AWSソフトウェアパスとは?導入企業が知っておきたい信頼性の指標

更新日:2025-05-29 公開日:2025-05-29 by SEデザイン編集部

目次

クラウドサービスの活用が一般化し、企業の基幹業務や顧客接点の多くがAWS(Amazon Web Services)で構築されています。なかでも、AWS上で利用するソフトウェアの選定は、システムの安定性やセキュリティに大きく関わる重要な判断材料となっています。

今回ご紹介するのは、AWSパートナーが参加できる5つのパスのうちの一つ、「ソフトウェアパス」です。これは、AWS上で動作する自社開発ソリューションを提供している企業を対象に、AWSが定めた技術的基準を満たしていることを技術検証などを通じて確認し、製品の信頼性を認定するプログラムです。

本記事では、AWSソフトウェアパスの概要や認定制度、そして実際にパスを取得している企業の事例を交えながら、AWSソフトウェアパスについてご紹介します。

AWS「ソフトウェアパス」とは ─ パートナープログラムにおける5つのパス

AWSでは、クラウド活用の幅広いニーズに対応するため、パートナー企業の特性や提供サービスに応じて分類した5つの「パートナーパス」を提供しています。これにより、AWSは多様な企業と連携し、ユーザー企業にとって信頼できるパートナーを明確にする仕組みを整えています。

以下は、それぞれのパスの概要です。

  • ソフトウェアパス
  • ハードウェアパス
  • サービスパス
  • トレーニングパス
  • ディストリビューションパス

ソフトウェアパス:ソフトウェア製品の開発・提供

自社開発のソフトウェアやSaaS製品を、AWS上で提供しているパートナーが対象となるパスです。
製品がAWSと技術的に整合しており、クラウド環境で安定的に稼働する設計となっているか、AWSが定める厳しい技術基準を満たしているかを、検証プロセスを通じて評価されます。

ハードウェアパス:ハードウェア製品の開発・提供

AWSと連携する物理デバイス(ネットワーク機器、IoT機器など)を提供するパートナーが対象です。
AWS IoTやSnowファミリーなどと統合されたハードウェア製品を持つベンダー向けのパスです。

サービスパス:構築や運用保守など各種サービスの提供

AWSの導入・設計・構築・運用を支援するコンサルティング、プロフェッショナル、マネージドサービスなどを提供するパートナーが対象です。SIer、クラウドコンサルティング企業、マネージドサービスプロバイダーなどが該当し、AWS導入支援の経験や専門スキルが求められます。

→サービスパートナーとおすすめ企業一覧は別の記事「AWSパートナーの選び方とおすすめ企業一覧」で紹介しています。

トレーニングパス:トレーニングや資格取得支援プログラムの販売・提供

AWS認定トレーニングや教育プログラムを販売・提供するパートナーが対象のパスです。
AWS認定インストラクターによる公式トレーニング講座の提供や、質の高い研修プログラムの整備などが求められます。

ディストリビューションパス:AWSソリューションの再販・開発

AWS製品やソリューションの再販・流通を担う役割を持つパートナーが対象です。
主にディストリビューターや販売代理店向けのパスであり、広範な販売網や流通面での連携体制が重視されます。

 

このように、AWSパートナーパスは提供形態や機能領域に応じて分類されています。その中でも「ソフトウェアパス」は、企業がAWS環境上で提供する自社製品の“品質”と“技術的信頼性”を証明するためのパスです。

導入企業にとっては、AWSの厳格な技術基準を通過したソリューションを選定するための重要な目印となります。クラウド上で提供される業務アプリケーション、SaaS、分析ツールなどが対象となり、企業の基幹業務を支えるうえでも信頼できる選択肢として位置づけられています。

AWSソフトウェアパスとFoundational Technical Review(FTR)

AWSソフトウェアパスは、AWS上で稼働するソリューションを提供する企業が対象のパートナープログラムです。このパスに参加している企業は、クラウド環境に最適化された製品を提供しており、導入時の信頼性や拡張性といった観点でも、選定の判断材料となります。

そうした製品の技術的な健全性や設計上の信頼性をさらに可視化する仕組みの一つが、FTR(Foundational Technical Review)です。FTRは、AWSが定めるベストプラクティスに基づいて、セキュリティ・信頼性・運用管理体制などの観点から製品を評価するレビュー制度であり、一定の基準を満たしている製品に対しては「認定ソフトウェア」バッジが付与されます。

なお、FTRの通過はソフトウェアパスへの参加にあたって必須ではないため、FTRを取得していないソフトウェアパス参加企業の中にも、高品質な製品や優れた実績を持つ企業は数多く存在します。

FTRは、こうした製品を選定する際において、品質や設計方針を客観的に確認できる「補足的な信頼性の指標」の一つとして活用するのが有効です。

FTRの目的と評価観点

Foundational Technical Review(FTR)は、AWSパートナーが開発したソリューションについて、AWSが推奨する設計・運用のベストプラクティスに沿っているかを評価する技術レビューです。製品がAWS上で安全に、かつ継続的に安定稼働できる構成になっているかを確認することを目的としています。

このレビューは、主にAWSが推奨する「AWS Well-Architected Framework」の考え方に基づいて実施されます。これは、クラウド環境における優れたアーキテクチャを実現するためのガイドラインであり、FTRでは主に以下の3つの観点から評価が行われます。

  • セキュリティ:顧客データを保護し、システムへの不正アクセスや脆弱性を防ぐための設計や運用体制が整っているか
  • 信頼性:システムの可用性、回復力、障害発生時の復旧能力など、安定稼働を維持するための構成となっているか
  • オペレーショナルエクセレンス:監視、運用、変更管理の仕組みを整備し、継続的な改善が可能な体制があるか

このように、FTRは単なる機能の動作確認にとどまらず、AWS環境での実運用にふさわしいシステム全体の設計思想と運用体制の質を評価するレビューである点に特徴があります。

FTRの観点が示す製品の品質の目安

FTRが評価する観点(セキュリティ、信頼性、オペレーショナルエクセレンスなど)に沿って設計・運用されている製品は、以下のような点で導入企業にとっての品質の目安となります。

  • 設計段階からの技術的な適切さAWSのベストプラクティスに基づいた設計は、潜在的な技術的問題やリスクを低減し、初期導入時から安定した稼働が期待できます。
  • 実運用での安心感:セキュリティ対策が適切に施され、障害回復力を持つ設計であることは、システムを安心して運用するために不可欠な要素です。
  • 継続的な改善への意識FTRの考え方は継続的な改善を促すため、製品の長期的なサポートや品質維持への期待が高まります。

ソフトウェアパス認定製品には、「Validated Software(認定ソフトウェア)」バッジが付与され、AWS パートナーソリューションファインダー(PSF)に掲載されます。これは、AWSがそのソフトウェアが技術基準を満たしていることを公式に認めた証です。

導入企業は、この認定情報と、FTRが示す技術的な健全性の観点を組み合わせることで、AWS環境でビジネスを推進するための、より技術的に適切で品質の高いソフトウェアを選定するための判断材料にできるでしょう。

ソフトウェアパスのおすすめパートナー

AWSソフトウェアパスには、さまざまな業種・領域で活躍する企業が参加しており、それぞれがAWS上で自社のソリューションを提供しています。製品のカテゴリは、業務アプリケーションからデータ分析、セキュリティ、開発支援ツールに至るまで幅広く、ビジネスの中核を支える信頼性の高いソフトウェア群が登録されています。

ここでは、その一部を抜粋してご紹介します。

Datadog

Datadogは、ITシステムやクラウドインフラの監視および運用を効率化するためのSaaS型プラットフォームです。インフラストラクチャ監視、アプリケーションパフォーマンス監視、ログ管理を統合および自動化し、お客様のテクノロジースタック全体を一元的にリアルタイ ムで監視できるようにしています。今やグローバルのユーザー企業は25,000社を超えています。

■AWS上で利用できるソリューション

  • Datadog
  • AWS Outposts Datadog
  • Datadog のコンテナサービス
  • Datadog サーバーレス監視
  • アマゾン Linux Datadog エージェント 2 など

■主な導入事例

  • ソフトバンク株式会社:アジャイルとDevOpsで変化に強い開発環境を
    ⇒導入事例はこちら
  • 株式会社SBI証券:1日2兆円超の株式取引を処理するシステムをDatadogで統合監視して安定運用と業務効率化を実現
    ⇒導入事例はこちら

■利用をおすすめしたい企業

  • AWS環境で多数のサービスを利用しており、システム全体の統合的な監視・可観測性を実現したい企業
  • マイクロサービスやコンテナ、サーバーレスなど、モダンなアーキテクチャを採用しており、複雑な環境の監視に課題を感じている企業
  • DevOps体制を強化し、開発チームと運用チームが連携してシステムのパフォーマンスや健全性を改善していきたい企業

■AWS検証済みの資格

AWS コンピテンシー Microsoft ワークロードの ISV コンピテンシー
DevOps の ISV コンピテンシー
政府機関の ISV コンピテンシー
コンテナの ISV コンピテンシー
Migration and Modernization ISV Competency
Cloud Operations ソフトウェアコンピテンシー
セキュリティの ISV コンピテンシー
Education ISV Competency
Networking ISV Competency
小売業の ISV コンピテンシー
パートナープログラム AWS Marketplace セラー
AWS サービス認定 AWS Outposts 対応製品
Amazon Linux Ready Product
Amazon RDS 対応製品
AWS Lambda 対応製品
AWS PrivateLink 対応製品
Amazon CloudFront 対応製品
AWS Graviton Ready Product

 

トレンドマイクロ

トレンドマイクロはサイバーセキュリティの世界的リーダーであり、デジタル情報を安全に交換できるように支援しています。30 年以上にわたるセキュリティの専門知識、グローバルな脅威調査、イノベーションにより、デジタルトランスフォーメーションのためのセキュリティを提供することで、お客様のレジリエンスを実現しています。

■AWS上で利用できるソリューション

  • Trend Micro Deep Security
  • Trend Micro Cloud One
  • Deep Security Smart Check
  • Deep Security as a Service
  • Trend Vision One など

■主な導入事例

  • 株式会社NTTデータ:Trend Cloud One™ によってAWS上で稼働するサービス基盤のセキュリティ運用を最小限のリソースとコストで実現
    ⇒導入事例はこちら
  • 森永乳業株式会社:クラウドシフトを機にIT部門とビジネス部門の協業を改革クラウドに適したセキュリティで全社に統制を
    ⇒導入事例はこちら

■AWS検証済みの資格

AWS コンピテンシー Cloud Operations ソフトウェアコンピテンシー
政府機関の ISV コンピテンシー
コンテナの ISV コンピテンシー
セキュリティの ISV コンピテンシー
AWS Built-in Competency
Level 1 MSSP ISV Competency
Small and Medium Business Software Competency
医療の ISV コンピテンシー
DevOps の ISV コンピテンシー
パートナープログラム AWS Marketplace セラー
Authority to Operate on AWS
AWS ISV ワークロードの移行
AWS サービス認定 Amazon Linux Ready Product
AWS PrivateLink 対応製品
AWS Outposts 対応製品
AWS Security Incident Response Ready
AWS Graviton Ready Product
AWS 認定 AWS 認定クラウドプラクティショナー
AWS 認定 SysOps アドミニストレーター - アソシエイト
AWS 認定ソリューションアーキテクト - アソシエイト
AWS 認定デベロッパー - アソシエイト
AWS 認定 DevOps エンジニア - プロフェッショナル
AWS 認定セキュリティ – 専門知識
AWS 認定ソリューションアーキテクト - プロフェッショナル

 

まとめ:信頼できるソフトウェアを選ぶために

クラウドサービスが企業の基盤となる現在、ソフトウェア製品の選定においてその技術的な健全性や品質はますます重要な判断基準となっています。AWSソフトウェアパスは、AWSが定める厳しい技術基準を満たした製品を見極めるための、導入企業にとって有効な指標の一つといえるでしょう。

本記事で解説したように、AWSソフトウェアパスは、AWS上で自社開発ソフトウェアを提供するパートナーが、AWSの技術要件を満たしていることを示すためのパスです。パス取得の背景にある技術基準は、AWS環境におけるベストプラクティスの考え方と密接に関連しています。

Foundational Technical Review(FTR)もベストプラクティスに基づいた技術レビューであり、ソフトウェアパス認定製品は、FTRが評価するセキュリティや信頼性、運用効率といった技術的な健全性を備えている可能性が高いと考えられます。したがって、ソフトウェアパス認定製品は、これらの観点からも安心して導入を検討できる品質の目安となります。

実際に多くのソフトウェアパートナーがソフトウェアパスに参加し、AWSとの技術連携を深めることで、自社製品の技術的な価値を高め、導入企業からの信頼獲得につなげています。

この記事が、皆様がAWS上で信頼できるソフトウェアを選定される際の一助となれば幸いです。

 

SEデザインは、約40年にわたりコンテンツマーケティングの支援をしてまいりました。とくにIT関連業界の実績が豊富で、IT業界における導入事例の制作数はトップレベルであると自負しております。そのほか、オウンドメディア構築、LP制作、ホワイトペーパー・eBook制作、SEO記事制作などの制作や、広告運用などもご支援可能です。コンテンツマーケティングにお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。

 

 

参考
AWS JAPAN APN ブログ「AWS ファンデーショナルテクニカルレビュー (FTR) とは」
AWS JAPAN APN ブログ「【Partner-Hosted 編】ファンデーショナルテクニカルレビュー (FTR) のチェックリスト解説」
AWS「AWS Foundational Technical Review」

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