Azure OpenAI Serviceとは?OpenAIとの違いや特徴・メリットなどを解説
更新日:2024-09-30 公開日:2024-01-11 by SEデザイン編集部
2023年1月からAzure OpenAI Serviceの一般提供が開始されました。Azure OpenAI Serviceは、ChatGPTなどの各種AIツールをMicrosoft Azure上で利用できる法人向けサービスです。今回は、Azure OpenAI Serviceの概要や特徴、料金、活用例などを解説します。
Azure OpenAI Serviceとは?
はじめに、Azure OpenAI Serviceの概要やOpenAI APIとの違いについて解説します。
Azure OpenAI Serviceの概要
Azure OpenAI Serviceは、ChatGPTなどの各種AIツールをMicrosoft Azure上で利用できる法人向けサービスで、Microsoft社が2023年1月に一般提供を開始しました。Azure(アジュール)とは、Microsoft社が提供しているクラウドコンピューティングサービスであり、AWSやGoogle Cloudなどと並んで代表的なクラウド上のプラットフォームです。
Azure OpenAI Serviceは、セキュリティーが高いことから企業や自治体などの組織から注目を集めています。なお、Azure OpenAI Serviceで使用できるメールアドレスは法人限定であり、個人利用はできません。
OpenAI APIとの違い
Azure OpenAI ServiceとOpenAI APIのおもな違いは下表のとおりです。Azure OpenAI ServiceはMicrosoftとOpenAIで共同開発されているため、精度において両者に大きな差はありません。
Azure OpenAI Service | OpenAI API | |
入力したデータ | AI学習に使用されない | AI学習に使用される可能性がある |
有償サポート | あり | なし |
検索履歴の分析・管理 | 可能 | 不可 |
接続方法 | インターネット接続に加えて、プライベート環境での接続も可能 | インターネット接続のみ |
セキュリティー基準 | Microsoft Azureのセキュリティー基準に準拠 | OpenAIのセキュリティー基準に準拠 |
SLA(サービス品質保証) | あり | なし |
Azure OpenAI Serviceの特徴・メリット
続いて、Azure OpenAI Serviceの特徴・メリットについて解説します。おもな特徴・メリットは以下のとおりです。
- 強固なセキュリティー環境で利用できる
- 社内の業務全般に活用しやすい
- 可用性が高い
- さまざまなAIモデルを利用できる
- 柔軟な容量の変更やスムーズな導入ができる
- サポートが充実している
- グローバルに展開しやすい
強固なセキュリティー環境で利用できる
Azure OpenAI Serviceの特徴・メリットの一つは、強固なセキュリティー環境でOpenAIのモデルを利用できる点です。データの暗号化やID管理、アクセス制御・監視、ネットワークのセキュリティー保護、リスクの早期検知など、Microsoft Azureの各種セキュリティー機能を利用できます。
また、通常のインターネット経由での接続だけでなく、Azure VNetを経由したプライベート環境での接続も可能です。
高度なセキュリティー環境で機密情報を保護できるため、セキュリティーポリシーの厳格な企業からも採用されやすいサービスであるといえます。
社内の業務全般に活用しやすい
Azure OpenAI Serviceは、社内の業務全般に活用しやすい点もメリットです。Azure OpenAI Serviceを使えば、WordやExcel、PDF、SQLデータベースなどからデータの検索・参照ができます。
日常業務でWordやExcel、PDFを利用する企業は多いため、Azure OpenAI Serviceによってスムーズな情報の収集・活用ができるようになるでしょう。
可用性が高い
Azure OpenAI Serviceは、可用性が高い点もメリットとして挙げられます。具体的には、Microsoftが定めたSLA(サービス品質保証)で99.9%以上の稼働率が保証されています。
稼働率が99.9%を下回った場合は、Microsoft Azureよりクレジットが配布される仕組みとなっており、万が一の際の保証も用意されています。
さまざまなAIモデルを利用できる
Azure OpenAI Serviceを介してさまざまなAIモデルを利用できる点もメリットです。たとえば、Azure OpenAI Serviceで利用可能なモデルは以下が挙げられます。
- GPT-3.5
- GPT-4
- DALL-E
- 埋め込み(Embedding)
- Codex
上記のAIモデルを使うことで、テキストだけでなく画像の自動生成もできるため、幅広い用途で活用できるでしょう。
柔軟な容量の変更やスムーズな導入ができる
Azure OpenAI Serviceはクラウドサービスであることから、アプリケーションやデータベースなどの拡張・縮小を容易に行えます。
また、導入にあたってハードウェアやソフトウェアを調達する必要がありません。そのため、クラウド上でスムーズに導入でき、必要に応じてアプリケーションやデータベースなどの容量を柔軟に変更できます。
サポートが充実している
Azure OpenAI Service では、Microsoft社の専門サポートチームによる手厚いサポートが用意されており、保証内容に応じてサポートプランを選択できます。
また、開発者向けに柔軟なAPIサポートが提供されており、APIを通じてさまざまなアプリケーションにAI機能を統合することが可能です。
グローバルに展開しやすい
Azure OpenAI Serviceのメリットには、グローバル展開のしやすさも挙げられます。Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azureのインフラを利用しており、世界中の国・地域で利用できるサービスです。
そのため、海外に多くの拠点を持つグローバル企業でも、Azure OpenAI Serviceであれば地域の垣根を越えた活用ができるでしょう。
Azure OpenAI Serviceの料金
Azure OpenAI Serviceの料金は、1,000トークン単位の従量課金制となっており、利用するモデルごとに料金の単価が異なります。主要な言語モデルの料金体系は以下のとおりです。
言語モデル | 入力(プロンプト)の料金 ※1,000トークンあたり |
出力(応答)の料金 ※1,000トークンあたり |
GPT-3.5-Turbo (4Kコンテキスト) |
0.0015ドル | 0.002ドル |
GPT-3.5-Turbo (16Kコンテキスト) |
0.003ドル | 0.004ドル |
GPT-4 (8Kコンテキスト) |
0.03ドル | 0.06ドル |
GPT-4 (32Kコンテキスト) |
0.06ドル | 0.12ドル |
また、主要な画像モデルの料金体系は以下のとおりです。
画像モデル | 解像度 | 料金 ※100イメージあたり |
Dall-E-2 | 1024×1024 | 2ドル |
Dall-E-3(標準画質) | 1024×1024 | 4ドル |
Dall-E-3(標準画質) | 1024×1792/1792×1024 | 8ドル |
Dall-E-3(HD画質) | 1024×1024 | 8ドル |
料金体系は変更となる可能性もあるため、最新情報は以下の公式ページよりご確認ください。
参考:Azure OpenAI Service の価格
Azure OpenAI Serviceの活用例
ここでは、Azure OpenAI Serviceの活用例として、以下の項目について説明していきます。
- AIチャットボットの構築
- データ分析によるマーケティング支援
- プログラミングのサポート
- コールセンター業務の改善
AIチャットボットの構築
Azure OpenAI Serviceを活用することで、AIチャットボットを構築できます。社内のデータベースやファイルと連携させることで、AIチャットボットが必要な情報を参照しながら質問に対して的確に回答することが可能です。
これにより、顧客や社内からのよくある質問などに対して自動回答を行うAIチャットボットを構築でき、業務効率化を実現できるでしょう。また、AIチャットボットを使えば、質問への回答だけでなく文章の要約や議事録の作成なども可能です。
データ分析によるマーケティング支援
Azure OpenAI Serviceの活用例として、データ分析によるマーケティング支援も挙げられます。たとえば、顧客データや売上データなどをAzure OpenAI Serviceにインプットすることで、各顧客の購買動向や商品ごとの顧客層などを分析することが可能です。
Microsoft Azureの強固なセキュリティー環境を利用できるため、顧客データなどの機密情報の保護にも優れています。
プログラミングのサポート
Azure OpenAI Serviceを使えば、プログラミングのサポートやノーコードツールとしても活用できます。文章でプロンプトを入力するだけでAIがプログラムコードを記述してくれるため、プログラミング経験が乏しくても簡単にコードの記述が可能です。
プログラマーにとっても、Azure OpenAI Serviceを活用することでコーディング作業の効率化を図れるでしょう。
コールセンター業務の改善
Azure OpenAI Serviceは、コールセンター業務にも活用できます。たとえば、顧客からの問い合わせ内容や通話ログを分析し、多く寄せられる問い合わせを可視化しておくことで、対応スピードの向上を実現できます。
また、これまでの問い合わせ履歴やレビュー情報を分析して重要な情報をWebサイトなどに掲載しておくことで、問い合わせ数の減少を図ることも可能です。
Azure OpenAI Serviceの導入方法
Azure OpenAI Serviceを導入する際は、以下の手順に沿って進めます。
- Azureサブスクリプションの作成
- Azure OpenAI Serviceへのアクセス申請・GPT-4の利用申請
- リソース作成およびモデルのデプロイ
- Azure OpenAI Serviceの利用開始
1. Azureサブスクリプションの作成
はじめに、MicrosoftアカウントとMicrosoft Azureサブスクリプションの2つの作成が必要です。Microsoft Azureサブスクリプションは、Microsoft Azureを利用するために必要な契約であり、契約内容やサポートプランに応じて自社に合ったものを選択します。
2. Azure OpenAI Serviceへのアクセス申請・GPT-4の利用申請
続いてAzure OpenAI Serviceへのアクセス申請を行います。申請フォームの画面上でAzureサブスクリプションIDやメールアドレス、会社の所在地などの必要事項を入力して送信します。また、GPT-4を利用する場合は、GPT-4の利用申請も必要です。
申請後、Microsoft社にて審査が行われ、問題なければ承認メールが届きます。
3. リソース作成およびモデルのデプロイ
申請が承認された後は、Azureポータルにログインし、Azure OpenAI用のリソースを作成します。また、利用したいモデルを選択してデプロイします。前述の手順でGPT-4の利用申請を行っている場合は、GPT-4のデプロイも可能です。
4. Azure OpenAI Serviceの利用開始
利用したいモデルのデプロイまでできたら、Azure OpenAI StudioやWeb API経由でモデルを利用できるようになります。Azure OpenAI Studioとは、Azure OpenAI Service用のWebベースの開発環境であり、専用の画面上で直感的な操作が可能です。
Azure OpenAI Serviceを活用して高度なセキュリティー環境下でAIを利用しよう
Azure OpenAI Serviceは、ChatGPTなどの各種AIツールをMicrosoft Azure上で利用できる法人向けサービスです。Microsoft Azureの強固なセキュリティー環境のなかでさまざまなAIモデルを利用できることが大きな特徴です。
Azure OpenAI Serviceの活用例としては、AIチャットボットの構築やデータ分析によるマーケティング支援、プログラミングのサポート、コールセンター業務の改善などが挙げられます。
強固なセキュリティー環境で機密情報を保護しながらAIモデルを業務に活用していきたい企業にとっては、Azure OpenAI Serviceは有力なサービスとなるでしょう。
AI技術はこれからさらに発展していくと予測されているので、早い段階で基本的な活用方法を取り入れておくことが大切です。SEデザインでは、IT分野におけるBtoBマーケティング&セールス支援を行っており、35年以上の実績がございます。業務の効率化や顧客へのアプローチでお困りの際は、お気軽にSEデザインへご相談ください。