Microsoft Azureは、Microsoftが提供するクラウドプラットフォームです。Microsoft 製品との親和性や国内外での豊富な導入実績などから、クラウド市場におけるシェアはAWSに次ぐ第2位を維持しつつ、着実に拡大しています。
実際、調査会社Synergy Research Groupによると、2025年第1四半期のクラウドインフラ市場におけるシェアはAWSが29%、Microsoft Azureが22%と報告されています。AWSが少しずつシェアを落とし、30%を下回った一方で、Azureはその差を着実に縮めつつあり、存在感を強めています。
Azureの導入を検討・推進している企業が増えている中で、重要になるのがMicrosoft から認定された「ソリューションパートナー」の存在です。支援内容や得意領域はパートナーごとに異なるため、自社の課題や目的に応じたパートナー選定が、導入成功の鍵を握ります。
私たちSEデザインは、これまでIT業界を中心に多くのクラウド・SaaS関連企業を対象としたマーケティング支援を行ってきました。 その知見をもとに、本記事ではAzureの導入支援を行うソリューションパートナーについて、制度の概要、選定ポイント、代表的な企業の特徴や支援内容を整理してご紹介します。
「Azure導入を検討している」「信頼できるパートナー企業を知りたい」とお考えの方にとって、有益な情報となれば幸いです。
Azureのシェア拡大を支える2つの強み
Microsoft Azureがクラウド市場で存在感を高めている背景には、さまざまな要因があります。セキュリティやグローバル展開のしやすさ、パートナーエコシステムの充実など、多岐にわたる魅力が評価されていますが、本記事ではその中でも特に「Microsoft製品との親和性」と「生成AI分野での先行優位性」の2点に注目してご紹介します。
既存資産を活かしやすい「親和性」と「コスト最適化」
Azure最大の強みのひとつは、Windows ServerやActive Directory、Microsoft 365といった日常的に利用されているMicrosoft製品との高い親和性です。これらの既存資産とシームレスに連携できるため、クラウド移行時の手間や業務の中断を最小限に抑えることができます。
さらに、既存のMicrosoftライセンス契約を活かしたコストメリットも、多くの企業にとって大きな魅力となっています。たとえば、Microsoft 365やWindows Serverのライセンスをすでに保有している企業は、Azureの利用に際して追加コストを抑えることができ、全体的なITコストの最適化を図ることが可能です。このように、オンプレミスからクラウドへのスムーズな移行とコスト効率の両立が実現しやすい点が、導入企業の拡大につながっています。
生成AI分野での先行と差別化
近年では、生成AIを軸としたクラウド活用ニーズの高まりもAzureの追い風となっています。Microsoftは2019年からOpenAIと提携し、「Azure OpenAI Service」や「GPT-4」といった生成AIサービスをいち早く展開してきました。AWSに先駆けて生成AIを商用活用できる環境を整えてきたことで、AI開発や業務への応用を目指す企業からの支持を集めています。
このように、既存のMicrosoftユーザーにとっての導入ハードルの低さと、新たなテクノロジー領域での先行優位の両輪によって、Azureは着実に市場シェアを拡大しているのです。
Microsoft が認定する「ソリューションパートナー」の制度
Azureの導入を検討する企業にとって頼りになる存在が、Microsoftから認定を受けた「ソリューションパートナー」です。これは、クラウド導入・活用における専門スキルや実績を有する企業をMicrosoftが公式に認定する制度であり、パートナー各社はそれぞれに強みや対応領域を持っています。
ソリューションパートナー制度の概要
従来の「コンピテンシー制度(Silver/Goldパートナー)」に代わり、2022年10月からは「ソリューションパートナー制度」が導入されました。新制度では、以下のような点で認定基準が見直されています。
- シルバー/ゴールドといった区分の撤廃
- ソリューションごとの専門性を評価する体系に変更
- 評価基準として「Performance」「Skilling」「Customer Success」の3要素が導入
- 合計70ポイント以上で認定を取得できるポイント制
これにより、従来よりも実績や専門性の証明が求められる仕組みとなり、認定のハードルは全体的に高まったといえるでしょう。
6つのソリューション分野
ソリューションパートナーは、それぞれの得意分野に応じて、Microsoftから6つのソリューション分野のいずれかで認定を受けています。
認定は、Microsoftが定めた基準(実績・スキル・顧客支援実績など)を満たすことで取得されており、パートナーの専門性を見極める際の重要な指標となります。
ソリューション分野 |
主な領域 |
Business Applications |
Dynamics 365、Power Platformなど業務アプリケーション |
Modern Work |
Microsoft 365などによる業務環境・生産性支援 |
Security |
セキュリティ/ID管理/コンプライアンス |
Data & AI(Azure) |
Azure上でのデータ分析/AI活用 |
Digital & App Innovation(Azure) |
Azureベースのアプリ開発/DevOps支援 |
Infrastructure(Azure) |
Azureへのインフラ移行・設計・運用支援 |
依頼したい内容に応じて、どの分野の認定を持っているかを確認することが大切です。
Azureの導入支援を依頼したい場合は、「Infrastructure」「Data & AI」「Digital & App Innovation」といった、Azureに関連する分野の認定があるかに注目するとよいでしょう。
Microsoft ソリューションパートナーの選定ポイント
Azureの導入を成功させるには、単に「有名な会社」や「価格が安い会社」ではなく、自社の目的や課題に合ったパートナーを選ぶことが重要です。ここでは、選定時に確認すべき6つのポイントをご紹介します。
ポイント1.自社の導入目的や課題
まず大前提として、「Azureで何を実現したいのか」を自社の中で明確にしておくことが最優先です。
▼導入目的の一例
- オンプレミスからのインフラ移行
- データ活用やAI導入
- 新規アプリケーション開発
- Microsoft 365やPower Platformとの連携
目的によって適したパートナーや必要な支援内容が大きく変わるため、「やりたいこと」と「現在の課題」を整理してからパートナーを選定することが、結果的にスムーズな導入につながります。
ポイント2.パートナーの得意領域・認定分野
Microsoft から認定されている「ソリューションパートナー」のうち、Azure導入支援に関連するのは、主に以下の分野です。
- Infrastructure:Azureインフラ移行・構築
- Data & AI:データ分析・AI活用基盤の構築
- Digital & App Innovation:Azure上でのアプリ開発やモダナイゼーション支援
これらの分野で認定を受けているかどうかは、その領域での専門性や支援実績の証明にもなります。
また、製造業や公共、医療など業種特化型の支援実績があるかどうかも併せて確認すると、自社との相性を見極めやすくなります。
ポイント3.サポート体制やコミュニケーション方法
Azure導入では、構築だけでなくその後の運用・最適化フェーズの支援も重要です。
- 導入後の問い合わせや障害対応の窓口は明確か
- 定例ミーティングやレポーティング体制はあるか
- 提案や改善提言を継続的に受けられるか
また、コミュニケーションスタイル(Slack/Teams/メール中心など)や、技術者との直接対話が可能かも、日々のやりとりのしやすさに影響します。
ポイント4.予算・契約形態の柔軟性
パートナーによって提供形態はさまざまです。以下のような点を比較検討するとよいでしょう。
- 見積もりの明確さと費用内訳
- スポット契約/月額契約/PoC支援などの柔軟性
特にAzureでは、契約形態(ライセンスの購入経路)によって費用構造やサポート体制が異なるため、注意が必要です。
- EA契約(Enterprise Agreement):
大企業向けの前払い契約で、500ユーザー(またはデバイス)以上が前提。LSP(Licensing Solution Partner)と呼ばれる認定パートナー企業を通じて契約する
- CSP契約(Cloud Solution Provider):
従量課金制で、企業規模を問わず柔軟に導入可能。CSPパートナーがAzureの販売・契約管理・サポートまでを一括して提供するため、スピード感や利便性を重視する企業に向いている
どちらの契約形態を取り扱っているか、また自社の利用規模や管理体制に適した提案ができるかは、パートナー選定時にぜひ確認しておきたいポイントです。
ポイント5.同業種・同規模の導入実績
同じような業界・企業規模での導入支援実績があるパートナーであれば、業界特有の課題や制約を理解してもらいやすく、具体的な提案や支援が期待できます。
- 導入事例の公開の有無
- 導入企業名/支援内容の記載
- 自社と同じような課題に対するアプローチ事例の有無
ポイント6.スピード感(導入~運用までの対応スピード)
Azure導入では「まずPoC(試験導入)だけでも早くやりたい」「年度内に構築を完了したい」といったスケジュール重視のケースも多くあります。
- 初回提案までの期間
- 契約~着手のフロー
- 構築・運用開始までの目安と実績
また、生成AIやアプリ開発のように変化の早い領域ではスピードが競争力に直結するため、「意思決定から着手までの早さ」もパートナー選定時の重要な判断材料になります。
Azure導入支援を行うソリューションパートナー企業一覧
各社の特徴や強み、導入事例などを参考にすることで、自社の目的にマッチしたパートナー選定がしやすくなります。複数社見比べながら、自社に合いそうなパートナー企業を見つけてみてください。
1.SBテクノロジー株式会社
■特徴・強み
- エンタープライズ企業のお客様に Microsoft Azure サービスをご提供してきた実績とノウハウ
- 高品質で標準化されたサービスメニューを提案
- Microsoft Azure の運用、セキュリティを守る NOC および SOC をご提供できる、数少ないベンダー
■主な提供サービス
- Microsoft Azure 導入・運用支援サービス
- Microsoft Azure アセスメントサービス
- Microsoft Azure インテグレーションサービス
- Microsoft Azure マネージドサービス
■主な導入事例
- 株式会社ベネッセコーポレーション:自社データセンターの 50%〜70% を Microsoft Azure 上に移行。ソフトバンク・テクノロジーの圧倒的な導入実績と知見がクラウド・データセンター実現を後押ししてくれました
⇒導入事例はこちら - 学校法人 龍谷大学:農業データを Microsoft Azure で一元管理。データ分析基盤の構築により、アグリ DX 人材育成のための準備が整いました
⇒導入事例はこちら
■このパートナーが向いている企業
- エンタープライズ規模の Microsoft Azure 移行を行いたい企業
- 人材不足を解消したい企業
- AI を活用し安定的かつスピーディーに対応してほしい企業
■認定ソリューション分野
- Business Applications
- Modern Work
- Security
- Data & AI(Azure)
- Digital & App Innovation(Azure)
- Infrastructure(Azure)
2.TD SYNEX
■特徴・強み
- 豊富な SI パートナーとの連携で、多様なAzureサービスに対応可能
- 構築までワンストップで提供
- 人気のサービスをパッケージ化、スピーディーに利用開始
■主な提供サービス
- Azure Virtual Desktop導入支援サービス
- Azure Virtual Desktop導入支援サービス
- Azure 導入設定移行サービス
■主な導入事例
- 株式会社A-ZiP:Microsoft Azure 上で工事要員計画を広く共有、工事対応力向上と過重労働防止を実現
- 株式会社ITCS:Microsoft Azure を使った自社パッケージ製品のクラウド化でユーザー数の大幅増を実現
■このパートナーが向いている企業
- 導入したいが、どこに相談したら良いかわからない企業
- 自社の課題に応じた機能やソリューションを提案してほしい企業
- 可能な限り迅速に環境を構築したい企業
■認定ソリューション分野
- Modern Work
- Security
- Data & AI(Azure)
- Digital & App Innovation(Azure)
- Infrastructure(Azure)
3.双日テックイノベーション株式会社
■特徴・強み
- 商社ならではのIT製品選定力と検証力を活かした最適なソリューション提案
- Microsoft常駐メンバーが最新情報をいち早く課題解決策へ反映
- 金融向けの豊富な実績・経験
■主な提供サービス
- Microsoft Azure移行サービス
- VDI導入支援サービス
- 企業データ連携/可視化/分析サービス
- Azure健康診断サービス
- Azureインフラセキュリティ強化サービス
- Azureネットワーク構築サービス
■主な導入事例
- 株式会社ニトリ:お、ねだん以上。「ニトリ流」働き方改革を実現 VMware Horizon Cloud on Microsfot Azure
⇒導入事例はこちら - タカラスタンダード株式会社:タカラスタンダードが見積提案システムのパフォーマンス課題を3カ月で解決
⇒導入事例はこちら
■このパートナーが向いている企業
- Azure移行の適正費用が適正かチェックしたい企業
- Microsoft 365でテレワーク環境を導入したい企業
- Windows Server /SQL Server のEOS対策をしたい企業
■認定ソリューション分野
- Modern Work
- Infrastructure(Azure)
- Digital & App Innovation(Azure)
- Data & AI(Azure)
4.株式会社ソフトクリエイト
■特徴・強み
- Microsoft Azure 上に多くの情報インフラを構築・運用した実績あり
- Microsoft Azure に知見がある多くの技術者が在籍する専門部隊あり
- Microsoft Azure 移行の計画段階からご相談可能
■主な提供サービス
- Azure契約・請求管理
- Azure 調査・設計・構築
- Azure 監視・保守・運用
- セキュリティ運用
- Webサイト構築
■主な導入事例
- 株式会社ウエディングパーク:「技術で仲間と業界を幸せにする」
⇒導入事例はこちら - 株式会社 AB&Company:美容室「Agu.」を展開する AB&Company、急成長を支える情シス部門とは
⇒導入事例はこちら
■このパートナーが向いている企業
- オンプレミスとクラウドのいいとこどりをしたい企業
- 情シスのインフラ管理業務をなくしたい企業
- コーポレイトサイトを Microsoft Azure 上にPaaSで実現したい企業
■認定ソリューション分野
- Data & AI (Azure)
- Digital & App Innovation (Azure)
- Infrastructure (Azure)
- Modern Work
5.丸紅ネットワークソリューションズ株式会社
■特徴・強み
- 利用目的や課題をお伺いし、お客様ビジネス活用できる最適なサービスをご提案
- 知見と技術を活かし、次世代ネットワークも見据えながら、お客様のDX推進に不可欠なICT環境整備をトータルサポート
- 各種クラウドサービスのインフラ設計・構築にも対応
■主な提供サービス
- デスクトップサービス「Azure Virtual Desktop」
- ハイブリッドファイル共有サービス「Azure File Sync」
- Azure サービスに関するお問合せ
- AzureActive Directory
- AzureBackup/AzureSiteRecovery
- Azure接続サービス
- Azure Blob Storage
- AzureStackHCI
- AzureVirtual Machine(IaaS)
■主な導入事例
- 建材および工業製品メーカー:デスクトップサービス「Azure Virtual Desktop」(旧:WVD)構築事例
⇒導入事例はこちら
■このパートナーが向いている企業
- 災害対策として、バックアップをクラウド上に保管したい企業
- アクセス制限も含めてモバイル端末を管理したい企業
- 社外から社内環境へセキュアにアクセスしたい企業
■認定ソリューション分野
- Infrastructure (Azure)
まとめ:自社に合ったAzure導入支援パートナーを見つけよう
Azureの導入は、インフラ構築だけでなく、アプリ開発、データ活用、セキュリティ対策、運用支援など、さまざまな専門領域が関わります。そのため、自社の目的や課題に合ったソリューションパートナーを選ぶことが、導入成功への第一歩です。
本記事でご紹介した各パートナーは、それぞれに強みや得意領域があり、企業規模や支援範囲、スピード感などにも違いがあります。
また、Microsoftからのソリューションパートナー認定は、その分野における支援実績・スキル・顧客貢献度を示す指標でもあります。特にAzureの導入支援を依頼する場合は、「Infrastructure」「Data & AI」「Digital & App Innovation」など、Azureに関連する分野での認定の有無を確認するとよいでしょう。
最適なパートナーと出会えれば、導入だけでなくその後の運用・最適化・内製化支援まで含めて、Azure活用の可能性は大きく広がります。