本記事では、AWSパートナーを検討されている方に向けて、「AWSパートナーの選び方とおすすめ企業一覧」で取り上げた企業の実際の取り組みを、個別にご紹介していきます。今回は、NHN テコラス株式会社についてお伝えします。
NHN テコラスは、AWSとGoogle Cloudの両方で最上位パートナーに認定される、国内でも数少ないクラウドMSPです。旧ライブドアのインフラ技術部門を母体として培った高い技術力を背景に、中堅・中小企業を中心とした幅広い顧客にクラウド活用を支援しています。
「高品質×低コスト」を実現するファンクショナル組織と、全国600社以上のパートナー網を活かし、顧客課題に柔軟かつ先回りで応える提案力で信頼を獲得しています。
本記事では、NHN テコラスの会社概要、AWS事業内容、強み、事例、今後の展望について詳しくご紹介します。
※こちらの記事は、2025年8月に実施した、NHN テコラス株式会社へのヒアリングをもとに作成しております。
旧ライブドアの技術部門から成長――NHN テコラスの歩みと現在地
NHN テコラスは、総合IT企業であるNHNグループに属し、約100社あるグループの中で唯一クラウドインテグレーションとマネージドサービスを担っています。
ルーツは、株式会社ライブドアから分社したインフラ技術部門です。その後「データホテル」としてデータセンタービジネスを展開し、2014年にNHNグループに加入。以降はクラウド事業へと領域を広げ、2016年からはAWSとGoogle Cloudの総合支援サービスを本格的に開始し、現在は両クラウドで最上位パートナーに認定されています。
出典:NHN テコラス 会社紹介資料
特にAWSに対しては重点的にリソースを投下し、2021年にプレミアティアへ昇格。さらにAWSジャパンだけでなく、米国AWS本社とも戦略的協業契約を結ぶなど、グローバルレベルでの協力体制を築いています。
NHN テコラスの事業領域は、次の3つに大別されます。
- クラウド関連ライセンス販売:AWSやGoogle Cloudをはじめとするクラウドの総合支援や関連ソフトウェアのライセンス販売
- 技術コンサルティング・マネージドサービス:クラウドやデータセンターの設計・構築・運用を支援
- SaaS事業:技術支援で培った知見をパッケージ化し、多くの顧客へ安価に提供
こうした成り立ちと事業展開により、NHN テコラスは物理からクラウド、さらにSaaSまでを一体的に提供できる技術支援企業として成長を続けています。
クラウド総合支援ブランド『C-Chorus』に見るNHN テコラスのAWSサービス
NHN テコラスのAWS事業は、インターネット黎明期に培ったITサービスやWebサービス分野の顧客基盤を土台としています。当初はデジタルネイティブな顧客が中心でしたが、AWSプレミアティア サービスパートナーとして認定されて以降、公共、製造、流通、エンタープライズ企業など、幅広い業種へと対象を拡大してきました。現在では、中堅・中小企業を主要なターゲットとしつつ、多様な業界のクラウド活用を支援しています。
同社が展開するAWS総合支援サービスブランド「C-Chorus」では、クラウドインテグレーション、ライセンスリセール、マネージドサービスといった基本的な支援に加え、特定の課題解決にフォーカスしたオファリングを用意しています。その中核を成すのが以下の4領域です。
- コスト最適化/FinOps:独自サービス「Cloud illuminator」で利用状況を可視化し、最適なコスト配分を提案
- セキュリティ・ガバナンス向上:24時間365日の監視体制とパッケージサービスで、安価かつ堅牢なセキュリティを実現
- データ分析支援:AWSの各種サービスを活用し、短期間でデータ分析を開始できる環境を構築
- 生成AI活用支援:社内で培ったノウハウを活かし、実業務でのAI活用や新規ビジネス創出を後押し
クラウド利用の各フェーズに応じて、移行支援とオファリングを組み合わせ、顧客の成長を長期的に支えています。
ファンクショナル組織と全国パートナー網――NHN テコラスの強み
NHN テコラスの強みは、大手SIerとは異なる独自の体制と提案スタイルにあります。本章では、同社を特徴づける3つのポイントを紹介します。
ファンクショナル組織による真のワンストップ支援
NHN テコラスは、複数領域を横断的に担当するファンクショナル組織を採用しています。大手企業では部門ごとに窓口が分かれるのが一般的ですが、NHN テコラスは機能横断のチーム体制により、「本質的なワンストップサポート」を実現しています。
また、少数精鋭で運営しつつ、生成AIやSaaSを積極的に活用することで、高品質と低コストの両立を実現しています。
全国展開を支えるパートナーエコシステム「CCPN」
もう一つの強みが、全国規模の展開を可能にするパートナーネットワークです。NHN テコラスは自社で全国に支社を広げるのではなく、地域に根差したIT事業者や開発会社と提携する「CCPN(Cloud Chorus Partner Network)」を構築しています。
2023年に始まったこの取り組みには、すでに600社が参加。クラウド人材が不足する地域の企業と補完関係を築き、中堅・中小企業に質の高い支援を届ける体制を整えています。
出典:NHN テコラス Cloud Chorus Partner Network
顕在課題と潜在課題の両面に応える提案力
NHN テコラスの提案姿勢は、顧客が求める「顕在課題」への対応にとどまりません。クラウド利用後に直面するであろう「潜在課題」を先回りして提案に含める点が特徴です。
たとえば、クラウド移行依頼に対して移行作業だけではなく、将来の内製化を見据えた運用設計やナレッジ移転も提案します。日本の中堅・中小企業は予算上全面的なアウトソーシングが難しいケースが多いため、「必要な部分だけ外部支援を受けつつ、最終的には自走できる」アプローチは高い支持を得ています。
安価に高品質を実現――NHN テコラスの導入事例
NHN テコラスの強みは、実際の導入事例にもよく表れています。ここでは、代表的な3社の事例を紹介します。いずれも「安価かつ高品質」「依頼以上の付加価値」という共通の評価が寄せられており、中堅・中小企業にとって参考になる事例です。
SUBARU:Webガバナンス強化とセキュリティ課題をAWSで解決
自動車メーカーSUBARUでは、本社・関係会社・販売会社など複数のWebサイトが乱立し、ブランド全体としての統制が求められていました。特にWebガバナンスの強化は急務であり、同時にセキュリティの課題も顕在化していました。
AWSの認定を多数取得し、安価かつ柔軟に安定稼働を実現できる点から、NHN テコラスがパートナーに選ばれました。導入後は「やりたいことに対して確実な答えを出してくれる」「AWSを最大限に活用する方法をアドバイスしてくれた」と高い評価を獲得。Webガバナンスとセキュリティの両面を強化しながら、安定したクラウド基盤を整備することができました。
オンワードホールディングス:ランサムウェア対策と運用体制の強化
大手アパレル企業のオンワードホールディングスでは、ランサムウェアの流行を背景にセキュリティ強化が急務となっていました。そのうえ社内の人的リソースは限られており、予算やスケジュールも課題でした。
NHN テコラスからAWSセキュリティ運用サービスの提案を受け、かねてからNHN テコラスの別のサービスを利用し、信頼も深まっていたことから、今回も採用を決定。24時間365日の運用体制と技術サポートも大きな決め手となりました。
導入後は、最小限の負担でセキュリティ強化と安定した運用体制を実現。さらに、運用状況が可視化されたことで安心感も得られ、構築期間と費用を大幅に削減できました。オンワードからは「常に迅速かつ丁寧な対応で、非常に信頼できるパートナー」と高く評価されています。
オルタナティブ:生成AIを活用した新規プロダクト開発を伴走
オルタナティブは、顧客向けにチャットボットでの自動応対を提案していましたが、生成AIを用いたデータ整形や加工精度の向上について、実装レベルの知見が不足していました。
NHN テコラスと連携し、設計・構築からチューニングまで伴走支援を実施。AWSのサービスを適材適所に組み合わせ、緊急度判定や無人応対を実装しました。
その結果、有人対応から無人化へ移行でき、人件費を含むTCOを約35%削減。開発期間の短縮や運用の効率化も実現し、「深い議論と丁寧なアドバイスで、スムーズに開発を進められた」と高い評価を獲得しています。
少数精鋭×パートナー拡大――NHN テコラスのこれから
NHN テコラスは、これまで培ってきたクラウド支援の知見を基盤に、今後は以下3つの軸を中心に事業を展開していく方針です。
オファリングの強化と生成AI活用
現在は、コスト最適化やセキュリティ、データ分析、生成AIといった注力領域をさらに強化しています。特に生成AIは、全社員が複数の基盤モデルを利用できる環境を整備し、専用のAIボット基盤を活用するなど積極的に取り組んでいます。
自社での実践から得た知見を顧客に還元し、高品質で効率的なサービスを提供していく計画です。
全国展開に向けたパートナーエコシステムの拡大
クラウド人材が不足している地域にも質の高い支援を届けるため、クラウドビジネス協業プログラム「CCPN」をさらに拡充していきます。すでに600社以上が参画していますが、今後1年半で1000社規模に拡大する計画です。地域に密着した事業者と協業することで、全国の中堅・中小企業にクラウド活用を広げていくことを目指しています。
ファンクショナル・少数精鋭組織のさらなる進化
社内では引き続きファンクショナル・少数精鋭の組織づくりを追求し、効率的かつ高品質な支援体制を維持していきます。その中でも特に注力しているのが開発部門の強化です。生成AIプロジェクトの推進や、データ分析基盤の開発を行うエンジニアの採用に力を入れ、技術力を高めながら新しい価値を創出していく方針です。
まとめ
NHN テコラスは、AWSとGoogle Cloudの両方で最上位パートナーに認定される希少な存在です。ファンクショナル組織による真のワンストップ支援、全国に広がるパートナーエコシステム、そして顧客の潜在課題にまで踏み込む提案力を強みとしています。安価で高品質なサービスにより中堅・中小企業を中心に幅広い業界を支援し、今後も生成AIやデータ分析など先端技術を取り入れ進化を続けます。
コスト最適化やセキュリティ強化、技術力の高いエンジニアの支援を求める企業にとって、NHN テコラスは最適な選択肢となるでしょう。
会社概要
会社名 |
NHN テコラス株式会社 |
代表者 |
代表取締役社長 白倉 章照 |
本社所在地 |
東京都港区西新橋三丁目1番8号 NHN アトリエ |
設立 |
2007年4月 |
資本金 |
21億円 |
社員数 |
157名 ※直接雇用社員 (2024年10月時点) |
事業内容 |
ITインフラ・ソリューション事業 |