「SaaSとクラウドはどちらも似たようなサービスだから正確な違いが分からない」
「SaaSの導入を検討しているが、クラウドとの使い分けがイメージできない」
このようにお悩みの方は多いのではないでしょうか。
SaaSはクラウドに含まれる概念であり、全く異なるものではありません。また、SaaS以外にも「PaaS」や「IaaS」というサービスがあります。しかし、これらの違いや特徴を正しく理解していなければ、導入後にミスマッチが生じる可能性があるため注意が必要です。
本記事では、約40年にわたりクラウドサービス企業のコンテンツマーケティングを支援してきたSEデザインが、SaaSとクラウドの違いやそれぞれの強み、注意点について分かりやすく解説します。
SaaSとクラウドの違い
ここでは、SaaSとクラウドの違いに加え、似たような用語について解説します。SaaSと似たような用語にはPaaS、IaaSなどがあり、混乱する方も多いのではないでしょうか。これらの違いを正しく理解し、使い分けることを意識すれば、自社に最適なツールを選択しやすくなるでしょう。
SaaS(サーズ・サース)とは?
SaaS(サーズ・サース)とは「Software as a Service」の略称です。インターネットを通じてソフトウェアを利用できるサービスを指します。PCにソフトウェアをインストールする必要がなく、ブラウザさえあればどこからでも使用可能です。
有名なサービスとして、ビジネスで活用されている「Google Workspace」や「Microsoft 365」などが挙げられます。また、普段何気なく利用しているSNSやECサイトなどの多くもSaaSに分類されます。
SaaSは、サーバーやミドルウェア、ネットワークなどのインフラ構築が不要で、必要な機能をすぐに利用できる点が特徴です。料金体系は、月額や年額といった期間単位か利用量に応じた従量課金制が多く採用されています。
無料プランを提供しているサービスもあるものの、その場合は機能制限や広告表示があるケースが一般的です。
クラウドとは?
クラウドとは「クラウドコンピューティング」の略称です。インターネット経由でアプリやデータを利用・保存・管理できる仕組みを指します。クラウド上で提供されるあらゆるサービスは「クラウドサービス」と呼ばれ、利用期間やデータ量に応じて料金を支払います。
パソコンやスマートフォン、タブレットなどインターネットに接続できる環境があれば、時間や場所を問わずサービスを利用できる点が特徴です。
クラウドは大きく「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の2種類に分類されます。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
項目 |
パブリッククラウド |
プライベートクラウド |
利用対象 |
企業・個人問わず誰でも利用可能 |
特定の企業・組織のみ利用可能 |
初期コスト |
低い(すぐに利用開始可能) |
高い(環境構築が必要) |
利用料金 |
比較的安価 |
比較的高価 |
セキュリティー |
標準的 |
強固 |
カスタマイズ性 |
限定的 |
高い(独自の環境構築が可能) |
両者は正反対の特徴を持つため、自社の規模や予算、セキュリティーなどを考慮し、より現状に適したサービスを選択しましょう。
SaaSとクラウドの違い
クラウドは「インターネットを通じてアプリケーションやデータを利用する仕組み全般」を意味します。対して、SaaSは「クラウド上でソフトウェアを提供するサービス」を意味する言葉です。つまり、SaaSはクラウドに含まれる概念です。
なお、クラウドサービスにはSaaSのほかにも「PaaS」や「IaaS」といったサービス形態が存在します。これらの違いは次の項目で詳しく解説します。
SaaSとPaaS(パース)・IaaS(イアース)の違い
クラウドサービスにはSaaSのほかに「PaaS(パース)」と「IaaS(イアース)」という提供形態があります。
PaaSは「Platform as a Service」の略で、ソフトウェア開発に必要なプラットフォームを提供するサービスです。一方、IaaSは「Infrastructure as a Service」を略した用語で、サーバーやストレージなどのインフラを提供するサービスを指します。それぞれの特徴をまとめた比較表は以下のとおりです。
自社独自のアプリを開発・運用したい場合は、カスタマイズ性の高いPaaSやIaaSが適しています。一方、すぐにサービスを利用したい場合や社内に専門知識を持つエンジニアがいない場合は、開発の必要がないSaaSがおすすめです。
SaaSの3つの強み
SaaSには、次の3つのメリットがあります。
- インターネット上のどこからでも利用できる
- 常に最新状態で利用できる
- コストを最小限に抑えられる
それぞれの特徴を詳しく解説します。
強み1.インターネット上のどこからでも利用できる
SaaSはインターネット環境さえあれば、パソコンやスマートフォン、タブレットといったあらゆる端末からアクセスできます。そのため、オフィスだけでなく、自宅でのリモートワークや外出先でも、普段と変わらない環境で業務を進められます。
また、クラウド上でデータを保存・共有できるため、複数人での同時作業も可能です。
強み2.常に最新状態で利用できる
SaaSでは、提供事業者が定期的なアップデートやメンテナンス作業を行うため、常に最新の機能を利用できます。システム更新のための専門知識や作業時間を確保する必要もありません。
また、セキュリティー対策も事業者側が一括管理します。セキュリティーパッチの適用やウイルス対策など、システムを安全な状態に保つための作業を自社で行う必要もありません。そのため、運用保守の手間やコストを大幅に削減できます。
とくに、社内にIT担当者が少ない企業には、大きなメリットだといえるでしょう。
強み3.コストを最小限に抑えられる
SaaSを活用する場合、自社でのソフトウェア開発やインフラ構築が不要となるため、初期費用を大幅に節約できます。また、運用・保守を担当する人材やツールを自社で用意する必要もないため、運用コストの削減も可能です。
料金体系は従量課金制を採用しているサービスが多く、利用した分のみの支払いで済みます。現状で必要な機能のみを選んでスモールスタートができるため、後から機能を拡張・縮小することも可能です。
たとえば、繁忙期は機能を拡張し、オフシーズンは縮小するなど、ビジネスの状況に応じて柔軟に調整できます。
SaaSの3つの注意点
SaaSは便利なサービスですが、ユーザー側でカスタマイズできない点やデータ保管をサービス提供に委ねることになるといった注意点があります。ここでは、SaaSの主な注意点と安全に活用するためのポイントについてみていきましょう。
注意点1.ユーザー側ではカスタマイズできない
SaaSは提供される機能やインターフェースがあらかじめ決まっており、ユーザー側でカスタマイズできる余地は多くありません。
そのため、ビジネスプロセスが独特な企業や、専門的な機能が必要な業界では、SaaSの標準機能だけでは対応が難しい可能性があります。
その場合は、社内の業務フローをSaaSに合わせて変更するか、カスタマイズが可能なPaaSやIaaSの導入を検討する必要があります。
注意点2.データをプロバイダー側で保管する必要がある
SaaSでは、データは提供事業者のサーバーで保管され、ユーザー自身では管理できません。信頼できる事業者であっても、データの保護とセキュリティー対策を外部に委ねることになります。
従って、機密性の高い情報や法的な保護が必要なデータを扱う場合は、導入を慎重に検討しましょう。
注意点3.システムの中身が見えにくい
SaaSのシステム仕様やプログラムコードは公開されておらず、システムの内部構造は把握できません。そのため、次のような場合はシステムの導入が難しいといえるでしょう。
- システムの挙動やパフォーマンスの詳細な確認が必要
- 障害発生時の原因特定を自社で行う
とくに、法規制やコンプライアンスが厳しい業界では、システムの機密性や正確性を担保する必要があるため、SaaSの採用は慎重に検討する必要があります。
SaaSの活用により実現できること
SaaSの活用によって、事業活動の効率を飛躍的に向上させられる可能性があります。ここでは、SaaSの導入により実現できる未来の具体例について見ていきましょう。
コミュニケーションの円滑化
たとえばSaaSのビジネスチャットを活用することで、社内のコミュニケーションをより柔軟に取れるようになります。メールと比べてカジュアルなやり取りが可能であり、ファイル共有やデータのやり取りも簡単に行えます。
また、グループウェアには掲示板機能や社内SNS機能が備わっており、部門を超えた情報共有や意見交換が容易になります。これにより、社員間のコミュニケーションがより円滑になり、チームワークの向上にもつながるでしょう。
プロジェクト管理の一元化
SaaSのプロジェクト管理ツールを使用すれば、タスクの進捗状況やコストなどを一元管理できるようになります。プロジェクトの工程やスケジュールが可視化され、メンバー間での最新情報の共有もしやすくなるため、属性化に起因するプロジェクトの遅延や頓挫を防ぐことが可能です。
また、ERPシステムの導入により、販売管理や在庫管理なども統合的に行えます。経営資源の適切な配分が可能になり、プロジェクトに必要なリソースも迅速に調整できるでしょう
マーケティングの効率化
CRMとSFAを組み合わせると、顧客情報を一元管理しつつ、マーケティングから営業、カスタマーサポートまでの一連の業務を効率化できます。顧客対応の履歴や営業活動の進捗状況が可視化されるため、ベストなタイミングでの顧客フォローも可能です。
また、MA(マーケティングオートメーション)を活用すれば、顧客の属性や行動に合わせた営業アプローチを効率的に行えます。これにより、リードナーチャリングから営業部門への送客までの工程をよりスムーズに進められます。
まとめ:SaaSのクラウドとの違いは狭義の概念を指していること
SaaSはクラウドサービスの形態であり、インターネット経由でソフトウェアを利用できるサービスです。「どこからでも利用できる」「常に最新状態で使える」「コストを抑えられる」という3つの強みがあり、現在では多くの企業で活用されています。
一方で、「カスタマイズの制限」「セキュリティー面の不安」「システムの不透明さ」といった点には注意が必要です。そのため、自社の業務内容や属する業界などに合わせて導入を検討しましょう。
SaaSの導入によって、コミュニケーションの円滑化やプロジェクト管理の一元化、マーケティングの効率化など、多くのビジネス課題を解決できる可能性があります。自社の状況に合ったサービスを選び、効果的に活用することで、業務効率の向上や生産性の改善を実現しやすくなります。
SEデザインでは、CRMやSFA、MA、CMSなどのツールが一体化したSaaS「HubSpot」の導入支援を行っています。HubSpotが日本進出した当初からパートナーとして多くの企業様の導入・活用を支援してまいりました。
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