導入事例とは、製品やサービスを導入した顧客への取材をもとに、導入前の課題・選定の決め手・導入後の効果をまとめたコンテンツです。見込み客が購入を判断するための情報源として使われます。
導入事例は、信頼形成や比較検討、コンバージョンを後押しする可能性があるコンテンツです。一方で、形式の選び方や効果の測り方まで把握できているという企業は多くありません。
本記事では、これまで累計2,500本以上の導入事例制作を支援してきたSEデザインが、導入事例の基本知識、メリット・デメリット、評価指標、制作時の注意点を解説します。
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この記事の要点 ・導入事例とは、顧客への取材をもとに導入前の課題・選定の決め手・導入後の効果をまとめたコンテンツ ・メリットは信頼性の向上、検討中の不安の解消、商談への後押し、営業・イベントでの活用、検索とAI検索での発見 ・一方で制作コスト・継続の難しさ・期待値とのギャップ・公開後の権利管理というデメリットもある ・効果は段階を分けて測る(閲覧→リード獲得→商談化→受注)。一つの指標では判断できない ・顧客情報の取り扱いと景品表示法(ステマ規制)の確認は、公開前に必ず行う |
導入事例の基礎知識
ここでは、導入事例に関する基本知識をおさらいしておきましょう。導入事例には複数の形式があるため、顧客のニーズに合わせるだけでなく、自社の専門性をアピールできる形式を選ぶ必要があります。
導入事例とは
導入事例とは、自社の製品やサービスを導入した企業の声やその導入によって得られた効果、課題解決のプロセスなどをわかりやすくまとめたコンテンツのことです。実際に利用している顧客への取材をもとに作成します。
記事や動画などで、具体的な課題から成果、今後の展望などをわかりやすく解説し、導入を検討している企業の意思決定を後押しすることができます。
導入事例に書く3つの要素
形式はさまざまですが、導入事例の中身は次の3つの要素で構成されます。この3つが揃っていれば、導入事例として成立します。
- 導入前の課題:困っていたこと、解決したかった問題。読み手が「自社と同じだ」と感じる入口になります
- 選定の決め手:数ある選択肢のなかから、なぜその製品・サービスを選んだのか。比較検討中の読み手が最も知りたい部分です
- 導入後の効果:数値や体験談による具体的な変化。示す場合は、対象期間・集計範囲・比較条件も併記します
とくに「選定の決め手」は抜け落ちやすい要素です。課題と成果だけを書くと、なぜ自社が選ばれたのかが伝わらず、比較検討している読み手の判断材料になりません。
導入事例の種類
導入事例と一言で言っても、さまざまな種類があります。分類の軸は大きく2つ、「どのような課題解決・目的のために導入したのか」という目的別の型と、アウトプットをどうまとめるかという編集形式です。
以下が課題・目的別の導入事例の型です。
- 業務課題 解決型:
財務会計、営業、生産、販売、サプライチェーンなど、業務上の課題を解決した事例 - 経営課題 解決型:
データドリブン経営、意思決定の高度化など、経営課題の解決に焦点を当てた事例 - 業種課題 解決型:
特定の業界特有の法規制・ルール、商習慣への対応を取り上げた事例 - エコシステム型(業種横断型、官民の連携型):
業種や官民の垣根を越えた協業、新たなエコシステムの中で生まれたビジネスモデルを紹介する事例 - 社会貢献型(社会課題の解決):
脱炭素など、財務目標以外の社会貢献(非財務目標への取り組み)に焦点を当てた事例 - テクノロジー特化型:
生成AIなど、新しい技術のパフォーマンスを強調した事例
また、実際のアウトプットをどのようにまとめるかという、編集形式にも複数あります。
- 第三者文体のストーリー形式:
書き手が状況を説明する文体でまとめた記事 - インタビュー形式:
ライターとインタビュー対象者のQ&A形式の記事 - 対談形式:
ITベンダーとユーザー企業の対談など。座談会形式も含まれる - 動画形式:
インタビューやデモンストレーションなどを動画形式でまとめた事例
なお、第三者が執筆した文体であっても、提供する企業が企画・編集・掲載内容の決定に関与していれば、独立した第三者による客観的な評価とは異なります。この点は後述の注意点にも関わります。
このほか、Webサイトで事例を探してもらうための分類軸として、業種、企業規模、導入製品、地域などを併用するのが一般的です。目的別の型、検索・整理のための分類、編集形式は分けて考えましょう。
導入事例が求められる背景
BtoBの買い手は、売り手に接触する前に自分で情報を集め、候補を絞り込むようになりました。日本のBtoB購買関与者1,573人を対象とした2026年の調査では、63.5%が売り手への初回接触の時点ですでに複数の候補をリストアップしていたと報告されています。
出典:HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」
つまり、営業が説明する前の段階で、自社が候補に入るかどうかが決まっています。とくにBtoB分野の製品・サービスは投資額が大きく、導入の意思決定に慎重な検討を要します。実際に使っている企業の具体的な経験は、この段階で参照される判断材料になります。
実際、日本国内で2025年4月に公表された調査では、製品・サービスの購入・契約時に導入事例を参考にする人は76.6%でした。参考にされた情報として最も多かったのは「具体的な導入効果」(59.1%)、次いで「事例企業の業種・規模・課題」(39.0%)です。
ただし、購買行動が単純にデジタルへ移行したわけではありません。展示会や営業担当者を通じた情報収集も引き続き行われており、複数のチャネルを併用する形へ変化していると捉えるのが実態に近いといえます。
導入事例を制作するメリット
ここでは、導入事例を制作することで得られるメリットについて見ていきましょう。

海外のBtoBマーケターを対象とした2025年の調査では、回答者の53%が「導入事例・顧客ストーリー」を成果の出るコンテンツ形式として挙げています。ただしこれは自己申告による傾向であり、個別企業での効果を保証するものではありません。
出典:Content Marketing Institute「B2B Content Marketing: 2025 Benchmarks & Trends」
製品・サービスの信頼性が高められる
導入事例は、実際の顧客の体験を共有することで、製品・サービスの有効性や信頼性を伝えられます。加えて、ブランドへの信頼感を醸成する役割も果たします。
顧客企業からの評価は、顧客自身の経験に基づく証言であり、自社だけの説明を補強する情報です。自社の広告より受け入れられやすい傾向はありますが、顧客の属性、成果の具体性、取材・編集の透明性によって受け止められ方は変わります。顧客が抱えていた課題やその解決に至った過程を具体的に示すことで、ほかの見込み客にも判断材料を提供できます。
検討中の不安を解消できる
BtoBの購買では、担当者が「良い」と感じても、それだけでは決まりません。導入して失敗した場合に社内で説明できるか、運用は回るか、既存システムと連携できるかといった不安が残ります。
導入事例は、買うかどうか迷っている人の背中を押す材料になります。とくに自社と業種・規模・課題が近い企業の事例は、「同じ状況の会社がうまくいっている」という具体的な安心材料として機能します。前述の調査で「事例企業の業種・規模・課題」が参考にされる情報の2位だったのも、この理由によるものと考えられます。
比較検討から商談への後押しになる
導入事例は、実際の顧客が得た具体的な効果や課題解決のプロセスを示すため、以下のような効果が期待できます。
- 導入プロセスやサポート体制への不安を明確に把握できる
- 成功体験やメリットだけでなく、同様の課題に対するアプローチ方法が明確になる
ただし、導入事例を掲載しただけでコンバージョン率が上がるわけではありません。意思決定に必要な情報を補い、比較検討から商談への移行を後押しするものと捉え、後述の指標で効果を確認しながら改善していきましょう。
営業やイベントにも活用できる
導入事例は、営業資料やプレゼンテーションにおいても有効なツールです。実際の事例を通じて、商品やサービスの強みを具体的に説明できることに加え、特定の業界に特化している場合、見込み客の悩みを深く聞くきっかけにすることも可能です。
たとえば、顧客の業界や規模に合わせた事例を紹介することで、運用イメージの醸成やより深いコミュニケーションの実現も期待できるでしょう。具体的な成果を示すことで、競合他社との差別化を図りつつ、営業チーム全体の提案力向上にも貢献します。
ウェビナーや展示会など、さまざまな場面で活用が可能です。当社のクライアントでは、導入事例に協力してくれた企業担当者に登壇してもらい、事例を紹介するセミナーを実施したところ、その後の商談や契約に複数件つながったそうです。
検索とAI検索の両方で見つけてもらえる
導入事例を含めた独自コンテンツは、検索エンジンに評価されやすい傾向があります。製品・サービス名、業界キーワード、顧客の抱える課題など業界特有の専門用語を自然に含むためです。
加えて近年は、AI検索の回答で参照されるかどうかも重要になっています。Googleは生成AI検索において、既存情報の要約ではなく、実体験や独自の知見を含むコンテンツを重視すると案内しています。導入事例は、他社が模倣できない一次情報そのものです。実名の顧客、具体的な課題、条件付きの数値を含む事例は、この観点でも価値があります。
導入事例を制作するデメリット
ここでは、導入事例を制作するデメリットについて見ていきましょう。導入事例は有効なコンテンツですが、制作・公開には一定のコストとリスクがあります。着手前に把握しておきましょう。
制作コストがかかる
導入事例の制作には、動画やデザイン、記事の作成などの「制作費」や「外注費」といった金銭的コストが必要です。
近年は、文字起こし、要約、構成案の作成などに生成AIを活用して工数を抑えることもできます。ただし、事実の正確性、著作権、個人情報、顧客の機密情報の確認が不要になるわけではありません。AIを使う場合も、素材の取り扱いルールを事前に決めておく必要があります。
また、掲載許諾を得るための調整、セールス部門との連携、社内外の確認作業に関わる工数など、時間的コストについても把握しなければなりません。制作を外部に依頼する場合、とくにITやAIなどの専門領域においては、豊富な知識を持ったパートナーを見つけるのにも苦労するでしょう。
継続的な制作に体制が必要
導入事例は、1社作って終わりではありません。業界・業種ごとに複数の導入事例があるほうが読み手は自社に近いケースを見つけやすいため、定期的に新たな事例を追加する必要があります。
しかし、導入事例には顧客の許諾や社内外の調整が必要で、思い通りのスケジュール感では進まず、なかなか事例を増やせないという悩みを抱えている企業が大半なのです。
期待値とのギャップが生まれやすい
導入事例は、実質的に成功例だけを取り上げるため、成功例を強調することになります。そのため、顧客の期待値が不必要に高くなり、誤解を生じさせるリスクがあるといえるでしょう。
成功事例をアピールしすぎると、導入事例と同様の成果を得られない場合、不満やクレームにつながりやすくなるため、前提条件を明確にしなければなりません。当社では、美しい成功ストーリーではなく、成功までに経験した紆余曲折の部分もしっかり伝えるようにしています。過度な成功事例のアピールによって、ブランドの信頼性に悪影響を及ぼさないよう、細心の注意を払う必要があります。
公開後の情報更新と権利の管理が必要
導入事例は公開して終わりではありません。時間が経つと、担当者の異動、組織名の変更、製品名の改称、掲載した数値の陳腐化が起こります。掲載を続けるかどうか、更新するかどうかを定期的に見直す運用が必要です。
また、氏名、役職、顔写真、音声は個人情報に該当し得ます。企業ロゴや顧客の秘密情報の扱いも含め、取得・公開の目的と範囲を明示したうえで許諾を得ておく必要があります。詳しくは後述の注意点で解説します。
導入事例の効果を評価する主な指標
ここでは、導入事例が成果につながっているかを評価する指標について見ていきましょう。指標を用いて具体的な根拠を示せるようになれば、導入事例コンテンツに対する社内評価も高まり、制作にコストをかける理解も得やすくなります。
ただし、「導入事例がきっかけで商談・契約につながったかどうか」を判断するのは容易ではありません。直接的・短期的な施策ではないため、その点は理解したうえで進めましょう。
費用対効果(ROI)
ここで評価するのは、導入事例コンテンツの制作・活用に対するROIです。事例に登場する顧客企業が製品を導入した際のROIとは別のものなので、混同しないようにしましょう。
投資額には、取材、執筆、デザイン、社内確認、配信・広告、公開後の更新にかかる費用を含めます。計算式は以下のとおりです。
注意したいのは、アトリビューションで配分された売上は、因果的な「増分売上」とは限らない点です。有望な商談ほど事例を読むという傾向もあり得ます。増分を検証できない場合は、「関与売上」「影響パイプライン」としてROIとは分けて示すほうが安全です。
費用対効果が低い場合は、制作プロセスの効率化と、既存事例の横展開(営業資料・セミナー・メールへの再利用)による効果の最大化を検討しましょう。
コンバージョン率(CVR)とリードの質
コンバージョン率(CVR: Conversion Rate)は、目標として設定した行動に至った割合を示す指標です。購入、申し込み、問い合わせ、資料ダウンロードなど、何をコンバージョンとするかによって評価方法が変わります。
導入事例の場合は、記事を閲覧した人のうち何人が問い合わせや資料請求に至ったかが基本的な評価ポイントになります。
ただし、件数だけを追うと判断を誤ります。資料請求が増えても、ターゲット外の企業ばかりであれば事業への効果は限定的です。次のような「質」の指標も併せて確認しましょう。
- 有効リード率(ターゲットに合致する企業・役職の割合)
- 商談化率
- 受注率、平均契約額
CVRが低い場合は、導線の最適化、CTAの設置位置の見直し、読み手の状況に合わせた構成の再検討が必要です。
閲覧・利用状況
導入事例の効果を評価するには、閲覧・利用状況を確認することも重要です。具体的には、ページビュー数でコンテンツの到達範囲を、ダウンロード数で資料の利用状況を把握します。
これらのデータを活用すれば、どの事例がよく読まれているか、どの業種の事例に需要があるかを客観的に把握できます。閲覧数が少ない場合は、メルマガでの配信やSNSでの発信で露出を増やす方法もあります。
営業支援効果
導入事例が営業活動に与える影響を評価する指標として、商談での利用回数、商談成約率の変化、営業プロセスの短縮などが挙げられます。
正確に把握するには、CRMに「どの事例を、どの商談で、どの段階で使ったか」を記録することが有効です。導入事例を最初に見たのか、商談中に使ったのか、受注前に参照したのかで役割は異なります。あわせて、営業担当者の実感に基づく定性的な評価も参考にしましょう。
段階を分けて測る
ここまで挙げた指標は、同列に並べず、購買の段階ごとに分けて設計します。認知・閲覧、関心、リード獲得、商談、受注をひとまとめに評価すると、どこに問題があるのか特定できません。
- 認知・閲覧:ページビュー、検索経由の流入、AI検索での参照
- 関心:滞在時間、複数事例の回遊、資料ダウンロード
- リード獲得:フォーム送信数、有効リード率
- 商談:商談化率、営業での利用回数
- 受注:受注率、影響パイプライン
段階を分けておけば、「閲覧は多いが問い合わせにならない」「リードは取れるが商談に進まない」といった状況で、事例のテーマの問題か、導線の問題か、フォローの問題かを切り分けられます。
導入事例の活用方法
導入事例の活用方法には、さまざまな種類・形式があります。そのうえで、自社の製品・サービスにおいて、どういった場面で活用していくのがよいかを見極めることが重要です。ここでは、主な活用方法を紹介します。

Webサイトで公開する
コーポレートサイトやオウンドメディアなど、自社Webサイトに専用のセクションを設け、導入事例を掲載する方法が一般的です。訪問者に製品やサービスの具体的な活用イメージを提供できます。業界別や製品・サービス別などの絞り込み機能を付けると、見込み客が自社に近い事例を見つけやすくなるでしょう。
また、問い合わせフォームや事例集のダウンロードなどと連携させれば、次のアクションを促すことも可能です。
動画コンテンツとして配信する
導入事例のインタビュー動画は、訴求力の高いビジュアルコンテンツとして提供できます。顧客インタビューや実際の利用シーンを動画で紹介することで、視覚的に分かりやすく、説得力のある情報を示すことが可能です。セミナーや展示会といった対面の場面においても受け手の興味・関心を引きやすくなります。
また、YouTubeなどのプラットフォームで公開すれば、Webサイト以外の接点でも見つけてもらえます。ただし、動画内だけにある情報は検索エンジンが読み取れないため、要点はページ上のテキストでも示しておきましょう。
SNSでシェアする
SNSでの導入事例のシェアは、Webサイトを訪れていない層にも情報を届ける手段になります。ただし、BtoBでは年齢層ではなく、ターゲットとなる業種・職種が利用しているプラットフォームを選ぶことが重要です。投稿しただけで拡散が起きるわけでもありません。
事例の要点と詳細ページへのリンクをセットで配信し、どの投稿からどれだけ事例ページに遷移したかを確認しながら運用しましょう。
メールマーケティングで活用する
メールマガジンやニュースレターで、導入事例の概要や詳細版へのリンクを配信することで、既存顧客や見込み客に直接アプローチできます。受信者の業種や関心に合わせてセグメント配信を行えば、より関連性の高い事例を届けられます。
効果を測る際は、開封率だけで判断しないよう注意してください。メールアプリのプライバシー保護機能により、実際に読まれたかどうかにかかわらず開封として計測される場合があり、指標としての精度が下がっています。クリック率、事例ページの閲覧、その後の資料請求や商談化も併せて確認しましょう。
ホワイトペーパー(事例集)として提供する
詳細な導入事例をホワイトペーパーにまとめ、資料ダウンロード形式で提供することで、リード獲得のためのコンテンツや営業資料として活用できます。導入事例と業界動向や課題分析を組み合わせれば、より包括的な情報提供も可能です。
ダウンロード時に顧客情報を取得する場合は、フォームで利用目的を事前に明示する必要があります。資料の送付だけでなく、その後の営業連絡やメール配信にも利用するのであれば、その用途が伝わる表示にしてください。
プレスリリースで配信する
特に革新的な導入事例や顕著な成果が出ている事例については、プレスリリースとして配信することで、メディアや業界関係者に広く認知してもらえます。新規顧客の獲得、企業の認知度向上、ブランド強化につなげることが可能です。
事例紹介セミナーを開催する
制作した導入事例を活用して、導入検討層向けのセミナーを開催する方法もあります。
当社のクライアントであるDatadog様では、導入事例に協力してくださった企業の担当者様に登壇してもらい、Datadogの導入事例を紹介するセミナーを開催しました。結果は非常に好評で、セミナー参加者約60名のうち、16件が商談に進み、うち6件が契約につながったとのことです。
稟議・社内検討の材料として渡す
見落とされやすいのが、読み手が社内を説得するための材料として使われるという活用場面です。BtoBの購買では、利用部門だけでなく経営、情報システム、法務、購買など複数の関係者が判断に関わります。
実際の使われ方としては、次のようなものがあります。
- 営業が商談の場で口頭で導入実績を伝える
- 検討担当者が稟議書に事例コンテンツを添付する
- 上司や他部門から質問された際の回答材料として用意しておく
この用途を想定するなら、事例には費用対効果、導入期間、運用体制、セキュリティ対応といった、社内説明で必ず聞かれる論点を含めておくと使ってもらいやすくなります。PDF版を用意しておくのも有効です。
導入事例の制作において注意すべきポイント
ここで、導入事例を実際に制作していくうえで確認しておきたい注意点について解説します。掲載許可や顧客情報の保護など、情報発信を行ううえで必要な対応を把握しておきましょう。

クライアントへの取材依頼は相手にもメリットを伝える
顧客企業の取材許可を得られなければ、導入事例は作れません。自社で導入している製品やサービスを公開したくないという理由で断られる場合もありますが、導入した製品・サービスに満足していないことや、多忙が理由の場合もあるでしょう。
導入事例として紹介したい企業に対しては、受注のタイミングで導入事例の打診をしておくとスムーズに許可がいただけるでしょう。もちろん、製品・サービスに満足していただくことは最優先事項です。
取材依頼をする際は、顧客企業の知名度向上やブランディングに寄与する点など顧客企業にとってのメリットを具体的に提示することも重要です。大切な時間を割いて協力いただくことになるので、お互いにとってプラスになる方法で進めましょう。
顧客情報の取り扱いには細心の注意を払う
顧客情報の取り扱いには細心の注意を払いましょう。場合によっては、公開可能な情報範囲を明確にした同意書を交わす必要もあります。
同意書を交わす場合は、公開範囲や利用目的を明記し、数値データや固有名詞の掲載などについても事前に詳細な確認を行い顧客の意向を尊重することが重要なポイントです。ロゴを掲載する際も、レギュレーションに従い、クライアントの確認を挟みながら大事に取り扱いましょう。
あわせて確認したいのが、媒体ごとの二次利用の範囲です。Web、PDF、広告、SNS、動画、営業資料のどこまで使ってよいのか、利用期間はいつまでかを事前に取り決めておきます。氏名、役職、顔写真、音声は個人情報に該当し得るため、取得・公開の目的を適切に明示する必要があります。
虚偽の情報を掲載しない
導入事例に限りませんが、あらゆる広報活動において、情報提供は正確な事実に基づいて行う必要があります。導入事例における効果や成果に関する表現は、景品表示法や薬機法などの関連法規に抵触する可能性があるため、誇大広告や虚偽表示にならないよう注意が必要です。
とくに成果を数値で示す場合は、その表示を裏づける合理的な根拠を用意しておきましょう。また、競合他社との比較表現を行う際は、比較対象、条件、調査時点、評価指標、情報源を明らかにする必要があります。こうしたリスクを回避するために、公開前に法的な観点から内容を精査することが大切です。
法律・倫理的に問題ないか確認する
導入事例の作成・公開においては、法律面・倫理的な観点から、特にステルスマーケティング(広告であることを明示せずに商品やサービスを宣伝する行為)にならないように十分に表現を検討することが重要です。
ステルスマーケティングについては、2023年3月28日に景品表示法第5条第3号に基づく告示が指定され、同年10月1日に施行されました。事業者の広告であるにもかかわらず、一般消費者が事業者の表示であると判別することが困難な表示が規制の対象です。
規制の対象になるかどうかは、事業者が表示内容の決定に関与しているか、広告であることが明瞭かどうかで判断されます。広告であることが表示全体から明らかな場合や、事業者が関与していない顧客自身の感想は対象外です。導入事例をSNSなどで発信する際は、自社の発信であることが読み手に伝わる形になっているかを確認しましょう。判断に迷う場合は法務部門に相談することをおすすめします。
導入事例に関するよくある質問
導入事例とは何ですか?
導入事例とは、自社の製品やサービスを導入した顧客への取材をもとに、導入前の課題、選定の決め手、導入後の効果をまとめたコンテンツです。記事、動画、PDFなどの形式があり、導入を検討している企業が自社に当てはめて判断するための材料として使われます。
「事例」とはどういう意味ですか?
「事例」とは、実際に起きた個別の出来事や実例のことです。一般的には分野を問わず使われる言葉で、医療における症例、法律における判例なども事例にあたります。
ビジネスの文脈では、「導入事例」「事例紹介」「顧客事例」「お客様の声」「ケーススタディ」といった言葉が近い意味で使われます。厳密な定義の違いはありませんが、実務ではおおむね次のように使い分けられています。
- 導入事例:製品・サービスを導入した顧客の課題から成果までを一連の流れで示すもの。BtoBで最も一般的
- 事例紹介:導入事例とほぼ同義。Webサイトのメニュー名として使われることが多い
- お客様の声:顧客のコメントを中心にした短い形式。BtoCでもよく使われる
- ケーススタディ:英語の case study に由来し、導入事例と同義で使われるほか、教育や研究の場面では分析対象としての「事例研究」を指す
導入事例記事とは何ですか?
導入事例のうち、記事形式でまとめたものを指します。動画やPDFの事例集と区別する際に使われる言葉です。Webページとして公開できるため検索から見つけてもらいやすく、営業資料やメールへの再利用もしやすい形式です。
導入事例の作り方は?
大まかには、①掲載する企業の選定 → ②取材の依頼と許諾の取得 → ③質問項目の設計 → ④インタビュー → ⑤原稿作成 → ⑥顧客による確認 → ⑦公開、という流れで進めます。
重要なのは、取材前に「誰に読んでもらい、何を判断してもらう事例か」を決めておくことです。ここが曖昧なまま取材に入ると、聞くべきことを聞き逃し、公開後に使いどころのない事例になってしまいます。
取材を断られた場合はどうすればよいですか?
理由によって対応が変わります。「社名を出せない」ということであれば、業種と規模のみを示す匿名事例という選択肢があります。「多忙で時間が取れない」のであれば、所要時間を短くする、書面での回答に切り替えるといった調整が可能です。
一方、製品・サービスへの満足度が理由であれば、事例化を急ぐより先に、その状況の改善に向き合うべきでしょう。
導入事例の制作はSEデザインへ
導入事例を効果的に活用するためには、適した型や編集形式、メリット・デメリット、注意点を正しく理解し、自社のマーケティング戦略に合わせて制作することが重要です。
とくに、「導入前の課題・選定の決め手・導入後の効果」の3要素を押さえること、そして効果を段階に分けて測ることが、成果につながる事例と、作ったまま使われない事例を分けます。
また、導入事例を制作する際は、業界の知識や取材経験が豊富なパートナー企業に依頼することも検討してみてください。
SEデザインは1985年の創業以来、IT・BtoB企業のマーケティングとコンテンツ制作を支援してきました。導入事例制作は年間150本以上、累計2,500本以上の実績があります。とくにIT業界における導入事例の制作実績が豊富で、インタビューや取材に関するノウハウと知見を数多く蓄積しています。詳しい実績も紹介可能ですので、導入事例制作をお考えの場合はお気軽にご相談ください。