【SaaSの重要指標】MRRの計算方法と改善ポイントを徹底解説!

更新日:2025-01-17 公開日:2024-12-06 by SEデザイン編集部

目次

SaaS企業の新入社員や中途採用で転職した営業職の方が、まず知らなければいけないKPIの一つにMRR(Monthly Recurring Revenue)という指標があります。MRRは、毎月継続して得られる収益のことを指していますが、複数の要素によって構成され、計算式も状況に応じて複数存在します。

そこで、本記事ではマーケティングコンサルティング支援を行っているSEデザインが、MRRについての基本知識や重要視される理由、計算方法、分析するうえで知っておきたいポイントなどを詳しく解説します。

MRRを正しく理解し活用していくことで、業績アップも期待できますので、計算式も含めてしっかりと覚えていきましょう。

MRR(月間経常収益)について解説

最初に、MRRの基本的な知識を押さえておきましょう。この章では、MRRの概要や従来の売指標との違い、MRRに関連する指標であるARRとの違いについて解説します。

MRRとは

MRR(Monthly Recurring Revenue)は、日本語で「月間経常収益」もしくは「月次定期収益」と呼ばれています。毎月継続して得られる収益の総額を示し、SaaSビジネス事業の成長性や安定性を測定する際に役立つ重要指標の一つです。

MRRは月ごとの安定収益を可視化するため、長期的な事業計画を設定・評価していくうえでも必要不可欠です。SaaS企業では、新規の顧客獲得にかかる初期コストを、既存顧客から毎月継続して得られる収益によって補っていく必要があります。そのため、MRRは、経営の基盤となるデータなのです。

従来の売指標とMRRの違い

買い切り型サービスなどで用いられる従来型の売り上げ指標は、一般的に一定期間に発生した総売を示します。この中には、製品やサービスを販売するごとに得られる一時的な収益も含まれています。

従来型の売指標は、短期的な収益状況を把握するのには適していますが、長期的な収益の成長率や安定性を評価するには限界があり、将来的な収益の予測も難しい場合があります。

一方で、MRRは毎月の継続した収益を示す指標なため、長期的な視野で安定性や成長率について精度の高い評価や分析が可能です。また、株主や投資家にとっても事業が成長する可能性を見極めるうえで関心の高い指標の一つになります。

MRRとARRの違い

MRRと同じく、SaaSビジネスの重要指標として、ARRがあります。ARRは「Annual Recurring Revenue」の略で、日本語では「年間経常収益」もしくは「年間定期収益」と呼ばれています。

MRRもARRも、SaaSビジネスの成長率や安定性を評価するための指標ですが、ARRは年単位で見た指標です。そのためARRは、より長期的な収益の見通しや事業の健全性を評価するうえで、役立つデータといえます。

SaaSビジネスでMRRが重要な理由

SaaSビジネスでMRRが重要な理由ついていくつか説明してきましたが、ポイントを絞ってまとめてみましょう。

  • ビジネスの成長率や安定性を評価する指標として適している
  • 長期的な収益予測の把握・事業計画・資金計画の立案に役立つ
  • 株主や投資家による企業の評価や判断材料に役立つ
  • 契約期間中の売上予測がしやすい

MRRを定期的に、計測・分析することで、事業の成長率や安定性についての予測も立てやすくなり、経営戦略における意思決定にも役立ちます。以上のような理由で、MRRはSaaSビジネスにおいて必要不可欠な重要指標です。

MRRを構成する4つの要素

MRRは一般的に、以下の4つの要素で構成されていると言われています(Net New MRRを入れて5つとする場合もあります)。

  • New MRR
  • Expansion MRR
  • Downgrade MRR
  • Churn MRR

それぞれの要素について以下に詳しく解説します。

New MRR

New MRRとは、新規に獲得した顧客からの収益を計上するMRRです。「新規MRR」と呼ばれる場合もあります。

新しい契約が結ばれる度にNew MRRは増加していくので、事業の成長を最も反映したデータといえます。新規顧客の獲得に伴うマーケティング予算やセールス活動のコストを考慮するうえでも、重要な指標です。

Expansion MRR

Expansion MRRとは、既存の顧客がアップグレードや追加機能の購入などをした場合の増加分を計上するMRRです。「拡張MRR」「アップセルMRR」と呼ばれる場合もあり、前月の利用料金からの増加分を計上することで算出できます。

Expansion MRRは、既存顧客に対してのサービス価値向上を評価するうえで重要な指標です。新規顧客獲得よりも既存顧客の契約拡大のほうがコスト効率の高いサブスクリプションモデルにおいて、より重要な成長指標といえるでしょう。

Downgrade MRR

Downgrade MRRとは、既存の顧客がダウングレードや下位プランへの変更などをした場合の減少分を計上するMRRです。

「縮小MRR」「ダウンセルMRR」といった名称が使われる場合もあります。顧客満足度やプロダクト戦略の改善において、重要な評価指標の一つです。

Churn MRR

Churn MRRは、顧客の解約・退会や一部機能の契約解除による減少分を計上するMRRです。「解約MRR」といった名称が使われる場合もあります。この指標が増加するとMRRが減少するため、事業においてのリスク要因となります。

顧客満足度の低下や、競合他社の製品・サービスの影響なども考慮して、Churn MRRを評価・分析する必要があります。

MRRの計算方法

MRRの全体像がイメージできたところで、実際の計算方法について確認していきましょう。

MRRの各要素に関しての基本的な計算式のほかに、契約プランが複数ある場合や契約期間が異なる場合の計算式と、MRR成長率の計算式についても解説します。

基本的な計算式

MRRの基本的な計算方法として、New MRR、Expansion MRR、Downgrade MRR、Churn MRRといった各要素の基本的な計算式について説明します。

計算方法については、複数の方法があり、解説する人によって項目名が異なります。ただ考え方自体は共通しているため、自分の分かりやすい言葉で計算式を覚えていくとよいでしょう。

基本の計算方法

一番基本となるMRRを算出する計算方法は、以下の通りです。

MRR = 月額料金 × 顧客数


たとえば、月額料金が600円で顧客数が200人の場合、MRRは以下のように計算されます。

MRR = 600円 × 200人 = 12万円


「顧客数」は「契約数」と置き換えても、問題ありません。

 New MRRの計算式

New MRRを算出する計算方法は以下になります。

New MRR = 月額利用料 × 新規顧客数


たとえば、初月に1,000円のサービス
新規顧客数20人が利用した場合、New MRRは以下のように計算されます。

New MRR = 1,000円 × 20人 = 2万円


「新規顧客数」は「新規契約数」と置き換えても問題ありません。

Expansion MRRの計算式

Expansion MRRを算出する計算方法は、以下の通りです。

Expansion MRR = アップグレードによる月額料金の増加分 × アップグレードした顧客数


基本的には複数のユーザーで考えるのが現実的なので、ここでは2名の例を用います。たとえば、顧客Aが月額1万円から3万円のプランに、顧客Bが月額1万円から5万円のプランにアップグレードした場合を考えてみます。

顧客Aの増加分 = 3万円 - 1万円 = 2万円
顧客Bの増加分 = 5万円 – 1万円 = 4万円


「アップグレードによる月額料金の増加分」は平均増加分である必要があります。アップグレードした顧客数は2名なので、Expansion MRRは以下の方法で導き出せます。

平均増加分 = (2万円 + 4万円) ÷ 2 = 3万円
Expansion MRR = 3万円 × 2人= 6万円

Downgrade MRRの計算式

Downgrade MRRを算出する計算方法は、以下の通りです。

Downgrade MRR= ダウングレードによる月額料金の減少分 × ダウングレードした顧客数


たとえば、顧客Aが月額1万円から5,000円のプランにダウングレードし、顧客Bが月額8,000円から5,000円のプランにダウングレードした場合を考えてみます。

顧客Aの減少分 = 1万円 - 5,000円 = 5,000円
顧客Bの減少分 = 8,000円 - 5,000円 = 3,000円


ダウングレードした顧客数は2名なので、Downgrade MRRは以下の方法で導き出せます。

平均減少分 = (5,000円 + 3,000円) ÷ 2 = 4,000円
Downgrade MRR = 2人 × 4,000円 = 8,000円

Churn MRRの計算式

Churn MRRは、解約した顧客の月額料金を合計して算出しますたとえば、顧客Aが月額5,000円、顧客Bが月額3,000円のサブスクリプションを解約した場合、Churn MRRは以下のように計算されます。

顧客Aの月額料金 = 5,000円
顧客Bの月額料金 = 3,000円
Churn MRR = 5,000円 + 3,000円 = 8,000円


Churn MRRについては、解約した顧客の月額料金の合計額で計算することが一般的で、通常は平均を取る必要はありません。

契約プランが複数ある場合/契約期間が異なる場合のMRR計算方法

次に、契約プランが複数ある場合や、契約期間が異なる場合などの計算方法について説明します。

SaaSは複数のプランがある場合や、利用者の事業規模によってサブスクリプションの契約・支払い期間が異なるケースが多いです。そのため、実際にMRRを使って自社サービスを分析するためには、これらの計算式も覚えておく必要があります。

契約プランが複数ある場合

複数の契約プランがある場合のMRRの計算式は、各プランの料金に契約者数を掛けて合計する方法で求めます。

MRR = 各プランの月額料金 × 契約者数の合計


たとえば、月額5,000円のプランAで契約者数が10人、月額8,000円のプランBで契約者数が5人、月額1万2,000円のプランCで契約者数が3人いた場合は以下のように計算されます。

プランAの収益 = 5,000円 × 10人 = 5万円
プランBの収益 = 8,000円 × 5人 = 4万円
プランCの収益 = 1万2,000円 × 3人 = 3万6,000円
MRRの合計 = 5万円 + 4万円 + 3万6,000円 = 12万6,000円

契約期間が異なる場合

月次契約、四半期契約、年次契約など異なる契約期間が混在している場合は、各契約の期間に基づいて月額に換算してMRRを計算します。

MRR = (月次契約 × 契約者数)+ (四半期契約 × 契約者数)+ (年次契約 × 契約者数)


たとえば、月次契約で月額5,000円のプランAで契約者数が10人、四半期契約で四半期ごとに2万4,000円のプランBで契約者数が5人、年次契約で年間12万円のプランCで契約者数が3人いた場合は以下のように計算されます。

プランAの月額収益 = 5,000円 × 10人 = 5万円
プランBの月額収益 = (2万4,000円 ÷ 3ヶ月) × 5人 = 8,000円 × 5人 = 4万円
プランCの月額収益 = (12万円 ÷ 12ヶ月)× 3人 = 1万円 × 3人 = 3万円
MRRの合計 = 5万円 + 4万円 + 3万円 = 12万円


四半期契約は3ヶ月、年次契約は12ヶ月で割って月額計算し、全ての契約を月額ベースに統一することがポイントです。

MRR成長率の計算方法

最後に、MRRの成長の度合いを把握するために、MRR成長率の計算方法について説明します。MRR成長率は以下の計算式を用います。

MRR成長率 = (当月のMRR - 前月のMRR) ÷ 前月のMRR × 100


たとえば、当月のMRRが12万円、前月のMRRが10万円の場合は、以下のように計算されます。

MRR成長率 = (12万 - 10万) ÷ 10万 × 100 = 2万 ÷ 10万 × 100= 0.2 × 100 = 20%


最後に100を掛けているのは、百分率(パーセンテージ)に変換するためです。

MRRは、MRR成長率などを用いて、月次で成長率を追跡し増減の傾向を把握することが大切です。New MRRやExpansion MRRなどの各要素に分けて分析すると、より成長要因が明確になります。

要素分解して変動要因を特定していくことで、成長においてボトルネックとなっている部分を見極め、改善につなげられるでしょう。

MRRを改善するための施策

最後に、MRRを改善するための施策についても具体的なイメージを膨らませておきましょう。MRRを改善していくためには、MRRの各要素に分けて施策を検討し、実践していくことが大切です

MRRを改善するための施策

New MRRの改善

New MRRの改善には、新規顧客の獲得が必要です。新規顧客獲得のためには、無料トライアルの提供で導入のハードルを下げて新規顧客の獲得を促進するといった施策が挙げられます。

また、市場や顧客セグメントを細分化し、製品・サービスの内容を調整していくことでターゲティングを強化する、といったことも重要です。

Expansion MRRの改善

Expansion MRRの改善には、既存顧客からの収益増加を図る必要があります。

顧客に適した上位プランや追加機能を提案して契約金額を引き上げるといったアップセル・クロスセルが有効です。また適切なタイミングでのサポートや提案により、顧客満足度を向上させるといった既存顧客からの収益増加に関する施策が挙げられます。

Downgrade MRRの改善

Downgrade MRRの改善には、ダウングレードの防止が有効です。たとえば、顧客のニーズに応じた複数のプラン提供、顧客の不満や要望を早期に汲み取り解決するといった施策が挙げられます。

Churn MRRの改善

Churn MRRの改善では、解約率を下げることが必要です。SaaSビジネスでは、Churn MRRの改善を最優先に考える場合が多いでしょう。

具体的には、解約する顧客から解約理由を収集し共通の課題や不満を特定することで製品・サービスの提供内容を改善するとよいでしょう。パーソナライズしたサポートを提供することで、解約リスクを減少させるといった施策も有効です。

その他に、競合製品・サービスや市場の変化に応じて柔軟に価格プランを調整する、顧客ごとにパーソナライズした追加機能やサービスを提供するといった施策も挙げられます。

以上のような施策を総合して実施していくことで、全体のMRRの改善にもつなげていくことができます。

まとめ:SaaS企業はMRRを効果的に活用しよう

本記事で紹介したように、SaaS企業で働くビジネスパーソンにとって、MRRという重要指標に関する理解は必要不可欠です。計算式を暗記する必要はありませんが、MRRの各要素や、それぞれの値の改善方法については、明確にイメージできるようになっておきましょう。

また、実際にMRRを活用していく際には、MRR分析ツールなどを利用すると効率的にデータを分析することが可能です。計算自体は難しくありませんが事業規模が大きくなると作業コストも増大していきますので、段階に応じてツールを導入することをおすすめします。

さらに、場合によってはマーケティングコンサルティングのサポートの利用も検討してみましょう。SEデザインは、約40年にわたり、コンテンツマーケティング支援を行ってまいりました。MRRの向上や改善に向けたコンテンツマーケティングに取り組みたいとお考えの方は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。

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