「Dify」で広がる生成AI活用──株式会社LangGeniusが描く“誰もが使えるAI”の未来

更新日:2025-09-18 公開日:2025-09-18 by SEデザイン編集部

目次

本記事では、AWSパートナーを検討されている方に向けて、「AWSソフトウェアパスとは?導入企業が知っておきたい信頼性の指標」で取り上げた企業の実際の取り組みを、個別にご紹介していきます。今回は、株式会社LangGeniusについてお伝えします。

生成AIを業務に取り入れる動きが加速する一方で、実際にアプリケーションとして活用しようとすると「スピード感ある開発」と「セキュアな運用」をどう両立させるかが課題となります。こうした状況の中、LangGeniusが提供する「Dify(ディフィ)」は、誰でも直感的にAIアプリを構築できるオープンソースプラットフォームとして注目を集めています。

本記事では、LangGeniusの事業内容やDifyの特徴、導入事例を交えながら、その魅力を紹介します。

※こちらの記事は、2025年8月に実施した、株式会社LangGeniusのご担当者様へのヒアリングをもとに作成しております。

 

米国発スタートアップが日本法人設立──Difyに込めた思い

株式会社LangGeniusは米国発の企業で、2023年にオープンソースの生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify」を公開しました。2025年2月には日本法人を設立し、日本市場向けのサポート体制を整備しています。設立から間もないながらも、ライセンス提供や導入支援を通じて国内での実績を着実に積み上げています。

同社の掲げるミッションは「生成AIアプリ開発の民主化」と「誰でもAIを活用できる環境の普及」です。2025年にはリブランディングを実施し、新しいミッションとして「Easy(使いやすい)」と「Imaginary(思考スタイル)」を掲げました。ブランド名の読み方も「ディフィ」に統一。新ロゴには「if(もし)」という問いかけを起点に想像力を広げる姿勢を込めています。

https___qiita-image-store.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com_0_3924419_54cebf0d-a805-4b9d-ad1a-1371cbfbd80d

出典:Imagine if:Dify ブランド リニューアル

このストーリーは、シンプルで使いやすいプロダクト哲学を体現しています。日本法人では、グローバルで培った知見を活かしつつ、きめ細やかな導入・活用支援を強みとし、市場での存在感を強めています。

3大機能で広がる可能性──Difyが描く生成AIアプリ開発の新常識

「Dify」は、生成AIアプリ開発に必要な3つの主要機能を備えています。

  • LLMアプリ構築:チャットボットや文章生成ツールなどを素早く開発可能。
  • AIエージェント:外部ツールと連携し、複雑なタスクを自動処理。
  • AIワークフロー:複数のAI処理を組み合わせ、業務フロー全体を自動化。

2025年2月の正式版ではプラグインアーキテクチャを全面的に採用したことに加え、続く4月のアップデートでは、AIエージェントが外部ツールと効率的に通信できるMCP(Model Context Protocol)に対応しています。

利用形態は、OSS版とエンタープライズ版の2種類です。GitHubで公開されているOSS版のスター(お気に入り)数は10万を超えており、世界中の開発者に支持され急速に普及しています。

エンタープライズ版はマルチテナント機能だけでなく、SOC2、ISO27001、GDPR対応などの各種セキュリティ認証を備え、企業利用に必要なセキュリティ要件を網羅しています。

このようにDifyは、「誰でも自由に試せるOSS」と「安心して業務導入できるエンタープライズ環境」を両立し、幅広いビジネスニーズに対応できるAIプラットフォームへと進化を続けています。

ノーコード・RAG・拡張性──Difyが支持される理由

Difyの強みは、導入のしやすさや機能の豊富さにとどまりません。実際に現場で利用される中で、非エンジニアでも使える直感的な開発環境や、自社ナレッジを生かせる仕組み、他システムとの柔軟な連携といった特徴が高く評価されています。本章では、そうした実務の中で選ばれる理由を具体的に見ていきます。

ノーコードで直感的な開発

Difyの最大の特徴は、プログラミング知識がなくてもアプリが作成できる点です。管理画面から「新規アプリ作成」を選び、「チャットフロー」「チャットボット」「テキストジェネレーター」など、用途に応じた形式を指定してアプリを作成します。フロービルダーでは「ユーザー入力」「条件分岐」「AI応答」などのブロックをドラッグ&ドロップで接続するだけで、簡単にアプリを設計できます。

出典:株式会社LangGeniusより提供

RAGとナレッジ管理

DifyはPDF、Excel、Notion、Webページなどを読み込ませ、AIがそれらのナレッジを参照して回答するRAG機能を搭載しています。ナレッジはワンクリックで更新でき、複数アプリに対して即時反映が可能です。


出典:株式会社LangGeniusより提供

豊富な外部連携と拡張性

SlackやNotion、Salesforceなど、主要なビジネスアプリケーションと連携でき、取引・顧客情報の抽出や問い合わせへの自動応答など、日常業務に直結するシーンでも活用できます。プラグインとMCPの採用により、外部ツールとの連携もさらに広がっています。
マーケットプレイスも用意されており、リストアップされているサービスは簡単に連携可能です。

出典:Dify Marketplace

AWSをはじめとしたマルチクラウド対応

Difyはクラウド環境に対応しており、企業はスケーラビリティや信頼性を確保しながら導入できます。特に、デプロイを容易に実行できる仕組みが整っているため、クラウド初心者でもスムーズに利用を開始できる点が評価されています。

現在、AWSをはじめとした複数のクラウドプラットフォームで稼働しています。導入のしやすさからAWSを選ぶ企業も多いですが、特定のクラウドに依存せず柔軟に利用できる点も、Difyの大きな強みといえるでしょう。

事例から読み解くDifyが日本企業で活用される理由

Difyが日本企業に支持される理由には大きく「品質の追求」と「プロセスの一貫性」があります。不確実なAIの振る舞いを、視覚的なフロー設計やテンプレートでプロセスを制御できるアプローチは、品質を重視する多くの日本企業に受け入れられています。

本章では、日本企業における2つの活用事例を紹介します。

ライオン株式会社 ― Difyを活用したAI人材育成と業務効率化

ライオン株式会社は、従来から社内の生成AIサービスを活用していましたが、2025年にはDifyを用いた教育プログラムを開始し、非エンジニアを含む社員100名がAIエージェント開発に取り組みました。

Difyはノーコードでアプリを構築できるため、アンケート解析や申請書類の添削など、非エンジニアでも実務に即したエージェントを開発できました。このプログラムを通じて「ナレッジ整備の重要性やプロンプト設計の効果を実感した」「業務が進めやすくなった」との声も寄せられています。

LangGeniusはこの取り組みを通じて、企業が自らAI人材を育成し、市民開発を推進できる環境づくりも支援しています。今後、ライオンは30体以上のエージェント運用やグループ各社への展開を計画しており、Difyはその取り組みを加速させる基盤として大きな役割を果たしています。

⇒詳細はこちら

株式会社カカクコム ― Difyが実現する全社AI活用の基盤構築

カカクコムでは社内の生成AI活用において、エンジニア不足やPoCから本番化までの長いリードタイム、高い運用負荷といった多くの課題がありました。こうした課題を解決するために、同社はDifyのエンタープライズ版に注目し、本格的な導入に踏み切りました。

導入後は、エンタープライズ版ならではの拡張機能を活かし、セキュアで効率的な運用ができる体制を構築。なかでも、部署ごとに独立した環境を設けて利用状況やコストを可視化できるマルチワークスペース機能は、社内の利用推進とガバナンス強化の両面に寄与しています。

また、Kubernetesデプロイによる自動スケーリングと無停止運用に加え、AdminAPIを活用した権限管理の自動化も実現でき、運用業務の負荷が大幅に軽減しました。

⇒詳細はこちら

次なる挑戦は“信頼性が求められる業界”──Difyが目指す未来

TiDB CloudはAWS、Azure、Google Cloud上で提供され、既存のAWS環境とシームレスに統合できます。大きなメリットはセキュアな接続です。VPC PeeringやPrivate Linkに対応しているため、高いセキュリティ要件が求められるサービスでも安心して導入できます。

さらに、AWS Marketplace経由での請求統合にも対応しているため、既存のAWSアカウントを経由して利用料をまとめて支払うことが可能です。また、クラスメソッドやiretといった国内のパートナーと提携しているため、パートナーを介してAWSの請求代行を利用する企業の導入にも適しています。

 

会社概要

会社名

株式会社LangGenius

日本法人所在地

東京都中央区日本橋3丁目6番2号 日本橋フロント1階

設立

2025年2月5日

代表者

取締役社長 キジ・マルダン

事業内容

生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify」の提供および導入支援

 

≪「AWSソフトウェアパスとは?導入企業が知っておきたい信頼性の指標」に戻る

 

この記事をシェアする

  • note
  • メール
  • リンクをコピー