効果的な売上拡大戦略を策定するためには、「集客」「マーケティング」の違いを正しく認識したうえで、適切なプランを立てなければなりません。本記事では、BtoB企業のマーケター視点で、「集客 vs マーケティング」の定義の違いについて整理し、効果的な施策の進め方を解説します。
集客とマーケティングの違いとは?
まずはじめに、集客とマーケティングそれぞれの定義について説明します。
集客とは
集客とは、その名のとおり顧客を集める施策です。一概に「顧客」と言っても、以下のように、自社製品やサービスの利用有無・頻度によってさまざまなレイヤーに分類されます。
- VIP顧客
- 新規顧客
- 見込み顧客
- 潜在顧客
- 休眠顧客
集客を行う際には、上記の各顧客層に合わせて異なるアプローチを行う必要があります。たとえば「友達紹介キャンペーン」はVIP顧客には効果があるかもしれません。しかし、プロダクトに対する関心の薄い休眠顧客に実施したとしても、望んだ成果は得られないでしょう。
このように、集客ではそれぞれの顧客層に合わせたアプローチを実施する必要があります。
マーケティングとは
対して、マーケティングとは市場調査から商品開発、販売戦略までを含む、売上拡大につながるあらゆる活動です。マーケティングについて、コトラー&ケラー共著の『マーケティング・マネジメント基本編 第3版』(2014,丸善出版)では、以下のように定義されています。
マーケティングとは人間や社会のニーズを見極めてそれに応えること
つまり、市場のニーズを起点にして、価値提供を行っていく取り組みとも捉えられるでしょう。市場調査や商品開発までの狭い範囲をマーケティング定義しているケースも見受けられますが、実際は販売戦略までを含む、一連の全てのプロセスが含まれます。
販売戦略は、新規顧客の獲得のみならず、顧客のリピート率を上昇させることで自社の売り上げを盤石化する施策も含みます。
集客はマーケティングプロセスの一部
マーケティングは、市場調査から商品開発、集客、顧客関係管理、アフターフォローまでを含む包括的な活動です。その中で、集客はマーケティングの重要な一部を担っています。
集客とは、単に人を集めることではなく、ターゲットとする顧客に的確に情報を届け、自社の製品やサービスに興味を持ってもらうプロセスです。これは、マーケティング全体の中で、顧客との接点を作り出す重要な役割を果たします。
近年、特にBtoB分野では、集客の役割が伝統的な営業からマーケティング部門へとシフトしています。Salesforce社が提唱し、福田康隆氏の著作で日本に紹介された分業制モデルでは、「マーケティング→インサイドセールス→営業」という流れで顧客獲得プロセスを分担します。
この変化の背景には、顧客の購買行動の変化があります。情報過多の時代において、顧客とのエンゲージメントを重視した戦略的な集客がますます重要になっています。効果的な集客は、優れた製品やサービスの価値を顧客に伝え、ビジネスの成功に直結する重要な要素となっているのです。
マーケティング戦略の構築が、集客のポイント!
効果的な集客を実現するためには、戦略的なアプローチが不可欠です。以下の4つのポイントを押さえることで、より効果的な集客活動を展開できるでしょう。
- 明確な目的とターゲット設定
- 適切なゴールの設定
- 適切な集客方法の選択と実行
- PDCAサイクルによる継続的改善
1.明確な目的とターゲット設定
集客活動の第一歩は、明確な目的とターゲットの設定です。ターゲットを明確にしたうえで、「ペルソナ設計」を行いましょう。
目的の明確化
新規顧客の獲得なのか、既存顧客のリピート率向上なのか、具体的な目標を定めます。短期的な成果を求めるのか、長期的なブランド構築を目指すのかを考慮して決めましょう。
ターゲット設定とペルソナ設計
ターゲットを設定する際には、「VIP顧客」「新規顧客」「見込み客(または潜在顧客)」「休眠顧客」の誰にするのかも、あらかじめ決定しておかなければなりません。その後、自社がアプローチするユーザーを具体的にイメージし、「理想的な人物像」を定義化するペルソナ設計を実施します。
BtoBにおける「顧客」は個人のみならず、業界や業界に属する企業、企業内の部門なども含まれます。そのため、ペルソナの設計について自社で議論する際には、まずは「自社におけるペルソナの定義」を定めておく必要があります。
なお、ペルソナ設計の方法については下記の記事でも解説していますので、あわせてご参照ください。
2.適切なゴールの設定
目的とターゲットが明確になったら、具体的な評価指標を定めます。「新規顧客を増やし続ける」のと「リピーターを獲得する」のとでは、求められるアプローチが大きく異なります。
KGIとKPIの設定
マーケティングプロセス全体の最終目標は「KGI」、KGI達成までのステップである“小さなゴール”は「KPI」と表現されます。BtoBの集客におけるKPIには、リード獲得数、商談化率、顧客満足度などがあります。具体的に設定しましょう。
部門間での認識合わせ
前述の分業制を採用している場合、マーケティングが掘り起こした新規リードはインサイドセールス営業にパスすることになります。
その際、「どういう条件のリードを、どのくらい獲得するのか」といった形で、マーケティング側と営業側で、KPIの定義や目標値を共有・合意しておきましょう。
3.適切な集客方法の選択と実行
ターゲットとゴールに基づいて、最適な集客方法を選択します。
ターゲットがシニア層で、集客施策はオンライン中心に行う、などは極端な例ですが、ターゲットに合わせたチャネルを活用しましょう。
4.PDCAサイクルによる継続的改善
集客を行う際にも、集客はPDCAサイクルを回し顧客の反応を見ながら柔軟に対応することが重要です。PDCAサイクルとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取ったマネジメント手法で、施策の検証から改善までを理解するのに役立ちます。
PDCAサイクルを集客施策にあてはめると、以下のように分解可能です。
- Plan(計画)…集客のターゲットとゴール設定
- Do(実行)…仮説に基づいて実際に集客施策を実施
- Check(評価)…ゴールに対しての成果を振り返り、分析する
- Action(改善)…Checkの結果に対しての改善策を立案し、次のサイクルに活かす
集客の施策を実施するのであれば、事前に仮説を作り、小さくテストすることで、リスクを最小限に抑えられます。
以上の4つのポイントを押さえることで、より戦略的で効果的な集客活動を展開できるでしょう。常に顧客のニーズと市場の変化に注目しながら、柔軟に戦略を調整していくことが成功へのカギとなります。
BtoBマーケティングで集客の起点となるチャネルの種類
BtoBマーケティングは、BtoCとは異なり商品単価が高く、顧客との商談サイクルも長くなりやすい傾向があります。そのようなBtoBのマーケティングプロセスで集客を行う際には、次のようなアプローチが有効です。
- リード獲得からの新規営業
- SEO対策による自然流入増
- SNS運用
- デジタル広告
- オフライン広告
以下よりそれぞれについて解説します。
リード獲得からの新規営業
BtoBでは訪問営業(フィールドセールス)やウェビナー、エキスポ、Ebook、メールマガジン、オウンドメディアなどにより、自社起点で新規顧客との接点構築を図るのがメジャーな手法です。
ほかの集客チャネルすべてにいえますが、昨今は顧客も多くの情報に晒されているため、各アプローチは自社のペルソナ設計に即した、質の高いものでなければなりません。
このことについて、前述した『THE MODEL』では、以下のように述べられています。
優れた顧客体験は、価格や商品そのもののよりも重要な意思決定の基準になっているのだ
それを踏まえると、ただ数を獲得するだけの集客ではなく、「どのような層に、どのようにアプローチするのか」を定義したうえで、顧客が求める情報発信をベースにしたリードとの接点構築をしなければならないといえます。
SEO対策による自然流入増
SEOの実施による、自然(オーガニック)検索経由での集客増を図る手法も多くの企業が取り組んでいます。
主流な方法としては、オウンドメディアにおける記事公開を行う「コンテンツSEO」などがあります。オウンドメディア上で公開した記事や情報は、自社が削除しない限り残り続ける「ストック型の資産」となります。
ただし、BtoBにおけるSEOは「対策キーワードの検索ボリュームが少なく、そもそも検索されていない」という状況もたびたび発生します。そのため、オーガニック経由での流入だけでなく、後述するSNSも組み合わせた「オムニチャネル」の取り組みが大切です。
SNS運用
TwitterやFacebook、インスタグラムなどのSNSを運用して、顧客との接点構築を狙う集客手法です。SNS運用では、一方的な情報発信だけでなく顧客とのコミュニケーションによるリレーションの深化も期待できます。
おもにBtoCの施策と思われがちですが、BtoBにおいても自社商材の魅力やブランドイメージを発信し続ける取り組みの一つとしておすすめです。
デジタル広告
検索広告やディスプレイ広告、SNS広告などから、自社サイトへのアクセスを促す集客手段です。予算コントロールにより必要最低限の費用で、効果計測までできるため、予算はかかるものの短期的な成果が期待できます。
オフライン広告
テレビやラジオ、新聞、雑誌、看板、サイネージなど、オフラインの広告媒体に出稿することで集客を図る方法です。アナログ媒体はデータを集めにくいため、デジタル広告と比べ費用対効果として測定しづらいものの、顧客層次第ではデジタル広告よりも効果的な可能性があります。
たとえば、高齢世代のようにインターネット検索をあまり活用しない層にアプローチする場合は、優先的に検討されるでしょう。
効果的な集客方法:オンラインとオフラインのアプローチ
ビジネスの成功には適切な集客が不可欠です。現代では、オンラインとオフラインの両方のチャネルを活用することが重要です。それぞれの特徴と主な方法を見ていきましょう。
オンラインの集客方法
インターネットを活用した集客は、幅広いターゲットへのリーチと効果測定の容易さが特徴です。
SEO(検索エンジン最適化)
検索エンジンで上位表示を目指し、オーガニック流入を増やします。コンテンツマーケティングと組み合わせて効果的に実施しましょう。
SNSマーケティング
Twitter、Instagram、LinkedInなどを活用できます。ユーザーとの直接的なコミュニケーションが可能です。
オンライン広告
リスティング広告やディスプレイ広告を実施しましょう。リスティング広告とは検索結果に表示される広告、ディスプレイ広告とはWebサイトやアプリに表示される広告です。
メールマーケティング
メールマガジンやニュースレターを通じた情報提供を指します。パーソナライズされたコミュニケーションが可能です。
MEO
MEOとは、マップエンジン最適化のことです。Googleマップなどの地図サービスでの表示順位を改善することは、地域密着型ビジネスに特に有効です。
オフラインの集客方法
直接的なコミュニケーションや実体験を重視する集客方法です。
イベント・セミナー開催
対面での信頼関係構築に効果的です。製品やサービスをデモンストレーションで紹介することも可能です。
チラシ・DM配布
視覚的な訴求力が高く、地域を絞った集客に有効です。
テレビ・ラジオCM
大規模な認知度向上に効果的で、ブランドイメージの構築に役立つでしょう。
屋外広告
ポスターや看板、交通広告などを指します。地域に密着した集客に有効です。
テレマーケティング
直接的なコミュニケーションによる説得力があります。即時的なフィードバックが得られる点もメリットです。
オンラインとオフラインの統合戦略
オンライン施策とオフライン施策を別々に紹介しましたが、最も効果的な集客は、オンラインとオフラインの方法を組み合わせることです。
たとえば、オフラインイベントの告知をSNSで行ったり、チラシにQRコードを載せてWebサイトへ誘導したりするなど、双方の長所を活かした戦略を立てることが重要です。
ターゲット顧客の特性や自社の強みを考慮し、最適な集客方法を選択・組み合わせることで、効果的なマーケティング活動を展開できるでしょう。
まとめ:集客はマーケティング活動の一部
集客施策は、マーケティングプロセスの一部であり、売上拡大につなげるためには重要な位置を占めます。BtoBにおける集客プランは、BtoCとは異なる部分も多々あるため、それぞれの特徴を考慮する必要があります。
自社でとるべき施策について課題が発生した際には、「自社はどういった顧客にアプローチするべきか」という基本に立ち返りましょう。