導入事例の取材依頼の進め方|許諾の取り方と5つの準備を解説

更新日:2026-08-05 公開日:2017-08-23 by SEデザイン編集部

目次

 

導入事例の取材依頼を成功させるには、社内で回覧できる正式な依頼書を送ること、顧客の窓口である営業担当と事前に連携すること、そして公開前に必ず原稿を確認できると約束することが重要です。

「お客様に断られたらどうしよう」「どこまで許可をもらえばいいのかわからない」という不安から、取材依頼の一歩が踏み出せないケースは少なくありません。

今回は、累計2,500本以上の導入事例を制作してきたSEデザインが、依頼先の選び方から許諾範囲の確認まで、取材依頼の進め方を解説します。

この記事の要点

・取材依頼は顧客の窓口である営業担当への相談から始める。担当者が社内(上司や広報)に回覧しやすい正式な依頼書を用意する

・許可は「取材を受けてよいか」だけでは足りない。掲載媒体・公開期間・営業資料や広告への転載・匿名化の可否まで、許諾の範囲を依頼時に示す

・断られる不安への最大の対策は「公開前に必ず原稿を確認いただけます」と伝えること。修正に柔軟に応じる旨もあわせて伝える

なぜ取材依頼が重要か:導入事例は比較と稟議で使われる

SEデザインが実施したアンケート調査では、導入事例を参考にする人の割合は64%でした(2022年6月実施、オンライン調査、回答者111人)。同じ調査で参考にされている情報は、利用価格81.1%、サービス内容78.4%、サポート体制67.6%に続いて導入事例が4番目という結果でした。

参考:導入事例に関するアンケート調査レポート(SEデザイン)

より新しい調査もあります。日経BPコンサルティングが2025年4月に実施した調査では、製品・サービスの購入・契約時に導入事例を「非常に参考にする」「ある程度参考にする」と答えた人は76.6%でした。設問や対象が異なるため単純に比較はできませんが、導入事例が検討時に見られていることは複数の調査で共通しています。

重要なのは、導入事例が認知獲得のためだけのコンテンツではないという点です。同調査では、情報収集・製品探索の段階で46.1%、比較・絞り込みの段階で34.7%が導入事例を重視していました。つまり、候補を絞り込み、社内を説得する場面で使われています。

HubSpot Japanの「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」では、意思決定に関わった人が5人以上だったケースが46.9%、複数の候補を比較したケースが80.3%でした。読み手は一人ではなく、しかも比較しています。

だからこそ、取材の段階で「導入前の課題」「選定理由」「具体的な成果」を数字で聞き出せているかが、記事の使いやすさを決めます。取材依頼は、その入口です。

参考:日経BPコンサルティング「BtoB購買行動調査」HubSpot Japan「日本のBtoB購買に関する意識・実態調査2026」

なお、導入事例はITソリューションのように機能説明だけでは使い勝手が伝わりにくい商材で特に有効ですが、BtoB製品・サービス全般で使われています。また、顧客の声を載せれば必ず説得力が生まれるわけでもありません。同じ日経BPコンサルティングの調査では、導入事例で参考にされる情報の上位は「具体的な導入効果」59.1%、「企業の業種・規模・課題」39.0%であり、44.7%は失敗やリスクにも触れてほしいと回答しています。企業名とコメントだけでは足りません。

取材依頼の進め方3ステップ

依頼は、次の順番で進めます。

ステップ1:顧客の窓口である営業担当に相談する

依頼の成否を最も左右するのが、ここです。顧客と日常的に接している営業担当に、先に趣旨を説明して協力を得ます。

営業担当は、その顧客が事例掲載に前向きかどうか、誰に話を通すべきか、いま依頼してよいタイミングかを知っています。マーケティング部門が単独で顧客に打診すると、営業側の商談状況と噛み合わずに断られることがあります。

あわせて、自社の広報や法務など関係部署にも事前に共有しておくと、後の確認がスムーズです。

ステップ2:社内で回覧できる正式な依頼書を用意する

口頭やチャットでの打診だけで進めると、顧客側の担当者が社内で説明できません。会社として正式な依頼を書面に残しておくことが必要です。

依頼を受ける担当者は、上司や広報部門に「こういう依頼が来ています」と回覧します。その回覧にそのまま使える体裁の依頼書を渡すことが、相手の負担を減らし、承諾率を上げます。書くべき項目は後述します。

ステップ3:取材先にとってのメリットを伝える

導入事例は、自社にとっては販促コンテンツですが、取材先にとっては手間のかかる依頼です。相手にとっての価値を明示してください。

  • 自社サイトや営業資料で取材先の企業名・取り組みが紹介される(広報・採用の材料になる)
  • 先進的な取り組みをしている企業として対外的に発信できる
  • 質問事項を事前に共有するので、当日の負担が小さい
  • 原稿は公開前に確認いただける

ただし、掲載されることで必ず認知が向上するといった効果を約束することはできません。できることを具体的に伝えるほうが、過剰な期待を持たせるより信頼されます。

許諾はどこまで取るか

「取材を受けてよいか」の承諾だけで進めると、公開後にトラブルになりがちです。許諾は範囲を決めて取ります。

依頼前に承認ルートと決裁者を確認する

誰が取材の受諾、原稿、数値、社名・ロゴ、写真をそれぞれ承認するのかを最初に確認します。原稿をレビューする担当者と、最終承認をする方が別のことは珍しくありません。

希望する公開日から逆算し、いつまでに何の確認を終える必要があるかを、依頼の段階で合意しておいてください。

公開・利用条件を依頼時に明示する

取材形式と所要時間だけでなく、次の条件を依頼書に書きます。

  • 掲載する媒体(Webサイト、営業資料、PDF、展示会パネルなど)
  • 公開予定日と掲載期間
  • SNS・広告・翻訳版への転載の可否
  • 社名・ロゴ・写真それぞれの利用範囲
  • 匿名化の可否(社名を出せない場合は「製造業A社」などの表記にできるか)
  • 原稿確認の回数と期限
  • 公開後の修正・取り下げの窓口

とくに二次利用は後から揉めやすい項目です。「Web記事のつもりで承諾したら広告に使われていた」という事態を防ぐため、依頼時に範囲を示して記録に残してください。

企業の掲載許可と、出演者本人の確認は分ける

会社としての承認が取れていても、それだけでは足りません。氏名、所属、役職、顔写真、発言、録音データの利用範囲は、登場する本人にも示して確認します。

個人を識別できる写真は個人情報に該当し得ます。個人情報を取得する際には利用目的の通知・公表が必要で、書面などで直接取得する場合は原則として事前の明示が求められます。Webで公開する写真は、本人の意思を確認してから使う運用が安全です。

また、担当者が異動・退職した後の扱い(掲載を続けるか、役職表記を当時のままにするか)も決めておくと、後の対応が楽になります。

参考:個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」

数値・固有名詞・機密情報の確認方法を決める

「工数を50%削減」のような数値は、記事の説得力を大きく左右します。だからこそ、対象期間、比較条件、算出者、根拠資料の有無を取材の段階で確認し、記録してください。

製品名や部署名、役職の正式表記も、その場で確認します。あわせて、公開できない情報(取引額、他社製品名、社内システム名など)を先に聞いておくと、原稿確認での差し戻しが減ります。

なお効果や性能の表示には、表示内容と適切に対応する客観的な根拠が求められます。一般消費者向けの広告に転用する場合はとくに注意が必要です。

録音・写真・AI利用の扱いを説明する

録音・録画の有無と用途は事前に伝えます。文字起こしや原稿作成に外部の生成AIを使う場合は、利用するサービス、入力するデータ、保存や学習利用の扱いを確認したうえで、取材先に説明してください。

個人情報保護委員会は、個人データを生成AIサービスに入力する場合、提供事業者が機械学習に利用しないことなどを確認するよう注意喚起しています。承認されていない個人情報や機密情報を入力しない運用を決めておいてください。

制作会社に依頼する場合も同様です。個人データを扱わせるときは、委託先の選定、安全管理措置、再委託の可否、利用終了後の返却・削除まで確認します。契約形態を問わず、外部に個人データの取扱いを行わせる場合には委託先の監督が必要です。

また、AIによる文字起こしや要約は原稿の根拠そのものにはなりません。人名、製品名、数値、時系列、発言者は録音と照合し、最終的に取材先の確認を取ってください。

参考:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」経済産業省「AI事業者ガイドライン第1.2版」(2026年3月31日公開)

依頼書に書くこと

依頼書は、取材先の担当者が社内で回覧してそのまま説明できることを目指して作ります。最低限、次の項目を入れてください。

項目 書く内容
依頼の趣旨 なぜその企業に依頼したいのか。「同じ課題を持つ企業の参考になる」など、選んだ理由を具体的に書きます
掲載媒体と用途 Webサイト、営業資料、展示会など。二次利用の範囲もここで示します
公開予定日と掲載期間 逆算した確認期限もあわせて記載します
取材形式・所要時間 対面かオンラインか、所要時間、写真撮影の有無
参加をお願いしたい方 部門と役割で示します(決裁者、現場の利用担当者など)
質問事項 事前に共有します。当日の負担が減り、承諾のハードルも下がります
原稿確認の約束 公開前に必ず確認いただけること、修正に応じることを明記します
記録データの扱い 録音・録画の有無、用途、保存期間、AI利用の有無
取材先のメリット 企業名の露出、対外発信の材料など、できることを具体的に
連絡先と担当者 自社の窓口。制作会社が入る場合はその体制も

SEデザインでは、事例取材の依頼に使える「取材依頼状」と、導入の背景や効果を事前に確認するための「事前レポート」のテンプレートをご用意しています。下記から無料でダウンロードいただけます。

導入事例の制作準備テンプレートセット(取材依頼状・事前レポート)

取材依頼をスムーズにする5つの準備

ここからは、依頼にたどり着くまでの準備を5つに分けて説明します。

1.取材を依頼する企業を選定する

手当たり次第に依頼するのではなく、次の観点で候補を絞ります。

  • 狙いたいセグメントに合っているか(業種、企業規模、地域、抱えていた課題)
  • 営業戦略・マーケティング戦略のターゲットと重なるか
  • 読者が知っている企業か(知名度があると読まれやすい)
  • 実際に成果が出ているか
  • 導入から運用まで一連の経緯を語れる状態にあるか

基本は、導入時に信頼関係を築けたお客様にお願いすることです。ただし、知名度だけで選ぶと、読者の課題と噛み合わない事例になります。「誰に読ませたいか」から逆算して選んでください。

2.取材対象者を選定する

できれば次の2つの視点をそろえます。

  • 決裁者・責任者:導入の目的、選定理由、経営面での成果
  • 現場の担当者:導入時の苦労、具体的な使い方、業務の変化

導入前から導入後までの経緯を知る方が望ましく、担当者が交代している場合は、複数の方に参加を依頼するか、当時の資料で補います。

ただし人数が多すぎると、一人あたりの発言時間が減り、話が浅くなります。4名程度までが進行しやすい目安ですが、決まった上限があるわけではありません。取材時間と聞きたい内容から判断してください。

3.取材を依頼し、許可の範囲を確認する

前述のとおり、営業担当への相談 → 正式な依頼書 → 許諾範囲の確認、の順で進めます。

依頼方法はメールが基本ですが、電話やオンラインミーティングで趣旨を伝えたうえで、追ってメールで詳細を送ると、伝達漏れと認識のずれを防げます。株式会社才流の調査では、依頼方法は「メール」が最多で71.8%でした。

4.依頼するタイミングを決める

依頼のタイミングは早いほうが有利です。株式会社才流の調査では、取材を依頼するタイミングとして最も多いのは「受注前」で62.7%でした。

もっとも確実なのは、契約書や申込書にあらかじめ事例掲載の許諾に関する項目を盛り込んでおくことです。導入後に改めて交渉するより、はるかにスムーズに進みます。

導入後に依頼する場合は、成果が出て、かつ記憶が新しいうちを狙います。時間が経つと、導入前の課題や検討の経緯が思い出せなくなり、記事の具体性が落ちます。

参考:株式会社才流「導入事例の取材許諾の取り方」

5.制作会社とオリエンテーションを行う

制作を外部に依頼する場合は、取材前にオリエンテーションを行います。共有すべきものは次のとおりです。

  • 記事の目的と想定読者、使いたい場面(Web、営業、展示会など)
  • 製品・サービスの基本情報と、取材先の導入経緯
  • 聞き出したい成果と、その数値の見方
  • 触れてはいけない情報、社内の表記ルール
  • 過去の類似記事(完成イメージの共有)
  • 許諾範囲と承認ルート、確認期限

ここが曖昧なままだと、取材はできても「使いたい場面で使えない記事」になります。オリエンテーションは、取材当日の品質を決める工程です。

 

依頼が成功する2つのポイント

成果を数字で語ってもらえるよう質問を設計する

導入事例でもっとも読まれるのは、具体的な導入効果です。ところが取材では「便利になりました」「効率化しました」で終わってしまうことがよくあります。

質問の段階で、「以前は何時間かかっていて、現在は何時間か」「対象はどの業務で、何人が関わっていたか」と、比較できる形で聞く設計にしてください。抽象的な回答が返ってきたら「具体的な場面を一つ挙げると?」と追質問します。

あわせて、うまくいかなかったことや導入時の苦労も聞いておきます。日経BPコンサルティングの調査では、44.7%が失敗やリスクにも触れてほしいと回答しています。良いことだけの記事は、かえって信用されません。

「公開前に必ず原稿を確認いただけます」と伝える

取材を断られる理由の多くは、「何を書かれるかわからない」という不安です。これは、原稿確認の約束で解消できます。

依頼の段階で、公開前に必ず原稿を確認いただけること、事実誤認や表現の修正に柔軟に応じること、公開後も修正の相談を受け付けることを伝えてください。確認の回数と期限まで示すと、相手は社内で調整しやすくなります。

なお、導入事例は掲載する企業が企画・編集するコンテンツです。中立的な第三者評価と誤解されない見せ方を心がけてください。一般消費者向けにも利用する場合は、広告であることが分かる表示が必要になる場合があります。

導入事例の取材依頼に関するよくある質問

取材を断られたらどうすればよいですか?

理由を確認してください。「社名を出せない」であれば匿名掲載(「製造業A社」など)を提案できます。「時間がない」であれば所要時間を短縮し、質問事項を絞る形を提案します。「何を書かれるかわからない」であれば原稿確認の約束を明示します。断られた理由の多くは条件の調整で解消できるため、一度で諦めず、代替案を用意して再提案するのが基本です。

掲載許可はどこまで取ればよいですか?

「取材を受けてよいか」だけでは足りません。掲載媒体、公開予定日と掲載期間、SNS・広告・翻訳版への転載、社名やロゴ・写真の利用範囲、匿名化の可否、原稿確認の回数、公開後の修正窓口までを依頼時に示し、記録に残してください。また、会社としての承認と、登場する本人の確認は別に取ります。氏名・役職・顔写真・発言の利用範囲は本人にも示してください。

制作会社に依頼したほうがよいですか?

取材先の選定や依頼、日程調整まで含めて外部に任せられるため、社内リソースが限られている場合は有効です。判断のポイントは、依頼から公開までを回し続けられる体制が社内にあるかです。1〜2本なら自社でも進められますが、継続的に本数を積み上げるなら外部の力を借りたほうが早く進みます。委託する場合は、個人データの取扱いについて委託先の監督が必要になる点にご注意ください。

まとめ:依頼テンプレートを活用して、取材依頼を確実に進める

導入事例の取材依頼は、①顧客の窓口である営業担当への相談、②社内で回覧できる正式な依頼書、③公開前の原稿確認の約束という3点を押さえれば、承諾までの確率が大きく変わります。

そして、許可は「取材を受けてよいか」だけでなく、掲載媒体・掲載期間・二次利用・匿名化の可否・写真や氏名の扱いまで、範囲を決めて取ることが、公開後のトラブルを防ぎます。

SEデザインは1985年の創業以来、外資系大手IT企業をはじめとするBtoB企業のコンテンツ制作をご支援してきました。導入事例制作の経験は30年以上、累計2,500本以上を制作しています。取材先の選定から依頼、取材、記事化までを一貫してお任せいただけます。

取材依頼状と事前レポートのテンプレートは無料でダウンロードいただけますので、まずはそちらからお試しください。

導入事例の制作準備テンプレートセット(取材依頼状・事前レポート)

 

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監修者
SEデザイン編集部
BtoB企業、特にIT分野を中心にコンテンツマーケティング支援を行っており、導入事例やホワイトペーパー・eBook、SEO記事の制作、LP制作、オウンドメディア構築などの制作も行う。導入事例制作では、IT・テクノロジー分野の知見を活かし、外資系を含むIaaS、PaaS、SaaSの事例を中心に年間150件以上、累計2,500件以上制作しており、高い評価をいただいている。