API開発の品質と効率を高める――統合プラットフォームPostmanの強み

更新日:2025-09-09 公開日:2025-09-09 by SEデザイン編集部

目次

本記事では、AWSパートナーを検討されている方に向けて、「AWSソフトウェアパスとは?導入企業が知っておきたい信頼性の指標」で取り上げた企業の実際の取り組みを、個別にご紹介していきます。今回は、Postman株式会社についてお伝えします。

APIの利活用が広がる一方で、「APIに関する情報が社内で共有されていない」「開発したAPIが必要な人に見つけてもらえない」といった課題を抱える企業は少なくありません。APIの本来の価値を最大限に活かすには、設計からテスト、ドキュメント管理、運用、共有までを見据えた仕組みが求められています。

そうした課題に対し、世界中で4,000万人以上の開発者、50万社以上の企業に利用されているのが、Postmanです。Postmanは、APIライフサイクル全体を統合的に支援するプラットフォームとして、多くの企業の開発・運用プロセスを支えています。

※こちらの記事は、2025年8月に実施した、Postman株式会社の代表者およびご担当者様へのヒアリングをもとに作成しております。

 

API開発のグローバルスタンダードを築くPostmanの歩み

Postmanは、API開発の効率化と品質向上を目的とした統合プラットフォームを提供するソフトウェア企業です。創業は2014年、インドでAPI開発に従事していた3人のエンジニアが、業務の効率化を図るために自ら開発したツールが原型となりました。その後、ユーザーからの高い支持を受けて製品化され、2017年にはグローバル展開を本格化すべく、本社をアメリカ・サンフランシスコに移転。現在では、従業員約1,000名を擁するグローバル企業へと成長しています。

日本法人は2023年4月に設立されました。国内でも既に60万人以上のユーザーが存在し、さまざまな業界で活用が進んでいます。Postmanは、技術者のみならず、ビジネス部門も含めた“チーム全体でAPIに向き合う開発環境”の実現を支援しています。

APIライフサイクル全体を支えるPostmanの主な機能

Postmanが提供するのは、API開発のライフサイクル全体を支援する統合型のコラボレーションプラットフォームです。APIの設計・テスト・ドキュメント化・モック・監視・セキュリティ・コラボレーションといったすべての工程を一貫して扱うことができ、関係者間の連携をスムーズにします。

Postman01_lifecycle

出典:「Postmanのご紹介」資料より

中心となる機能のひとつが「Postmanコレクション」です。これは、APIの仕様情報、テストシナリオ、モックデータ、ドキュメントなどを構造的に一元管理する仕組みで、「Single Source of Truth(信頼できる唯一の情報源)」として開発や運用の中心を担います。複数の開発者やチーム、さらには外部パートナーとも情報を共有しやすく、属人化を防ぎながら、効率的なAPI開発を実現します。

もう一つ注目されているのが、「Postman Flows」です。これは、ローコード/ノーコードでAPIを組み合わせ、アプリケーションや業務ワークフローを構築できるビジュアルツールです。Postman Flowsを活用することで、非エンジニアでもAPIを利用した業務自動化やシステム連携が可能になります。

Postman02_flows

出典:Postman Flows: the next generation of software development

発表当初は一般的なワークフローツールという位置づけでしたが、現在では“AIエージェントの設計ツール”として活用されています。Postman Flowsで作ったワークフローがそのままAIエージェントとして動作するようになり、実際の業務や開発の現場で活用が広がり始めています。

さらに、PostmanパブリックAPIネットワークというカタログ機能も用意されています。ここでは10万以上のAPIが公開されており、世界中の企業が自社のAPIを提供しています。開発者はそれをそのままフォークして試験や連携開発に利用することができます。日本企業でもfreeeをはじめとした企業が参加しており、ユーザーのオンボーディングやAPI連携の迅速化に貢献しています。

Postman03_APIカタログ

出典:「Postmanのご紹介」資料より

Postmanは、API開発をこれから本格化したい企業はもちろん、すでに導入済みの企業が管理や運用に課題を感じている場合にも有効です。特に、複数チーム間の連携や社外向けAPI提供を見据える企業との相性が良いとされています。

開発効率と品質を両立するPostmanの価値

Postman最大の特徴は、APIの設計からテスト、ドキュメント化、モック、監視、セキュリティ管理に至るまで、すべての工程を一つのプラットフォーム上で完結できる統合性にあります。従来は設計・テスト・ドキュメント化・共有などを異なるツールで管理していた開発プロセスを、Postmanであればシームレスに進めることができます。この“ツールを切り替えずに完結できる”という利便性は、開発スピードの向上だけでなく、属人化の防止や品質向上にも大きく寄与します。

また、チーム開発を前提とした強力なコラボレーション機能も大きな強みです。ワークスペースごとにユーザーや権限を柔軟に管理できるだけでなく、フォーク&プルリクエスト機能により、変更内容のレビューやバージョン管理もスムーズに行えます。こうした機能により、コードの管理が煩雑になりがちな大規模開発やマルチチーム体制でも、整然とした開発運用が可能になります。社内の複数部門はもちろん、外部パートナーや顧客との共同作業にも適しており、エンタープライズ規模の開発体制にも柔軟に対応できます。

三菱電機の事例に学ぶ、Postman活用の効果

家電や住設機器をつなぐIoT共通プラットフォーム「Linova」を開発・運用する三菱電機では、冷蔵庫やエアコンなど多様な製品を連携させ、統合アプリ「MyMU」上でユーザー体験を提供する構想を進めていました。しかしその裏側では、APIの複雑化により、「改修後の他のアプリへの影響が見えづらい」「テストスクリプトが共通化されていない」「試験構築が属人的」といった課題を抱えていました。

これらの課題解決のために導入されたのが、Postmanです。三菱電機では、ユースケース単位で試験パターンをまとめたコレクションをチームで共有し、パターンの標準化と再利用を実現。さらに「Postman Flows」による視覚的な試験フロー設計により、非エンジニアでも試験構造を理解・設計できる環境が整いました。

加えて、コマンドライン実行に対応したツールNewmanとTestRailとの連携を通じて、CI/CDパイプラインへの組み込みと自動レポート生成も実現。設計品質の向上だけでなく、継続的な自動テストによる開発サイクルの高速化にもつながっています。Postmanの豊富な機能と高い拡張性が、三菱電機の複雑なAPI環境において開発・運用の効率化を力強く支えています。

Postman04_casestudy

出典:「Case Study Mitsubishi Electric_配布資料」より

AWSとの補完関係で広がるPostmanの活用

Postmanは、AWSとの連携においても高い親和性を持っています。APIの品質向上を支援するPostmanと、スケーラブルで信頼性の高いAPI実行基盤を提供するAWSは、API開発・運用の現場における補完関係にあるといえます。

具体的には、Postmanで設計・テスト・ドキュメント化したAPIを、AWS上にホストして運用するという構成が多くの企業で採用されています。Postmanが提供する監視やテスト、コラボレーション機能を活用することで、AWS上にデプロイされたAPIの品質を維持しながら、継続的な改善サイクルを回すことができます。

Postman05_Postman-AWS

出典:「APIサービスでのPostman × AWS連携イメージ」資料より

さらに、AWS Marketplaceを通じたライセンス購入も可能です。AWSユーザーにとって、既存の契約体系の中でPostmanを導入しやすい点も大きなメリットです。

→MarketPlaceでのPostman購入はこちら

クラウドネイティブなアーキテクチャにおいて、PostmanとAWSの組み合わせは、信頼性と開発効率を両立させる実践的な選択肢として、多くの企業に活用されています。

AI時代を見据えたPostmanの進化

Postmanは今後、APIのAI対応を一層強化していく方針です。これまでAPIの呼び出し元は主にプログラムでしたが、ここ1年ほどでAIエージェントやLLMが自律的にAPIを利用するケースが急速に増加しました。こうした変化に対応するため、AIを前提としたAPI設計や最適化の重要性が高まっています。

同時に、Postmanの機能そのものにもAIが積極的に活用されています。テストコードやスクリプトを自然言語で記述できることで、テスト実行者が細かい技術仕様まで理解していなくても、ビジネス本来の目的にフォーカスした開発を実現できるようになりました。

さらに、エンタープライズグレードのAPIセキュリティやガバナンス機能、新しいAPIアーキテクチャや仕様への対応強化も進行中です。開発者だけでなく、ビジネス部門を含む幅広いユーザーにとって、APIの価値を最大化するプラットフォームを目指しています。

まとめ

Postmanは、APIの設計から運用までを一元的に支援し、チームやパートナーとのコラボレーションを促進する統合プラットフォームです。世界4,000万人以上の開発者、50万社以上の企業に利用され、国内でも幅広い業界で採用が進んでいます。ワークスペースやフォーク&プルリクエストなどのコラボレーション機能により、社内外の関係者が同じ情報を共有しながら安全に開発を進められる点も大きな魅力です。

近年は、AIエージェントやLLMによるAPI利用の増加を背景に、AIを活用した新機能も拡充。テストコードやスクリプトを自然言語で記述できる機能や、Postman Flowsを活用したAIエージェント設計など、非エンジニアを含む幅広い利用者がAPIの価値を引き出せる環境を整えています。

社内向けやパートナー向けのAPIを運用する企業はもちろん、パブリックAPIを事業の核として成長させたい企業にとっても、Postmanは強力かつ将来性のある選択肢といえるでしょう。

 

会社概要

会社名

Postman株式会社

日本法人所在地

東京都千代田区丸の内1-5-1新丸の内ビルディング10F

設立

20234

代表者

代表取締役社長 平林 良昭

事業内容

APIプラットフォームの提供

 

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