SaaSの導入を始めている企業は日々増加している状況です。SaaSは大きく分けて、ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの2種類に分かれています。そのため、種類ごとの用途やメリット・デメリットを把握しておかなければ、SaaSを導入しても効果は得られないでしょう。
この記事では、SaaS・PaaS・IaaS企業様を中心に、約40年にわたってコンテンツマーケティング支援を行っているSEデザインが、SaaSの種類それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。
「SaaS」とはインターネットを介してソフトウェアを利用できるサービスのこと
SaaSは「Software as a Service」の略で、インターネットを介してソフトウェアを利用できるサービスを意味します。日本語では「サース」や「サーズ」と呼ばれます。サービスそのものは「ASP(Application Service Provider)」として、1990年代から存在していましたが、SaaSという言葉が広まったのは2006年ごろです。
従来のソフトウェアは、企業のサーバーやPCに直接インストールする必要がありました。一方でSaaSでは、サービス提供者のサーバー上でソフトウェアが稼働します。
そのため、ユーザーはインターネットを通してサーバーにアクセスすれば、必要な機能を利用できます。2018年以降、多くのスタートアップ企業がSaaSモデルを採用し、リモートワークの普及に伴い、利用と認知が急速に拡大しました。
SaaSにはホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの2種類がある
SaaSは、大きく分けて、「ホリゾンタルSaaS」と「バーティカルSaaS」の2種類があることを知っておきましょう。
ここでは、それぞれの特徴について解説します。
ホリゾンタルSaaS:幅広い業種で利用できる
「ホリゾンタル(horizontal)」は英語で「水平」を意味する単語です。ホリゾンタルSaaSは特定の業界に限らず、幅広い業種で利用可能な汎用性の高いSaaSを指します。
代表的なホリゾンタルSaaSとしては、以下のようなクラウドサービスが挙げられます。
- ビジネスチャットツール
- マーケティングオートメーション(MA)ツール
- 人事関連(HR系)システム
- 電子契約サービス
- オンラインストレージ
業界を問わず多くの企業で活用される点が特徴です。業種が限られていないため、バーティカルSaaSは幅広い企業で導入しやすいでしょう。
バーティカルSaaS:業界の特有のニーズに合わせた機能が利用できる
「バーティカル(vertical)」は「垂直」を意味する単語で、ホリゾンタルSaaSとは対照的に、特定の業界に特化したSaaSを意味します。バーティカルSaaSは、製造業や医療業といった業界の特有のニーズを深く掘り下げた機能を提供している点が特徴です。
代表的なバーティカルSaaSとしては、以下のようなクラウドサービスが挙げられます。
- 医療業界向けの電子カルテ管理システム
- 農業向けの作物管理プラットフォーム
- 建設業向けのプロジェクト管理ツール
- 外食産業向けの在庫管理・予約システム
バーティカルSaaSも含めた特化型のSaaSは、海外では「インダストリー・クラウド」とも呼ばれるケースもあります。それぞれの業界特有のワークフローや規制要件を解決するために設計されているため、専門性が高い特徴です。
また、利用しやすい企業の業務効率化に直結しやすいといえます。たとえば、建築業界で導入した場合、図面や施工状況を社内のメンバーとどこにいても共有でき、やり取りができます。
この場合は、クラウド上で管理できるため、報連相もスムーズにとりやすくなるでしょう。データ管理がシンプルになり、業務効率が上がる点も魅力です。
ホリゾンタルSaaSのメリット
ホリゾンタルSaaSのメリットは以下のとおりです。
業界が限られないため営業開拓先の選択肢が広い
ホリゾンタルSaaSは業界を限定せずに利用できるため、新規の営業開拓先が多い点が特徴です。また、初期費用を抑えた低コストで導入できるため、企業規模を問わず提案できる点はメリットといえるでしょう。既存のSaaSを導入している企業に対してもアプローチできます。同一の用途でないSaaSであれば、並行して導入を検討してもらえる場合があるケースがあるためです。
たとえば、すでに勤怠管理や経費精算といった業務特化型のSaaSを導入している企業であっても、グループウェア系のSaaSを新規に採用する可能性は十分に考えられます。勤怠管理や経費精算は特定の業務領域をカバーしており、グループウェアは組織内のコミュニケーションや情報共有を総合的に支援する役割を担っているため、保管しあうことができるためです。
幅広い用途で活用できるため、営業開拓先の選択肢は広いといえるでしょう。
SaaS名・自社名の知名度を上げやすい
ホリゾンタルSaaSは、広範な市場にアプローチすることでサービス名や企業名の認知度を高めやすい点もメリットの1つです。一定のシェアを確保すれば、利用企業間での事例紹介や口コミ効果が生まれやすくなり、メディアやアナリストによるレポートで取り上げられる確率も高まるとてえるでしょう。
また、機能の拡充だけでなく、ユーザーの用途別の活用事例などを示すことで、結果として企業ブランドの向上にもつながるでしょう。
ホリゾンタルSaaSのデメリット
ホリゾンタルSaaSには、以下のデメリットもあります。競合他社の多さや新規参入のハードルが高い点などは知っておきましょう。
ライバル競争が激しい
日本のSaaS市場は現在成長期にあり、多くの新規参入者がM&Aや独自開発を通して市場に進出しています。その結果として、市場競争は非常に激しいといえるでしょう。とくにホリゾンタルSaaSは、バーティカルSaaSと比べて市場が成熟しており、既存の競合製品も多いため、差別化が必要不可欠です。
営業先が豊富な反面、他社製品との競争で優位性を示すための戦略が求められます。たとえば、競合と同じ営業先にアピールした場合、自社製品ならではの機能性や独自性がなければ、成約につなげるのは難しいでしょう。
一方で、自社製品を熟知し、自社の強みや顧客ニーズに寄り添えるといった魅力を伝えられれば、営業先にも良い印象を与えられるようになります。事前の情報収集や資料作成、社内でのナレッジ共有なども含めて、他社製品と比べて自社の商品はどのような強みがあるのかをアピールすることが大切です。
個々のニーズに対応しづらい
ホリゾンタルSaaSは、汎用的な機能をもつSaaSです。そのため、特定の企業の独自のニーズやプロセスへの対応が困難な傾向にあります。たとえば、業界ごとの規制や運用ルールに対応するために追加のカスタマイズをしなければならなかったり、それに伴ってコストや時間がかかったりするケースも少なくありません。
こういった場合は、API連携やアドオン機能などによるカスタマイズやバーティカルSaaSと部分的に組み合わるといった課題解決方法も検討されます。顧客に提案する場合には、汎用性の高さを活かして柔軟性のある提案ができるように心がけましょう。
バーティカルSaaSのメリット
バーティカルSaaSは専門性の高さによって差別や顧客ロイヤルティ向上を目指すことが可能です。具体的にみていきましょう。
競合が少なくライバル競争に勝ちやすい
バーティカルSaaSは、市場がまだ成熟しておらず、競合が少ない点がメリットです。ターゲットが特定の業界に絞られるため、市場の優位性を確立しやすいといえるでしょう。特定業界のニーズを深く掘り下げたサービスを提供するため、業界標準となるケースも珍しくないでしょう。
たとえば、医療業界向けのバーティカルSaaSは、汎用的な予約管理システムではカバーしきれないカルテ管理や医療法規制への対応機能などは、顧客のニーズを満たす大きな要素です。業界内での信頼や評価が高まることで、特定分野でのリーダーポジションを築きやすい点は、バーティカルSaaSの強みといえるでしょう。
解約や乗り換えをされにくい
バーティカルSaaSでは、特定の業界に特化した機能を提供します。そのため、競合が少なく、顧客が他社サービスへの乗り換えを検討する機会が少なくなります。
理由としては、顧客と業界のニーズを満たしたうえで、業務の根幹を担う役割をバーティカルSaaSが果たすようになるためです。仮に、長期間使用し、代替サービスを検討するような流れになったとしてもリスクやコストが顧客にとって負担となります。そういった場合には、サービス提供者側が新機能や課題解決のための提案を実施することで、顧客との信頼関係構築も図れるでしょう。
顧客と長期的な関係性を構築しやすく、安定した収益基盤につながりやすい点はバーティカルSaaSのメリットの1つです。
バーティカルSaaSのデメリット
バーティカルSaaSには以下のデメリットもあります。導入する前に、メリットとデメリットを比較し、慎重に判断しましょう。
SaaS名・自社名の知名度が特定の業界にとどまりやすい
バーティカルSaaSのデメリットの1つは、サービスの認知度が導入企業や関係者といったターゲットの業界内に限られる点です。たとえば、業界内では標準的なサービスとして地位を確立していた場合であっても、ほかの業界でもブランド力や認知度が高まるとは限りません。
そのため、新しい顧客層へのアプローチやマーケティング戦略を立案する必要があります。業界外の認知獲得が難しい点はバーティカルSaaS特有のデメリットです。
全体的なターゲットが少なく、SaaSの導入数が限定的になりやすい
バーティカルSaaSは特定の業界に特化しているため、市場が限られています。日本国内では多くの業界が既に成熟期にあり、急成長が見込まれる分野も少ない状況です。今後の導入数の増加には限界がある可能性も否定できません。
そのため、関連業界へのアピールや機能開発、海外への展開なども含めて多角的な視点から戦略を立てる必要があるといえるでしょう。
ホリゾンタルSaaSの事例
ここからは、ホリゾンタルSaaSの事例をご紹介します。実際にどのようなサービスが存在し、どのように活用されているのかを把握しましょう。
HubSpot:統合プラットフォームを提供
HubSpotは2006年に設立されたアメリカのSaaS企業です。マーケティングや営業、顧客サービス、Webサイト管理などの統合プラットフォームを提供しています。
設立当初から、インバウンドマーケティングの普及・それに関連するマーケティング製品の提供を中小企業向けに展開していました。現在は機能を大幅に拡充し、無料で利用可能なCRMを提供するほか次のような幅広いソリューションを展開しています。
- HubSpot Marketing Hub
- HubSpot Content Hub
- HubSpot Sales Hub
- HubSpot Service Hub
- HubSpot Operations Hub
マーケティングやコンテンツ管理に加え、エンタープライズ市場への進出にも力を注いでいるのが特徴です。
Sansan:名刺管理サービスのみならず営業活動の支援もサポート
Sansan株式会社では、法人向けクラウド名刺管理サービスを提供しています。たとえば、企業全体での名刺情報の一元管理を実現できるため、生産性向上や業務効率化を支援しています。
代表的なサービスである「Sansan」は、スマートフォンやタブレットにアプリをインストールするだけで利用可能な点が特徴です。名刺のスキャンや最新情報への即時アクセスが可能となり、場所を問わず業務を円滑に進められる環境を提供しています。
また、メールなどの接点情報や商談履歴も共有でき、企業情報や営業活動の履歴も一元管理可能です。そのため、さまざまなビジネス機会に気づきやすくなるでしょう。
「Sansan」は1万社以上で導入されており、日本国内の名刺管理市場でシェア率82%を誇ります。主要顧客は以下のとおりです。
- トヨタ自動車
- 住友生命
- 日本郵便
- サイバーエージェント
また、中小企業向けに社内で簡単に名刺管理が始められる「Eight Team」も展開し、幅広いニーズに対応しています。
バーティカルSaaSの事例
ここでは、バーティカルSaaSの事例についてみていきましょう。実例にふれることで、導入する際のヒントや具体的な活用方法の参考にできます。
エス・エム・エス:介護業界に特化したSaaSサービス「カイポケ」を提供
株式会社エス・エム・エスは、介護業界に特化したSaaSサービス「カイポケ」を提供しています。カイポケサービスは、介護事業者の経営課題を解決するための多機能プラットフォームです。
「カイポケ」では以下のような機能が利用可能です。
- 業界最安水準の料金
- ファクタリング「(カイポケ早期入金サービス)」サービスの提供
- 居宅介護支援(ケアマネジャー)用タブレットの無償貸与などの業務効率化支援
複数の機能を活用することで、介護事業者が抱える多様な課題を把握し、それぞれに適した解決策を提案しています。
スマレジークラウド型のPOSレジシステムを提提供
株式会社スマレジは、小売業を中心に利用されているクラウドPOSサービス「スマレジ」を提供しています。スマレジはiPadやiPhone、iPod Touchなどのアプリで利用できる次のような機能を持つクラウド型のPOSレジシステムです。
- 基本のレジ機能
- 売上分析や在庫管理
- 勤怠管理
「スマレジ」のメリットは、受注から売り上げ管理までのプロセスを効率化し、流通・販売の一連の流れを統合的に管理できる点です。一括管理することで、「データ分析で顧客のニーズを把握し、メニューを大幅に見直し顧客単価を増加」「モバイルオーダー管理がスムーズになり、人件費を削減」といった、運営コストの削減と業務の効率化を同時に実現できるでしょう。
SaaSの種類と違いを理解して施策に活かそう
本記事では、SaaSの種類について解説しました。SaaSの種類ごとに特徴が異なるため、自社にニーズに合ったサービスを導入することが大切です。また、メリットやデメリットもあるため、比較したうえで慎重に検討してみましょう。
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