潜在的な顧客に有用な情報を提供するなど、独自コンテンツでユーザーとの接点を維持するオウンドメディアの重要性は今後さらに高まることが予想されます。
本記事では、オウンドメディアを活用したマーケティングについて基本情報から成功事例まで解説していきます。
オウンドメディアとは何か
オウンドメディア(owned media)とは、自社が運営するメディアを指します。
商品のスペックや価格を提示するなど商品そのものの宣伝を行うのではなく、読者にとって有益な情報を伝えることにより、見込み客や潜在顧客の獲得を狙うマーケティングの手法です。
マーケティングで重要なオウンドメディア
オウンドメディアを使ったマーケティングは、コンテンツマーケティングの一種ともいえるでしょう。
ユーザーにとって価値のある情報を届けることで購買行動へとつなげるのが「コンテンツマーケティング」であり、コンテンツとしては文章や画像、動画や音声などが挙げられます。
オウンドメディアの場合はブログの形態をとることが多く、ほとんどのオウンドメディアでは、キーワード検索による自然検索流入を狙うなど、SEO対策を施しています。
そのため、コンテンツ化したい情報のニーズを抽出し、検索エンジンから好評価をもらえるようなサイト作りが重要です。
トリプルメディアにおけるオウンドメディアの位置づけ
Webでは、オウンドメディアのほかにも、ペイドメディアやアーンドメディアといったメディアが存在します。これら3種類のメディアを合わせて、「トリプルメディア」と呼びます。
ペイドメディア(paid media)とは、自社が対価を払って広告を掲載する従来型のメディアを指します。テレビCMや新聞の広告など消費者の目に留まりやすいため、短期的な売上効果が期待されます。
アーンドメディア(earned media)とは、消費者の信頼や共感を獲得する(earned)メディアを指し、SNSや口コミサイトが代表例です。特にTwitterやFacebookといったSNSは第三者に情報を拡散しやすいため、ブランドを認知させる際に有効です。
見込み客を惹きつけ、コミュニケーションを継続することで顧客へと育てていき、商品の購買という行動まで結びつけるためには、トリプルメディアをうまく活用していく必要があります。
ペイドメディアやアーンドメディアで獲得した見込み客を集め、育てていくには、オウンドメディアが重要になってくるでしょう。
オウンドメディアが注目される理由
昨今オウンドメディアを運営する企業が増えていますが、マーケティングの手法として注目されるにはいくつかの理由があります。
ここでは、オウンドメディアが注目される理由について紹介します。
Googleのアルゴリズムの変化
オウンドメディアを運営し、情報を発信する企業が増えているのは、Googleの検索アルゴリズムの変化と関連があります。
検索アルゴリズムとは、Googleの検索窓にキーワードを入力して検索すると出てくるサイトの検索順位を決めるプログラムのことです。
評価基準として約200項目が存在し、大型アップデートと呼ばれるアルゴリズムの変更が定期的に行われていますが、年々コンテンツを重要視するようになりました。
このような変化により、内部施策だけでは十分な流入を確保できなくなったため、検索の流入を増やし、顧客獲得を目指す手法として昨今オウンドメデイアが注目されているのです。
従来の広告手法が通用しなくなった
広告に対する不信感など、従来の広告手法が通用しなくなっていることも理由として挙げられるでしょう。
ユーザーは広告を見て商品の購買など行動を移すのではなく、インターネットで検索し能動的に情報を得たあとで購買行動を行うことが多くなっています。
オウンドメディアはこうしたユーザーの能動的な情報収集をうまく利用し、顧客へと育てる橋渡しをします。もちろん、先述したように従来の広告に相当するペイドメディアやSNSなど、アーンドメディアとの連携が重要なのは言うまでもないでしょう。
広告費の適正化
企業はインターネット広告として、検索結果の上位に表示される「リスティング広告」や、Webサイトの広告枠に表示される「ディスプレイ広告」に依存してきました。
しかしながら、2017年の調査では自然検索とリスティング広告の掲載順位別のクリック率は次のようになっており、ユーザーが広告をクリックしなくなっているという実態が浮かび上がっています。
順位 |
自然検索(※1) |
リスティング広告(※2) |
1位 |
21.12% |
10.11% |
2位 |
10.65% |
7.28% |
3位 |
7.57% |
5.66% |
4位 |
4.66% |
4.04% |
5位 |
3.42% |
3.13% |
出典:※1 Internet Marketing Ninjasが2017年に発表したデータ
https://www.internetmarketingninjas.com/blog/google/announcing-2017-click-rate-study/
出典:※2 日経BPnetが2006年に発表したデータ
https://www.uniad.co.jp/230102
また、2012年の調査では、自然検索は広告の4倍クリックされているにもかかわらず、使われているお金はリスティング広告の10分の1程度であることがわかりました。
このため、企業はクリック率の低いリスティング広告の予算を抑えて、クリック率の高い自然検索からの流入を増やすよう投資しているのが昨今の動向です。
オウンドメディアの制作はこれらの流れに乗っているといえるでしょう。
他メディアのトレンドへの対応
FacebookやTwitterといったSNSが普及していますが、質の高い記事はこうしたSNSを通じてシェアされるのが一般的であり、口コミ経由で記事が拡散される傾向にあります。
オウンドメディアでの内部設計を最適化しても、良質なコンテンツがなければ検索からの流入は稼げません。アーンドメディアでユーザーの共感を得たり拡散されたりするなどトレンドに対応するためにも、オウンドメディアで優良なコンテンツを制作し拡散する仕組みが必要になってきます。
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オウンドメディアの5つのメリット
オウンドメディアをマーケティングに使うメリットとしては、おもに以下の5つが挙げられるでしょう。
広告費を削減できる
オウンドメディアを構築するまでには手間がかかりますが、一度立ち上げれば広告費をかけることなく情報発信を継続できます。広告コストに依存しがちなリスティング広告との大きな違いともいえるでしょう。
また、キャンペーンの告知や新商品の発表についてもオウンドメディアのなかで広告費をほとんどかけずに行えます。そのため、オウンドメディアが成功すれば、高い費用対効果を期待できるのです。
見込み客との関係を強化できる
オウンドメディアに訪問した見込み客は、サイト内のコンテンツにアクセスすることで、運営する企業に対する信頼感を高めていきます。
信頼関係を高めるためには、オウンドメディア内で単に情報を提供するだけではなく、見込み客である読者にとって有益な情報を伝えていくことが重要です。記事数の多さだけではなく、多様な角度から情報を発信し、双方向でのやり取りが成立することが重要といえるでしょう。
たとえば、記事を執筆した人の顔写真やプロフィールを掲載したり、コメント欄でユーザーの質問に答えるスペースを用意したりすれば、メディアを介して企業と見込み客との距離がグッと近くなります。
インバウンド施策になる
先述したようなオウンドメディアに見込み客を誘導し、コミュニケーションを継続することで顧客へと育てる手法は、「インバウンドマーケティング」と呼ばれます。
営業マンが積極的に情報発信したり営業をかけて信頼関係を築いたりする「プッシュ型営業」の場合、押しつけ感があるのに対して、見込み客である読者が魅力的なコンテンツに惹きつけられる「プル型営業」であるため、押しつけ感もありません。
このため、プル型営業に代表されるようなインバウンド施策はユーザーに受け入れられやすいのです。
ほかの施策と連携しやすい
見込み客へとなる可能性のある潜在顧客をオウンドメディアで発掘し、見込み客として育て信頼関係を築いていくためには、ほかの施策と連携していくことが重要です。
たとえば、問い合わせフォームの設置や資料ダウンロードの際にメールアドレスを入力してもらうようにすればメールマガジンの送信など接点が生まれます。接点をうまく活用することで見込み客の獲得にもつながるでしょう。
オウンドメディアは、ほかの施策との連携がしやすく、新たな価値を創出しやすいのです。
顧客データを蓄積できる
オウンドメディアを通じて、顧客データを蓄積することができます。
たとえば、問い合わせフォームで離脱した見込み客をターゲットにした広告を配信したり、過去に商品を購入した顧客に対してキャンペーンメールを配信したりすることが可能です。既存の顧客のフォローアップを最適化できるだけでなく、新規顧客を獲得するための課題も見えてくるでしょう。
顧客データを蓄積するには、DMP(Data Management Platform)と呼ばれるインターネット上に蓄積されたデータを管理するプラットフォームの活用が有効的です。問い合わせのデータや外部ツールで取得したWebサイトでの行動履歴などの情報をセグメント化することができます。
成功するオウンドメディアマーケティングとは
オウンドメディアでマーケティングを成功させるためには、主に以下の7つを実践することが重要になります。
1. 目的を明確化する
まずはオウンドメディアの運営で何を目指すのか、という目的を明確にしましょう。
企業や商品のイメージを印象づけるといったブランディングでもいいですし、資料をダウンロードしてもらうことで見込み客を獲得することも目的として考えられます。
目的を明確化することによって、どのようにオウンドメディアを運営するのがよいのかも変わってきます。自社が抱える課題を認識し、その課題を解決するためにオウンドメディアを活用するとよいでしょう。
2. ペルソナを設計する
目的を明確にしたら、続いてペルソナを設定しましょう。
この場合のペルソナとは、オウンドメディアを閲覧する典型的な読者像を指します。どのような読者にオウンドメディアを閲覧してほしいのかを考え、年齢や性別、年収や家族構成、趣味など、具体的な情報を細かく設定しましょう。
見込み客の特性への理解を深めることによって、何を望んでいるのかを徹底的に深堀りしていきます。
3. サイトコンセプトを設計する
ペルソナが設定できたら、社内の社員の雰囲気や働き方を伝えるのか、あるいは自社のノウハウを伝えるのかなどオウンドメディアのコンセプトを設計しましょう。
先述したように、オウンドメディアは企業が抱えている課題を解決するためのものでなくてはなりません。一方、見込み客である読者は自然検索から流入します。そのため検索してたどり着いた先のコンテンツは、読者が求めていた情報を含んでいる必要があります。
つまりオウンドメディアは、企業が解決したい課題と読者が求める情報の両方を兼ね備える必要があるのです。
4. 目的達成までの動線を設計する
オウンドメディアを通じて最終的に企業が目指す目的を達成するまでの動線を設計していきます。
資料請求や問い合わせなど、目的にたどり着くまでに見込み客が経由する行動はさまざま考えられるでしょう。ユーザーにとってほしい行動を明確にしつつ、目的達成までの動線を「カスタマージャーニー」として可視化することによって、改善すべきポイントや方向性などを再確認することが可能です。
5. KPI、KGIの設定
目的にたどり着くまでには、目で見える指標を設定することが重要です。オウンドメディアの目的を達成するためにKPIとKGIを設定しましょう。
KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、最終的な目標を指します。一方KPIは、「Key Performance Indicator」の略で、中間的な数値指標として用いられることが多く、重要経営指標や重要業績指標とも訳されています。
KGIやKPIはざっくりした指標でなく、効果を測定できる具体的な数字を設定しましょう。KGIの具体例として見込み客の獲得数、KPIの具体例としてユニークユーザー数が挙げられます。このように数値目標にすることによって、目指すゴールが可視化でき、効果測定や分析が可能になります。
6. 他メディアとの連携
オウンドメディア内で公開したコンテンツは、読者にSNSを通じて拡散されることによって、それまで接点のなかったユーザーにも届けられます。
見込み客を増やしていくためにも、オウンドメディアを運営する企業が公式のSNSアカウントのフォロワーを増やしたり、社員がSNSを運用したりするなど、ほかのメディアとの連携を増やしていきましょう。
7. 短期的な成果を求めない
オウンドメディアは、広告と比較すると費用を抑えることができるだけでなく、一度良質なコンテンツを制作すればユーザーの能動的な行動を通じて半永久的に流入を見込めます。
このように費用対効果が高い一方、オウンドメディアが成果を得るまでには時間がかかるのが一般的です。オウンドメディアを運営するBtoB企業の半数以上が、成果が出るのに1年以上かかるというアンケート調査もあります。
オウンドメディアの運用計画が甘いと頓挫してしまい、運用が止まってしまうことも少なくありません。先述のアンケートでは、オウンドメディアの運営を停止した担当者の約8割が2年未満の運営だったという回答も得られています。
どのようにオウンドメディアを継続させて効果を測るのかをしっかり設定してから、運営を始めましょう。
オウンドメディアの成功事例3選
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では、実際に成功するオウンドメディアとはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、現在も継続し集客数に実績のあるオウンドメディアの成功事例を3つ紹介します。
サイボウズ式
ソフトウェアの開発会社であるサイボウズ株式会社が、2012年から運営を開始しているオウンドメディアが「サイボウズ式」です。記事の本数は約1,000本で、月間約15万人の読者数を誇ります。
サイボウズ式ではチームワークや働き方をメインテーマにしており、同社の製品情報はほとんど出ない特殊なタイプのメディアになっています。複業も自由である社風から多様な働き方や生き方について発信し、議論を巻き起こすことがあるそうです。
サイボウズの価値観や社風を外部に広く伝え、会社のブランディングに成功しているだけでなく、人材採用にも大きく貢献しています。
メルカン
フリマアプリの株式会社メルカリが、2016年に運用を開始したオウンドメディアが「メルカン」です。月間PVは約30万PVと、流入が多いオウンドメディアになっています。
メルカンは、メルカリの社風やメルカリの社員の働き方を知ることにできるメディアです。たとえば、デザイナーやエンジニアとして働く社員のインタビュー記事や開発物などが紹介されています。
英語版のサイトを用意するなど海外の人材獲得に積極的に採用活動しているだけでなく、エンジニアやデザイナーとして働く人にとっても役立つ情報を提供しています。
LISKUL
中小・ベンチャー企業をデジタルマーケティングなどで支援する、ソウルドアウト株式会社が運営するのが「LISKUL」です。月間平均で約50万PV、問い合わせ数は200件という人気のオウンドメディアです。
LISKULではリスティング広告やサイト制作などWebマーケティングに関するノウハウを公開しています。自社の情報を公開すると競合に対して一見不利に働くように思われますが、自社のノウハウが豊富であるというブランディングにも直結しているのです。
また、「リスティング広告スタートアップガイド」というebookを無料で提供し、潜在顧客へのアプローチも積極的に行っています。
※関連コンテンツ:BtoB業界向けオウンドメディア成功事例10選
まとめ:見込み客を惹きつけるオウンドメディアマーケティングを実施しよう
オウンドメディアは構築に時間がかかる反面、ペイドメディアほどコストがかからないため、費用対効果の高いマーケティング手法といえます。
とはいえ、目的の設定や目的を達成するまでの動線づくり、サイトコンセプトなどをしっかり設定していないと、見込み客を集客する効果は表れず、運営の中断につながるおそれもあります。
今回紹介した成功事例をヒントにしながら、見込み客を惹きつけるようなオウンドメディアを構築し、顧客の増加につなげてください。
SEデザインでは、オウンドメディアの構築をはじめとしたコンテンツマーケティング支援を行っております。集客やリード育成にお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。