BtoBマーケティングにおいて、今や定番の打ち手である「ウェビナー」。
2020年に始まったコロナ禍以降、場所を選ばず参加できる手軽さから、多くの企業が日々取り組んでいます。
一方で、こんな悩みを感じている担当の方も多いのではないでしょうか。
- ウェビナーを一生懸命企画したけれど、集客が全然できない…
- ウェビナーを開催しても、思ったように商談が生まれない…
- そもそも、どのように企画を考えればよいか悩んで手が止まってしまう…
実際、私もこれまで数多くのウェビナーを企画してきました。慣れないうちは、集客数が10名に満たなかった、集客はできたが全く商談が生まれなかった、といった失敗も数多く経験してきました。
そこで本記事では、私の経験から見つけた、「成果につながるウェビナー設計」の考え方について解説していきます。
ウェビナーに取り組んで間もない企業のマーケティング担当の方、集客や商談につながらないとお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
ウェビナーで重要なのは“売らない”こと
以前、私がとある企業から受け取ったメルマガで、気になっているトピックに関するウェビナーの案内がありました。せっかくの機会だからと、チームメンバーに参加してもらいました。
セミナー後に「どうだった?何か勉強になった?」と聞いたところ、チームメンバーからはこんな回答がありました。
「参加してみたんですが、サービスの宣伝ばかりで、正直特に学ぶことがなかったですね…」
私自身、その企業に対しては少し残念な気持ちになりました。おそらく今後のセミナーも参加することはないだろうと思います。
上記は私の経験ですが、おそらく似たような経験をしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
そもそもウェビナー参加者は、何を期待して申し込むのでしょうか。
それはもちろん、知識やスキルを身につけたいからです。サービスの具体的な内容を知りたいのであれば、お問い合わせや資料請求などをするはずです。
だからこそ、ウェビナーにおいて「売り」感が強すぎてしまうと、参加者の体験を損ねてしまうばかりか、今後他のセミナーに参加してくれる可能性までも奪ってしまうことになりかねません。
ウェビナーは階段設計で考えよう
とはいえ、ウェビナーが参加者にとって「ただ参加して勉強になった」だけで、アポイントや受注に何も結びつかないのであれば、企業として継続することは難しいでしょう。
では、どのようにお客様の満足度とビジネスの目的のバランスを取っていけばよいでしょうか。
そこで重要な考え方が「階段設計」です。
階段設計は、顧客のフェーズに合わせて必要な情報を提供する考え方
階段設計とは、カスタマージャーニーにおけるフェーズ(段階)に合わせて、必要な情報(コンテンツ)を提供する考え方です。
ビジネスモデルや商材によって異なりますが、BoBビジネスの場合は以下のようなフェーズを辿ることが多いでしょう。
- 認知
- 興味・関心
- 検討
- 商談
- 購入
そしてフェーズごとに、お客様にとっての課題や求める情報は大きく異なります。 以下に簡単に説明します。
サービスや課題の存在自体をまだ十分に認識していない段階。
ここでは、課題への気づきを促すような情報提供や業界トレンドの紹介が有効です。
課題を自覚し始め、関連情報を収集しながら解決策を模索している段階。
他社事例や課題解決の選択肢紹介が響きやすくなります。
具体的な解決手段やサービスを比較・検討し始めている段階。
サービス内容や価格、サポート体制など、より詳細で実用的な情報が求められます。
担当者との打ち合わせを通じて、ニーズのすり合わせや条件交渉を行う段階。
業界特化型の導入事例やROIの提示などが有効です。
社内決裁プロセスを経て、最終判断がなされる段階。
導入後のサポート体制や運用イメージの明示が信頼につながります。
たとえば、まだ「認知」のフェーズにいる方にとっては、サービスに関する詳細な説明はおそらく不要でしょう。一方で、「検討」フェーズにいる方にとっては、有益な情報となるかもしれません。
だからこそ、フェーズに合わせたウェビナーコンテンツを考えることが重要なのです。
ウェビナー企画における階段設計の考え方
ここからは階段設計を具体的にどのように考えていけばよいか解説します。
階段設計を考える際は、「顧客の悩み」「顧客が知りたいこと」「ウェビナーのコンテンツ案」という3つの視点をフェーズ(段階)ごとに考えていくことがオススメです。以下のような表を用意すると、整理しやすいでしょう。
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認知 |
興味/関心 |
検討 |
商談 |
購入 |
顧客の悩み |
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顧客が知りたいこと |
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ウェビナーのコンテンツ案 |
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ここでは理解しやすいように、MA(マーケティングオートメーション)ツールを提供する会社を例にしてみていきます。
1.顧客の悩み
1つ目の視点は、顧客の悩みです。自社の商材のターゲットとなる顧客が、どういった悩みを抱えているか、できるだけ詳細に書き出してみましょう。
たとえば、認知フェーズにおいては、以下のような悩みが考えられます。
- マーケティング施策に取り組んでいるが、工数が不足している
- 顧客の情報管理がかなり煩雑になっている
- 施策の成果が分からない
もし悩みについてあまりイメージが湧かない場合、まだ顧客理解が十分にできていない状態です。自社の営業にヒアリングをしてみたり、ターゲットとなる顧客にインタビューしたりして、具体的に書き出せるようにしてください。
2.顧客が知りたいこと
2つ目は、顧客が知りたいことです。顧客の悩みを受けて、顧客がどういった情報に対して興味がありそうかを書き出してみます。
たとえば、認知フェーズにおいては、以下のような情報のニーズがありそうです。
- マーケティング業務を効率よく成果を最大化する方法
- 施策の成果を見える化する方法
- 顧客管理のベストプラクティス
なお顧客が知りたいことは、決して言葉に出るものだけではありません。口には出さないが、潜在的に思っていること(インサイト)も含まれます。この潜在的な思いを掘り当てられると、強力なコンテンツへとつながります。
3.ウェビナーのコンテンツ案(提供できる価値)
最後は、ウェビナーのコンテンツ案です。①②でまとめたことを踏まえて、自社がどういったコンテンツ(価値)を提供できるか考えてみましょう。
たとえば、認知フェーズにおいては、以下のようなコンテンツ案が考えられるでしょう。
- マーケティングで成果を出している他社事例
- 顧客情報管理のオススメ方法
そしてこのコンテンツ案をベースに、ウェビナーの企画を詰めていくと、ズレなく企画を考えることができるようになります。
アポイントにつなげるために重要なストーリー構築
ここまでウェビナーの企画を考える軸について解説してきました。
しかし、ウェビナーを通してアポイントを取っていくためには、これだけでは不十分です。ウェビナー内でアポイント獲得までのストーリーを作ることが重要です。言い方を変えれば、顧客がアポイントを取るべき理由を設計して、ウェビナーのコンテンツに反映させるのです。
先のMAツールを例に考えてみると、このようなストーリーはどうでしょうか。
・セミナーでは、MAの基本と活用方法を説明する
↓
・とはいえ、どうしても一般的な話になってしまい、顧客が自社でどのように活用してよいかわからない
↓
・だからこそ、アポイントを取ってもらえば、担当(営業)が顧客の課題や業種にあった活用事例を紹介します
これなら参加者としても「商談しませんか?」と言われるよりは、アポイントを受け入れるハードルが下がりそうですよね。
実際には、このストーリーに合わせて、ウェビナーの最後に案内を入れることで、アポイント獲得率を大幅に改善することができるはずです。
成果を最大化させるためのアンケート活用法
ウェビナーを開催する際にアンケートを取っている会社も多いと思います。アンケートに一工夫することで、より成果を最大化させることができます。
その工夫とは、「ウェビナー参加の目的」と「自社のサービスに関する関心度」の設問を入れておくことです。具体的には、以下のような設問を最後に入れておきます。
Q. ウェビナー参加の目的を教えてください。
Q. あなたのサービスに関する興味を教えてください。
これらの選択肢を入れておくことで、顧客の検討度や温度感を可視化できます。そして、営業メンバーが誰を優先して連絡すればよいかが明確になるため、ウェビナー後のフォローがしやすくなるのです。
また事前に、「詳しく説明を聞きたい」と回答した方には翌営業日中に連絡する、などフォローの基準やルールを決めておくと、対応のスピードと質を両立しやすくなります。
どちらもすぐに取り組める内容なので、ぜひトライしてみてください。
まとめ
この記事では、成果を出すウェビナー企画のコツについて紹介しました。
大事なのは、顧客のフェーズ(段階)に合わせてコンテンツを考えて、顧客視点に立って役立つ情報を届けることです。
ウェビナーを始めても、すぐには商談が生まれないことが多いでしょう。しかし、良いコンテンツを届け続けていれば、自社への信頼は高まっていきます。そして商品サービスを検討する際には、声をかけてもらえる可能性が高まるはずです。
ウェビナーの企画に悩む方は、ぜひこの記事を参考に、階段設計のシートを作ってみるところから始めてみてください。
まずは、次の3つのステップから始めてみるのがおすすめです。
- 顧客のフェーズを整理する
自社のターゲットが今どの段階にいるのか、認知~購入の5段階で書き出してみましょう。 - 過去のウェビナーをフェーズ別に分類する
すでに実施したウェビナーが、どのフェーズに対応していたかを振り返ることで、偏りや穴が見えてきます。 - 次回ウェビナーでアンケート設問を追加する
「参加目的」や「サービスへの関心度」に関する設問を取り入れ、フォローしやすい仕組みを整えておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。