帳票とデータ活用で企業を支える——ウイングアーク1stのSVFとMotionBoard

更新日:2025-10-02 公開日:2025-10-02 by SEデザイン編集部

目次

本記事では、AWSパートナーを検討されている方に向けて、「AWSソフトウェアパスとは?導入企業が知っておきたい信頼性の指標」で取り上げた企業の実際の取り組みを、個別にご紹介していきます。今回は、ウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク)についてお伝えします。

「帳票」と「データ活用」の分野で国内トップシェアを誇る同社は、主力製品の「SVF」「invoiceAgent」「MotionBoard」「Dr.Sum」を軸に、多様な業界の業務変革を支えてきました。業務効率化から意思決定まで幅広く支援し、直感的に使える操作性やユーザーコミュニティ活動など、導入後の満足度の高さも大きな特徴です。

本記事では、ウイングアークの主力製品の中でも「SVF」と「MotionBoard」の2つに焦点を絞って紹介するとともに、AWSへの展開や今後の展望などを紹介します。

※こちらの記事は、2025年9月に実施した、ウイングアーク1st株式会社ご担当者様へのヒアリングをもとに作成しております。

 

帳票とデータ活用、二本柱でDXを牽引

ウイングアークは、2004年に設立されました。同社の前身は、帳票関連製品を手掛けてきた翼システムやウイングアーク テクノロジーズであり、長年にわたり帳票分野をリードしてきた実績を持ちます。

事業は大きく2つの柱で構成されています。
ひとつは、帳票・文書管理を担う「ビジネスドキュメント事業」。ここでは、国内帳票市場で約69%(※1)という圧倒的シェアを誇る帳票基盤ソリューション「SVF」や電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」などを提供しています。
もうひとつは、データ活用を支援する「データエンパワーメント事業」で、データ基盤基盤「Dr.Sum」やBIダッシュボード「MotionBoard」によって、企業のデータ分析と意思決定を加速させています。

両事業はいずれも国内市場で高いシェアを獲得しており、帳票とデータの両面から企業のDX推進を支援できる点が同社の大きな強みです。

※1 デロイトトーマツ ミック経済研究所株式会社発刊 ミックITリポート2024年11月号 「帳票設計・運用製品の市場動向 2024年度版」

国内シェアNo.1、帳票基盤ソリューションSVF

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出典:帳票による業務効率改善ソフトウェアSVF製品一覧|ウイングアーク1st

SVFは、帳票分野で圧倒的シェアを誇る基盤ソリューションです。請求書や納品書などの帳票を設計から出力まで一貫して扱い、金融業、製造業、公的機関、小売業など幅広い業界で活用されています。ここでは、SVFの概要やターゲット層、強み、導入事例について紹介します。

⇒SVFの詳細はこちら

SVFの概要:あらゆる帳票を一元管理

SVFは、企業が日々発行するあらゆる帳票を効率的かつ正確に生成できる帳票基盤ソリューションです。請求書や納品書、見積書、検査報告書、証明書など多様な帳票に対応し、レイアウト設計から印刷・PDF出力・電子配信までをスムーズに行えます。

国内帳票市場で約69%のシェアを獲得し、38,000社以上(※2)に導入されてきた実績は、信頼性の高さを物語っています。
※2 クラウド版とパッケージ版の累積社数(2025年2月末)

SVFのターゲット層:システム部門・バックオフィスの頼れる基盤

SVFは、システム部門に導入後、バックオフィス部門を中心にさまざまな部門で利用され、金融・製造・公的機関・小売など幅広い業界で活用されています。

オンプレミス版は、公的機関や銀行などの大規模なシステム環境を持つ企業を中心に多く採用され、厳格なセキュリティ要件にも対応可能です。一方、クラウド版「SVF Cloud」は、オンプレミスと同様の領域に加えてSalesforceやServiceNowとの連携に強みを持ち、中堅から大企業まで幅広い業種で利用が拡大しています。

▼Salesforceからの帳票出力の設定イメージ

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出典:SVF Cloud for Salesforce|ウイングアーク1st

SVFの強み:豊富で柔軟なシステム連携

SVFの最大の強みは、豊富なシステム連携です。基幹システムやERP、クラウドサービスと柔軟に接続できるため、業務環境を問わず導入しやすい点が評価されています。特に金融機関や公的機関など、セキュリティ要件が厳しい現場でも安心して利用できる堅牢性は、大規模導入が進む大きな理由となっています。

また、長年にわたり帳票分野をリードしてきた経験から、プリンターやラベル発行システムとの連携ノウハウも豊富です。単純なPDF出力にとどまらず、現場の多様な帳票要件に対応できる柔軟性は、他社製品にはない差別化ポイントといえるでしょう。

制度改正にスピード対応——関西電力送配電のSVF Cloud導入事例

関西電力送配電では、制度改正に伴い請求書の送付先が急増し、発電事業者向けのインボイス対応を含む全帳票のリニューアルが急務でした。従来の仕組みでは期限までの対応が難しく、システム部門に大きな負担がかかることが懸念されていました。

そこで同社は、「SVF Cloud」と電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」を導入。ウイングアークの支援のもと、新制度開始に間に合うよう短期での開発を実現しました。

▼発電側課金制度に対応した関西電力送配電の託送料金請求システム全体像

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出典:関西電力送配電株式会社 | 導入事例|ウイングアーク1st

さらに、顧客情報のCSVファイルを、SVF Cloud用のインターフェイスモジュール「Universal Connect/X」で分解し、帳票データとして出力できるよう整備。これにより請求データの取り込みから帳票作成、配送までを自動化し、人手による処理を削減しました。

⇒関西電力送配電の導入事例はこちら

データを見える化し、意思決定を加速するMotionBoard

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出典:MotionBoard体験デモ|ウイングアーク1st

「MotionBoard」は散在するデータを集約し、リアルタイムで可視化するBIダッシュボードです。経営層から現場担当者まで多層的な意思決定を支援し、製造・金融・建設業を中心に導入が進んでいます。ここでは、MotionBoardの概要、ターゲット層、強み、事例について紹介します。

⇒MotionBoardの詳細はこちら

MotionBoardの概要:経営層から現場まで活用できるBI

MotionBoardは、企業に散在する多種多様なデータを一元的に集約し、ダッシュボード上で直感的に可視化するBIツールです。売上や在庫などの経営データに加え、生産ラインの稼働状況やIoTセンサー情報といった現場データまで幅広く扱うことができます。オンプレミスとクラウドの両形態に対応しており、企業規模やシステム要件に応じて柔軟に選択できます。

累計導入社数は3,900社以上(※3)にのぼり、多くの企業においてデータ活用基盤として採用されています。
※3 クラウド版とパッケージ版の累積社数(2025年2月末)

MotionBoardのターゲット層:製造・金融・建設、現場の課題を解決

MotionBoardは、経営層から現場担当者まで幅広く利用され、特に製造業、金融業、建設業での導入が多い製品です。

製造業では、ばらばらに管理されていた生産データや日報をダッシュボードに集約。現場担当者が直接入力できる仕組みにより、業務効率化を実現しています。金融業では、銀行窓口で発生する各種データをダッシュボード上で完結させることで、業務スピードと正確性を向上。建設業では、日報や写真データをダッシュボードに集約し、現場と本社間の情報共有をスムーズにすることで、プロジェクト進行を支援しています。

▼製造生産管理ボードのデモイメージ

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出典:MotionBoard体験デモ|ウイングアーク1st

規模感としては、中堅から大企業まで幅広く導入されており、オンプレミス/クラウドの両ライセンス形態を選べるため、企業の予算やシステム要件に応じた柔軟な利用が可能です。

MotionBoardの強み:他社にはない“現場業務に使えるBI”

MotionBoardは、ダッシュボード上でデータの入力や修正ができ、さらにSalesforceや各種データベースなどの元のシステムに直接書き戻すことが可能です。現場担当者が発見した誤りをその場で修正できるため、業務効率が大幅に向上します。各現場業務で利用されているさまざまなソリューションと連携できるところも強みの一つです。

また、大規模利用にも耐えられる安定性も強みのひとつです。他社ツールでは同時接続数が増えると処理が重くなる場合がありますが、MotionBoardでは環境の増強や柔軟な対応により、大規模環境下でも快適に利用できる仕組みを整えています。

さらに、データ基盤「Dr.Sum」と組み合わせることで、現場DBを活用した高速集計や柔軟な可視化を実現。30分ごとに更新されるツールが多い中、MotionBoardならより使いやすく、スピード感のある意思決定を支援します。

建設現場を“見える化”し、次の一手を支援―竹中工務店のMotionBoard導入事例

建設業界は、改正労働基準法の適用や物価上昇、技能労働者の減少など、厳しい環境に直面しています。竹中工務店も例外ではなく、日々変化する建設現場を正確に把握し、“次の一手”を予測するアプローチが求められていました。

そこで同社は、業務を可視化するBIツールとして「MotionBoard」を、データの蓄積・分析基盤として「Dr.Sum」を導入。MotionBoardにおいては、他システムと連携しつつ現場スタッフが直接データを入力し、そのままレポートに反映できる点が評価されました。現場から経営層までが同じデータを共有できる仕組みが整ったことで、判断スピードと精度が大きく向上しています。

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出典:株式会社竹中工務店  | 導入事例|ウイングアーク1st

導入後は、営業活動、生産性、勤怠管理、経営の4種類のダッシュボードを活用。稼働現場の状況把握、社員や外部人材の労働時間規制への対応、受注全体の最適化などに貢献しています。現在では「建設業にとって非常に有用なツール」として社内に浸透し、工事と人材マネジメントを支える基盤となっています。

⇒竹中工務店の導入事例はこちら

操作性とサポートが生む高い満足度

ウイングアークの各製品は、使いやすさや運用支援の手厚さが共通の強みです。直感的な操作性、カスタマーサクセスの伴走支援、ユーザー同士のコミュニティ活動など、導入後の価値を高める仕組みが整っています。

直感的な操作性とカスタマーサクセス

各製品に共通する特長として、操作性の高さがあります。専門的な知識がなくても直感的に利用できるため、現場部門の利用者からも好評を得ています。導入後にはカスタマーサクセス部門が丁寧に伴走し、活用方法の提案や課題解決をサポートすることで、安心して運用を続けられる体制が整っています。

2,000社以上が参加するnestワーキンググループ

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出典:ユーザーコミュニティ「nest」|ウイングアーク1st

ウイングアークは、ユーザー同士が活用ノウハウを共有できるコミュニティ「nestワーキンググループ」を運営しています。2018年の設立以来、登録企業は2,000社以上、会員数は4,600名を超える規模(2025年2月末現在)へと成長しました。

コミュニティの成長を支えているのは、同社とユーザーとの共創の仕組みです。初期段階から中心となって活動する「nestアンバサダー」の存在があり、ユーザー主体の企画もあれば、ウイングアークが提案・運営するプログラムもあります。両者が二人三脚で取り組むことで、実務に役立つ知見を交換できる場として定着しました。

全国各地でカンファレンスやオンライン相談会も開催され、地域や部門を超えた交流が活発に行われています。

⇒「nestワーキンググループ」の詳細はこちら

AWSで実現する拡張性と安定稼働

ウイングアークは、クラウドサービスの展開に早くからAWSを採用してきました。2012年には「MotionBoard Cloud」をAWS上で提供開始し、SVF Cloudでもマネージドサービスを活用して高い拡張性と安定稼働を実現しています。

クラウド普及期前からAWSを採用

2012年当時はクラウド基盤が登場し始めたばかりの頃で、パフォーマンスやコストの観点から最適と判断されたのがAWSでした。「MotionBoard Cloud」は、日本のソフトウェアとして初めてAWS Marketplaceに登録された製品です。

それまでオンプレミス中心だった帳票・分析環境において、柔軟で拡張性の高いクラウドサービスの活用を一気に広げる契機となりました。

参考:日本製品として初めて製品登録、「Amazon Web Services Marketplace」上で情報活用ダッシュボード「MotionBoard」を提供開始|ウイングアーク1st

AWSサービスを組み合わせた最適設計

ウイングアークは、SVF Cloudの提供にあたり、AWSのマネージドサービスを積極的に採用しました。Amazon SQSやAmazon SNSを組み合わせることでピーク時のアクセス集中にも耐えられる拡張性を実現し、AWS PrivateLinkやAmazon WorkSpacesの活用によりセキュリティと運用効率も強化。

この仕組みにより、顧客は既存のAWSサービス(Amazon S3やAmazon Redshiftなど)をそのまま利用しつつ、安定した帳票運用を行えるようになっています。

安定運用と新たな価値提供に向けた今後の取り組み

ウイングアークは、クラウドサービスの利用拡大に対応し、より安定した運用と新機能の提供に注力していく方針です。

プライベートクラウド環境の強化

MotionBoard CloudやSVF Cloudでは、同時接続数が多いケースや特殊要件に応えるため、専用のプライベートクラウド環境を提供しています。利用件数の増加に伴い、環境を効率的に発行・管理する仕組みの整備が重要な課題です。特に、大量の帳票を発行する業務では、リソース配分とコスト最適化を両立した提供を進めています。

可用性を高めるBCP対応の強化

災害や障害への備えとして、複数リージョンでの運用を強化し、サービスの可用性をさらに高める方針です。これにより、顧客はBCP(事業継続計画)の観点からも安心して利用できる環境を整備していきます。

まとめ

ウイングアークは、今回ご紹介した「SVF」と「MotionBoard」、さらには「invoiceAgent」と「Dr.Sum」を軸に、企業の業務効率化と意思決定を支援しています。直感的な操作性やカスタマーサクセスによる伴走支援、ユーザーコミュニティなど、導入後の価値を高める仕組みも強みです。

帳票とデータの両面からDXを支えるウイングアークの製品は、業務改善やデータ活用を加速させたい企業に最適なソリューションです。

 

会社概要

会社名

ウイングアーク1st株式会社

本社所在地

東京都港区六本木三丁目21号 六本木グランドタワー

創業

20043

代表者

代表取締役 社長執行役員CEO 田中 潤

資本金

122800万円(20252月末時点)

従業員数

連結1,002人/単体819人(20252月末現在)

 

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