Webマーケティングにおいては、パーソナライゼーションによって個々のユーザーに合わせたアプローチを図ることができます。この記事では、パーソナライゼーションの基礎知識と必要性を踏まえ、パーソナライゼーションに向けたデータ収集と活用の方法、マーケティングでの具体例について詳しく解説します。
パーソナライゼーションとは
パーソナライゼーションは、顧客一人ひとりの特性やニーズに合わせたカスタマイズされたマーケティングアプローチを指します。Google検索でも検索結果がパーソナライズされることがあり、「検索結果はあなた向けにカスタマイズされています」という表示によって確認可能です。ここでは、パーソナライゼーションの定義や歴史、現状について説明します。
パーソナライゼーションの定義
パーソナライゼーションとは、各ユーザーの行動履歴、属性、興味を基にして、一人ひとりに最適化された体験を提供することです。具体的には企業側が顧客データを分析し、個人に合わせた商品やサービスを提案するマーケティング活動を指します。
ECサイトなどで、過去の購入履歴やオンライン行動を分析し、顧客のニーズに合致した商品を推薦するといった運用がパーソナライゼーションの代表的な例です。顧客に「特別待遇をされている」と感じてもらえれば、顧客満足度が高まり長期的な顧客関係を築くことにつながります。
パーソナライゼーションの歴史
顧客の体型に合わせて仕立てをしていた服飾業界などでは、1800年代頃からパーソナライゼーションの原型があったと言われています。現代のパーソナライゼーションの概念が確立されたのは、それから200年近くを経たインターネットが普及し始めた1990年代です。
2000年代にはCRMを活用して精緻なデータ分析が可能になるとともに、ソーシャルメディアの利用も急激に広がり、顧客のオンライン行動をリアルタイムで追跡・分析することが一般的になりました。個人に合わせたマーケティング戦略が実現可能となったため、近年は多くの分野でパーソナライゼーションが進んでいます。
パーソナライゼーションの現状
データ分析技術の進展によって、パーソナライゼーションはさらに高精度になりました。顧客データベースやオンライン行動追跡、ソーシャルメディア分析などを用いて、顧客の好みやニーズをより正確に把握することができるのです。そして、個別のマーケティングメッセージやコンテンツを提供することが一般的になっています。
以下のようにWebメディアで広く活用され、ECやメールマーケティング、ソーシャルメディア広告など、さまざまなチャネルで利用されています。
<パーソナライゼーションの例>
- Web上で特定のコンテンツを検索、閲覧した後に、関連コンテンツや商品・サービスをパーソナライズド広告として配信
- 過去に閲覧したニュースを基に、興味・関心があると予想された情報の配信
- ECサイトで検索・閲覧、あるいは購入した商品と関連する商品をおすすめに表示
- メールマガジンの配信
- SNSや動画投稿サイトで、閲覧済みコンテンツと類似する投稿をおすすめに表示
特に個々のユーザーにおすすめを紹介する「レコメンド機能」は、さまざまなプラットフォームで取り入れられています。
パーソナライゼーションとカスタマイゼーションの違い
パーソナライゼーションとカスタマイゼーションのどちらも、目的は「顧客満足度や顧客体験価値の向上」です。両者は混同されやすい用語ですが、それぞれの主体や手法に注目すると違いが分かりやすいでしょう。
主体の違い
誰が主体となって製品やサービスを最適化するのか、に違いがあります。
パーソナライゼーションでは、「企業」が主体となり、顧客の行動や好みに基づいて個別化された製品やサービスを提供します。
カスタマイゼーションでは、「顧客」が主体となり、積極的に製品の機能や外見などを選択し、自分のニーズや好みに合ったものを購入します。
手法の違い
パーソナライゼーションでは顧客データを分析することで、一人ひとりに最適化されたマーケティングを行います。
カスタマイゼーションでは顧客に選択の自由を与えることで、本人の意志に沿った顧客体験の実現を目指しています。
パーソナライゼーションはマーケティング戦略に必要か?
価値観の多様化が進み、不特定多数に向けた「マスマーケティング」では成果が出にくくなりました。現代のマーケティング戦略には、顧客ごとのニーズを反映するパーソナライゼーションが不可欠です。ここでは、マーケティングにおいてパーソナライゼーションが重要である理由と、活用する利点について解説します。
パーソナライゼーションがマーケティングで重要な理由
おもに下記の理由から、マーケティングにおけるパーソナライゼーションの重要性が認められます。
ITの進歩に伴って顧客側の情報収集行動が大きく変容した
大量の情報から自由に取捨選択ができる現代では、一方的なマーケティングでは売れなくなりました。パーソナライゼーション機能を活用して、顧客の希望に沿った提案を行うことが重要です。
価値観の多様化によってマスマーケティングの効果が弱まった
「みんなが買っているものを買う」より「自分のニーズに合ったものを買う」という傾向が強くなりました。パーソナライゼーションされた情報を適切なタイミングで提供することは、非常に効果的なアプローチです。
カスタマーエクスペリエンスが重視されるようになった
一人ひとりに合わせたコンテンツや製品を提示することで、顧客は自分のことを理解してもらえていると感じ、ブランドへの信頼感や忠誠心が高まります。顧客自身のリピート購入だけでなく、口コミを通じた新規顧客の獲得にもつながるでしょう。
自分に合った製品やサービスを求めている顧客に、パーソナライゼーションを活用して良質な顧客体験を提供することで、コンバージョン率(CVR)とリピート率の大幅な向上が期待できます。
マーケティングにおけるパーソナライゼーションの利点
パーソナライゼーションのおもな利点は以下の4つです。
購買意欲を向上させられる
顧客に合わせたコンテンツやオファーを提供することで、顧客の関与とエンゲージメントを高めて購買意欲を向上させます。結果として、CVR改善や売り上げアップに寄与します。
効果的なレコメンドができる
顧客の行動や過去の購入履歴といった客観的データに基づくため、効果的かつシステマティックにパーソナライズされたレコメンドが可能です。
新規顧客の獲得につながる
顧客の満足度を高めることで、ロイヤルティーの向上や長期的な顧客関係の構築、解約と休眠化の防止、口コミを通じた新規顧客の獲得につなげられます。
将来のマーケティング施策の策定に役立つ
パーソナライゼーションを通じて多くの顧客データが収集されるため、将来のマーケティング戦略の策定に役立つでしょう。
このように顧客に寄り添ったマーケティング活動が展開でき、強力な競争優位性を確立できます。
パーソナライゼーションに必要なデータ収集と効果的な活用方法
パーソナライゼーションを成功させるためには、顧客に関する正確なデータの収集と、その効果的な活用が不可欠です。ここでは、顧客データの種類と収集方法、効果的な活用方法について解説します。
データの種類と収集方法
パーソナライゼーションに必要なデータは、顧客の基本情報、行動データ、取引履歴などです。
顧客の基本情報とは、名前や年齢、性別、位置情報などの個人識別情報を指します。BtoBなら企業情報(企業名、業界、収益、従業員数など)がこれに当たります。基本情報は会員登録フォームやアンケート調査を通じて収集するのが一般的です。
行動データには、ウェブサイトやアプリでの顧客の行動パターン、クリック率、滞在時間などが含まれ、GAなどの分析ツールを用いて収集します。取引履歴は、過去の購入履歴やサービス利用履歴のことです。顧客管理システム(CRM)を活用することで各種取引履歴を収集できます。
CRMについては、以下の記事も併せてご覧ください。
>マーケティングに不可欠なCRMとは?その用途と目的、導入に際しての準備について徹底解説!
さらに、アクセス時間帯やサイト滞在時間、メール開封率、顧客生涯価値(LTV)などを細かく収集・解析する場合もあります。ソーシャルメディアまで分析できれば、より深く顧客の嗜好や興味にアプローチすることも可能です。
特にBtoCマーケティングでは、デモグラフィック(人口統計学的属性)、コンテキスト(背景情報)、ビヘイビアー(行動)という3要素に分類して、データを収集・分析する方法が採用されています。
顧客データの活用方法
収集したデータを分析して、顧客の興味・関心や行動パターンを読み解いていきます。的確な顧客理解によって、パーソナライズされたコンテンツやオファーを作成することが可能です。
・購入履歴や閲覧履歴に基づくレコメンド
ECショップやSNSなどで顧客の行動履歴を分析し、レコメンド機能などに活用します。
・顧客の興味やニーズに合わせたメールマーケティング
年齢・性別・属性などの顧客情報に基づいて、リアクションが期待できる情報を配信します。
・「何を」「いつ」「どのように届けるか」を最適化
顧客が何を望んでいるのか、いつ行動しやすいのか、どの配信方法なら受け入れられやすいのか、をデータから分析して、最適な組み合わせを模索します。
・ネガティブな反応も有効なデータとして活用
顧客のフィードバックや苦情、あるいはアンケート結果などをデータベース化し、顧客一人ひとりに対するサービス改善点を見つけ出すことも顧客満足度の向上につながります。
・顧客セグメントの作成
データ分析から顧客セグメントを作成するのも重要です。各セグメントに最適なマーケティング戦略を展開し、効率的なパーソナライゼーションができます。
パーソナライゼーションの事例
パーソナライゼーションはBtoB・BtoC両方のマーケティング分野で普及しており、顧客エンゲージメントとビジネス成果の向上に寄与しています。
BtoBマーケティングにおける事例
BtoBマーケティングにおけるパーソナライゼーションの一例として、リード生成と顧客関係管理(CRM)システムの統合が挙げられます。マーケティングオートメーションツール(MA)を用いて潜在顧客の行動データを収集し、特定の業界や企業サイズに適したコンテンツやメールキャンペーンを展開するといった運用です。
また、企業アカウントごとに異なるページが表示されるようにWebサイトを変更するABM(アカウント・ベースト・マーケティング)といった手法もあります。株式会社村田製作所は、顧客企業に合わせてWebコンテンツの最適化とURL付きメールの配信を行い、大幅な向上にCTR成功しました。
デモやセミナーを顧客企業ごとにパーソナライズして提供することも有効です。担当者や決裁者の関心をより高めることができ、ビジネスチャンスを拡大する効果が期待できます。
BtoCマーケティングにおける事例
BtoCマーケティングにおいては、EC業界でのパーソナライゼーションの活用が顕著です。過去の購入履歴や閲覧履歴、検索行動を分析し、顧客の好みや興味に基づいた推薦商品を表示するのが一般化しました。その先駆者であるAmazonは「お客様におすすめの商品」というレコメンド機能で顧客に合わせた製品を提案し、良質な購入体験を提供し続けています。
アパレルサイトでは、株式会社パルが運営する通販サイト「PAL CLOSET(パルクローゼット)」が注目されています。同サイト内のサイズレコメンドエンジン「unisize(ユニサイズ)」が顧客の体型や好みでパーソナライズされた衣服を選定することで、顧客満足度の向上と購買行動の効率化を実現しました。
顧客ごとに最適化したメールマーケティングやプロモーションを実施し、リピート購入へつなげる一連の流れを仕組み化しているケースもあります。
まとめ:パーソナライゼーションを行って成果につなげよう
パーソナライゼーションの活用は、現代のマーケティング戦略に必須です。顧客一人ひとりのニーズや興味を分析し、価値ある顧客体験を提供することで成果向上を達成できます。パーソナライゼーションで顧客満足度を高められれば、ブランドへの信頼感や忠誠心の醸成にもつながり、顧客関係を長期的に維持できるでしょう。
そのためには、適切なデータ収集と分析を踏まえた、的確な商品・サービスの提供が重要です。BtoBまたはBtoCの両方でパーソナライゼーションの事例を参考にして、ぜひ自社の成果アップにつなげてください。
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