アップセル・クロスセルの違いや意味を理解して売上アップにつなげよう

更新日:2024-05-13 公開日:2023-05-24 by SEデザイン編集部

目次

151106897_m_normal_noneマーケティングや営業の業務に携わるうえで、よく耳にするのが「アップセル」と「クロスセル」です。それぞれの違いをしっかりと理解しておくことで、営業と連携して顧客へ適切にアプローチできます。

本記事では、アップセル・クロスセルの概要や違い、手法、コツなどを解説します。

アップセルとクロスセルとは?

136667411_m_normal_noneアップセルとクロスセルは、どちらも似たような言葉ですが、具体的な意味は異なります。以下では、それぞれの概要を解説します。

アップセルとは

アップセルとは、顧客が購入した、または検討している商品・サービスに対して、より価格やグレードの高いものを提案して購入を促す手法のことです。たとえば、以下のような事例がアップセルに当てはまります。

  • SaaSの契約を、スタンダードプランからプロフェッショナルプランに変えてもらう
  • 5万円のスマホを検討していたユーザーに、7万円のスマホを提案する
  • 従来モデルを購入した既存顧客に、フルモデルチェンジした新車を勧める

アップセルの対義語に「ダウンセル」があります。ダウンセルとは、当初よりグレードや価格の低い商品・サービスを提案することです。顧客が「予算に見合わない」「そこまでの機能を必要としない」などの理由から、購入を見送ろうとする時に、「お試し」として提案する場合に活用することがあります。

クロスセルとは

クロスセルとは、顧客が購入を検討している、あるいは購入した商品・サービスと関連性の高いものを提案し、購入を促す手法です。たとえば、以下のような事例がクロスセルといえます。

  • ECサイトのレコメンド機能(閲覧履歴に基づくおすすめ商品、ほかのユーザーが一緒に購入している商品など)
  • 飲食店やファストフード店でのセットメニュー
  • サービス契約時の有料オプションへの加入

アップセルとクロスセルの違い

166426566_m_normal_noneアップセルとクロスセルは具体的にどのような点が違うのでしょうか?結論から言うと、顧客単価の向上を前提に、提案する商品・サービスの数が異なります。

アップセルの場合、同じ商品・サービスの価格やグレードの違い軸に提案します。一方、クロスセルの場合、もともと購入する予定だったもの、あるいは購入済みのものと関連性のある商品・サービスを相手のニーズに合わせて提案します。

 

アップセル

クロスセル

提案する商品

グレード

単品購入・セット購入

訴求内容

商品・サービスの価格・グレードの違い

購入商品・サービスと関連性のある商品・サービス

目的

顧客単価の向上

追加購入

 

アップセル・クロスセルの重要性

169974645_m_normal_noneアップセル・クロスセルは顧客単価の向上だけでなく、LTV(顧客生涯価値)の最大化など、マーケティングの観点からも重要な施策です。

かつて高度経済成長期においては、市場における商品・サービスの供給量が今よりも少なかったため、比較的モノが売れやすい時代といえました。しかし現在は、市場が飽和状態になり競争が激化したことで、顧客ニーズが細分化され、新たな顧客との関係性構築が難しくなっているのが現状です。

そのため、1回あたりの購買金額を引き上げたり、既存顧客との関係性を深めたりする活動は、マーケティング活動において重要です。アップセル・クロスセルは、今接点のある顧客からの利益を最大化するうえで大切な手法とも表現できます。

アップセル・クロスセルの手法とタイミング

144406244_m_normal_noneアップセルやクロスセルは、どのような手法やタイミングで行えばいいのでしょうか?ここでは、具体的なポイントを紹介します。

アップセルの手法

重要なのは、顧客が「お得に感じられるか」「課題が改善されて満足に感じるか」です。主に2パターンに分けられます。

  • 上位グレードの商品の購買ハードルを下げる
  • 上位グレードでのみ可能な機能を設ける 

前者は、最上位グレードの無料お試し期間で実際に使用してもらい、一定期間内で契約を判断した場合にボリュームディスカウントをする施策などが該当します。

後者は、アップグレードすることで、部署間で起こる複数の課題を同時に解決できるような機能設計にする施策などが考えられるでしょう。

たとえば、CRMプラットフォームの「HubSpot」の場合、無料プランやSarterプランを利用するユーザー向けに、上位プラン「Professional」のアップセルを実施しています。マーケティング製品において14日間の無料トライアルを設けているほか、プランごとに使える機能を差別化しているのが特徴です。

アップセルのタイミング

アップセルは、顧客との信頼関係が築けていて、商品・サービスへのニーズが高い状態で実施するのがよいでしょう。

無形商材の場合は、サービスを一定期間利用してある程度満足している状態、店舗販売であれば、お客さんと会話がはずんだときがおすすめです。また、契約更新時に継続案内をするタイミングも同様に考えることができます。

クロスセルの手法

クロスセルの手法は、顧客への商品・サービスの提供方法によって多少異なります

ECサイトの場合、レコメンドエンジンを導入してレコメンド機能を実装すると、自動でクロスセルを実施できます。

店舗販売の場合は、複数の商品をセット販売し、単品購入するよりもお得な値段を提示する方法があるでしょう。

継続購入型のビジネスモデルであれば、既存顧客の購買履歴や対応履歴を分析し、親和性の高い商品をおすすめするのが有効と考えられます。

クロスセルのタイミング

クロスセルは、すでに購入の意思を固めた後や購入直後に行うとよいでしょう。特に購入直後には「テンション・リダクション効果」と呼ばれる、大きな決断を下した後に意図せず緊張状態から開放され、気が緩む心理現象が働いています。

この心理現象から、意思決定が慎重になる高額な契約をした直後には、別の商品やサービスを購入するハードルが低くなる傾向があると考えられるのです。

アップセル・クロスセルのコツと注意点

187572162_m_normal_noneアップセルやクロスセルの施策を実施するにあたって、コツや注意点があります。以下で紹介するポイントに気をつけて検討しましょう。

顧客データを分析する

アップセルやクロスセルを実施する際は、顧客データの分析が欠かせません。顧客データをしっかりと分析することで、商品・サービスの需要が高まるタイミングや、抱える課題を発見できるためです。

代表的な分析手法として、コホート分析やアソシエーション分析があります。コホート分析は、一定条件でフィルタリングした顧客の行動を期間推移で分析するものです。顧客の特徴を把握して、行動を後押しする施策が考えられます。

一方、アソシエーション分析は、大量のデータのなかから関連するパターンを見つけ出す手法です。たとえば、顧客が問い合わせページに至るまでのWeb上での顧客行動を分析した結果、リードの獲得数がWeb広告よりもSEO記事の方が多いことが判明したとします。

さらなる新規リードを獲得するために、新規制作のSEO記事に加え、既存の記事をさらに上位にするためのリライトや、ユーザーをメディアのファンにさせるコラム記事制作などさまざまな提案の手段があります。顧客データを活用することで、課題を解決に導く提案ができるでしょう。

ロイヤリティを高めたうえで提案する

顧客が自社の商品・サービスに対して良くない印象を持っていたり、そもそも接点が少なかったりする状態でアップセル・クロスセルを試みても、かえってマイナスな印象を与えてしまいます。

特に、サブスクリプションなど顧客と継続的な関わりがあるサービスの場合は、顧客ロイヤリティを高めたうえで提案すると、良い印象につながる可能性があります。

なかでも、NPS(ネットプロモータースコア)と呼ばれる数値指標を管理する方法が有名です。NPSでは、「ブランドや商品・サービスをどれくらいの度合いで勧めるか?」についてアンケートを実施し、結果を数値に反映させて顧客満足度を測ります。

アップセル・クロスセルの事例

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以下では、アップセル・クロスセルに成功した企業、大塚商会とDropboxの事例を紹介します。自社でのアップセル・クロスセル戦略を検討する際の参考にしてみてください。

事例1.大塚商会

大塚商会は、システム機器の販売や導入支援など、さまざまなITソリューションを提供する企業です。同社は、社内で独自開発したCRMを用いて顧客の課題を解決しています。

具体的には、CRMを使ってユーザーの購入履歴や製品の競合情報を分析し、営業担当者にリアルタイムで通知しています。これにより、アップセルやクロスセルの柔軟な提案が実現できるでしょう。

顧客データ分析をアップセル・クロスセルにつなげている好例といえます。

事例2.Dropbox

Dropbox.incは、オンラインストレージサービスを世界的に提供するアメリカのIT企業です。同社はオンライン上で、既存顧客向けのアップセルを効果的に行っています。

具体的には、個人ユーザー向けに2GBまでの無料プランを提供し、容量がいっぱいになったタイミングで、メールやお知らせを通じて有料プランを案内します。

さらに法人向けプランでは、チームメンバーの追加状況やストレージの使用状況といった行動データを取得・分析しています。顧客が追加の機能を必要とするタイミングを見計らい、個別に上位プランを提案しています。

アップセルとクロスセルを実施して売上につなげよう

アップセルは、同じ商品・サービスの上位グレードを提案する手法で、クロスセルは、関連する別の商品を提案する手法です。両者の意味は異なりますが、顧客単価の向上を目指す施策である点では共通しています。

アップセル・クロスセルは、最初に顧客データ分析を行い、十分に関係を築いた上での実施がカギとなるため、社内のマーケターと営業との連携は必要不可欠です。商談中の顧客や既存顧客とのコミュニケーションを見直し、適切な提案の方法やタイミングを模索してみてはいかがでしょうか。

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