、取得経路、利用目的、配信許諾、配信停止情報を確認し、個人情報保護法や特定電子メール法に沿って管理する必要があります。「名刺を持っているので一律に配信できる」わけではない点に注意してください。

法人営業を伴うBtoB企業

BtoB取引では検討期間が長くなりやすく、利用部門、決裁者、情報システム部門、法務・購買部門など複数の関係者が意思決定に参加します。そのため、個人の見込み顧客だけでなく、企業や購買グループ単位で関心度や進捗を把握できるMAと相性がよい領域です。

MAでWeb、メール、イベントなどの反応を蓄積し、優先度の高い企業や関係者を営業へ引き渡すことで、長期的なフォローを効率化できます。ただし、MAだけで成約まで完結するわけではありません。CRM・SFAとの連携や、営業へ引き渡す条件、引き渡し後の対応方法を事前に決めておくことが重要です。

また、現在のBtoB購買はデジタルだけに限定されません。McKinseyの2026年のグローバル調査(13か国・約4,000人が対象)では、買い手は対面、リモート、デジタルを横断し、購買の過程で平均10種類の接点を利用しているとされています。MAは、オンラインの行動と営業活動をつなぐ基盤として位置付けるのが適切です。

よくある質問

マーケティングオートメーションでできることは?

見込み顧客・企業情報の一元管理、ランディングページやフォームの作成、セグメント作成とシナリオ配信、メールマーケティング、スコアリングによる優先順位付け、営業担当者への通知、レポート・アトリビューション分析、CRM・SFAや広告との連携などです。近年は、メールやランディングページの下書き作成、データの要約、ジャーニーの作成をAIが支援する機能も加わっています。ただし、利用できる機能は製品と契約プランによって異なります。

マーケティングオートメーションの例は?

たとえば、資料をダウンロードした見込み顧客へ関連情報を段階的に配信し、製品ページの閲覧やセミナー参加など設定した条件を満たした時点で営業担当者へ通知する、といった運用が代表的です。ほかにも、フォーム送信後のフォローメールの自動送信、一定期間反応がない相手の除外、展示会で獲得したリストの重複統合と配信同意の管理、広告経由で獲得したリードのCRMへの連携などがあります。

有名なMAツールは?

国内のBtoB領域では、BowNow、Marketing Cloud Account Engagement(Salesforce)、HubSpot、Adobe Marketo Engage、SATORIなどが候補に挙がります。ただし、シェアや順位は調査ごとに対象と集計方法が異なり変動するため、知名度だけで選ぶことは推奨されません。業務適合性、データ連携、法令・セキュリティ、運用性、費用、AI機能の6つの軸で、自社の条件に沿って比較してください。

マーケティングオートメーションとCRMの違いは何ですか?

MAはマーケティング施策の実行と改善に、CRMは顧客接点全体を支える共通データ基盤に重点があります。「自動化するのがMA、情報を管理するのがCRM」という二分ではありません。現在のCRMにはマーケティングの自動化機能を備えた製品もあり、MAの機能をCRM基盤の上で利用できる場合もあります。名称ではなく、対象業務と管理するデータ、部門間の連携方法で判断してください。

まとめ

MAは、メール配信、フォーム管理、見込み顧客の育成・選別、営業への引き継ぎなど、マーケティングに関わる反復業務を自動化・効率化する仕組みです。ただし、ツールを導入するだけで商談や受注が増えるわけではありません。自社の課題とKPI、カスタマージャーニー、営業への引き継ぎ基準、運用責任者を明確にし、データの品質を保ちながら継続的に改善することが重要です。

ツールを選ぶ際は、必要な機能だけでなく、既存のCRM・SFAとの連携、権限とセキュリティ、日本語での利用・支援体制、利用人数、マーケティングの対象者数、導入支援やAI機能を含む総コストを比較しましょう。AIエージェントを利用する場合は、入力データの取り扱い、承認フロー、出力内容の人による確認も運用に組み込みます。

なお、HubSpotは、Smart CRMを基盤にMarketing HubやSales Hubなどを組み合わせられるカスタマープラットフォームです。マーケティングと営業の顧客データを同じ環境で管理したい企業にとっては有力な選択肢になります。利用できる自動化・AI機能や上限、料金はエディションによって異なるため、導入前に要件と見積もりを確認してください。

SEデザインは1985年の創業以来、外資系IT企業のブランドローカライズをはじめ、日系・外資を問わず多くのテクノロジー企業のマーケティングを支援してきました。HubSpot公式マーケットプレイスに掲載されているGold Solutions Partnerとして、HubSpotの導入設計から運用、マーケティング用アセットの構築までをご支援しています。自社に適したツールやプランを検討したい方は、お気軽にご相談ください。

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