SaaSでは、継続して収益が見込めるサブスクリプションビジネスのモデルを採用している企業が多く存在します。一言でサブスクリプションビジネスといっても、その業種・業態はさまざまで、正しく理解するためにはその定義や、ビジネスモデルの構造・特性を知ることが必要です。
そこで本記事では、サブスクリプションビジネスの基本知識やメリットとデメリット、ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いなどを詳しく解説します。SaaS企業のセールス部門・マーケティング部門の担当者様は、ぜひ最後までお読みください。
上場企業グループであるSEデザインでは、サブスクリプションビジネスに役立つツール「HubSpot」の導入支援をしています。これからサブスクリプションビジネスの開発・サービス提供に取り組みたい、自社サブスクリプションビジネスの課題を解決したいといった方は、ぜひ一度お問合せください。
サブスクリプションビジネスについて解説
最初に、サブスクリプションビジネスについての基本知識を市場規模が拡大している背景も含めて確認しておきましょう。すでに基本は知っているという方も、その定義や特長を再確認することで、より効果的な施策を検討できます。
サブスクリプションビジネスとは
サブスクリプションビジネスは、顧客が一定期間ごとに定額料金を支払うことで、製品やサービスを利用できるビジネスモデルです。初期費用がかかるサービスでも導入しやすいことや、手軽に使えることから、現在急速に拡大しています。
従来一般的だった買い切り型のサービスや商品と異なり、顧客が利用を続けることで、企業側は継続的で安定した売り上げが見込めます。
サブスクリプションビジネスの市場規模が拡大している背景
近年はインターネットの普及により、消費者は製品やサービスを簡単に比較検討できるようになりました。そのため企業は、より顧客ニーズに合った製品やサービスを提供する必要があり、新製品・サービスの発売サイクルが短くなりました。また消費者も頻繁な買い替えを迫られ、経済的な負担や購買リスクが増えました。
このような状況下で、月額料金など定額で利用できるサブスクリプションサービスが消費者に受け入れられるようになってきたのです。
また、消費の価値観が「モノ消費」から「コト消費」へとシフトしてきました。「コト消費」とは、製品やサービスそのものよりも、それらによって得られる体験に価値を見出す消費行動です。この変化もサブスクリプションの普及を後押ししました。
さらに、ここ数年はコロナ禍の影響で、リモートワークも普及し、自宅で過ごす時間が増えました。この「巣ごもり需要」によって、さまざまな分野でサブスクリプションサービスの利用が拡大したのです。
これらの背景により、サブスクリプションビジネスの市場が拡大しています。
SaaSでサブスクリプションビジネスを導入するメリット
サブスクリプションビジネスを展開していくには、そのビジネスモデルが持つ特性を理解しておく必要があります。ここでは、SaaSでサブスクリプションビジネスを導入するメリットについて、企業側の視点と利用者側の視点の両方から確認しておきましょう。
企業側の視点で見たメリット
企業側は、継続的な収益によって、企業は安定した事業運営が可能になります。そのため、ビジネスの予測も容易になり、資金運営も安定することによって長期的なビジョンをもって経営戦略を立てられ、事業規模拡大を実行できるでしょう。
また、顧客との長期的な関係構築によって、顧客ニーズに応じた柔軟なサービス提供が可能になり、顧客満足度やエンゲージメントが高まることも期待できます。
利用者側の視点で見たメリット
利用者側は、大きな初期コストなく、高品質な製品やサービスを手軽に利用することができます。解約やプラン変更なども可能なので、リスクとコスト負担を抑えられる点もメリットです。
また、最新の機能やバージョンへと定期的にアップデートされるため、使用頻度によっては長期的な運用コストも抑えることが可能です。
SaaSでサブスクリプションビジネスを導入するデメリット
サブスクリプションビジネスにはマイナス面もあります。そこで、SaaSでサブスクリプションビジネスを導入するデメリットについても、企業側の視点と利用者側の視点の両方から確認しておきましょう。
企業側の視点で見たデメリット
サブスクリプションビジネスは、企業側にとって初期投資や顧客維持の運用コストが高い点がデメリットです。システムの構築やマーケティングに多額の初期投資が必要となり、顧客と長期的な関係を築くために、顧客満足度を高める施策を複数実施していく必要があります。
また売り上げが一度に得られるわけではないので、初期段階では収益が不安定で、事業が安定化するまで時間がかかります。競合サービスとの競争が激しい場合が多く、機能や価格で差別化するのが難しい点などもデメリットとして挙げられます。
利用者側の視点で見たデメリット
利用者側には継続的な支払いが必要となるため、ランニングコストがかかる点がデメリットとして挙げられるでしょう。使わない期間や機能にも費用がかかるため、使用頻度によっては、トータルのコストが買い切りのサービスよりも高額になる場合があります。
また、セキュリティーやプライバシーに関するリスクへの懸念や、解約手続きの手間などもデメリットです。
サブスクリプションビジネスのKPI
概要が分かったところで、サブスクリプションビジネスで用いられるKPIについても確認していきましょう。
ほかのビジネスモデルと同様に、さまざまなKPIが用いられますが、ここでは特にBtoB領域のサブスクリプションビジネスで重要になるKPIのなかで、重要なものを紹介します。
MRR
MRRは「Monthly Recurring Revenue」の略で、「月次経常収益」とも呼ばれます。計算式は以下の通りです。
MRRは、毎月継続して得られる収益の総額を示し、サブスクリプションビジネスの成長性や安定性を測定する際に役立つ重要なKPIの一つです。
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ARPU
ARPUは「Average Revenue Per User」の略で、日本語では「顧客平均単価」と呼ばれます。計算式は以下の通りです。
顧客1人あたりの平均売り上げを示すKPIで、サブスクリプションビジネスでよく用いられています。
Churn Rate
Churn Rateは解約率とも呼ばれ、顧客の解約・退会や一部機能の契約解除による減少分を計上するKPIです。「解約MRR」といった名称が使われる場合もあります。計算式は以下になります。
Churn Rateが増加するとMRRが減少するため、サブスクリプションビジネスにおいてのリスク要因となります。
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LTV
LTVとは「Life Time Value」の略で、日本語では「顧客生涯価値」と呼ばれます。ある顧客が、その企業との取引を通じて生涯もたらすであろう収益の総額を示すKPIです。計算式は、以下の通りです。
顧客との長期的な関係を構築する必要があるサブスクリプションビジネスにおいて、この指標はとても重要な意味を持っています。
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CAC
CACとは「Customer Acquisition Cost」の略で、日本語では「顧客獲得費用」と呼ばれます。計算式は、以下の通りです。
CACは、新規顧客1人を獲得するために企業が費やしたコストの平均を示します。ROI(投資収益率)の評価にも役立ち、サブスクリプションビジネスで重要なKPIです。
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ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違い
サブスクリプションビジネスは広い領域で用いられるビジネスモデルなので、個別のケースを見ていくためには、いくつかの区分に分けて分析していくことも必要です。
ここでは、サブスクリプションビジネスの特性をより深く理解するために知っておきたいホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いについて解説します。
ホリゾンタルSaaS
ホリゾンタルSaaS(Horizontal SaaS)とは、業種や業界を問わず幅広い企業で利用できる汎用的なソフトウェアサービスのことを指します。Horizontalとは「水平の」という意味です。日本ではホリゾンタルSaaSの方が一般的です。
BtoB領域ではたとえば、顧客管理(CRM)、営業支援などのサービスやツールが該当します。代表的なツールは、HubSpotやAdobe Creative Cloud、Teams、Slackなどです。
汎用性が高く、営業開拓先が豊富であるというメリットがある一方で、競争の多さがデメリットです。
バーティカルSaaS
バーティカルSaaS(Vertical SaaS)とは、特定の業界や業種に特化したソフトウェアサービスのことを指します。Verticalは「垂直の」という意味です。
BtoB領域では、以下のようなサービスが当てはまります。
- 医療業界向けの電子カルテシステム
- 不動産管理システム
- 飲食店向けプラットフォーム
- 化学業界向け生産・在庫管理・受発注システム
- 農業支援アプリ
代表的なツールとして、エムスリーデジカルやスマレジ、ユビーなどが挙げられるでしょう。
バーティカルSaaSは、業界特有のニーズにマッチしたサービス提供ができるというメリットがあります。一方で、知名度が上げづらい点がデメリットといえます。
サブスクリプションビジネスの成功戦略に必要な4要素
サブスクリプションビジネスを展開していきたい場合、事前にしっかりとした成長戦略を描いておく必要があります。ここでは、成長戦略に必要な要素を4つのカテゴリーに分けて解説します。
顧客体験の向上
顧客に継続してサブスクリプションサービスを利用してもらうためには、顧客体験の向上などにより顧客満足度を高めていく必要があります。顧客体験を向上させるためには、以下のような施策が重要です。
- 顧客の課題を解決するサービス提供
- 顧客ロイヤルティーの数値化および分析
- 顧客同士が交流できるコミュニティーの形成
- サポート体制の強化 など
上記のような施策に力を入れ、顧客満足度を向上させていきましょう。
価格設定
サブスクリプションサービスの価格設定は、新規顧客獲得や収益の最大化に大きく影響します。そのため、以下のような施策が成長戦略として重要です。
- 透明性の高い価格提示
- 多様なプラン設計
- 割引キャンペーン
- トライアル期間の設置 など
価格設定によっては解約率が高まり、顧客満足度の低下につながってしまいます。企業側の収益の部分だけを考慮していると予測を見誤る可能性があるため注意が必要です。
マーケティング
サブスクリプションサービスでは、既存顧客の維持と同時に、新規顧客の獲得にも力を入れる必要があります。具体的なマーケティング戦略は、以下の通りです。
- オウンドメディアなどによるコンテンツマーケティング
- SNSマーケティング
- イベントやセミナーの実施 など
顧客満足度を高めて既存顧客を維持しつつ、新規顧客獲得にも力を入れていきましょう。
競合との差別化
競合サービスと差別化し、自社のサービスの魅力を効果的にアピールしていくことも、成長戦略として重要です。具体的には、以下のような施策で差別化を行っていきましょう。
- 独自のコンテンツを提供する
- ブランドイメージを確立する
- バーティカルSaaSのように特定のジャンルに特化する
- 関連企業と連携を強化し、パートナシップを構築することで新たな価値を提供する など
競合と差別化している点を顧客にアピールできれば、長期的なサービス利用につながるでしょう。
サブスクリプションに成功したSaaSの事例
最後に、サブスクリプションビジネスの成功事例について紹介します。ここでは、国内でも人気の高いBtoB向けのSaaSを中心に事例をピックアップして解説します。
成功事例を参考にすることで、自社のサブスクリプションビジネスをどのように展開していけばよいかイメージを膨らませましょう。
HubSpot
出典:HubSpot
HubSpotは、マーケティングオートメーション(MA)を中核に、顧客管理や営業管理などの支援ツールを提供するBtoB向けホリゾンタルSaaSです。マーケティング、セールス、カスタマーサービスなど、顧客との関係を一括管理できる点が大きな強みとなっているサブスクリプションサービスです。
顧客のニーズに合ったサービス機能を提供し続けており、カスタマーサクセスチームによる積極的なサポートによって高い顧客満足度を維持しています。加えて、無料トライアルや無料プランを提供することで新規の顧客も継続して獲得しています。
SmartHR
出典:SmartHR
SmartHRは、人事・労務管理に特化したBtoB向けSaaSです。
日本国内の複雑な人事・労務を支援するツールの先駆的な存在で、多くの企業で採用されています。シンプルで使いやすいUI/UXは、ユーザーからの評価も高く、顧客ニーズに合わせた機能追加やパーソナライズで高い顧客満足度を維持しています。
freee
出典:freee
freeeは、会計・税務・人事などの業務管理に特化した中小企業・個人事業主向けのSaaSです。業種に特化したサービスですが、バックヤード業務全般は、多くの中小企業に共通する部門なのでホリゾンタルSaaSとしての一面も有しています。
中小企業の課題に深くコミットし、無料トライアルや低価格プランを提供することで導入しやすいサブスクリプションサービスになっています。
Adobe Creative Cloud
Adobe Creative Cloudは、Adobeのクリエイティブツールを月額課金制のサブスクリプションで提供しているサービスです。クリエイティブ業種に特化したバーティカルSaaSと、多くの企業で導入されているデザインツールのホリゾンタルSaaSとしての側面も併せ持っています。
また、フリーランスのクリエイターなど個人向けたサービスでもあります。常に最新の機能をアップデートし、コンテンツ制作に必要な高機能なクリエイティブツールを集約することで高い顧客満足度を維持しています。
まとめ:サブスクリプションビジネスの特徴を理解して成功へ導こう
サブスクリプションビジネスには、知っておくべき基本知識やKPI、戦略の立て方などが数多く存在します。自社で展開したいサブスクリプションサービスの種類を正確に把握した上で、施策を企画・立案していくことが、ビジネスを成功させる上で必要不可欠です。
サブスクリプションビジネスの成功事例として紹介したHubSpotは、サブスクリプションビジネスの運用に関する課題解決にも役立つツールです。顧客との関係構築を支援・管理する便利な機能・ツールが多数搭載されており、サブスクリプションサービスの大きな課題である「解約されやすい」といった問題に役立ちます
SEデザインは、HubSpotが日本進出した当初からパートナーとして導入支援を行っています。これからサブスクリプションビジネス分野に進出していきたい、現在運営管理しているサブスクリプションビジネスの管理業務を効率化したいと思っている方は、ぜひお気軽にご連絡ください。
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