SaaSにおけるARRの重要性を解説!計算方法や具体的戦略を紹介

更新日:2025-01-17 公開日:2025-01-17 by SEデザイン編集部

目次

SaaSビジネスを展開するうえで、ARR(年間経常収益)は成長性や安定性を測る欠かせない重要な指標です。しかし、SaaS企業に携わっている方のなかには、ARRの基本的な概念や他の指標との違い、正確な計算方法などが分からない方もいるのではないでしょうか。

本記事では約40年にわたり、多くの企業のコンテンツマーケティング支援を行っているSEデザインが、SaaSにおけるARRの重要性について分かりやすく解説します。ARRの計算方法や最大化させるための具体的な戦略、最新のSaaS企業ARRランキングも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

「ARR」とはSaaSビジネスの重要なKPI指標

SaaSビジネスにおいて「ARR(Annual Recurring Revenue)」は極めて重要な指標です。ARRは、サブスクリプションビジネスのモデルを採用するSaaS企業にとって、ビジネスの健全性や成長性を評価する基礎データだからです

ARRは、年間で継続的に得られる収益を指します。「年間経常収益」や「年間定期利益」とも訳され、企業の持続的な成長を支える重要な要素です。継続的な収益を正確に把握することで、将来の投資計画や事業戦略の策定に役立ちます。

SaaSビジネスでARRが重要な理由

SaaSビジネスを成功に導くうえでARRが重要な理由は、以下の通りです。

  • ビジネス成長を測るための効果的なKPIとなる
  • 事業計画や収支予測の精度を高めるために活用できる
  • 投資家が企業価値を評価する際の重要な指標となる

ARRがなぜSaaS企業で重要視されるのか、その理由を詳しく解説します。

ビジネス成長を測るための効果的なKPIとなる

ARRは、ビジネスの成長度合いを測定するためのKPI(主要業績評価指標)として機能します。年間を通じて得られる継続的な収益を追跡することで、企業は自社の成長度合いや市場でのポジションを正確に把握できるでしょう。

ARRを定期的にモニタリングすることで、早期に課題を発見し、迅速に改善施策を実行できます。ARRを把握し、適切な戦略を考えていくことは、将来的な成長戦略の策定に大きく貢献するといえます。

事業計画や収支予測の精度を高めるために活用できる

ARRは、事業計画や収支予測の精度を長期的に向上させるために活用できます。たとえば、新しいプロジェクトへの投資や人員拡大を計画する際、ARRのデータを活用することで、リスクヘッジや資金回収の見込みをより正確に検討できるでしょう。

また、ARRを活用すれば、予算編成やコスト管理の正確性も向上するため、経営資源の最適化にもつながります。

投資家が企業価値を評価する際の重要な指標となる

投資家や金融機関は、ARRを企業価値の評価において重要な指標として捉えています

SaaSビジネスでは、サブスクリプション型の収益モデルが主流です。ARRが高ければ、安定した収益基盤と将来的な成長ポテンシャルを示せるため、投資家からの評価が高まります。資金調達やIPOを目指す企業にとって、ARRを向上させることは非常に重要といえるでしょう。

ARRとその他指標の違い

ビジネスのパフォーマンスを評価する際、ARR以外にもMRR、NRR、売上高といったさまざまな指標が存在します。これらの指標はそれぞれ異なる側面から企業の業績を評価するため、正確に理解し、適切に活用することが重要です。

ここでは、ARRとその他の指標との違いを詳しく解説します。

ARRとMRRの違い

ARRとMRR(月間経常収益)は、どちらも継続的な収益を測定する指標ですが、時間軸が異なります

ARRは年間の収益を示し、長期的なビジネスの健全性や成長性を評価するのに適しています。MRRは月間の収益を示し、短期的な収益動向や月ごとの変化を追跡するのに役立つ指標です。

BtoB事業など、年間契約が多い場合はARRを用い、月間契約が多い場合はMRRを用いることが一般的です。なお、ARRを測定する際は、MRRで算出した数値を用いて計算します。

ARRとNRRの違い

NRR(Net Revenue Retention)は、既存顧客からの収益維持率を示す指標であり、「売上継続率」や「売上維持率」と訳されます。ARRが年間の総収益を示すのに対し、NRRは「既存顧客がどれだけ継続的にサービスを利用しているか」「アップセルやクロスセルによって収益がどの程度増加しているか」を評価できる指標です。

NRRが高ければ「顧客満足度が高く、解約率が低い」と判断できます。また、NRRが高い企業は長期的な収益性が高いと評価されます。

ARRと売上高の違い

ARRは定期的な継続収益を示す指標であり、サブスクリプションモデルのビジネスに特化しています。一方、売上高は製品販売やサービス提供による全ての収益を含む指標です。売上高には、一時的なプロジェクト収益や単発の取引も含まれるため、ビジネスの全体的な規模や市場シェアを把握するのに役立ちます。

しかし、ビジネスの継続性や安定性を評価するにはARRの方が適しています。それぞれ計測する目的が異なる指標のため、適切に使い分けることで、より正確に経営分析ができるでしょう。

ARRの計算方法

ARRの重要性や、その他の指標との違いを理解していただいたことと思います。この章では、実際のARRの計算方法と計算する際の注意点を解説します。

ARRの計算式

ARRの計算式は、以下の通りです。

ARR = MRR × 12


ARRを計算する際には、月間経常収益を示す「MRR」を使用します。MRRの計算方法は、以下の通りです。

MRR = 月額利用料× 該当月のユーザー数


たとえば月額利用料が10万円でユーザー数が10人の場合、MRRは100万円です。この場合、ARRは以下のように計算します。

ARR = 100万円 × 12 = 1,200万円


これにより、年間の継続的な収益を正確に把握できます。ただし、新規のサブスクリプションサービスをローンチした直後はMRRの幅が大きくなるため、計算するタイミングを見極めましょう。

ARRを計算する際の注意点

ARRを計算する際は、損益計算書の売上高と同じではない点に注意しましょうプロモーションや一時的な割引による収益は継続的なものではないため、ARRには含まれません。

また基準とする月によって、ARRが大きく変わることにも注意が必要です。繁忙期や季節などによって売上が大きく変わる場合は、適宜MRRを算出する時期を見直しましょう。これらの注意点を踏まえ、ARRをより正確に計算し、ビジネスの現状を正しく評価しましょう。

SaaSビジネスでARRを最大化するための具体的な戦略

SaaSビジネスでARRを最大化するためには、以下の3つが重要です。

  • 新規顧客の獲得数を増やす
  • 解約率を改善する
  • アップセル・クロスセルで既存顧客からの収益を増やす

ARRを最大化することは、SaaSビジネスの成長と持続的な成功に直結します。この章では、ARR最大化のための具体的な戦略を紹介します。

新規顧客の獲得数を増やす

新規顧客の獲得は、ARRを増加させる基本的な方法です。新規顧客を獲得するには、マーケティング施策や営業活動を強化し、潜在顧客へのアプローチを増やす必要があります。具体的には、デジタルマーケティングや広告施策の強化などが挙げられます。

また、ペルソナを明確にし、そのニーズに合わせて新規製品やサービスの開発をすることも重要です。ほかにも、無料トライアルやデモの提供、紹介プログラムの導入など、消費者がサービスを利用しやすい環境を整えるのもポイントです。

解約率を改善する

SaaSビジネスにおいて、サービスの解約はARRを減少させる大きな要因です。そのため、ARRを最大化させるためには解約率の改善にも取り組みましょう。

解約率(チャーンレート)を改善するには、サービスの質を高め、顧客満足度を向上させる必要があります。具体的には、顧客のフィードバックを積極的に収集し、サービス改善に活かしましょう。また、アフターフォローの体制を整備して、顧客の悩みや課題を迅速に解決することも重要です。

アップセル・クロスセルで既存顧客からの収益を増やす

既存顧客に対するアップセルやクロスセルは、ARRを効率的に増加させる戦略の一つです。顧客の利用状況やニーズを分析し、適したタイミングで顧客に必要なサービスを提案しましょう。

たとえば、顧客が現在のプランの機能をフルに活用している場合、クラウドストレージの上限アップなどの提案をすればアップグレードをしてもらえる可能性があります。

また、すでに自社サービスを利用しているユーザーは、関連サービスや製品にも興味を示しやすいため、クロスセルで収益拡大を図りましょう。

【2024年】SaaS上場企業のARRランキングTOP10

ここからは、SaaSビジネスで上場してる企業のARRランキングを解説します。

順位

企業

対象

ARR(億円)

ARR成長率(%/YonY)

1

ラクス

クラウド事業売上

360.0

40.1

2

Sansan

全社

332.7

30.9

3

Appier Group

全社

303

35.0

4

マネーフォワード

グループSaaS ARR

268.4

35.0

5

サイボウズ

クラウド関連事業

262.3

18.5

6

フリー

全社

260.9

26.8

7

インフォマート

全社

141.6

13.6

8

プラスアルファ・コンサルティング

全社

116.8

25.2

9

エス・エム・エス

介護事業者分野(カイポケ)

113.0

24.0

10

弁護士ドットコム

全社

107.6

40.1

参照: Next SaaS Media Primary「【2024年9月更新】上場SaaS KPI公表の全て

それぞれの企業について、詳しく紹介します。

第1位:ラクス

ラクスのトップ画面の画像

出典ラクス

ラクスは中小企業向けのクラウドサービスを提供するリーディングカンパニーです。主力製品には、クラウド型販売管理システム「楽楽販売」や請求書発行システム「楽楽明細」があり、バックオフィス業務の効率化とコスト削減を実現しています。

2024年のARRは360億円に達し、前年同期比で40.1%の成長を遂げました。これはクラウド事業の売が大幅に増加した結果であり、市場での強固な地位を確立しています。

IR情報:ラクス「IRニュース」

第2位:Sansan

Sansanのトップ画面の画像出典:Sansan

Sansanは、クラウド名刺管理サービス「Sansan」と名刺アプリ「Eight」を提供する企業で、法人向け名刺管理サービスでは国内トップシェアを誇ります。

2024年のARRは332.7億円となり、前年同期比で30.9%の成長を記録しました。ビジネスネットワーキングの重要性が増すなか、同社のサービスは企業間コミュニケーションの需要を捉え、堅調な成長を続けています。

IR情報:Sansan「IRニュース」

第3位:Appier Group

appierのトップ画面の画像

出典Appier Group 

Appier GroupはAIテクノロジーを活用したマーケティング支援を行う企業です。2024年のARRは303億円に達し、前年同期比で35%の成長を達成しました

収集したデータを元に意思決定を行うマーケティング戦略が主流となるなか、同社の高度なAIソリューションが市場から高い評価を受けています。

IR情報:Appier Group「IRニュース」

第4位:マネーフォワード

マネーフォワードのトップ画面の画像

出典マネーフォワード

マネーフォワードは、個人向け家計簿アプリ「マネーフォワード ME」や法人向けクラウド会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計」を提供しています。

2024年のグループSaaS ARRは268.4億円で、前年同期比35%の成長を実現しました。幅広い金融サービスを提供することで、個人と法人の両方で強固な収益基盤を築いています。

IR情報:マネーフォワード「IRニュース」

第5位:サイボウズ

サイボウズのトップ画面の画像

出典サイボウズ

サイボウズは、グループウェア「サイボウズ Office」や業務アプリ作成プラットフォーム「kintone」を提供する企業で、チームワークの促進と業務効率化を支援しています。

2024年のクラウド関連事業のARRは262.3億円となり、前年同期比18.5%の成長を遂げました。リモートワークが普及したことで、同社のクラウドサービスへの需要が高まっていると考えられます。

IR情報:サイボウズ「IRニュース」

第6位:フリー

フリーのトップ画面の画像

出典フリー

フリーはクラウド会計ソフト「freee会計」を主力に、中小企業や個人事業主向けのバックオフィス業務を効率化するサービスを提供しています。

2024年のARRは260.9億円で、前年同期比26.8%の成長を記録しました。簡単で使いやすい会計ソフトが評価されており、多くのユーザーを獲得しています。

IR情報:フリー「IRニュース」

第7位:インフォマート

インフォマートのトップ画面の画像

出典インフォマート

インフォマートは、企業間取引を効率化するプラットフォーム「BtoBプラットフォーム 規格書」を提供しています。

2024年のARRは141.6億円で、前年同期比13.6%の成長を遂げました。特に食品業界を中心に、受発注業務の効率化や取引の透明性向上を支援し、安定した成長を続けています。

IR情報:インフォマート「IRニュース」

第8位:プラスアルファ・コンサルティング

プラスアルファコンサルティングのトップ画面の画像

出典プラスアルファ・コンサルティング

プラスアルファ・コンサルティングは「Talent Tech(タレントテック)」分野で人材育成や組織開発を支援するクラウドサービスを提供しています。

2024年のARRは116.8億円で、前年同期比25.2%の成長を達成しました。人材管理の重要性が増すなか、同社のサービスは多くの企業から支持を得ています。

IR情報:プラスアルファ・コンサルティング「IRニュース」

第9位:エス・エム・エス

エスエムエスのトップ画面の画像

出典エス・エム・エス

エス・エム・エスは、介護・医療・ヘルスケア分野に特化したICTサービスを提供する企業で、介護事業者向け経営支援システム「カイポケ」などを展開しています。

2024年の介護事業者分野(カイポケ)のARRは113億円で、前年同期比24%の成長を遂げました。高齢化社会の進展に伴い、同社のサービスの需要がさらに高まっています。

IR情報:エス・エム・エス「IRニュース」

第10位:弁護士ドットコム

弁護士ドットコムのトップ画面の画像

出典弁護士ドットコム

弁護士ドットコムは法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」を運営し、電子契約サービス「クラウドサイン」を提供しています。

2024年のARRは107.6億円で、前年同期比40.1%の高い成長率を記録しました。デジタル化の進展と法的手続きのオンライン化が同社のビジネスを後押ししています。

IR情報:弁護士ドットコム「IRニュース」

まとめ:ARRを最大化してSaaSビジネスの成長を加速させよう

ARR(年間経常収益)は、SaaSビジネスにおける成長と安定性を示す重要な指標の一つです。ARRを効果的に活用することで、ビジネスの成長率を正確に把握し、事業計画や収支予測の精度を高められます。

また、ARRは投資家からの評価にも影響があり、資金調達や市場での競争力強化にもつながります。ARRを着実に増加させるには、新規顧客の獲得、解約率の改善、アップセル・クロスセルの活用など、具体的な戦略を組み合わせることが重要です。

今後の市場競争で勝ち抜くために、最新の業界動向や技術革新を取り入れ、自社のサービスやビジネスモデルを最適化しましょう。

SEデザインでは、ARRの最大化をはじめとする企業の成長戦略策定の取り組みを全力でサポートします。ぜひ弊社のコンサルティングサービスをご活用いただき、SaaSビジネスの成長を加速させましょう。

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