本記事では、AWSパートナーを検討されている方に向けて、「AWSパートナーの選び方とおすすめ企業一覧」で取り上げた企業の実際の取り組みを、個別にご紹介していきます。今回は、株式会社へプタゴンについてお伝えします。
クラウド導入は、業務効率化や新たなビジネス創出に不可欠です。しかし地方企業や中小企業では、専任担当の不在や知識不足、予算の制約など、多くのハードルがあります。
株式会社ヘプタゴンは、まさにそうした地方・中小企業の頼れるAWSパートナーとして注目されています。地域に根差した姿勢と高い技術力を兼ね備え、顧客の課題に寄り添いながら、AWSの導入から利活用までをトータルで支援してきました。
本記事では、同社におけるAWS事業の特徴や導入事例などを通じて、地方・中小企業がAWSパートナーを選定する際のヒントをお届けします。
※こちらの記事は、2025年8月に実施した、株式会社へプタゴンのご担当者様へのヒアリングをもとに作成しております。
東北から全国へ。へプタゴンの“クラウド地産地消”戦略
株式会社ヘプタゴンは、青森県三沢市に本社を構えるAWSパートナー企業です。創業は2011年で「身近な人や地域をテクノロジーで幸せにしたい」という思いから設立されました。代表取締役である立花拓也氏の地元・東北に根差し、地域の企業や自治体が抱える課題をクラウドの力で解決することを目指して事業を展開してきました。
創業当初から東北を中心に案件を手がけ、これまでに300プロジェクト以上の実績を積み上げています。その多くは中小企業や地方自治体であり、Web系システムから基幹業務系、さらにはAI・IoTなどの先端領域まで、幅広いニーズに応えてきました。
AWSの認定においても高い評価を受けており、東北で唯一のAWS アドバンストティアサービスパートナーに認定されています(2025年9月公開時点)。さらに、へプタゴンには日本国内でわずか数名しかいない「AWS Hero」「AWS Ambassador」を兼任するエンジニアが在籍しており、小規模ながら全国的にも高水準の技術力を持つ企業として知られています。
また、へプタゴンの特徴は技術力だけにとどまりません。同じ地域で事業を営む立場だからこそ、地方・中小企業が抱える課題を身近に感じ、的確に理解することができます。さらに、クラウド導入に不慣れな企業にも寄り添い、わかりやすく価値を伝える姿勢を大切にしてきました。単なるシステム導入ベンダーではなく、伴走型のパートナーとして評価されています。
3本柱で支える地方・中小企業のAWS活用
ヘプタゴンのAWS関連事業は、大きく3つの柱で構成されています。
フルマネージドサービス
創業当初から展開しているサービスで、インフラやネットワークの設計・構築から、運用・保守までを一括してサポートします。自社に専門人材を抱えられない中小企業でも、安心してクラウド環境を利用できるよう「一任できる体制」を整えています。
ディべロップメントサービス
クラウドネイティブな開発領域をカバーし、AI・IoT・サーバーレス・コンテナ仮想化といった最新技術を活用したソリューションを提供します。たとえば、AIを活用した検査・判定システムや、LINEと連携した住民サービスなど、先端的な取り組みを多数手がけています。このように、地方からでも最先端技術を使った開発ができる点は、へプタゴンの大きな強みです。
コンサルティングサービス
へプタゴンは、開発会社や制作会社に対する内製化支援も提供しています。地方では、人材不足や予算が課題となり、新しい技術や体制への移行が進みにくいケースも少なくありません。そうした企業に対し、最新のクラウド技術や開発手法を導入するためのコンサルティングを行い、地域全体における開発力の底上げを図っています。単に自社の成長にとどまらず、地域のエコシステムを一緒に育てていく姿勢が特徴的です。
地方だからこそ、へプタゴンが選ばれる理由
へプタゴンの最大の特徴は、単なる技術提供にとどまらず、地方・中小企業の実情に寄り添った伴走型の支援を徹底している点です。
地方企業特有の課題に応えるクラウド活用
多くの地方企業では、専任のIT担当者やエンジニアが存在せず、社長や“パソコン担当者”がITに関する業務を担っているケースが珍しくありません。そうした企業に対して、できる限りわかりやすい言葉で説明し、現場の業務を十分に理解した上でクラウド活用を提案します。エンタープライズ向けの構成をそのまま適用するのではなく、限られた予算の中で無理なく導入できるスモールスタート型の構成を組める点が大きな強みです。
「AWSを意識せずに使える」ソリューション
クラウドの専門知識を持たない顧客にとって、AWSの細かな仕様を理解することは大きな負担になります。ヘプタゴンは、AWSを意識せずに自然にメリットを享受できる提案を重視しているため、顧客がシステムの裏側を意識することなく、本業に集中できる環境を整えています。
「現場を知る」から始まる伴走型支援
AIやIoTを活用したプロジェクトでは、実際の現場を理解しなければ成果を出すことは困難です。へプタゴンは、必要に応じて現場に通い詰め、課題を一緒に整理しながら最適なシステムを構築します。株式会社 KAWACHO RICEの事例では、2年間にわたり現場で検査員と対話を重ねながらAIモデルを磨き上げるなど、顔の見える支援を徹底しています。
少数精鋭の高い技術力
社員数は20名弱と小規模ながら、AWS認定資格者を多数抱え、日本で数名しかいない「AWS Hero」「AWS Ambassador」を持つメンバーも擁しています。小規模であっても高い技術力を備え、東北で唯一のアドバンストティアサービスパートナーの認定を受けている点は、全国的に見ても大きな強みとなっています(2025年9月公開時点)。
事例から見るへプタゴンの魅力
ヘプタゴンの強みである「地域に根ざした課題理解」や「現場に寄り添う伴走型の支援」は、実際のプロジェクトにも色濃く表れています。ここでは、その特徴がどのように活かされているかを示す具体的な事例をご紹介します。
KAWACHO RICE:AI を活用した米の銘柄判定アプリ「RiceTag」
青森県三沢市でブランド米の検査・流通を担う 株式会社 KAWACHO RICEは、これまで熟練の検査員の目視によって米の銘柄と品質を検査していました。しかし、業務負荷や加齢による人手不足が大きな課題となっていました。
この課題を解決するため、2019年に「RiceTag」プロジェクトがスタートしました。ヘプタゴンは Amazon SageMaker 上に機械学習環境を構築し、スマートフォンで撮影した米粒の写真から、AIが銘柄を判定するアプリを開発しました。AIモデルは検査員が注視していた特徴(形状・色・米粒のどこに着目しているか)を丁寧にヒアリングし、学習に反映したことで、精度を高めていきました。
出典:お客様事例「株式会社 KAWACHO RICE」– 株式会社ヘプタゴン
青森県三沢市:生成AIを活用した移住相談チャットボット「みさわしつじ」
青森県三沢市では、2019年のコロナ禍以降、移住相談の提供方法を見直し、移住希望者との接点を強化する取り組みとして、LINEを使ったチャットボット「みさわしつじ」が開発されました。
「みさわしつじ」は、AIがLINE上で自然な会話を通じて移住相談に応じる仕組みで、質問内容に合わせた回答や市の最新情報の案内が可能です。AI応答が困難な場合は、市の職員が“なりきり回答”するハイブリッド対応も採用されています。
出典:お客様事例「青森県三沢市政策調整課」– 株式会社ヘプタゴン
その後、自然言語処理プラットフォームのサービス終了を受け、2024年にバックエンドを AWS の生成 AI サービス「Amazon Bedrock」へ移行。これによって回答精度と自然な対話品質が向上し、自治体の業務効率化に大きく貢献しました。自治体におけるAmazon Bedrockを活用した市民向けサービスとしては日本初となる AWS 公開事例となります。
「地方だからできない」ではなく「地方だからこそできる」クラウド活用
ヘプタゴンはこれまで東北地方を中心に、中小企業や自治体のIT活用を支援してきました。しかし、同社が見据える未来は東北にとどまりません。東北で培ったノウハウは、全国の中小企業に共通する課題の解決に活かせるものであり、今後はその知見を全国的に広げていくことを目指しています。社員も東北以外の地域に増えており、現場に寄り添った支援を全国各地で展開できる体制が整いつつあります。
こうした取り組みを加速する存在として注目されているのが「re:light local」です。これは、地方を拠点とするAWSパートナーの企業間コミュニティで、地方におけるクラウド導入の推進を目的に2024年に設立されました。
2025年8月現在では、株式会社ヘプタゴン(東北)、株式会社エイチビーソフトスタジオ(愛媛)、株式会社Fusic(福岡)、株式会社クエイル(鹿児島)の4社が参画しています。宮城県仙台市での設立記念イベントには多くの参加者が集まり、参加者の満足度は5点満点中4.8点という高評価を獲得しました。イベントにはAWS社からもゲストが登壇し、地方DXの取り組みに対する強い期待が寄せられています。
出典:re:light local 愛媛イベント 開催レポート – 株式会社ヘプタゴン
これらの取り組みを通じて、「地方だからできない」ではなく「地方だからこそできる」クラウド活用を広め、地方における課題を価値に変えるべく、仲間を増やしながら活動を続けています。今後は年4回のイベント開催や参画企業の拡大を通じて、地方に根差したクラウド活用の先進事例をさらに広めていく予定です。ヘプタゴン単体としての支援に加え「re:light local」を通じて全国規模でのネットワークを築くことにより、より多くの地方企業がクラウドの恩恵を享受できる未来を描いています。
まとめ
株式会社ヘプタゴンが提供する支援は、AWSの先進技術を駆使しながらも「地方・中小企業の現場に寄り添う」姿勢を大切にしてきました。技術力の高さに加えて、現場に通い詰めながら課題を丁寧に把握し、AWSを意識せずにメリットを享受できるソリューションを提供する点は、多くの企業にとって安心できる特徴といえます。
AWSの導入を検討している企業にとって、ヘプタゴンは技術力・サポート力・地域密着の姿勢を兼ね備えた、心強いパートナーとなるでしょう。
会社概要
会社名 |
株式会社ヘプタゴン |
創立 |
2012年7月20日 |
代表者 |
代表取締役 立花 拓也 |
所在地 |
本社:青森県三沢市大字三沢字堀口164-336 シェアオフィスブルー内 岩手オフィス:岩手県一関市大町4-11 シェアオフィスハルノバ内 |
事業内容 |
・コンサルティングサービス |