日常的にHubSpotを使用しつつ、「HubSpotのレポート機能は物足りない」と感じているケースもあるのではないでしょうか。多くのデータを可視化できる一方で、カスタマイズの難しさやレポート数の制限に不便を感じる企業は多いかもしれません。
無料で利用できるスプレッドシートをHubSpotと連携すれば、データ活用の幅が広がり、業務の効率化や分析精度の向上が期待できます。
本記事では、長年多くの企業に導入を支援しているHubSpot公式パートナーのSEデザインが、スプレッドシートとの連携方法や活用方法、事例などについて分かりやすく解説します。
HubSpotとスプレッドシートは簡単に連携できる
HubSpotとスプレッドシートは少しの操作で簡単に連携可能です。HubSpotの画面で、スプレッドシートで作ったレポートを確認できるため、利便性が大幅に向上します。
データの自動反映やリアルタイム確認ができるようになるため、HubSpotの標準レポート機能に物足りなさを感じている場合に効果的です。HubSpotのデータを有効に活用するために、連携してみましょう。
HubSpotのレポート機能とは
出典:HubSpot
HubSpotには、豊富なデータを簡単に可視化できるレポート機能があります。直感的な操作で、誰でも簡単にレポートを作成できるのが大きな利点です。しかし、万能というわけではありません。ここでは、具体的な機能と課題を見ていきましょう。
HubSpotレポート機能の概要
HubSpotのレポート機能を使うと、営業やマーケティング、カスタマーサクセスなど各部門のデータを可視化し、分かりやすく分析できます。複数のレポートをダッシュボードにまとめて表示できるため、データ管理の一元化が可能です。
また、各データへのアクセス権限を細かく設定できるため、チーム全体で安全にデータを共有できます。データソースを選択しフィールドを追加するだけで、カスタムレポートを簡単に作成できる点も魅力です。
HubSpotレポート機能の課題
HubSpotレポートには、作成できるダッシュボードやカスタムレポートに上限があり、上限数はプランによって異なります。無料のHubSpot CRMでは、最大2件のダッシュボードと最大10件のレポートを作成できます。レポート数を増やすには、Hub製品の有料プランなどへの加入が必要です。
また、対応できるレポートの形式としても、顧客獲得コストを求める複雑な計算式を含むものやバブルチャートなどを含むものは作成できません。Excelで作成したレポートをダッシュボードに読み込むことも現状は非対応です。(2025年3月現在)
HubSpotとスプレッドシートを連携する重要性
2つのツールを連携せずに、HubSpot内のデータをスプレッドシートに移行することも可能です。しかし、データのエクスポートとインポートが毎回必要となり、手間と時間がかかります。
HubSpotをスプレッドシートと連携すると、データが自動更新されるため、作業の負担が大幅に軽減できます。また、標準機能では難しい複雑なデータ分析やカスタマイズレポートの作成が可能です。自動更新やグラフ作成、複数データの統合が簡単に行えるため、業務の効率化やデータ活用の幅が広がるでしょう。
HubSpotとスプレッドシートの連携方法
HubSpotとスプレッドシートを連携するにはアプリのダウンロードが必要となることに加え、HubSpotのワークフロー(ビジネスプロセスの自動化機能)を使用します。ワークフローが利用できるのは、下記のプランです。
- Marketing Hub :Professionalプラン、Enterpriseプラン
- Sales Hub :Professionalプラン、Enterpriseプラン
- Service Hub :Professionalプラン、Enterpriseプラン
- Operations Hub:Professionalプラン、Enterpriseプラン
具体的な連携方法を分かりやすく解説します。
1.HubSpotのGoogleシートアプリをインストール
HubSpotが提供するGoogleシートアプリをインストールしましょう。アプリは公式サイトから、無料でダウンロードできます。なお、アプリをインストールするにはHubSpotへのサインインが必要です。
2.スプレッドシートの作成
アプリを連携したら、HubSpotのデータを送信するために雛型として使うスプレッドシートを作成しましょう。下記の情報を入力します。
- スプレッドシートの名前
- シートの名前
- 列の名前
列の名前は、1行目に記入しましょう。なお、一度にエクスポート可能なプロパティー数は最大20個です。
3.ワークフローの作成・更新
スプレッドシートにデータをエクスポートするために、次のようにHubSpotのワークフロー上で操作を行います。
- HubSpotの「自動化」>「ワークフロー」を選択
- 右サイドバーの下の「Google Sheets」を選択
- 作成・更新を選択
作成と更新ではそれぞれ、作業方法が異なります。具体的な操作方法を見ていきましょう。
ワークフローの作成
まず、ワークフローを作成する際は、「作成・更新」欄で「Googleスプレッドシートの行を作成」を選択します。トリガーとなるアクションを指定し、ワークフローを有効化しましょう。
各項目で、以下の内容を選択できます。
- スプレッドシート:データ送信先のスプレッドシートを選択
- シート:選択したスプレッドシート内のシートを選ぶ
- ヘッダー:ヘッダーを選択し、プロパティーの値をスプレッドシートのどの列に出力するのかを決定する
- プロパティー:データの送信元となるHubSpotのプロパティーを選択
必要なアクションをすべて設定し、「保存」をクリックします。
ワークフローの更新
次に、データを更新する際は、「作成・更新」欄で「既存のGoogleスプレッドシートの行を更新する」を選択します。既存のワークフローを編集するほか新規作成も可能です。
各項目で、以下の内容を選択します。
- スプレッドシート:データ更新先のスプレッドシートを選択
- シート:選択したスプレッドシート内のシートを選ぶ
- 参照列ヘッダー:データ更新のヘッダーを選択
- 参照列プロパティー:データの送信元となるHubSpotのプロパティーを選択
- 行の追加:一致する行がない場合、新しい行を新規追加
- 列の設定:データ更新の基準となる列を設定
ワークフローアクションをすべて設定したら、「保存」をクリックしましょう。
4.ワークフローの実行
最後にワークフローの実行を行いましょう。作成したスプレッドシートでは、HubSpotのデータが即座に反映されるため、リアルタイムで状況を確認できます。
HubSpotにスプレッドシートを表示する方法
HubSpotのダッシュボードに、スプレッドシートを表示する方法を解説します。
- ナビゲーションバーの「アクション」>「外部コンテンツの追加」をクリック
- 「Googleスプレッドシート」を選択
- タイトルとスプレッドシートの公開URLを入力
スプレッドシートのURLの取得方法は次のとおりです。
- 該当するスプレッドシートを開く
- 「共有」>「一般的なアクセス」をクリックし「リンクを知っている全員」を選択
- 「公開」をクリックし、URLをコピーする
コピーしたURLをHubSpotの「URLまたは埋め込みコード」欄に貼り付けて、「追加」をクリックすれば完了です。
HubSpotとスプレッドシートを連携する5つのメリット
スプレッドシートはGoogleアカウントがあれば無料で利用できるため、追加費用は不要で、手軽に試せます。ここでは、HubSpotとスプレッドシートを連携するメリットを5つ見ていきましょう。
メリット1.ニーズに応じたレポートを作成できる
HubSpotの標準機能には限界があるため、加工に時間がかかる場合や自社に最適なレポートを作成できないケースがあります。
スプレッドシートを活用すれば、HubSpotから抽出したデータを自由に加工し、必要な項目のみを反映できる点がメリットです。フィルターや計算式を追加し、データをさまざまな角度から分析できます。また、グラフやピボットテーブルフィルターを使い、目的に応じたレポートを柔軟に作成できる点もメリットの1つです。
メリット2.業務効率が上がる
HubSpotの情報をExcelで管理する場合は、データを毎回手動でエクスポートし、インポート作業を行う必要があります。また、データ整理のために、コピー&ペーストで加工する手間も生じると予想されるでしょう。
スプレッドシートを連携すれば、データがリアルタイムで自動更新されるため、手入力によるミスや記載漏れを防げます。結果として、レポート作成の手間を軽減できるため、業務効率の向上につながります。
メリット3.情報共有の漏れを防げる
HubSpotとスプレッドシートを連携すると、HubSpotのダッシュボードからスプレッドシートを直接確認できるのが特徴です。チームメンバー全員が同じレポートをリアルタイムで確認できるので、情報共有の手間が減り、共有ミスや伝達漏れを防止できます。
メリット4.有料のBIツールより手軽に導入できる
有料のBIツールを活用すれば高度なデータ分析が可能となります。しかし、導入コストが高く、使いこなすには専門知識が必要になる点はデメリットです。
一方、スプレッドシートは無料で利用でき、直感的な操作でデータ分析できるため、手軽に導入できる点が大きなメリットです。HubSpotと連携すると、自動でデータを取得でき、計算式や関数を活用したリアルタイム分析が可能です。また、ほかのシステムのデータを統合し、より多角的な分析も行えます。
メリット5.データ分析が容易になる
HubSpotの標準機能だけでは、カスタマイズに限界があり、細かいデータ分析が難しいケースがあります。
一方、スプレッドシートと連携すると、多様な関数を活用できるため、柔軟な分析が可能です。さらに、データの表やグラフ作成機能が充実しており、分かりやすい形で可視化できます。
定期的なデータ集計やレポート作成を自動化できるため、手作業の負担を減らし、より効率的にデータ分析できる点はメリットです。
HubSpotとスプレッドシートの連携事例
HubSpotとスプレッドシートを連携すると、チーム内でリアルタイムに情報を確認できます。主な連携事例は次のとおりです。
- フィルターを活用し顧客情報管理を簡素化する
- 営業チーム全体で顧客情報をリアルタイムで共有する
- リード情報の詳細な分析を行う
- マーケティングデータの集計・効果測定を行う
- 売上・収益データを管理する
- HubSpotを利用していない人とのスムーズな情報共有を行う
スプレッドシートと連携すれば、データ加工の柔軟性が向上し、迅速に正確なデータ共有が可能となります。
HubSpotとスプレッドシートを連携する際の注意点
HubSpotとスプレッドシートを連携し、自動更新機能を正しく活用するためには注意が必要です。また、移行するには加工が必要なデータがある点を把握しておきましょう。
ここでは、スムーズに連携するための注意点を2つのポイントに分けて解説します。
注意点1.手動変更を行わない
連携したスプレッドシートに手動でデータを追加すると、HubSpot からの自動更新が正常に反映されなくなるため、注意が必要です。
手動でデータを追加したい場合は、新しいシートを作成し、A1セルに「IMPORTRANGE関数」を入力すれば、元のデータを維持したまま編集できます。IMPORTRANGE関数は、特定の範囲のデータを元のシートから別のシートに自動で取り込める関数です。
詳しくは、Googleのヘルプページを参考にしてください。
注意点2.すぐに連携できないデータがある
HubSpot 内の一部のプロパティーは、表示されている値をそのままエクスポートできません。とくに、次の2つのデータはそのままでは適切に処理できないため、変換や確認が必要だといえるでしょう。
- 日付
- チケットのステータス
これらを適切に処理するための方法について解説します。
日付
HubSpot内の日付データは「ミリ秒単位のUnixタイムスタンプ」で管理されています。スプレッドシートにそのままエクスポートすると数字の羅列として表示され、通常の日付形式には変換されません。
日付形式に変換するには、以下の関数が必要です。
この段階では、データ内に時間や分が含まれている状態です。さらに削ぎ落とす必要があるため、次の関数を使いましょう。
TRUNC関数を使うと、時刻情報を除いた日付データに変換できます。
チケットのステータス
チケットのステータスごとにIDが割り振られており、エクスポート時にはステータス名ではなくIDが表示されます。IDごとの具体的な内容は、下記の方法で確認可能です。
- 「データ管理」>「オブジェクト」>「チケット」を選択
- パイプラインを選択し、ステータスの横にある</>にカーソルを合わせる
この手順で内部IDを確認すると、チケット名が分かります。
HubSpotとスプレッドシートを連携して業務効率化を進めよう
HubSpotには標準機能で多くのレポートを作成できるものの、特定の形式への変換や詳細なカスタマイズが難しいケースがあります。その場合、スプレッドシートと連携すれば、柔軟なデータ加工や高度な分析が可能です。
スプレッドシートは無料で利用できるため、追加コストをかけずにデータ分析を強化できる点が魅力です。
SEデザインは、HubSpot社が日本進出した当初からパートナーとしてHubSpot導入支援・活用支援を行っています。HubSpotとスプレッドシートを連携し、業務効率化を進めたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。